- 更新日 : 2026年1月5日
【簡単に】合同会社設立時に社会保険は必須?いつから?手続きも解説
合同会社の設立にあたり、社会保険の手続きが必要です。しかし、社会保険の手続きをどう進めたらよいか、あるいは代表社員一人の会社でも加入義務があるのか、といった疑問もあるでしょう。
この記事では、そもそも社会保険とは何か、どのような手続きがいつまでに必要なのか、手続きを怠った場合に罰則はあるかなどについて解説していきます。
目次
合同会社設立時に社会保険は必須?
合同会社を設立した場合、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入は法律上の義務です。株式会社と同様に、合同会社も「法人」として扱われます。法人は、業種や規模にかかわらず「強制適用事業所」となり、事業主や従業員の意思とは関係なく社会保険に加入しなければなりません。
代表社員一人の合同会社でも加入義務はある
「従業員を雇わず、代表社員一人だけ」という合同会社(一人合同会社)も少なくありません。この場合でも、代表社員に対して役員報酬を支払うのであれば、その代表社員は社会保険の被保険者となります。
法律上、法人の代表者(合同会社の場合は代表社員)も、法人から労働の対価として報酬(役員報酬)を受ける「使用される者」と見なされるためです。
パート・アルバイトを雇う場合の加入条件
従業員の社会保険の加入については個別に判断する必要があります。フルタイムの従業員については、社会保険に加入させなければなりません。
パートやアルバイトについては、従業員数により扱いが異なります。51人以上の従業員を抱える会社では、以下に該当するパートやアルバイトは社会保険の加入対象となります(※2024年10月から)。なお、従業員数が少ない会社のパートやアルバイトの社会保険の加入は任意です。
- 雇用の見込みが2か月を超えること
- 学生でないこと(※休学中の学生と定時制または通信制の学生は加入)
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満であること
- 所定内賃金が月8.8万円以上であること
労災保険や雇用保険については、従業員を1人でも雇用している場合は合同会社にも加入が義務付けられます。
参照:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構
合同会社設立時に、いつから社会保険に入る?
合同会社の設立に伴い、速やかに加入の手続きが必要です。
健康保険と厚生年金の加入は、会社設立の事実発生から5日以内に「新規適用届」を管轄の年金事務所または日本年金機構の事務センターに提出することが法律で義務付けられています。介護保険については、40歳以上の被保険者がいる場合に健康保険料と一緒に徴収するため、別途手続きをする必要はありません。
雇用保険と労災保険については、従業員を雇用し保険関係が成立した日から10日以内に所轄の労働基準監督署に「労働保険 保険関係成立届」を提出するほか、後述のように複数の手続きが必要になります。
社会保険加入の必要がないケースは?
社会保険のうち、雇用保険や労災保険は、基本的に合同会社の社員は対象外です。そのため、従業員のいない合同会社では、雇用保険や労災保険の加入の必要はありません。
しかし、健康保険や厚生年金保険は、役員(合同会社では社員)を含めて常時従業員を使用する場合に加入が義務付けられます。
そのため、雇用保険や労災保険の加入が必要ない合同会社は存在しますが、健康保険や厚生年金保険の加入が必要ない合同会社は存在しないことになります。
そもそも社会保険とは?加入が求められる種類
社会保険には、健康保険、介護保険、厚生年金保険、国民年金、雇用保険、労災保険などがあります。ここでは、それぞれの社会保険について解説します。
健康保険
健康保険は、病気やケガなどの医療に関わる社会保険制度です。日本では「国民皆保険」が採用されており、全ての国民は、全国健康保険協会(中小企業に勤める会社員など)、健康保険組合(大企業に勤める会社員など)、共済組合(公務員など)、国民健康保険(自営業者など)のいずれかに加入することが義務付けられています。さらに、75歳以上の高齢者または65歳から74歳の一定の障がいなどを認定されている方は、後期高齢者医療制度の加入が必要です。
合同会社では、会社を通して代表社員を含む全ての社員が健康保険に加入しなくてはなりません。
介護保険
介護保険は高齢者の介護を社会全体で支えることを目的とした制度であり、2000年4月にスタートしました。海外居住者などを除き、原則として40歳に達した月から全ての国民に加入義務が生じます。会社で健康保険料を社員から徴収している場合は、介護保険料も健康保険料に加算して徴収されることになります。
厚生年金保険・国民年金
公的年金は、高齢の方や事故などで障害を負った方、家族の主な働き手を亡くした遺族を支える社会保険制度です。国内在住の20歳以上60歳未満の方全員に加入の義務があります。会社員や公務員は厚生年金保険、自営業者などは国民年金に加入となり、合同会社の社員は厚生年金保険の加入が必須です。
なお、国民年金については、全ての国民が加入する基礎年金であるため、合同会社の社員も加入していることになります。
基本的に正社員などの加入を想定した制度ではあるものの、従業員数51人以上の会社では、パートやアルバイトでも一定の条件に該当する場合は、社会保険(健康保険と厚生年金)の加入が適用されています(※2024年10月から適用)。
雇用保険
雇用保険は、雇用の安定と労働者が失業した際の生活の安定などを目的とした制度です。合同会社でも労働者を1人以上雇用している場合は適用事業者となり、雇用保険の加入義務が発生します。
なお、合同会社の業務執行社員は、実務をしていても原則として雇用保険に加入できません。
労災保険
労働者災害補償保険(労災保険)は、業務中の事故によるケガや病気などについて、被災した労働者や遺族を保障する制度です。従業員を1人でも雇用している事業所は加入の義務があります。
なお、合同会社の場合、従業員は労働者として労災保険の対象となりますが、出資者兼役員である社員は労働者に該当しないため、労災保険に加入することはできません。
合同会社設立時の社会保険の手続き・必要書類
社会保険の加入手続きは、会社の設立(法人登記)後、速やかに行う必要があります。手続きごとに期限が定められているため注意しましょう。
健康保険・厚生年金保険の手続き(設立後5日以内)
合同会社を設立(登記)したら、その事実が発生した日(設立登記日)から5日以内に、管轄の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を提出しなければなりません。
同時に、代表社員や従業員など、被保険者となる人の「被保険者資格取得届」も提出します。扶養家族がいる場合は「被扶養者(異動)届」も必要です。
参照:事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき|日本年金機構
労働保険(雇用保険・労災保険)の手続き(従業員雇用時)
労働保険(労災保険・雇用保険)は、従業員を初めて雇用した際に手続きを行います。
- 保険関係成立届の提出:
従業員を雇用した日の翌日から起算して10日以内に、所轄の労働基準監督署に提出します。 - 概算保険料申告書の提出:
保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内に、労働基準監督署または都道府県労働局に提出し、保険料を納付します。 - 雇用保険適用事業所設置届・資格取得届の提出:
設置した日の翌日から起算して10日以内に、所轄のハローワーク(公共職業安定所)へ提出します。
手続きに必要な主な書類
社会保険の手続きには複数の書類が必要ですが、設立時に必要なのは以下のとおりです。
| 手続きの種類 | 必要な主な書類 | 提出先 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 |
【添付書類】
| 管轄の年金事務所 |
| 労働保険(従業員雇用時) |
【添付書類】
| 所轄の労働基準監督署(ハローワーク) |
合同会社は社会保険料の費用をいくら負担する?
社会保険料は、保険の種類によって会社(事業主)と従業員(被保険者)の負担割合が異なります。「会社と従業員で折半するもの」と、「会社が多く(または全額)負担するもの」に分けられます。
| 保険の種類 | 会社(事業主)の負担 | 従業員(被保険者)の負担 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 折半(半分) | 折半(半分) |
| 介護保険料 (40歳以上65歳未満が対象) | 折半(半分) | 折半(半分) |
| 厚生年金保険料 | 折半(半分) | 折半(半分) |
| 労災保険料 (従業員雇用時) | 全額負担 | 負担なし |
| 雇用保険料 (従業員雇用時) | 双方で負担(会社側の割合がやや重い) | 双方で負担 |
社会保険のうち、健康保険、介護保険、厚生年金保険は、会社と従業員が半分ずつ(折半)負担します。会社は、被保険者負担分を毎月の役員報酬や給与から天引き(控除)し、会社負担分と合わせる形で国に納付する義務を負います。
労災保険は会社が全額負担します。保険料率は業種によって異なり、2025(令和7)年度の保険率は、前年の2024(令和6)年と同様、1,000分の2.5~88の範囲で設定されています。労災リスクの高い業種ほど料率が高くなる仕組みです。
失業などに備える雇用保険料は、双方で負担しますが、事業の種類ごとに定められた料率により、会社側の負担が従業員側よりもやや大きく設定されています。2025(令和7)年度には、一般の事業の場合、従業員負担が1,000分の5.5で、会社負担は1,000分の9です。
全国健康保険協会の場合、2025(令和7)年の東京都での保険料率は、厚生年金保険が18.30%、健康保険が9.91%(介護保険を含むと11.50%)となっています。
標準報酬月額30万円の方の場合、健康保険(介護保険を含まない)は29,730円のため、会社負担分は折半後の14,865円です。厚生年金は、54,900円で、折半後の会社負担分は27,450円になります。
出典:令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|協会けんぽ
合同会社設立後、社会保険に未加入の場合のリスクは?
社会保険の加入義務があるにもかかわらず、合同会社設立後に加入しなかった場合は、何らかの指導を受けたり、罰則を適用されたりする可能性があります。
加入指導と過去にさかのぼった強制徴収
社会保険の加入を怠った場合、まず、健康保険や厚生年金保険であれば年金事務所から、労働保険や雇用保険であれば労働基準監督署などから加入指導が入ります。
加入指導を重ねて加入が確認できない場合、立ち入り検査や保険料額決定の後に、過去にさかのぼって強制的に差し押さえなどにより、保険料が徴収される可能性があるため注意が必要です。
助成金などへの影響
社会保険の加入を要する事業所が未加入のままでいると、助成金の受給にも影響を及ぼす可能性があります。特に影響が考えられるのが雇用調整助成金です。雇用に関わる労災保険や雇用保険などの加入が適切に行われていないと、未加入を理由に受給できないこともあります。
悪質な場合に科される罰則
社会保険の加入については、罰則も設けられています。悪質と判断された場合の罰則は、健康保険や厚生年金保険が未加入の場合で、6か月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金です。労災保険や雇用保険が未加入の場合は、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
合同会社の社会保険料は節税できる?
「役員報酬をゼロ、または極端に低い額にすれば、社会保険料を節約(節税)できる」という話を聞いたことがあるかもしれません。ただし、この考え方には注意が必要です。ここでは詳細を解説します。
役員報酬ゼロなら保険料は発生しない?
健康保険・厚生年金保険料は「標準報酬月額」に基づいて計算されます。そのため、役員報酬の支払いが全くない(0円)場合、計算のベースとなる報酬がないため保険料は発生せず、社会保険(健康保険・厚生年金)の被保険者資格も失うことになります。
会社の社会保険から外れたとしても、個人で国民健康保険や国民年金に加入することが求められます。
「加入しない」選択のデメリット
役員報酬ゼロを選び、会社の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しない場合、その代表社員は一個人として「国民健康保険」と「国民年金」に加入する義務が生じます。
- 保険料負担:
国民健康保険料は、自治体や所得によっては、社会保険料の本人負担分より高額になるケースがあります。国民年金保険料(令和6年度:月額17,510円)も全額自己負担です。 - 将来の年金:
厚生年金に加入していない期間は、将来受け取る老齢年金額に反映されません。国民年金(基礎年金)のみとなるため、受給額は少なくなります。 - その他の影響:
融資の審査や取引先の信用調査において、代表者が社会保険に加入していないことがマイナスに評価される可能性もあり得ます。
合同会社設立前に社会保険について確認しておこう
合同会社は、法人に該当するため、社会保険のうち、健康保険と厚生年金保険には必ず加入しなければなりません。また、従業員を雇用する場合は、労災保険と雇用保険の加入が必要です。なお、会社の設立関係の届出だけでなく、従業員個別の加入の手続きは別途行う必要があります。そのためにも、合同会社設立前に社会保険の加入についてよく確認しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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