- 更新日 : 2024年12月3日
重要事項説明書の記載事項とは?確認用チェックリストと保管方法を解説
重要事項説明書とは、一般的に宅建業者が介在する不動産取引において作成される、契約上の重要事項が取りまとめられた文書のことです。土地の売買など重大な契約においてより的確な判断ができるように交付されるものですが、それでも見方に戸惑うこともあるでしょう。
そんな方に向けて、各記載事項の説明、チェックしておきたいポイントなどをまとめました。
目次
重要事項説明書とは?
重要事項説明書とは、不動産の売買や賃貸における契約締結の判断を助けるため、特に重要な情報をまとめた文書のことです。
不動産に関しては取引金額も大きい傾向にあり、ちょっとした判断ミスでも大きな損失へとつながってしまいます。しかし専門的な知識を持ち合わせていないと調査は難しいですし、買主や借主が適切な判断を下すのも容易ではありません。
このような事情を踏まえ、宅地建物取引業法では宅建業者による媒介・代理が入る取引では宅建業者が重要事項について説明をするものと定めており、その際重要事項説明書が交付されます。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ45選
業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い45個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
実際の契約に合わせてカスタマイズしていただきながら、ご利用くださいませ。
【弁護士監修】チェックリスト付き 改正下請法 1から簡単解説ガイド
下請法の改正内容を基礎からわかりやすく解説した「改正下請法 1から簡単解説ガイド」をご用意しました。
本資料では、2025年改正の背景や主要ポイントを、弁護士監修のもと図解や具体例を交えて解説しています。さらに、委託事業者・受託事業者それぞれのチェックリストを収録しており、実務対応の抜け漏れを防ぐことができます。
2026年1月の施行に向けて、社内説明や取引先対応の準備に役立つ情報がギュッと詰まった1冊です。
弁護士監修で分かりやすい! 契約書の作り方・書き方の教科書
弁護士の南陽輔氏(一歩法律事務所所属)が監修している「契約書の作り方・書き方の教科書」ガイドです。
契約書作成の基本知識、作成の流れ・記載項目、作成時の注意点・論点が、分かりやすくまとまっています。手元に置ける保存版としてぜひご活用ください。
自社の利益を守るための16項目 契約書レビューのチェックポイント
契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
契約書のレビューを行う企業法務担当者や中小企業経営者の方にもご活用いただけます。
契約書との違い
重要事項説明書には契約内容も記載されますが、契約書と同じではありません。
まず、契約書は「売主と買主(または貸主と借主)双方の合意により作成する」ものであって、「契約内容を明確化して当事者間の権利義務を客観的にも示せるようにすることが目的」の文書です。
他方で重要事項説明書は「宅地建物取引士が作成する」ものであって、「買主(または借主)が契約に関する判断をするための基礎となる、重要な情報を提供することが目的」の文書です。
また、契約書は契約締結時に作成するものですが、重要事項説明書は契約締結前に作成されます。
重要事項説明書の記載事項
重要事項説明書に記載する情報は、大きく3つに分けることができます。
- 取引する宅地・建物に関する事項
- 取引条件に関する事項
- その他の重要事項
それぞれの記載事項に該当する重要な情報について以下で説明していきます。
取引する宅地・建物に関する事項
まずは取引する宅地や建物そのものに関する情報について紹介します。
| 取引の対象となる物件に直接関係する事項 | |
|---|---|
| 不動産の表示 | 土地の場合、所在や地番、地目、地積、土地の売買対象面積(登記簿面積によるのか、実測面積によるのか、についても)、そして権利の種類(所有権、借地権など)が記される。 |
| 建物の場合、所在や家屋番号、種類、構造、床面積(登記簿上のものか、現況か、についても)、そして建築時期なども記される。 | |
| 売主の表示 | 売主の氏名および住所。また、これらの情報が登記簿記載と同じなのか、異なるのか。 売買契約締結時において第三者による占有があるのかどうかについても記載。 |
| 法令に基づく制限 | 不動産についてはその建築や利用に関して制限をかける法律も多数あり、都市計画法に基づき「市街化調整区域」と定められていたり、建築基準法に基づき建築できる建物の種類が制限されていたり、その他都市計画法や土地区画整理法に基づいて制限がかかっているケースもある。 |
| 私道に関する負担 | 前面の道路が私道である時、使用制限について確認すべき。 |
| ライフライン設備の状況 | 飲用水、電気、ガス、排水に関する設備の状況、今後の整備予定やその時の負担金が記載される。 |
| 宅地造成・建物建築の工事完了時における形状・構造等 | 物件が未完成または新規物件の時に記載される。 |
| 建物状況調査の結果の概要 | 「建物状況調査」が行われた時に記載される。 |
| 書類の保存状況 | 建物の建築、維持保全の状況などに関する各種書類について、保存の有無が記載される。 |
| 建築確認済証等について | 建築確認済証の発行年月日や番号が記載される。 |
| 住宅性能評価について | 住宅性能評価を受けた新築住宅に該当する場合に記載される。 |
| 災害等に係る情報 | アスベストの使用の有無や、当該宅地建物が造成宅地防災区域内・土砂災害警戒区域内・津波災害警戒区域内かどうか。また、水害ハザードマップにおける当該宅地建物の所在地について記載される。 |
また、マンション(区分所有建物)の場合であれば、共有部分の範囲や使用方法、専有部分の用途、修繕積立金や管理費に関する規定の定めなども記載されます。
取引条件に関する事項
次に、物件自体ではなく、当該物件に係る取引についての記載事項を紹介します。
| 取引条件に関する事項 | |
|---|---|
| 売買代金等以外の金銭について | 売買代金以外にかかる金銭には、固定資産税や都市計画税の精算金、マンション管理費、修繕積立金の精算金、手付金などがある。 ※第三者へ支払う仲介手数料や登記費用などは記載されない。 |
| 契約の解除について | 契約を締結したあとでも解除ができる条件について記載される。 |
| 損害賠償額の違約金等について | 契約違反等を理由に損害を被った場合の賠償額について記される。 |
| 預り金等の保全措置について | 宅建業者が受領する金銭について、保全措置を講じるかどうかについて記載。講じる場合は保全措置を講じる機関などを記す。 |
| 契約不適合責任について | 契約不適合責任の履行に関して、保険契約など何かしらの措置を講じるかどうかが記載。 また、借地権付建物や定期借地権付建物については契約不適合による修補請求についても記載される。 |
| 割賦販売について | 割賦販売の有無が記載される。 |
その他の重要事項
基本的には物件の情報や取引に関する情報が重要事項説明書に取りまとめられます。
ほかにも相手方に伝えるべき重要事項がある時は、トラブル防止の観点から記載がなされることもあります。例えば重大な事件に基づく心理的な瑕疵であったり、近隣の建築計画のことであったり、ほかにも隣地との紛争のことや町内会での取り決めなど、重要と考えられる事項も別途記載されます。
重要事項説明書の売買・賃借の記載事項の違い
うえに示した内容は不動産の“売買”を行う場合の重要事項説明書についてです。“賃貸”を行う場合でも多くの項目は共通していますが、相違点もあります。
例えば、建物の「住宅性能評価」に関しては建物の売買だと記載事項とされていますが、建物の賃貸であれば必須ではありません。その他にも土地や建物の賃貸において記載が不要とされる事項に以下のものが挙げられます。
- 手付金等の保全措置の概要
- ローンの斡旋に関する事項
- 契約不適合責任の履行に関する事項
- 割賦販売に係る事項
一方で、賃貸の場合に記載が必要となる事項もあります。
- 宅地の賃貸では記載が必要な事項
- 定期借地権について
- 契約終了時の建物の取り壊しについて
- 建物の賃貸では記載が必要な事項
- 台所や浴室、便所等の整備状況について
- 定期建物賃貸借である場合はその旨
また、「契約期間や契約更新」に関する事項や、敷金など契約終了時の金銭のことなども賃貸を行う時の重要事項説明書に記載されることとなります。
重要事項説明書の記載事項のチェックポイント
記載内容のチェック漏れなどが原因で後々トラブルに発展する可能性もありますので、特に以下の点についてはよく確認しておくようにしてください。
| チェック項目 | 意識するポイント |
|---|---|
| 物件の確認 | 登記簿謄本と照らし合わせて、地番、家屋番号、床面積などが正しいかを確認する。 |
| 売主の確認 | 売主と登記記録上の名義人が同一人物であるかを確認。 売主と名義人が異なる場合は、売主が現在の所有者であることを確認。 |
| 抵当権の有無 | 抵当権が設定されている場合、債権者、債権額、抵当権抹消の時期を確認。 |
| 法令上の制限 | 市街化調整区域に該当していないか、都市計画道路による制限がないか、用途地域が定められていないか、などを確認。 それぞれ、開発行為の制限や増改築等の制限、建築できる建物の種別や用途が制限されることがある。 |
| その他 | 隣地との境界、私道の負担、水道や排水設備の状況などの確認や、付帯設備(エアコン、照明器具など)の有無や物件の現状(雨漏り、シロアリ被害など)を確認しておく。 |
ほかにも重要事項説明の内容について不明な点があるなら解消してから契約に進むことが大切です。
重要事項説明書が不要なケース
重要事項説明書はあらゆる不動産取引で交付されるものではありません。
例えば「仲介を入れず直接不動産の売買や賃貸借を行うケース」では宅建業者が介在していないため重要事項の説明も重要事項説明書もありません。
また、「宅建業者自身が不動産の賃貸人となるケース」でも重要事項説明書の交付義務は課されていません。交付が求められるのは宅建業者が取引を媒介したり代理したりする場面だからです。
重要事項説明書の保管、電子保管のポイント
不動産取引により重要事項説明書を受け取った時は、一定期間大事に保管します。書面で受け取った場合、保管方法に決まりはありませんが、不動産の賃貸借を行うなど税務関連書類として保管をする時は契約書とともに当該契約に係る最後の税務申告の期限から10年間は保存しておきましょう。
なお、重要事項説明書は電子データとして受け取ることもあります。従来は書面(紙)での交付が義務とされていたのですが、法改正により重要事項説明および重要事項説明書の交付についてデジタル化が認められています(電子契約に基づく重要事項説明は「IT重説」とも呼ばれる)。
電子データとして受け取った重要事項説明書は紙に出力せず、文書管理システムなどを使って保管しましょう。システム上で管理しておけば検索をかけてすぐに閲覧することができますし、アクセス権限を設定するなどして安全に保管し続けることもできます。
契約前に重要事項説明書の内容はよくチェックしておこう
重要事項説明書には多岐にわたる情報がまとめられています。情報量が多く、また専門的な内容でもあるため、すべてを確認していくのは大変な作業になるかもしれません。
それでも、取引金額の大きな不動産取引は安易に交わすべきではありません。特に重要と思われる事項がここに記載されていますので、当記事で解説した内容も参考にしながらチェックを進めていきましょう。
わからない点がある時はどんどん宅建業者に質問すべきです。宅建業者には説明義務がありますので、不安要素がなくなるまで確認していくことをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
同意書とは? 無料テンプレート・雛形をもとに書き方や例文、注意点などを解説
同意書とは、特定の行為や条件に当事者が同意した事実を明文化するための書類です。 契約書との違いや法的効力、2部作成の必要性、英語での表記方法など、作成にあたって疑問を抱く方も少なくありません。本記事では、個人・法人を問わず使える同意書の無料…
詳しくみる契約書を訂正する方法は?法的に有効な加筆方法や覚書を用いるケースを解説
契約後に契約書の訂正・加筆・削除が必要になったときは、法的に有効な方法で実施することが必要です。また、訂正・加筆・削除の内容や量によっては、元の契約書はそのままに覚書や合意書を作成するほうが適切なこともあります。 この記事では法的に有効な訂…
詳しくみる総数引受契約書とは?雛形を基に記載事項や注意点を解説
「事業経営で工場建設や海外進出を考えているが、資金調達で悩んでいる」という経営者は少なくないでしょう。 金融機関からの借入とは異なり、負債を伴わない株式会社の新株発行は魅力ある選択肢です。 今回は、その中でもメリットが大きい総数引受契約につ…
詳しくみる業務委託契約とは?種類や締結の流れをわかりやすく解説【テンプレートつき】
業務委託契約とは、外部の個人や企業に業務を依頼する契約形態です。一般的に業務委託契約は「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3つに分けられます。 本記事では、業務委託の契約形態の違いや契約書作成のポイント、業務委託をする際の注意点など、業…
詳しくみるテープなしで契約書を製本するには?準備と手順を解説
契約書は、企業活動や個人の権利義務関係を定める上で極めて重要な書類です。そのため、内容の正確性はもちろん、不正な変更が加えられていないこと、正当な権限者によって作成されたことを担保する必要があります。契約書の「製本」は、これらの要素を物理的…
詳しくみる取締役会の報告事項とは?決議事項との違いや報告義務を怠った場合のリスクまで解説
取締役会の「報告事項」について、その目的や「決議事項」との違いが分からずお困りではありませんか?この記事では、取締役会における報告事項の基本的な意味から、会社法で定められた具体的な内容、そして報告義務を怠った場合に取締役が負うリスクまでを網…
詳しくみる


