- 作成日 : 2026年1月14日
株式会社の役員数は何人必要?最低人数や適正、変更の手続きまで解説
これから会社を設立する方や、組織体制の見直しを検討している経営者にとって、株式会社の役員数は何人が適切なのかは重要なテーマです。
現在の会社法では、取締役1名のみでも株式会社を設立・運営することが可能です。しかし、取締役会を設置するかどうか、あるいは対外的な信用をどう確保するかによって、求められる最低人数や構成は大きく変わります。
この記事では、株式会社における役員数の最低ライン、機関設計ごとの人数の違い、そして人数を変更する際の手続きについて、会社法のルールに基づきわかりやすく解説します。
目次
株式会社の役員数は何人必要?
原則として、取締役1名がいれば株式会社の設立・運営は可能です。
2006年の会社法改正(施行は2006年5月)により、株式会社の役員構成に関するルールは大幅に緩和されました。以前は「取締役3名以上+監査役1名以上」が必須でしたが、現在は株式の譲渡制限がある(非公開会社である)場合、取締役1名のみで会社をスタートできます。これにより、社長1人のみの「一人会社」も合法的に認められており、起業のハードルは大きく下がっています。
取締役会の有無による最低人数の違いは?
株式会社の役員数は、取締役会を設置するかどうかによって最低人数要件が明確に異なります。
| 取締役会 | 取締役の人数 | 監査役の人数 | 合計最低人数 |
|---|---|---|---|
| 非設置 | 1名以上 | 設置は任意 | 1名 |
| 設置 | 3名以上 | 1名以上(※) | 4名 |
※取締役会設置会社であっても、「会計参与」を設置する場合など、特定の条件下では監査役を置かない選択も可能ですが、一般的な中小企業では「取締役3名+監査役1名」の計4名がスタンダードな構成です。
株式会社の役員の種類と役割は?
役員数を決める前に、それぞれの役職が持つ役割も理解しておきましょう。
取締役
取締役は、会社の業務執行に関する意思決定を行う機関です。取締役は会社と「委任契約」の関係にあり、民法上の「善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)」と、会社法上の「忠実義務」を負います。経営判断を誤り、会社に著しい損害を与えた場合、株主から損害賠償請求(株主代表訴訟)を受けるリスクもあります。
代表取締役
取締役の中から選定され、会社を代表して契約行為等を行う権限を持ちます。取締役が1名の場合は、自動的にその者が代表取締役となります。
監査役
取締役の職務執行が法令や定款に違反していないかをチェック(監査)する役割です。名ばかりの監査役であっても、もし取締役の不正を見逃して会社が損害を受けた場合、監査役としての任務懈怠責任を問われる可能性があります。取締役会設置会社では、取締役同士の癒着を防ぐため、原則として設置が義務付けられています。
会計参与
税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人のみが就任できる役職です。取締役と共同して計算書類(決算書)を作成し、開示・説明する責任を負います。会計参与を設置することで、金融機関からの融資審査で評価が上がるといったメリットがあります。
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株式会社に最適な役員数は?
創業期やスピード重視なら「1名」、ガバナンスや資金調達を重視するなら「複数名」が適しています。
1名が向いているケース
スモールビジネスや、創業者が強力なリーダーシップを発揮したい場合は1名が最適です。
複数名が向いているケース
事業規模の拡大を目指す場合や、VC(ベンチャーキャピタル)からの出資を受ける場合は、複数名体制が好まれる傾向にあります。
- 役割分担:「営業(CEO)」「開発(CTO)」「管理(CFO)」など、専門分野を持つ役員を配置できます。
- 相互牽制(ガバナンス):独裁的な経営を防ぎ、コンプライアンス体制を強化できます。
- 事業継続性:代表者に万一のことがあった場合でも、他の役員が業務をカバーできます。
役員数を偶数(2名や4名)にすると、意見が割れた際に決着がつかなくなるリスクがあります。複数名にする場合は、奇数人数にするか、最終決定権のルールを明確にしておくことが重要です。
株式会社に取締役会を設置するかどうかの判断基準は?
取締役会を設置するには、最低でも「取締役3名」に加え、原則として「監査役1名」の計4名が必要です。
取締役会とは、会社の業務執行に関する意思決定を行うための「会議体」です。会議として機能し、相互に監督し合うためには複数人の視点が必要となるため、法律で3名以上の取締役が必要と定められています。
また、取締役会を設置すると、取締役同士で業務を監視することになりますが、それだけでは癒着や不正のリスクが残ります。そのため、取締役の職務執行を独立した立場でチェックする監査役(または会計参与など)の設置が原則として義務付けられます。
取締役会を設置するメリット
- 社会的信用力の向上:金融機関からの融資や、大手企業との取引において、取締役会設置会社であることがガバナンスの証明となり、審査が有利になる場合があります。
- 独断専行の防止と質の向上:合議制をとることで、ワンマン社長の暴走を防ぎ、多角的な視点から経営判断を行えます。
- 所有と経営の分離(機動的な運営):本来、株主総会で決めるべき事項(重要な財産の処分や多額の借財など)の一部を取締役会に委任できるため、経営のスピードが上がります。
取締役会を設置するデメリット
- 人件費(役員報酬)の増大:最低4名の役員が必要となるため、報酬総額が膨らみます。
- 事務負担の増加:3ヶ月に1回以上の取締役会開催が義務付けられ、その都度「議事録」を作成・保存する必要があります。
- 人材確保の難易度:責任ある立場を任せられる人材を4名確保するのは、創業期の企業にとって容易ではありません。
株式会社の役員数を決める際によくある失敗は?
人数を決める際は、単に数を合わせるだけでなく、運用上のリスクも考慮する必要があります。
役員数を偶数にするリスク
役員数を2名や4名の偶数にすると、意見が対立した際に「可否同数」となり、意思決定がデッドロック(膠着状態)に陥るリスクがあります。これを防ぐためには以下の対策が有効です。
- 奇数人数にする:3名、5名など、多数決で決着がつく人数にする。
- 最終決定権を定める:「可否同数の場合は議長(代表取締役)が決定する」といった条項を定款に盛り込んでおく。
名義貸し・名ばかりのリスク
「名前だけ貸して」と頼んで親族などを役員にするケースがありますが、これにはリスクがあります。
- 責任逃れ不可:実質的に経営に関わっていなくても、登記簿上の役員である以上、第三者に対する損害賠償責任(会社法429条)を負う可能性があります。
- 税務否認:勤務実態がないのに役員報酬を支払っていると、税務調査で「過大役員報酬」として経費計上を否認される(追徴課税される)恐れがあります。
人数不足のペナルティ
辞任や死亡により、法律や定款で定めた最低人数を割ってしまった場合、速やかに後任を選任・登記する必要があります。放置すると「選任懈怠」として、代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。
株式会社の役員の任期を設定するポイントは?
会社法上の原則的な任期は以下の通りです。
- 取締役:約2年(選任後2年以内に終了する事業年度の定時株主総会まで)
- 監査役:約4年(選任後4年以内に終了する事業年度の定時株主総会まで)
しかし、非公開会社(全ての株式に譲渡制限がついている会社)であれば、定款で定めることにより、取締役・監査役ともに任期を最長10年まで延長できます。
任期を長くするメリット
役員の任期が満了すると、同じ人が再任する場合でも「重任登記」が必要です。司法書士報酬を含めると数万円のコストがかかります。任期を10年にすれば、このコスト発生頻度を5分の1に減らせます。
任期を長くするデメリット
任期途中で役員を解任するには「正当な理由」が必要です。理由なく解任すると、残りの任期分の役員報酬を損害賠償として請求されるリスクがあります。10年任期にしてしまうと、不適格な役員を辞めさせにくいというリスクが生じます。
株式会社の役員報酬と雇用保険・社会保険のルールは?
役員を増やす場合、単なる給与だけでなく「税務」と「労務」の観点からの検討が必須です。
役員報酬の決め方
役員報酬は、従業員の給与とは異なり、「毎月同額」でなければ会社の経費(損金)として認められません(定期同額給与)。「今月は利益が出たからボーナスを出そう」といった柔軟な変更は原則として認められず、変更できるのは期首から3ヶ月以内の株主総会時などに限られます。役員数を増やす際は、この固定費リスクを十分に考慮する必要があります。
雇用保険には入れない
重要な点として、役員は原則として雇用保険(失業保険)の対象外です。万が一会社が倒産したり、解任されたりしても、失業手当は支給されません。新しく役員を招聘する場合は、このリスクを説明し、報酬額で調整するなどの配慮が必要です。
社会保険は強制加入
法人から報酬を受けている常勤役員は、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務があります。役員報酬を月額数万円程度に抑えている非常勤役員の場合は加入義務がないケースもありますが、実態判断となるため専門家への確認が推奨されます。
株式会社の役員数を変更する手続きは?
役員数を変更するには、株主総会での決議を経て「選任」または「解任(辞任)」を行い、2週間以内に法務局へ変更登記を申請します。
1. 定款の確認
まず、自社の定款を確認します。定款には「当会社の取締役は○名以内とする」といった員数規定が設けられている場合があります。
新しい人数がこの規定の範囲外になる場合(例:上限3名の規定があるのに4名にしたい場合)、まずは定款変更の決議が必要です。
2. 株主総会の開催と決議
役員の選任(就任)や解任は、株主総会の決議事項です。
- 増やす場合:候補者の選任決議を行います。
- 減らす場合:任期満了による退任、辞任、または解任決議を行います。
3. 変更登記の申請
役員の氏名や構成が変わった場合、その効力発生日から2週間以内に、管轄の法務局で変更登記を行う必要があります。
この手続きを怠ると「登記懈怠」となり、過料(罰金のようなもの)が科される可能性があります。
株式会社の役員数は自社のフェーズに合わせた設計を
株式会社の役員数は、法律上は「取締役1名」から可能ですが、事業のフェーズや目的によって最適な人数は異なります。
- 創業期:コストとスピード重視で取締役1名がおすすめ。
- 拡大期:役割分担と信用力強化のために取締役会設置(計4名〜)を検討。
- リスク管理:人数変更時は、定款の確認と登記申請を忘れずに実施。
「とりあえず人数を合わせる」のではなく、会社の成長戦略に合わせた機関設計を行うことが、長期的な安定経営につながります。まずは自社の定款を確認し、現状の人数が最適かどうかを見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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