- 更新日 : 2024年8月29日
インターンシップ契約書とは?雛形を基に記載内容を解説
学生が一定期間企業で職場を見学したり、実務を体験したりすることで社会経験を積むインターンシップ。人材採用活動や社会貢献活動の一環としてインターンシップを取り入れている企業は多いですが、その際に契約書を作成しなければならないケースがあります。
今回は、インターンシップ契約書を作成する際のポイントや注意点についてご説明します。
目次
インターンシップ契約書とは?
インターンシップの受け入れ自体には、書面による契約の締結は義務付けられていません。
しかし、インターンシップと一口にいっても、1日~数日職場を見学したり社員と話をしたり、簡単なワークショップを体験したりするものもあれば、1週間~数ヶ月にわたって学生が実務を体験し、その対価として報酬が支払われるものもあります。
特に後者の場合は学生が「労働者」となる可能性があるため、インターンシップ契約書で条件を定めておく必要があります。
雇用契約書とインターンシップ契約書の違いは?
厚生労働省は労働基準法上の労働者であるかどうかを判断する基準として、以下のような指針を示しています。
1・2を総合的に勘案することで、個別具体的に判断する。
- 使用従属性に関する判断基準
(1)指揮監督下の労働
①仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、②業務遂行上の指揮監督の有無、③拘束性の有無、④代替性の有無
(2)報酬の労務対償性 - 労働者性の判断を補強する要素
(1)事業者性の有無
①機械、器具の負担関係、②報酬の額
(2)専属性の程度
(3)その他
一般的な会社員は労働時間が決まっており、その間は会社の指示に従って業務を行い、その対価として給料を得ます。インターンシップでも、会社の指揮命令に従って業務を行う、利益につながるような業務(製品を造ったり営業活動をしたりなど)を行って対価を得る、勤務時間や休日が決まっていて拘束されているといった場合は、労働者と見なされる可能性があります。その場合は、雇用者と学生が「雇用契約」を締結しなければなりません。
例えば、数日間~数週間といった短期間で職場を見学させる、会社の利益にはつながらない雑務などを体験させるような場合は、労働者には該当しないでしょう。その場合は、インターンシップ契約書でも問題ありません。一般的にインターンシップ契約は、学生を派遣する学校と学生を受け入れる企業が締結します。
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インターンシップ契約書の雛形
今回はインターンシップ契約書の雛形を用意したので、参考にして契約書を作成してみましょう。次章ではインターンシップ契約書の項目についてご説明しますが、この雛形をご覧になりながら読み進めていただくと、より理解が深まります。
インターンシップ契約書の雛形は、こちらからダウンロードできます。
インターンシップ契約書に記載すべき事項
インターンシップ契約書を作成する際は「実習期間」「就業場所」「報酬」「秘密保持」を記載しましょう。それぞれについて詳しく説明します。
目的
まず、インターンシップの目的を記載します。インターンシップを実施することで何を達成したいのか、企業側、学生側、学校側のすべてにメリットがある目的を決めましょう。これによって、インターンシップの内容や方向性が決まります。
実習期間
インターンシップの期間を記載します。具体的な日にちが決まっている場合は「◯年◯月◯日から◯年◯月◯日」のように記載しましょう。日にちが決まっていない場合は「◯月から◯日の間で、甲(受け入れ企業)、乙(大学)、丙(インターン生)が協議して決定する」といったように記載するのが一般的です。
実習場所
どこで実習を行うのかを記載します。複数の拠点がある企業の場合、インターン生はどこに行けばよいのかがわかりません。「甲(受け入れ企業)本社事務所」「甲◯◯工場」「甲◯◯営業所」といったように、具体的な実習場所を記載します。複数の場所で実習を行う場合や移動が伴う場合は、その旨も記載しておきましょう。
報酬
報酬も必ず記載すべき項目です。無償の場合でも「無償でインターンシップを実施する」「報酬は支払わないものとする」などと明記しておきます。報酬が発生する場合は、金額などの条件を記載しましょう。また交通費や昼食代など、インターンシップの実施に伴う経費の支給の有無や内容についても記載します。
秘密保持
インターンシップ期間中は学生が実務の体験によって製品情報やノウハウ、顧客情報などを知り得るため、これらの情報が外部に漏れる可能性があります。そのため、秘密保持に関する項目も契約書に盛り込んでおいたほうがよいでしょう。特に近年は、SNSでの投稿で個人情報や企業情報が流出するケースが増えています。
実習時に工場・事務所内を撮影禁止にする、口頭でも製品情報や個人情報を外部に漏らさないよう指導するといった対策も必要になるでしょう。
インターンシップ契約書を作る際に注意したいポイント
インターンシップ契約書を作成する際には、上記以外にもさまざまな注意点があります。特に以下のことを意識し、必要に応じて契約書に盛り込みましょう。
労働者に該当するか確認
まずは、そのインターンシップが労働にあたるかどうかを確認しましょう。前述のとおり、実習が労働と見なされる内容の場合は、雇用契約を締結しなければなりません。
特に報酬を支払う場合や、インターンシップ期間が長期にわたる場合、継続的にインターン生が出社する場合は要注意です。労働者に該当する場合は、労働基準法に従って業務に従事させる必要があります。インターンシップだからといって、法定労働時間を越えて仕事をさせる、最低賃金以下の報酬しか支払わない、社会保険や労働災害保険に加入させないといった違法行為は認められません。
インターンシップであっても、報酬の有無についてはインターンシップ契約書に必ず記載しておきましょう。
インターン期間中の事故や災害への対応
インターンシップ中の事故や災害に関しては、それがインターンシップなのか労働と見なされるのかによって対応が異なります。労働者の場合は労働者災害補償保険法が適用され、労働災害保険を使って治療費などを賄います。インターンシップの場合は、一般の傷害保険などで治療費を賄うことになります。学校の課外活動としてインターンシップを実施する場合は、学校が加入している傷害保険を使えることもあります。
実務を経験したことがない学生が作業などを行うため、思わぬ事故が発生することがあり、特に工場や現場で実習を行う場合は危険が伴います。事故が発生した際に、どのように補償するのかもインターンシップ契約書に記載しましょう。
インターン期間中の成果物の帰属
インターンシップ期間中に、インターン生が作成した成果物の取り扱いについても記載しましょう。学生が素晴らしい成果物やアイデアを生み出し、企業がそれを利用したいケースもあるかもしれません。逆に、インターン生や大学が実績をアピールするなどの目的で、インターンシップ期間中の成果物を利用するケースも考えられます。
成果物をお互いが利用するためにはどうすればよいのか、契約書で定めておきましょう。
適切に契約書を作成して、学生も企業も気持ちよくインターンシップができる環境を整えましょう
学生が実務を体験できるインターンシップは、企業にとっては優秀な人材の採用や社会貢献につながる、学生にとっては就職活動の参考になる、学校にとっては学生を派遣することで企業との関係を構築でき、学生の獲得につながるなど、それぞれにメリットがあります。
一方でインターン生を受け入れると、企業側には労使紛争や情報漏洩、事故などのリスクが発生します。トラブルを防ぐためにも適切に契約書を作成し、実りの多いインターンシップを実現しましょう。
よくある質問
インターンシップ契約書とは何ですか?
インターンシップ生を受け入れる際に締結する契約書です。一般的に、受け入れ企業と学生を派遣する学校が締結します。詳しくはこちらをご覧ください。
インターンシップ契約書にはどのような事項を記載すべきですか?
「実習期間」「就業場所」「報酬」「秘密保持」は最低限記載しましょう。インターンシップ中の成果物の取り扱いや、事故時の対応についても記載しておくと安心です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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