- 作成日 : 2022年7月29日
会社設立の際の見せ金とは?違法なのか、わかりやすく解説
会社を設立する際、誰もが「取引先からの信用を得たい」と思うはずです。また、起業したら金融機関から融資を得たいと考える方もいるでしょう。
取引先や金融機関が、相手が信用できる会社かどうかを判断する目安に資本金額がありますが、場合によっては資本金(出資金)を十分に準備できないということもあるかもしれません。
見せ金とは、そのようなときに資本金を多く見せるために使われる方法です。見せ金の意味や本当に使ってもよい手段なのかをわかりやすく解説します。
目次
見せ金とは
見せ金とは、自己資金を十分に持たない起業家が会社を設立する際に、資本金が多くあるように見せるためのお金のことです。
会社設立時には出資金を口座に入金し、申告する必要がありますが、その際、他所からお金を借り入れ、それを出資金とする方法です。会社設立が完了したら、借りたお金はすぐに返済します。以下の条件で仕訳についても確認しておきましょう。
資本金:1,000万円
自己資金:400万円
見せ金:600万円
この条件の場合、見せ金600万円は会社から代表者に貸し付けたもので、事業のためには使わなかったものとして扱います。
なお、結論からいえば、会社設立時の見せ金は会社法上、違法です。また、刑法上の問題が生じる場合もあるので、絶対に利用しないようにしましょう。
預け合いとは
見せ金と似たような手段である「預け合い」も違法となりますので、覚えておきましょう。
見せ金の場合、会社設立者が単独で行いますが、預け合いとは会社設立者と金融機関が共同で行うものです。
預け合いの具体的な方法は次の通りです。
- 預け合いであることを合意し、会社設立者が金融機関からお金を借りる
- 借りたお金を同じ金融機関の口座に入金し、出資金として申告する
- 会社設立完了後に借りたお金を返済する
預け合いでは、会社設立が完了するまで口座からお金を引き出さないことを会社設立者と金融機関の間で合意しておきます。設立時の資本金額は確保されることになりますが、この行為は取引先を欺く違法行為として会社法で禁じられています。出資金が足りないという場合でも絶対に使ってはいけない方法であるため、注意してください。
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会社設立の際の見せ金は違法
繰り返しになりますが、会社設立時に見せ金を使って資本金額を増やす行為はしてはいけないことです。虚偽の資本金額で会社登記を行うことになり、「公正証書原本不実記載等罪」に問われ、5年以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられるおそれがあります。
また、会社法でも見せ金は違法とされています。
出資の履行を仮装した場合の発起人・役員の責任(会社法第52条の2)
「会社法第52条の2」が、会社設立時の出資に見せ金を使うことが違法である根拠となっています。
以下をご覧ください。
第五十二条の二 発起人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める行為をする義務を負う。
一 第三十四条第一項の規定による払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払
二 第三十四条第一項の規定による給付を仮装した場合 給付を仮装した出資に係る金銭以外の財産の全部の給付(株式会社が当該給付に代えて当該財産の価額に相当する金銭の支払を請求した場合にあっては、当該金銭の全額の支払)
2 前項各号に掲げる場合には、発起人がその出資の履行を仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者は、株式会社に対し、当該各号に規定する支払をする義務を負う。ただし、その者(当該出資の履行を仮装したものを除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
3 発起人が第一項各号に規定する支払をする義務を負う場合において、前項に規定する者が同項の義務を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
4 発起人は、第一項各号に掲げる場合には、当該各号に定める支払若しくは給付又は第二項の規定による支払がされた後でなければ、出資の履行を仮装した設立時発行株式について、設立時株主(第六十五条第一項に規定する設立時株主をいう。次項において同じ。)及び株主の権利を行使することができない。
5 前項の設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、当該設立時発行株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。
上記によると、見せ金を使って出資金にしたことが判明した場合、発起人はその全額を会社に対して支払う必要があります。支払いがない場合、株主としての権利を得ることができません。
実際の判例
古い例になりますが、1963年( 昭和38年)12月6日、最高裁判所で見せ金が違法である旨の判決が出ています。
この判例では、見せ金は本来の会社資金を確保するものではなく、一時的な借入金であるため、借入先に返済した場合は有効な株式払込みがされたとはいえない、とされました。
この判例をもとに、現在でも「見せ金=違法」と理解されています。
会社設立時に見せ金を利用すると起こるリスク
見せ金を利用することで発生するおそれがあるリスクについて確認しておきましょう。
融資が受けられなくなる
見せ金を使ったことが発覚する経緯の一つに、金融機関が融資判断をする際の「出資者の通帳確認」があります。多くの場合、会社設立時期のお金の出入りを見れば、出資金に見せ金を使ったかどうかはすぐにわかります。
見せ金を使うことは違法です。違法行為を行った人物は融資を受けられなくなりますので注意してください。
見せ金が課税される
「見せ金とは」の章でご紹介した通り、見せ金は役員貸付金として会社から代表者(出資者)に貸し付けたという扱いになります。実際のお金は貸した側に返済されていたとしても、仕訳上は会社から代表者に貸したままです。
貸したままの状態であれば、会社から代表者に報酬を支払ったことと同様とみなされ、代表者に所得税が課せられるおそれがあります。
会社設立が無効になる
見せ金自体が直接的に違法である旨は会社法には明記されていません。ただ、過去には、見せ金を使わなければならないということは、本当ならばお金がない、つまり、設立する会社に財産がないとみなされるため、設立は無効という判例もありました。この判例から考えると、現在でも見せ金を使った会社設立は無効とされるおそれがあります。
見せ金にならない資本金
本来ならば、自己資金から出資を行い会社設立するのがベストです。ただ、どうしてもお金が足りない場合、見せ金以外に資本金を作る方法はあるのでしょうか。
以下の方法について考えてみましょう。
株・不動産・債券などを売却する
現在、保有する株式や不動産、債券があれば、それらを現金化し、自己資金として会社設立資金に充てるという方法です。
売却の履歴は書類等で残りますので、融資を受ける際に問題になることはないでしょう。
親族からの出資は、借りるのではなく貰えないか交渉する
親族から出資してもらう方法もあります。ただし、借りた場合には返済義務が伴います。できれば、借りるのではなく、貰えないか交渉してみてはいかがでしょうか。親族からお金を貰う場合は以下の点に注意してください。
- 金融機関の融資審査に備え、資金が増えたことを証明する書類等を準備する
- 年間非課税枠の110万円を超えた場合は「贈与税」がかかる
クラウドファンディング
事業のアイデアがあっても資金が足りない場合には「クラウドファンディング」でお金を集めるという方法もあります。クラウドファンディングにはさまざまな種類があるため、どれを選ぶか慎重に検討しましょう。
- 購入型:支援金に対して商品やサービスを返すというものです。この場合、支援金は売上に計上されるため、資本金にはできません。
- 寄付型:支援者がアイデアやプロジェクトに対してお金を寄付するというものです。寄付金は売上に計上されるため、資本金にはなりません。
- ファンド型:事業に対して支援者から出資をしてもらう方法です。売上が上がると、出資額に応じてリターンが発生します。この方法の場合には支援金を資本金にできます。
宝くじ
運よく宝くじなどに当選した場合、そのお金を資本金に充てるという方法もあります。ただし、いきなり大金が発生した理由を説明できるように、当選を証明する書類等を準備しておきましょう。
見せ金は違法!別の資金調達方法を考えよう
この記事中で何度もご紹介している通り、見せ金や預け合いという方法で資本金を作るのは違法です。最悪の場合、懲役刑や罰金刑を科せられるおそれもあります。また、会社設立自体が無効となることもありますので、絶対にしてはなりません。
もし、自己資金で資本金を準備できないという場合には、株式や不動産を売却してお金を作る、親族から貰う、クラウドファンディングでお金を集めるという方法もあります。どの方法がいいかじっくり考え、自分に合ったものを選びましょう。
よくある質問
見せ金の利用は絶対ダメ?
見せ金は違法です。罪に問われたり、会社設立が無効になったりする場合もあります。詳しくはこちらをご覧ください。
「預け合い」とは?
会社設立者と金融機関が共謀して会社設立時に資本金があるように見せる方法です。こちらも見せ金同様違法です。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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