• 作成日 : 2025年9月9日

ペーパーカンパニーの維持費は最低年7万円!設立から税金、解散までの費用を解説

ペーパーカンパニーの設立を考えるとき、年間の維持費はどれくらいかかるのか、という疑問はとても重要です。実は、事業活動が全くなくても、会社が存在するだけで最低限の費用が発生します。

この記事では、ペーパーカンパニーの維持費の具体的な内訳、特に税金である法人住民税について詳しく解説します。さらに、株式会社と合同会社の違い、費用を抑える方法、設立のメリット・デメリットまであらゆる疑問に答えます。

そもそもペーパーカンパニーとは?

そもそもペーパーカンパニーとは、登記上は存在するものの、事業活動の実態がない法人のことです。

ペーパーカンパニーの多くは、節税対策、資産管理、許認可の維持、将来の事業への準備といった合法的な目的で設立・活用されます。一般的に、ダミー会社やゴーストカンパニーといった呼び方もありますが、必ずしも違法な目的で使われるわけではありません。

ペーパーカンパニーの維持費は最低でも年間約7万円

ペーパーカンパニーの維持費は、利益がゼロであっても最低で年間約7万円かかります。これは、法人が存在するだけで課税される法人住民税の均等割によるものです。この税金は、会社の資本金の額や従業員数に応じて決まり、赤字かどうかに関係なく納税義務が発生します。

法人住民税 均等割の金額

資本金1,000万円以下、従業員50人以下の場合、法人住民税の均等割は以下のようになります。

  • 都道府県民税:20,000円
  • 市町村民税:50,000円
  • 合計(最低額):年間70,000円

※東京23区内に本店がある場合は、都民税として70,000円

自治体によって税率が異なる場合がありますが、多くの場合は合計で年間7万円が最低ラインとなります。これが、ペーパーカンパニーを維持するための避けられない固定費です。

法人住民税以外に発生する費用

法人住民税以外にも、状況に応じて以下のような費用が発生する可能性があります。

  • 税理士・会計士の顧問料:年間10万円~30万円程度
    確定申告を専門家に依頼する場合の費用です。地域や依頼内容によって大きく異なります。取引が全くないペーパーカンパニーの場合、より安い申告のみのプランで対応してくれる税理士もいます。
  • 本店移転登記費用:30,000円~60,000円
    会社の住所を変更した場合に必要です。
  • 各種証明書の取得費用:数百円~
    登記簿謄本や印鑑証明書などが必要になる場合に発生します。
  • バーチャルオフィス・レンタルオフィスの利用料:月額数千円~数万円
    自宅以外の住所で登記する場合に必要となる費用です。

ペーパーカンパニーの維持費を安く抑える方法は?

ペーパーカンパニーの維持費を安く抑える方法は、以下の通りです。

1. 税理士に頼まず自分で申告する

ペーパーカンパニーの維持費を最も効果的に削減する方法は、確定申告を自分で行うことです。取引が全くないゼロ申告の場合、会計ソフトを使えば比較的簡単に申告書を作成できます。税理士への依頼費用である年間10万円以上を完全に節約できるため、最も効果の大きい費用削減策と言えます。

2. 合同会社を選択する

設立時の費用だけでなく、長期的な運営費用を考えると、合同会社は非常に有利な選択肢です。株式会社と合同会社では、特に役員の任期に関する規定が維持費に大きく影響します。

項目株式会社合同会社
役員の任期最長10年任期の定めなし
役員変更登記費用10,000円(任期満了ごと)原則不要
設立費用定款認証)約50,000円不要

株式会社の場合、任期が満了するたびに同じ役員が続ける場合でも重任登記という手続きが必要で、最低1万円の登録免許税がかかります。一方、合同会社には役員の任期がないため、この登記費用が原則発生せず、長期的に見て費用を削減できます。

3. 役員の任期を長く設定する

株式会社を選択した場合は、役員の任期を会社法で定められた最長の10年に設定することで、登記費用の発生頻度を抑えられます。設立時に定款で役員の任期を10年と定めておけば、10年に一度しか役員変更登記の費用が発生しません。

ペーパーカンパニーの作り方から解散までの流れ

ペーパーカンパニーの作り方から解散までの流れは、以下の通りです。

1. 会社設立の手続き

まず、株式会社か合同会社かを選び、法務局で設立登記を行います。

  1. 基本事項の決定
    商号(会社名)、事業目的、本店所在地、資本金額などを決めます。
  2. 定款の作成・認証
    会社のルールブックである定款を作成します。株式会社の場合は公証役場で認証を受ける必要があります。
  3. 資本金の払込み
    発起人の個人口座に資本金を払い込みます。
  4. 登記申請
    必要書類を揃え、法務局に設立登記を申請します。申請が受理された日が会社の設立日となります。

2. 毎年の維持管理

会社を維持するためには、毎年の税務申告と、必要に応じた法務手続きが欠かせません。

  • 決算・確定申告
    事業年度終了後、2ヶ月以内に税務署などへ確定申告書を提出し、法人住民税の均等割などを納税します。
  • 役員変更登記(株式会社)
    役員の任期が満了した際には、法務局で変更登記を行います。

3. 不要になった場合の解散・清算手続き

ペーパーカンパニーが不要になった場合は、解散・清算の手続きを行うことで法人格を消滅させ、維持費の発生を止められます。この手続きには、解散登記、官報公告、清算結了登記など多くの段階があり、登録免許税や公告費用などで合計8万円程度の費用と、数ヶ月の期間が必要です。

ペーパーカンパニーを維持するメリット・デメリット

ペーパーカンパニーを維持するメリット・デメリットは、以下の通りです。

メリット|節税対策や資産管理に活用できる

ペーパーカンパニーを維持する主なメリットは、税務上の柔軟性と将来への備えにあります。

  • 節税対策
    個人事業主よりも法人の方が経費として認められる範囲が広く、役員報酬や退職金などを活用して所得を分散できます。
  • 資産管理
    不動産や有価証券などを個人ではなく法人名義で所有することで、相続対策や資産の移転を円滑に進められる場合があります。
  • 事業の準備
    将来始めたい事業の許認可を先に取得したり、法人格が必要な契約を準備したりできます。
  • 信用の確保
    法人格があることで、個人事業主よりも社会的な信用を得やすくなる場合があります。

デメリット|費用と手間がかかる

一方で、ペーパーカンパニーには無視できないデメリットも存在します。

  • 最低限の維持費
    事業活動がなくても、法人住民税均等割(約7万円)と、場合によっては税理士費用が毎年必ず発生します。
  • 事務手続きの手間
    利益がなくても毎年の確定申告が義務付けられており、怠るとペナルティが課されます。
  • 社会的信用の問題
    事業実態がないことが分かると、金融機関からの融資が受けにくい、取引先から敬遠されるなどの可能性があります。
  • 悪用のリスク
    犯罪に利用されるのではないかという疑念を持たれやすい側面もあります。

ペーパーカンパニーの維持費を理解し、目的に合った活用を

この記事では、ペーパーカンパニーの維持費について、その内訳から節約方法、メリット・デメリットまで解説しました。

事業実態のない会社でも、法人住民税均等割として最低年間約7万円の費用がかかり、利益がゼロでも確定申告の義務があります。この休眠会社の費用を正確に理解し、株式会社と合同会社のどちらを選ぶか、専門家に依頼するかどうかを慎重に判断することが、無駄な出費を避けることにつながります。

ペーパーカンパニーは、正しく活用すれば節税や資産管理の強力な手段となります。メリットとデメリットを比較検討し、ご自身の目的に合った最適な選択をしてください。


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