- 作成日 : 2024年12月3日
契約自由の原則とは?4つの自由や例外について簡単に解説
「契約自由の原則」は、個人が契約を結ぶ際、国家など他者からの干渉を受けず、自分の意思で自由に行えるとする基本原則です。私たちが結ぶさまざまな契約の根底には、契約自由の原則が適用されています。
本記事では、契約自由の原則について、定義や具体例について解説します。関係する民法の条文や、原則に対する例外、注意点についても解説するので参考にしてください。
目次
契約自由の原則とは?
契約自由の原則とは、個人が契約を結ぶ際は、誰とどのような内容の契約を結ぶかを自由に決められることをいいます。「私的自治の原則」とも呼ばれ、個人間の契約については国家が干渉してはならず、個人の意思を尊重すべきであるとの考えに基づきます。
契約自由の原則における「契約」とは、当事者双方が表に示した意思が合致することで成立する約束のことです。例えば、コンビニエンスストアで飲み物を買う、友人に本を借りる、企業に就職する、銀行から融資を受けるなど、普段の生活のさまざまな場面で人は契約を交わして暮らしています。
お店で好きな物を買えるのも、条件に納得して物件を借りられるのも、契約自由の原則が根底にあるからです。
一方で、契約自由の原則には一部例外もあります。例外については後半の章で詳しく説明します。
契約自由の原則と民法の条文との関係は?
契約自由の原則は、民法第521条に根拠条文があります。同条は第1項で「何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる」と契約締結の自由を定め、第2項で「契約の当事者は、法令の範囲内において、契約の内容を自由に決定することができる」と定めています。
民法第521条は、平成29年の民法(債権関係)改正により新設された規定です。契約の大原則ともいえる契約自由の原則について、それまでは民法に明文の規定がありませんでした。しかし、契約における大切な原則は条文に明記した方が良いとの考えから、改正民法で新設されるに至ったのです。
なお、民法第522条1項では「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示に対して相手方が承諾をしたときに成立する」と定めています。つまり、いくら契約自由の原則があるとはいえ、契約は当事者同士が互いの意思表示を承諾しなければ成立しないことには注意が必要です。
契約自由の原則における4つの自由とは?
民法第521条および第522条の規定からは、「契約自由の原則における4つの自由」を導くことができます。以下では、この4つの自由について1つずつ解説します。
締結の自由
「締結の自由」は、契約を締結すること自体の自由を指します。
例えば、「スーパーでお弁当が1個500円で売られている」「賃貸マンションが月8万円の家賃で借りられる」など、日常生活にはさまざまな条件が提示されていますが、これらに納得して契約するかどうかは個人の自由です。当然ながら、「買わない」「借りない」など、契約をしない自由も認められます。
相手方選択の自由
「相手方選択の自由」は、契約を結ぶ相手を選ぶ自由のことです。
例えば、欲しい物がある時にどの店で買うか、誰に借りるかを自由に選べます。また、物を誰に売るか、プレゼントを誰に贈るかなどを選ぶのも自由です。
この場合の「相手方」とは、個人だけでなく、企業や団体なども含まれます。
内容の自由
「内容の自由」は、契約の内容について自由に決められること・選べることを指します。
例えば、「ある商品を1000円で売る/買う」「あるサービスを1万円で提供する/受ける」など、契約にはさまざまな内容が存在します。どのような内容で契約を結ぶかは、当事者双方が自分で選択します。複数あるサービスの中から、自分の求める条件に合致するサービスを選んで契約を結ぶのも、内容の自由の1つです。
方式の自由
「方式の自由」は、契約を結ぶ時の方法について自由に決められることを指します。
例えば、口約束だけで契約できるとするのか、契約書や覚書を交わすのかなどについて決定できる自由です。また、商品の引き渡し日時と場所を指定し、代金と引き換えに受け取るようにするなども方式の自由に含まれます。
契約自由の原則の例外とは?
契約における大切な原則である「契約自由の原則」ですが、例外もあります。どのような契約の場合でも自由を認めてしまうと、例えば大企業と個人消費者など当事者間のパワーバランスがあるケースなどでは、一方に大きな不利益が生じる恐れがあります。そうした不利益を防止するために、契約自由の原則は例外を認めているのです。
以下では、2つの例外について解説します。
公序良俗
「公序良俗」とは、「公共の秩序や善良な風俗」を意味し、社会一般で通用している常識やルールを指します。
この公序良俗に反する契約は、無効となります。なぜなら、社会的な常識やルールを逸脱するような内容・方式の契約は、当事者あるいは第三者の権利を侵害する恐れがあるからです。
公序良俗違反の例としては、「金銭を支払うことを約束して犯罪行為を依頼する」「不倫関係を維持するために金銭や物品を与える」「相手の無知に乗じて不当な利益を得ようとする」などが挙げられます。こうした内容の契約は公序良俗に違反し、無効となります。
強行法規・強行規定
「強行法規・強行規定」とは、契約当事者の意思は尊重されるものの、社会通念上、その目的に反する場合は契約内容が無効になる、とする規定をいいます。
例えば、民法第5条では未成年者がした法律行為の取消を認めています。これは、未成年者を保護するために定められた強行規定です。
また、消費者契約法では消費者を保護するためにクーリングオフ制度を定めています。エステや英会話教室などの契約において、締結段階では消費者本人の自由意思で締結したとはいえないケースがあるためです。例えば「契約を結ぶまで帰してくれなかった」「スタッフの説明でなんとなく契約に誘導されたが、よく考えると自分には必要ない」といったケースがあります。
そのような場合のために、当事者の真の意思に基づかない契約をクーリングオフできるよう法律が定められているのです。
契約自由の原則による契約締結時の注意点は?
契約自由の原則は、当事者の意思を尊重し、日々の生活の中で個人が自由に選択しながら生きていくために、非常に重要な考え方です。
一方で、個人の好き勝手な内容や方式の契約で当事者の一方または第三者にとって著しい不利益が生じかねない場合であっても、法律で無効とされるものでない限り、有効に成立してしまうことには注意が必要です。
著しい不利益や権利侵害が生じた場合、当事者間でトラブルとなり、訴訟に発展する恐れもあります。無用なトラブルを防ぐためにも、契約の内容や方式は当事者間でよく納得の上、契約を締結することが重要です。
契約自由の原則は豊かな社会生活の大前提
「契約自由の原則」は、人々が国家権力に干渉を受けず、自由に生活するために必要不可欠な原則です。私たちが日々、自分の意思に従って物を買ったり、借りたり、サービスを受けたりできるのは、契約自由の原則が根底にあるからです。契約自由の原則は、人々が豊かな社会生活を送るための大前提といえるでしょう。
一方で、当事者や他人の権利を著しく侵害する恐れのある契約については、無効や取消になるなどの例外も認められています。契約を締結する際は、自身や相手方、第三者の利益にも配慮しつつ、適切な内容・方式を決めるようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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