• 作成日 : 2025年12月24日

有限会社は儲かる?収益に与えるメリット・デメリットや利益を出すポイントなど解説

現在は新しく作ることができず「特例有限会社」として残る有限会社。実は無駄なコストがかかりにくいことや、老舗として信用を得やすいことなど、収益面でプラスに働く要素がいくつも隠れています。

この記事では、有限会社の仕組みが収益に与えるメリット・デメリットから、儲かるかどうかを決める本質的な要素、利益を最大化する具体的なポイントまで、成功の秘訣をわかりやすくまとめました。

有限会社は儲かるのか?

結論から言えば、有限会社という形態そのものが、会社の利益を保証するわけではありません。

現在、有限会社として活動している企業は、すべて2006年の会社法施行以前に設立された特例有限会社です。これらは法律上、株式会社の一種として扱われており、長年の業歴を持つ地域密着型の企業も少なくありません。

しかし、企業が継続的に利益を上げられるかどうかは、特例有限会社か株式会社かという法的形態の違いではなく、あくまで事業戦略や経営手腕によって決まります。

とはいえ、特例有限会社には、現在の株式会社にはない独自の法的メリットが存在するのも事実です。これらの仕組みが、ランニングコストの抑制や経営の自由度確保に寄与し、結果として「利益を残しやすい体質」を築きやすくしている側面もあります。

有限会社の概要については以下の記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

有限会社の仕組みが収益に与えるメリット・デメリット

会社が儲かるかどうかは本来事業内容によりますが、特例有限会社という「器(うつわ)」が持つ法的な特徴は、経営コストや資金調達の面で、会社の利益に直接的・間接的な影響を与えます。ここでは、そのプラス面とマイナス面を具体的に解説します。

コスト削減による間接的なメリット

特例有限会社が持つ旧法からの特例規定は、主に「管理コストの削減」と「経営の安定」に貢献します。これらは固定費を押し下げる要因となり、結果として利益率を高める効果が期待できます。

役員任期の撤廃とコスト抑制

株式会社の取締役には原則として任期(通常2年から最長10年)があり、任期満了ごとに重任手続きと法務局への登記変更が必要です。これに対し、特例有限会社については、法律上、取締役の任期に関する制限が設けられておらず、定款で別段の定めをしない限り、一度選任されれば、辞任や解任がない限り在任を続けることができます。

これにより、役員改選のための株主総会開催や、登記変更に伴う司法書士報酬・登録免許税(数万円〜十数万円)が不要になります。定期的なランニングコストが削減されることは、特に利益率にシビアな小規模企業にとって、純利益の押し上げに直結します。また、頻繁な役員交代のリスクが低いため、長期的なスパンで腰を据えて戦略を遂行しやすい点もメリットです。

決算公告の免除と費用削減

株式会社には、毎事業年度終了後に財務諸表を官報などで公告する義務(決算公告)がありますが、特例有限会社についてはこの決算公告義務がありません。

そのため、官報掲載料(数万円程度)などの公告費用や、公告準備にかかる事務的な手間を省くことができ、小規模企業にとっては固定費の抑制という面で収益にプラスに働きます。さらに、財務情報の詳細な公開が不要であるため、競合他社に自社の懐事情を知られにくく、独自の経営戦略を維持しやすい環境といえます。

事業拡大におけるデメリット

一方で、特例有限会社という形態は、事業が一定規模を超えてさらに大きく成長しようとする際に、収益機会を制限する要因にもなり得ます。

資金調達の制約

特例有限会社は、証券取引所への株式の上場(IPO)を行うことができません。また、特例有限会社の株式はすべて譲渡制限株式とみなされるため、株式の自由な売買が認められておらず、将来的な株式公開を前提とするベンチャーキャピタル等からの出資は、一般に受けにくい形態といえます。

これにより、数十億円規模の設備投資やM&Aによる急速な事業拡大を目指す際、資金調達の手段が「銀行融資」や「自己資金」のみに限定されてしまいます。結果として成長スピードが鈍化し、市場シェアを一気に獲得することで得られるはずだった「将来の莫大な利益」を逃す可能性があります。

対外的な信用度の課題

特に新規の大口取引や大手企業とのビジネスにおいては、会社形態や情報公開の度合いが「信用度」に影響する場合があります。

一般に株式会社の方がコンプライアンスや情報公開が厳格というイメージを持たれることもあり、大手企業が取引条件として「株式会社であること」や「一定水準の財務情報の開示」を求めるケースもあります。その場合、特例有限会社のままでは条件を満たせず、大きな契約獲得のチャンスを逃す可能性があります。

有限会社が儲かる(利益を出し続ける)かを決める3つの要素

前述のような法的形態のメリット・デメリットはあくまで前提条件にすぎません。会社の法的形態に関わらず、企業が継続的に利益を上げ、「儲かる」体質を維持するかどうかは、以下の本質的な要素に左右されます。これらの要素が、特例有限会社が儲かるかを最終的に決定します。

1. 市場戦略とビジネスモデルの優位性

どんなにコストを削減しても、売上を作る仕組みが弱ければ会社は儲かりません。市場での立ち位置を明確にし、収益を生み出す強い構造を作ることが第一歩です。

まず重要となるのが、ターゲット市場の選定と競争優位性です。縮小市場での安売り競争を避け、高収益を確保するためには、以下の視点が必要です。

  • 勝てる市場の選定:大手企業が参入しづらいニッチな需要や、長期的な成長性がある市場を選べているか。
  • 高付加価値の提供:顧客の真の問題を解決する独自の技術やサービスにより、価格競争に巻き込まれない強さがあるか。
  • 参入障壁の構築:特許や強固な信頼関係など、他社が容易に真似できない「壁」を築けているか。

さらに、ビジネスモデルにおいては収益構造の安定化が鍵となります。「売って終わり」のフロー型ビジネスではなく、サブスクリプションやメンテナンス契約など、継続的に収益が発生する「ストック型ビジネス」への転換が必要です。これに加え、固定費を回収して利益が出始める「損益分岐点」を定量的に把握し、その水準を下回らないための管理を徹底することで、赤字転落を防ぐ盤石な体制が作られます。

2. 経営効率と財務体質の健全性

入ってきた売上を、いかに効率よく利益として残すか。ここには緻密な計算と管理、そして資金繰りの戦略が必要です。

利益を残すためには、まず厳格なコスト管理が求められます。具体的には以下のような対策により、不況時でも利益が出やすい柔軟な構造を作ります。

  • 固定費の最適化:人件費や家賃などの固定費を抑制し、業務委託などを活用して変動費の割合を高める。
  • 原価管理の徹底:どんぶり勘定を排し、原材料費の高騰などを適切に価格転嫁して、必要な粗利益を確実に確保する。

そして何より重要なのが、資金繰りの徹底管理です。「黒字倒産」を防ぐためには、帳簿上の利益だけでなく、実際の現金の流れ(キャッシュフロー)を最優先に管理する必要があります。

  • 運転資金の最適化:売上回収と支払いのタイミングを調整し、「早く回収し、遅く支払う」という鉄則を守る。
  • 資産の効率活用:倉庫に眠る在庫や回収できない売掛金などの「ムダな資産」を持たず、資産を効率的に収益につなげる。

3. 組織力と経営者のリーダーシップ

最終的にシステムや戦略を動かすのは「人」です。組織の強さとリーダーの質が、実行力を決定づけます。

組織面では、人材活用とノウハウの組織化が業績に直結します。特に特例有限会社のような規模感では、優秀な人材の確保と定着が死活問題となります。能力を最大限に発揮できる環境を提供すると同時に、特定のカリスマ社員や社長一人に依存しないよう、業務の標準化やマニュアル化を進めることが重要です。誰が担当しても一定の品質が出せる「組織の力」を構築することが、事業継続の鍵となります。

経営者自身には、以下の明確なビジョンと高い倫理観が求められます。

  • 長期的ビジョン:目先の利益だけでなく、5年後、10年後の市場変化を見据えた戦略を描き、断行するリーダーシップ。
  • 高い倫理観と信用:法令遵守はもちろん、公私混同を避けた透明性の高い経営を実践し、顧客や従業員からの信頼を守り抜く姿勢。

有限会社で儲かる(収益性を高める)ための5つのポイント

特例有限会社として存続する企業が、今後も持続的に利益を上げ続けるためには、その特殊な立ち位置を理解し、武器として使いこなすことが重要です。ここでは、具体的なアクションとして5つのポイントを紹介します。

1. 固定費削減分を次の利益へ再投資する

特例有限会社には、役員の重任登記(数万円〜)や決算公告(数万円程度)といったランニングコストがかかりません。これを単なる「節約」で終わらせず、攻めの投資に回すことが重要です。

浮いたコストを従業員のスキルアップ研修、HPの改修、あるいは新商品の試作開発費などに充てることで、サービス品質が向上し、結果として売上アップにつながる好循環を生み出します。「小さなコスト削減を、将来の大きな利益の種にする」という意識が、筋肉質な経営体質を作ります。

2. 老舗というブランド価値を最大化する

2006年以降は有限会社を設立できないため、「有限会社」の商号を名乗っている時点で、少なくとも十数年以上の業歴があることがうかがえます。これを「信頼」「実績」「地域密着」というブランド価値として積極的にアピールしましょう。

特に建設業、食品製造、伝統工芸、地域医療や介護といった分野では、新しい会社よりも「昔からある会社」の方が顧客に安心感を与えます。名刺や会社概要で「創業〇〇年」と強調し、有限会社であることを「古臭さ」ではなく「信頼の証」としてブランディングすることで、安売り競争から脱却できます。

3. オーナー経営ならではの即断即決で動く

特例有限会社は、役員任期の制限がなく、株主数も比較的少ないケースが多いため、株主全員の同意による招集手続きの省略(みなし決議)など、迅速な意思決定のための仕組みを活用しやすい形態です。この「意思決定の速さ」こそが、大企業にはない最大の武器です。

市場のトレンドが変わった時や、新しいビジネスチャンスが目の前に現れた時、会議を重ねることなくトップダウンで即座に方向転換できる機動力があります。ニッチな市場においては、このスピード感こそが「儲け」の源泉となります。大手が参入してくる前にシェアを確保する、スピード経営を徹底しましょう。

4. 成長の限界を感じたら株式会社へ移行する

もし事業が順調に拡大し、特例有限会社の枠組み(資金調達の限界や信用の壁)が収益拡大のボトルネックになった場合は、名前に固執せず形態を変える決断も必要です。

成長フェーズに合わせて、特例有限会社から株式会社へ商号変更(移行)を行います。これにより、人材採用の強化、大手企業との取引拡大、そして株式公開や大規模な資金調達が可能となり、企業の収益構造を一段上のレベルへと引き上げることができます。「守り」の時期は特例有限会社で、「攻め」の時期は株式会社で、と使い分ける柔軟な姿勢が成功の鍵です。

有限会社から株式会社へ移行するメリットとデメリットは、以下の記事でも詳しく紹介しています。

5. 出口戦略(M&A)で創業者利益を確保する

「儲かる」のゴールは、毎年の黒字だけではなく、最終的に会社をどう手放すかという「出口(Exit)」も重要な収益ポイントです。

特例有限会社が持つ長い業歴(のれん)や、引き継ぎ可能な許認可は、M&A市場において高く評価される資産となります。株式会社への移行やIPO(上場)をしなくても、「地域での信用」や「独自の顧客基盤」が十分に評価されれば、会社を比較的有利な条件で売却できる可能性があります。

親族に後継者がいない場合でも、廃業を選ばず第三者へM&A(会社譲渡)を行うことで、創業者は創業者利益(キャピタルゲイン)を得てリタイアすることが可能です。長年守り抜いた「有限会社」という看板と事業を現金化することこそ、経営者にとって最後の大きな「儲け」となります。

有限会社という形態を武器に儲かる経営を実現しよう

特例有限会社という箱自体が利益を生むわけではないですが、その特性を活かせば利益を残しやすい体質は作れるでしょう。

現在、特例有限会社を経営されている方は、その希少性とコストメリットを最大限に活かし、自信を持って「老舗ブランド」としてビジネスを展開してください。重要なのは、株式会社への移行も含め、常に時代の変化に合わせて最適な選択をし続ける「経営者の決断」です。外側の看板ではなく、中身のビジネスモデルを磨き上げることこそが、永続的に儲かる会社を築いていくうえで、最も重要な要素の一つだと言えるでしょう。


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