- 作成日 : 2025年12月23日
合同会社の略称は?英語表記・正式名称との使い分けを解説
合同会社は、設立費用の低さや柔軟な経営体制が魅力の法人形態として、起業家や小規模事業者に広く選ばれています。近年ではその設立数も着実に増加しており、特に外資系企業の日本法人でも採用例が目立ちます。
本記事では、合同会社とは何かを整理しつつ、日本語の略称として使われる「(同)」や「(ド)」の意味や使い方、そして英語表記「LLC」と「G.K.」の使い分け、および米国のLLCとの法的な違いについて解説します。
目次
合同会社はどんな会社形態?
合同会社は、株式会社、合名会社、合資会社など複数ある会社形態のうちの一つであり、出資者全員が有限責任を負いながら、社員(出資者)が経営にも直接関与できる、効率性と柔軟性を兼ね備えた法人形態です。定款認証が不要で設立費用を抑えやすく、役員任期がないことや、利益配分を出資比率にとらわれず自由に設定できるなど、実務面での自由度が高いことが特徴です。
これらの点から、株式会社に比べて設立にかかる初期コストを低く抑えられるため、起業や小規模ビジネスで採用されやすい会社形態といえます。
出資者が経営者となるため迅速で柔軟な運営ができる
合同会社は、社員がそのまま業務執行権および代表権を持つという構造を持ちます。株式会社のように株主(所有者)と取締役(経営者)が分かれておらず、出資者全員が業務の意思決定に直接関与できるため、経営方針の変更などがスムーズに進みます。株主総会や取締役会といった機関設計が不要なため、内部の意思決定が迅速に行えるのが大きなメリットです。
社員全員が有限責任のためリスクが限定されている
合同会社における社員はすべて有限責任社員です。これは、会社の債務に対し、出資額を上限としてのみ責任を負う仕組みです。無限責任を負う合名会社や合資会社などとは異なり、個人の資産が会社の負債で失われるリスクがないため、安心して事業に取り組める点が最大のメリットです。
設立費用が安く個人事業からの法人成りにも適している
合同会社は設立時の費用が少なく、公証人による定款認証手数料が不要なため、電子定款を利用すればおよそ約6万円で設立できます。株式会社の場合と比べると費用は約4分の1程度で済むため、個人事業主の法人成りやスタートアップで採用されやすい会社形態です。また、維持コストも抑えられ、株式会社に義務付けられている決算公告の義務がない点もメリットといえます。
利益配分や組織運営を自由に設計できる
合同会社では、利益の分配方法や組織の運営ルールを、出資比率にかかわらず自由に定めることが可能です。社員間の合意があれば、柔軟な仕組みを定款で整えることができ、実情に合った経営がしやすいのも特徴です。
参考:合同会社について教えてください。|独立行政法人中小企業基盤整備機構
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合同会社の略称は?【日本語表記】
合同会社の略称には、ビジネス文書や名刺で使われる「(同)」、銀行振込などで使われるカタカナ略字「(ド)」があります。それぞれに使い方や由来があり、特に金融機関との取引において誤解を避けるためにも、適切な使い分けが求められます。
一般的な略称は「(同)」であり、実務上の正式な略記
日本語で合同会社を略す場合、慣用的に「(同)」が用いられます。これは「合同会社」の2文字目である「同」を括弧で囲んだ表記で、たとえば「合同会社ABC」は「(同)ABC」と表記され、「ABC合同会社」は「ABC(同)」と表記されることが多く、正式名称における位置に準じて記載するのが一般的です。株式会社の「(株)」や有限会社の「(有)」と同様、社名をコンパクトに示せるため、名刺や請求書、封筒の社名表記などで広く活用されています。
「(同)」が選ばれた理由は、合同会社の「合」だけを取ると「(合)」となり、合名会社や合資会社と区別がつきにくいためです。合名会社は「(名)」、合資会社は「(資)」と略されることが慣例化しており、「(合)」という略称は使用されていません。この略記法の統一感に基づき、合同会社には「(同)」という略称が実務上の標準的な表記として定着しています。
なお、商業登記、契約書、官公庁への提出書類などの正式な場面では、略称ではなく「合同会社〇〇」という正式名称を用いる必要があります。
銀行取引などでは「(ド)」が略字として使われる
銀行口座名義や振込先の入力など、カタカナ表記が求められる場面では、合同会社は「(ド)」と略して表記することがあります。これは「ゴウドウガイシャ」の「ド」の音を取ったもので、銀行システムの文字数制限や機種依存文字を避けるために用いられる実務的な略字です。
たとえば、振込名義欄では、「合同会社XYZ」は「ド)XYZ」、「XYZ合同会社」は「XYZ(ド」と表記されるケースがあります。正式名称をそのまま入力すると、振込明細や画面上で途中で文字が切れてしまい、会社名が正しく表示されない場合があるためです。
金融機関によっては、口座名義や振込入力で略字「(ド)」を用いることが案内されており、実務上も広く利用されています。普段は見慣れない表記のため戸惑うこともありますが、銀行振込などの場面では送金処理を円滑に行うための実用的な表現といえます。スムーズな取引のため、事前に取引先に名義の表記を確認しておくと安心です。
法人略称はなぜ必要?役割と使われる理由
法人略称は、単に省略表現というだけではなく、ビジネスにおける効率性や表記の明瞭性を確保するといった重要な役割を担っています。略称を適切に使うことで、文書管理や情報伝達の精度が高まり、会社種別を分かりやすく示すことができます。
スペース節約と視認性向上のために使われる
名刺や請求書など、スペースやレイアウトに制限がある文書では、正式名称の代わりに略称「ABC(同)」が活用されます。略称を用いることで、社名をコンパクトに収めやすくなり、会社種別を一目で示すことができるため、視認性向上という大きな利便性があります。
金融機関やITシステムでの処理上、必要とされる場面がある
銀行振込や会計ソフトの入力欄などでは、文字数や使用可能文字の制限があります。そのため「ゴウドウガイシャABC」を略称「ド)ABC」と短く表記することで、システム上での表示や処理の不具合を防ぐことができます。金融機関では略称「(ド)」の使用を標準としており、トラブル防止の観点からも重要な対応です。
会社形態の識別符号としても機能している
「(株)」「(同)」「(資)」などの法人略称は、それぞれ異なる会社形態を示す目印として機能しています。略称を見るだけで、相手が株式会社なのか合同会社なのかを即座に判断できるため、実務上の混乱を避ける助けになります。特に異なる責任区分を持つ法人間での誤認を防ぐうえで、略称の役割は小さくありません。
合同会社は英語でどう表記する?
海外との取引や定款の英訳などで合同会社の名称を英語で表記する際、「LLC」または「G.K.」が使用されます。両者は似ているようで背景が異なり、目的や立場に応じて使い分けがされています。
一般的には「Limited Liability Company(LLC)」と訳される
合同会社は、英語では通常「Limited Liability Company」(有限責任会社)の略称である「LLC」と表記されます。たとえば、「合同会社ABC」は「ABC LLC」といった表記になります。これは、日本の合同会社が、諸外国のLLCと「出資者全員が有限責任を負う」という点で性質が共通しているため、国際的に理解されやすい表記として一般的に採用されています。
日本国内で英文定款を作成する際や、海外企業との取引において会社名を英語表記する場合、多くの合同会社が「LLC」表記を採用しています。この略称を用いることで相手国の企業にとっても理解されやすく、書類上もスムーズなコミュニケーションが期待できます。
日本独自の制度であることを示すため「G.K.」と表記されることもある
合同会社を「Godo Kaisha」の頭文字を取って「G.K.」と略す例もあります。日本独自の会社制度であることを示すために用いられるもので、外資系企業の日本法人が採用することがあります。
たとえば、Apple Japanの正式な英語表記は「Apple Japan G.K.」です。これは、日本法人であることを強調し、特に米国のLLCとは異なる法制度・税制の下にあることを明確にする目的で用いられています。このように、「LLC」と「G.K.」は「出資者全員が有限責任を負う」という根本的な性質は共通しているものの、外向けの立場や文脈に応じて表記が分かれるのが特徴です。
登記には日本語表記が必須であり「LLC」や「G.K.」のみでは登記できない
注意すべき点として、商業登記においては「LLC」や「G.K.」といった略称のみで会社名を構成することはできません。日本の会社法第6条では、商号(会社名)には「合同会社」などの会社種別を示す文字を含めることが義務づけられており、登記簿には日本語の名称が登録されます。
そのため、登記簿上では「ABC合同会社」など日本語の名称で記載・登録され、英語表記はあくまで便宜上の表示または補助的な社名という扱いになります。ただし、定款の中に英文名称を明記しておけば、英語での契約書や商業文書では「ABC LLC」や「ABC G.K.」の使用が可能です。これにより、海外取引や国際的なブランディングにおいて柔軟に対応することができます。
参考:会社法第6条|e-GOV
略称と正式名称はどう使い分ける?
合同会社の略称や略字には「(同)」や「(ド)」があり、場面に応じて使い分けることが求められます。正式な商号として法的な効力を持つのは「合同会社」の表記のみであり、略称はあくまで実務上の利便性に応じた補助的な使い方に限られます。
法的・公式な書類では正式名称「合同会社」を使用する
会社登記や契約書など、法的効力を持つ文書には略称を用いることはできません。法務局に提出する登記申請書類では、必ず「合同会社」を含んだ正式な商号を用いなければなりません。仮に「(同)」や「LLC」といった略称のみで商号を記載した場合、申請は受理されません。契約書の当事者欄でも同様に、正式名称の使用が原則です。
なお、文中で略記を使用したい場合は、最初に正式名称を記載したうえで、「(以下、『○○(同)』という)」といった形で明示的に略称の定義を加える必要があります。
名刺や案内状などでは略称が実務的に便利
名刺、案内状、社内資料、掲示物といった実務上の利便性が重視される文書では、「(同)」の略称を使用することで、スペースを節約し、視認性を高める効果があります。たとえば、「ABC合同会社」より「ABC(同)」とした方が、レイアウトを整えやすいなどのメリットがあります。ただし、略称だけでは伝わりにくいことがあるため、初めに正式名称を示したうえで略称を併記するなど、相手に配慮した表記が望ましいでしょう。
他の会社形態の略称は?
会社の種類ごとに、社名の簡略化に用いられる略称(略字)が決まっています。合同会社の「(同)」だけでなく、他の会社形態にも慣用的に使われる略記が存在しており、それぞれを混同しないよう注意が必要です。
株式会社の略称は(株)
株式会社は「(株)」と略され、日常でも最も目にする機会の多い略称です。たとえば「株式会社Example」は「(株)Example」と表記され、「Example株式会社」であれば「Example(株)」と表記されます。正式名称における「株式会社」の位置に合わせて、略記の位置が自然に対応します。
この略記は古くから使われており、視認性や認知度が高く、名刺や請求書などの実務でも広く活用されています。合同会社の「(同)」と並んで、略称として最も定着した表記形式の一つです。
合名会社は(名)、合資会社は(資)
合名会社の略称は「(名)」、合資会社の略称は「(資)」とされています。いずれも会社名の2文字目を括弧で囲んだ形で略されます。これらは明治時代から続く伝統的な会社形態であり、現在では設立件数こそ少ないものの、歴史ある企業に存在します。
合同会社の略称「(同)」とは一文字違いで似ているため、誤って使用すると会社形態を誤認される可能性がある点に注意が必要です。
有限会社は(有)と略され、現在は特例有限会社として存続
有限会社は「(有)」と略され、「有限会社ABC」であれば「(有)ABC」と、「ABC有限会社」であれば「ABC(有)」と表記されます。正式名称における「有限会社」の位置に応じて、略記の位置も対応します。有限会社は2006年の会社法改正により新規設立ができなくなり、現在は「特例有限会社」としてのみ存続しています。ただし、改正前に設立された有限会社は今でも多く存在しており、企業の名刺や社名表示などで「(有)」の略記が確認できます。
有限会社は全社員が有限責任である点で合同会社と共通しますが、会社法上は特例有限会社として株式会社の一種に位置付けられており、制度上は異なる枠組みにあります。
略称と正式名称を正しく使い分けよう
合同会社は、柔軟な経営や低コストの設立が可能な点で多くの起業家に選ばれていますが、略称と正式名称の使い分けもまた、適切な会社運営には欠かせません。「(同)」や「(ド)」といった略記は、名刺や振込処理などで便利に使える一方で、登記書類や契約書では必ず「合同会社」と正式名称を記載する必要があります。また、「LLC」や「G.K.」といった英語略記についても、便宜的な表示であることを踏まえ、場面に応じて適切に使い分けることが重要です。
誤解や不備を防ぐためにも、略称の意味や用途を正しく理解し、適切な表示を心がけることで、取引先や関係者との信頼性の高い会社運営につなげていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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