- 更新日 : 2025年9月9日
住宅瑕疵担保履行法とは?適用範囲や対象者を解説
マイホームという非常に大きな買い物には、大きなリスクが伴います。取引金額自体が大きいだけでなく、住宅に欠陥があると修補にも莫大な費用がかかることがあるからです。このような消費者のリスクを軽減するためにあるのが、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」です。
この記事では、この法律では具体的にどのようなルールが設けられており、どのような仕組みでリスクを軽減しているのかについて解説します。
目次
住宅瑕疵担保履行法とは?
「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(以下、「住宅瑕疵担保履行法」といいます。)」は、住宅の瑕疵を防ぎ国民の生活基盤を支えるため、瑕疵担保(かしたんぽ)責任の履行等について定めた法律です。
住宅を供給する事業者は住宅の欠陥について責任を負いますが、その事業者が倒産するなどして修補等の対応ができなくなると、住宅を購入した人が多額の費用を負担することになります。このような事態を防ぐためにあるのが、住宅瑕疵担保履行法です。
住宅瑕疵担保履行法が適用される住宅は?
住宅瑕疵担保履行法が適用されれば、住宅に瑕疵があったとしてもその修補等にかかるコストが軽減されます。ただし、すべての不動産に同法が適用されるわけではありません。適用を受けるのは、新築住宅に限られます。
そのため、同法が指す新築住宅の定義を知っておく必要があります。
住宅瑕疵担保履行法では「住宅」および「新築住宅」について、その定義をするにあたり住宅品質確保法の規定を流用しており、住宅品質確保法では以下のように規定しています。
第二条 この法律において「住宅」とは、人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分(人の居住の用以外の用に供する家屋の部分との共用に供する部分を含む。)をいう。
2 この法律において「新築住宅」とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く。)をいう。
この規定によると、まず住宅については「人が住むための家屋や家屋の部分」としています。そのため戸建の住宅のみならず、マンションや賃貸住宅なども住宅にあたります。これに対し、例えば倉庫や事務所は人が住むために供されるものではないため、住宅には該当しません。
新築住宅の定義のポイントは「建設工事の完了から1年以内」「人がまだ住んだことがない」の2点です。これらを満たすことで、同法による保護を受けることができます。
建設から1年以内であっても、一度でも人が居住したことがある物件は、「新築住宅」に該当しないことから、住宅瑕疵担保履行法の保護対象外ということです。
住宅瑕疵担保責任の範囲は?
住宅瑕疵担保履行法では、住宅瑕疵担保責任を負う物理的範囲を「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」としています。
それぞれの具体例は以下のとおりです。
- 構造耐力上主要な部分
- 基礎
- 基礎ぐい
- 壁
- 柱
- 小屋組
- 土台
- 斜材
- 床版 など
- 雨水の浸入を防止する部分
- 屋根や外壁の仕上げ、下地など
- 屋根や外壁の開口部に設ける戸・枠その他の建具(サッシなど)
- 雨水を排除するため設ける排水管のうち、屋根や外壁の内部または屋内にある部分
資力確保の義務を負う対象者は?
住宅瑕疵担保責任を負い、後述の資力確保をしなければならないのは「新築住宅の建設をする建設業者」と「新築住宅の売主となる宅地建物取引業者」です。
ただし発注者が宅建業者であり、宅建業者がその新築住宅の引渡しを受ける場合、引渡す建設業者に資力確保の義務は課されません。
パターンに分けると以下のようになります。
注文住宅の場合 | 分譲住宅の場合 | 賃貸住宅を新築する場合 | |
---|---|---|---|
資力確保の義務を負う者 | 請負人である 建設業者 | 売主である 宅建業者 | 請負人である 建設業者 |
資力確保の義務が生じないケース | 発注者が宅建業者のとき | 買主が宅建業者のとき | 賃貸人・発注者が宅建業者のとき |
資力確保はどう行う?
住宅瑕疵担保履行法によって新築住宅取得者が保護されるには、事業者が資力確保を行う必要があります。資力確保は、事業者が「保険」または「供託」によって行います。
保証金の供託
供託によって資力確保を行う場合は、事業者が一定の額を保証金としてあらかじめ法務局等の供託所に預け置きます。
瑕疵が発見された場合は、住宅購入者等はまず売主等に対し補償請求などを行うことになります。売主等がすでに倒産しているなどの理由で補償を受けられない場合、住宅購入者等は供託所に対し還付請求を行います。あらかじめ売主等から供託されていた保証金から還付を受けることができるため、住宅購入者等の負担は軽減されます。
保険に加入
保険への加入によって資力確保を図る場合は、個々の住宅について保険契約を締結することになり、瑕疵による損害が発生した場合は保険金が支払われることで住宅購入者等が救済されます。
売主等は、事前に国土交通大臣による指定を受けた住宅瑕疵担保責任保険法人に対し、保険料を支払います。瑕疵を発見したものの売主等の倒産などによりその補償が実行されない場合は、住宅購入者等は直接保険法人に保険金を請求し」、その支払を受けることで修補等の負担をカバーすることになります。
住宅瑕疵担保履行法により安全な新築住宅の取引が図られている
「建設後のリスクはすべて住宅購入者が負う」とすると、住宅を購入することをためらう人が増えるでしょう。しかし住宅瑕疵担保履行法があるため、安心して新築住宅を購入することができるのです。
消費者側は同法で保護される範囲をよく確認し、引渡しを行う事業者はどのような義務を課されているのかをよく確認しておくことが大切です。
よくある質問
住宅瑕疵担保履行法とはどのような法律ですか?
住宅瑕疵担保履行法は、新築住宅を引渡す事業者が資力確保を行うことで、瑕疵担保に関する責任の履行確保を図る法律です。詳しくはこちらをご覧ください。
住宅瑕疵担保履行法が適用されるのはどのような住宅ですか?
同法が適用されるのは住宅品質確保法で定義される新築住宅で、建設工事完了から1年以内かつ誰も居住したことがない住宅です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
下請法の対象かどうか判断するには?資本金や対象取引の条件をわかりやすく解説
下請法の対象となるのは、下請法所定の4つの取引において、一定の資本金額の関係にある場合に限られます。下請法の対象となる場合、親事業者にはさまざまな義務が課せられます。そのため、その取引が下請法の対象となるのかを正確に把握しておくことが必要で…
詳しくみる契約書の保管期間は何年?法律で定められた期間を紹介!
企業において重要な役割を果たす契約書ですが、事業年度が長くなるほど管理が煩雑になるため、現在使用していないものを処分したくなるかと思います。しかし、契約書には会社法や法人法施行規則といった法律によって保管が義務付けられているものがあるため、…
詳しくみる特定商取引法違反となる事例・罰則は?時効や通報先もわかりやすく解説
特定商取引法は悪質勧誘を排し、消費者を守る法律です。違反があれば契約取消しやクーリング・オフ、業務停止命令、懲役刑など重い責任が及びます。 本記事では、特定商取引法違反の事例や罰則、時効・通報窓口まで詳しく詳説します。 特定商取引法とは 特…
詳しくみる特許出願の分割とは?分割出願のタイミングやメリットを解説
特許出願の分割とは、2つ以上の発明をまとめて出願する際、発明の一部を新たな出願として分割できることです。分割により審査をスムーズに進められたり、特許として認められる可能性が高まったりします。 今回は、出願を分割するメリットやタイミング、分割…
詳しくみるライセンスフィーとは?相場や支払い方法についても解説!
「ライセンスフィー」や「ロイヤリティ」という言葉を耳にすることがありますが、「違いがよくわからない」という人は多いでしょう。そこで今回は「ライセンスフィー」「ロイヤリティ」の定義や、ライセンスフィーの相場、支払い方法(定額支払い、一括支払、…
詳しくみる特許とは?特許権の出願方法も簡単にわかりやすく解説
特許とは、発明を公開する代わりに、その発明を保護する制度のことです。特許権を得ると、出願から20年間、権利の対象となる発明の実施を独占できます。本記事では、特許や特許権の意味のほか、取得方法や特許侵害にならないようにするポイントなどを解説し…
詳しくみる