- 更新日 : 2024年8月29日
 
代理店契約書とは?雛形をもとに内容や注意点を解説
企業などが自社の製品やサービスを消費者に販売する場合に、別途販売の専門業者と販売に関する契約を結ぶことは一般的に行われています。
 しかし、一口に契約といっても「販売店契約」か「(販売)代理店契約」か「特約店契約」かで、契約内容は大きく変わります。
 今回は「代理店契約書」について、雛形を紹介した上で作成時の注意点などを解説します。
目次
代理店契約とは?
最初に「代理店契約」の内容を確認しておきましょう。
 代理店はメーカー企業などから委託を受け、商品やサービス(以下、商品)の売買の仲介を行う会社や個人の総称です。代理店は委託者を代理して商品の販売を行い、仲介により企業と顧客間で売買契約が成立した際に手数料を受け取ります。これが、代理店の主な利益となります。
代理店契約は上記の内容について企業(委託者)と代理店(受託者)間で結ぶものですが、実際には「代理店契約」と銘打っていても、契約形態が違うケースも少なくありません。混同しやすい契約には、以下のものがあります。
販売店契約との違い
販売店契約は、販売店が企業から買い受けた商品を顧客に(再)販売することを、企業間と販売店が取り決めて交わすものです。販売店の利益は、商品の購入額と再販売額との差額です。
代理店契約では商品自体の売買契約は企業と顧客の間で成立しますが、販売店契約における顧客の売買契約の相手方は販売店になる点が大きな違いです。
 販売店契約の場合、購入した商品が売れなければ販売店の損失になります。一方、代理店契約では在庫を抱えることはありません。その分、販売店のほうが利益率は高めです。
企業側は、商品の内容や性質に合った契約形態を選択するとよいでしょう。
特約店契約との違い
特約店契約は「企業が特定の会社や個人に商品を販売した上で、顧客などの第三者に再販売を行う際に交わす契約」です。
内容は販売店契約とさほど変わりませんが、特約店の場合、販売店は特定の企業とのみ契約を行います。それによって店に契約ブランドの看板を掲げられるため、企業名による消費者の信頼を得ることで利益を増やすことを期待できます。
代理店契約においても、特約店契約を交わすことがあります。保険代理店でいえば、特定の保険会社の代理店としてその保険会社が提供する保険商品のみを扱う代理店(特約店契約)もあれば、複数の保険会社と提携して顧客に複数社の保険商品紹介し、選択してもらう方法を採る代理店(一般的な代理店契約)もある、ということです。
日本では、特に販売店契約と代理店契約の相違が曖昧になりがちです。「販売代理権契約」と双方を組み合わせた契約名が少なからずあり、契約書を見るまでどちらの契約形態なのかわからないケースもあります。英語圏では代理店方式を「エージェント」、販売店方式を「ディストリビューター」といい、明確に区別しています。
代理店契約書の雛形
日本では代理店契約と販売契約が混同されやすいことから、「代理店契約書の雛形」と検索しても、内容は販売店契約書になっていることがよくあります。
 ここでは、「エージェント方式」である「代理店契約書」の雛形を紹介します。
代理店契約書に記載すべき事項
前述のとおり、代理店契約と販売店契約の主な違いは、商品の売買契約が顧客と誰の間で成立するか、そして利益は何で得るかの2点です。代理店側は企業側の商品を「購入」することはなく、あくまでも企業の代理として商品の売買を「仲介」します。
 代理店契約書を作成する際は、そのような言葉のチョイスが不適切だと内容に矛盾が生じるおそれがあるので、慎重に吟味する必要があります。
主な記載事項は以下のとおりです。
代理権の付与とその範囲
代理店が企業を「代理」して販売行為を行うことについて記載し、各契約当事者の立場を明確にします。
 販売店契約であれば、企業から購入した商品を販売店側がどれだけ割引して顧客に販売しようと自由ですが(もちろん実際には契約で割引に関する取り決めはされるでしょうが)、代理店の場合は販売額や販売方法、販売代金の受領方法などのうち、代理できると明記された事項以外については、原則として商品を供給する企業の指示を遵守することが求められるため、代理権の及ぶ範囲についても詳細に記載しておきましょう。
手数料
代理店側の収入に関する重要な事項です。強い立場といえる企業側の都合だけで決めるのではなく、代理店における販売の仲介という業務を正当に評価した上で、それが手数料の額やその算定方法に反映されるよう協議することが大切です。支払方法や支払時期も忘れずに記載しましょう。
契約期間
一般的な契約と同様に、契約期間(代理権の付与期間)について更新方法とともに明記しましょう。
責任の所在
商品に瑕疵があった場合の責任の所在をあらかじめ確認しておくことも大切です。代理店側は顧客対応の窓口になりますが、企業の代理で販売を行っているだけなので、商品そのものに関する責任は負わないのが原則です。特に代理店側がチェックしておくべき項目といえます。
代理店契約を結ぶ際の注意点
契約書の記載事項に加えて、代理店契約を結ぶ際に注意すべき点をいくつか挙げておきます。
再委託の可否
代理店が二次代理店に販売業務を再委託することは、企業にとって販売の拡大につながる一方で、監視が行き届かないことで自社のブランドへの信頼を失うおそれもあります。
 再委託ができるとしても、まずは企業側の許可を取り、再委託契約書については企業側がチェックするか、あらかじめ準備しておいた雛形に沿って作成する、再々委託は不可、など企業側がしっかり関わるようにしましょう。
代理店契約終了後のプロセス
看板・リーフレットなどの返還や、代理販売遂行に必要な範囲で知り得た企業情報、顧客の個人情報に関する守秘義務、代理店側が企業に保証金を納めていた場合の返還処理など、代理店契約においては期間終了や解除によって契約が終了した場合に問題になりそうな項目は少なくありません。
代理店契約終了後のプロセスについては、可能な限り事前に契約書で定めておきましょう。
収入印紙
代理店契約は代理業務が1回で終了するケースでない限り、印紙税額一覧表の第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」に該当し、契約書に4,000円の収入印紙を貼付しなければなりません。ただし委任契約や準委任契約にした場合と、契約期間が3ヶ月以内で更新をしない場合、印紙は不要です。
代理店契約は商品売買の「仲介」を行うために交わす契約
代理店契約(販売代理契約)は、メーカーなどの代理として商品販売業務を行うことで手数料を得る「エージェント契約」です。契約書を作成する際は、企業から購入した商品を売って売却益を得る販売店契約(ディストリビューター方式)と混同しないように注意してください。
よくある質問
代理店契約書とは何ですか?
メーカー企業などから委託を受け、商品やサービスの売買の仲介を行うことを内容とする契約のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
代理店契約と販売店契約の違いは何ですか?
代理店における売買契約は顧客と企業間で、販売店では販売店と顧客間で成立します。また、代理店の利益は仲介手数料ですが、販売店は商品の売却益が利益となります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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