- 作成日 : 2025年8月5日
行政書士のリーガルチェックは適法?弁護士・司法書士との違いや費用などを徹底解説
リーガルチェックは、契約書の内容を法的な観点から精査し、将来の紛争を未然に防ぐために極めて重要です。しかし、弁護士に依頼するのは敷居が高い、費用が心配と感じる方も多いのではないでしょうか。そこで選択肢となるのが、行政書士への依頼です。行政書士は、契約書の作成や書類としてのチェックが可能ですが、法的解釈を含むアドバイスや紛争解決に関する交渉・代理はできません。
この記事では、行政書士によるリーガルチェックの具体的な業務範囲から、弁護士や司法書士との違い、費用相場、そして失敗しない行政書士の選び方まで分かりやすく解説します。
目次
そもそもリーガルチェックとは
リーガルチェックとは、契約書や利用規約などの法的文書について、専門家が法的な観点から内容を検証し、リスクや問題点を洗い出す作業のことです。主な目的は以下の通りです。
- 自社に不利益な条項がないか確認する
- 法律に違反するような無効な内容が含まれていないか確認する
- 実際の取引内容と契約書にズレがないか確認する
インターネット上には様々な契約書の雛形(テンプレート)が無料で公開されていますが、これらをそのまま使うことには大きなリスクが伴います。なぜなら、雛形はあくまで一般的な内容であり、個別の取引事情を反映していないため、自社にとって不利な内容になっていたり、必要な条項が漏れていたりする可能性があるからです。専門家によるリーガルチェックは、こうした雛形のリスクを回避し、自社を守るための役割を果たします。
行政書士に依頼できるリーガルチェックの範囲
行政書士は、行政書士法に基づき「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成代理が認められています。契約書はこの書類に該当するため、行政書士による契約書のリーガルチェックは、不備による法的リスクを一定程度軽減できる可能性があるという観点から、予防法務として活用されます。
- 契約書に法的なリスクや不利な点がないかのチェック(レビュー)
- リスクや問題点の指摘、レポート作成
- 具体的な修正案や代替案の提案
- 取引内容のヒアリングに基づく、ゼロからの契約書作成
代表的な例として、業務委託契約書や秘密保持契約書(NDA)、売買契約書などは、行政書士への相談が多い契約書です。
行政書士・弁護士・司法書士のリーガルチェックの違い
契約書の相談ができる専門家には、行政書士の他に弁護士や司法書士がいます。それぞれの最も大きな違いは紛争性への対応可否です。
比較項目 | 行政書士 | 弁護士 | 司法書士 |
---|---|---|---|
主な役割 | 予防法務の専門家 | 法律事務全般の専門家 | 登記・供託の専門家 |
紛争への対応 | 不可(非弁行為となる) | 可能(交渉、訴訟代理など全て) | 一部可能(条件あり) |
契約書業務 | ○(紛争性のないものに限る) | ◎(全ての契約書に対応可能) | △(登記や裁判所・法務局提出を伴う文書作成が中心) |
得意分野 | 官公庁への許認可申請 中小企業の契約書作成・レビュー (業務委託契約書など) | 紛争解決、訴訟、M&Aなど 高度な法律判断を要する案件 | 不動産売買契約 会社設立登記に関連する書類作成 |
費用感 | 比較的安価 | 高価 | 業務による |
行政書士への依頼が向いているケース
トラブルが発生しておらず、これから結ぶ契約書の内容をチェックしてほしい、または新しく作成してほしい場合です。 費用を抑えつつ、将来のリスクに備えたい場合に最適です。
弁護士への依頼が向いているケース
すでにお互いの主張が対立している、相手方と交渉してほしい、訴訟も視野に入れているなど、具体的な紛争が発生している、または発生する可能性が非常に高い場合です。このような状況で弁護士以外の者が報酬を得て交渉などを行うと「非弁行為(弁護士法第72条違反)」となるため、必ず弁護士に依頼しなければなりません。
司法書士への依頼が向いているケース
司法書士も契約書作成は可能ですが、主戦場は不動産登記や商業登記です。そのため、不動産売買契約書や、会社設立に伴う定款・議事録の作成など、登記手続きと密接に関連する書類の相談に適しています。
行政書士によるリーガルチェックの流れ
実際にリーガルチェックを依頼する場合の、一般的な手続きの流れを把握しておきましょう。
- 問い合わせ・相談
まずは電話やメール、ウェブサイトのフォームから問い合わせます。この段階で、契約書の概要や相談したい内容を伝えます。 - 見積もり・契約
相談内容に基づき、行政書士から見積もりが提示されます。内容に納得できれば、正式に業務を依頼し、契約を締結します。 - ヒアリング・資料提出
対象となる契約書案や関連資料を提出します。行政書士は、取引の背景や目的、懸念事項などを詳しくヒアリングします。 - チェック・修正案の提示
行政書士が契約書を精査し、リスクや問題点をまとめたレポート、具体的な修正条文案などを提示します。 - 納品・アフターフォロー
最終的なチェックが完了した契約書データなどが納品されます。事務所によっては、その後の軽微な質問に対応してくれる場合もあります。
行政書士へリーガルチェックを依頼する場合の費用相場
行政書士に契約書のチェックや作成を依頼する場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。具体的な費用相場と、その金額を左右する要因について解説します。
契約書チェック(レビュー)の費用相場
既存の契約書の内容をチェックしてもらう場合の費用相場は、一般的に2万円〜5万円程度です。この費用には、契約書を読み込み、法的なリスクや不利益な条項を指摘し、修正案をコメント形式で提示するまでの作業が含まれます。契約書のページ数や条項の数、内容の専門性によって料金は変動します。特に、専門的な知識を要する契約書の場合は、相場よりも高くなる可能性があります。
契約書作成の費用相場
ゼロから契約書を作成してもらう場合の費用相場は、5万円〜10万円程度が目安となります。こちらは、当事者から取引の内容を詳しくヒアリングし、その内容に即したオリジナルの契約書をオーダーメイドで作成する作業です。チェック(レビュー)よりも工数がかかるため、費用は高くなります。業務委託契約書のような定型的なものであれば比較的安価に、内容が複雑なものであれば高額になる傾向があります。
行政書士への依頼費用を左右する要因
費用は主に以下の要因によって変動します。
- 契約書の複雑さ・専門性
IT関連や知的財産関連など専門性が高い契約書の場合は、提供する専門知識・責任範囲が広くなるため報酬が高く設定される場合が多いです。 - 契約書のボリューム
ページ数や条項数が多いほど、確認に時間がかかるため費用が上がります。 - 納期
特急対応など、短い納期を希望する場合は追加料金が発生することがあります。 - 行政書士事務所の方針
料金体系は事務所によって様々です。実績や経験豊富な行政書士は、料金設定が高めの場合もあります。
リーガルチェックを依頼する行政書士の選び方
数ある行政書士事務所の中から、自社に合った信頼できるパートナーを見つけるためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
契約書業務に関する実績が豊富か
行政書士の業務範囲は非常に広いため、すべての行政書士が契約書業務に精通しているわけではありません。ウェブサイトなどで、契約書作成やリーガルチェックに関する実績が豊富かどうかを確認しましょう。「契約書専門」「予防法務特化」などを掲げている事務所は、専門性が高いと考えられます。過去に取り扱った契約書の種類や、具体的なサポート事例が掲載されていれば、より判断しやすくなります。
コミュニケーションが円滑か
リーガルチェックは、単に法律的な正しさを確認するだけではありません。自社がどのような取引を望んでいるのか、どのようなリスクを避けたいのかといったビジネス上の要望を正確に汲み取ってもらう必要があります。そのため、相談しやすく、専門用語を使わずに分かりやすく説明してくれる行政書士を選ぶことが大切です。初回の相談などで、コミュニケーションの相性を確認しましょう。
見積もりや業務範囲が明確か
依頼する前に、必ず見積もりを依頼しましょう。その際、提示された金額にどこまでの業務が含まれているのか(修正案の提示、修正作業、相手方への説明資料作成など)を明確に確認することがトラブル防止に繋がります。複数の事務所から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することをおすすめします。
信頼できるパートナーとして行政書士を活用しましょう
行政書士へのリーガルチェック依頼は、紛争性のない平時における予防法務として非常に有効な手段です。弁護士に依頼するよりも費用を抑えつつ、契約書に潜むリスクを洗い出し、安全な取引の実現を目指すことができます。
ただし、行政書士には非弁行為の制限があり、紛争解決に関わる業務は行えません。この点を正しく理解し、自社の状況に合わせて行政書士、弁護士、司法書士といった専門家を適切に選択することが重要です。
本記事で解説した費用相場や選び方のポイントを参考に、信頼できるパートナーを見つけ、安心して事業を推進できる契約体制を構築してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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