- 作成日 : 2024年12月3日
長期署名とは?電子署名の有効期限を10年以上延長する方法を解説
長期署名とは電子契約・電子署名を適切に長期間管理するために、タイムスタンプを付与して有効期間を延長する仕組みのことです。この記事では長期署名の基本情報、利用方法、注意点などについてご説明します。
目次
長期署名とは?
長期署名とは、電子契約や電子文書の有効性を長期間にわたり証明できるようにするシステムです。長期署名の標準規格としては、以下の3つがあります。
XAdES:XML言語がベースの電子署名
CAdES:CMS(暗号メッセージ構文)形式に対応している電子署名
PAdES:PDF形式のファイルに対応した電子署名形式
各規格については、記事終盤で詳しくご紹介します。
電子署名は通常、発行時の証明書によって署名者の認証を行いますが、証明書の有効期限が切れると署名の信頼性も低下してしまいます。長期署名では信頼性を維持するためにタイムスタンプを付与し、証明書の有効期限を過ぎても署名が改ざんされていないことを確認できるようになります。
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電子署名の有効期限が過ぎたらどうなる?
一般的な電子署名の有効期限は2~3年、最長でも5年間です。有効期限が切れると署名の信頼性が失われ、法的効力が不安定になるリスクが生じます。そのため、有効期限の確認は非常に重要です。
契約の有効性の失効
電子署名の有効期限が切れると、CRL/OCSP (失効情報)が提供されず、署名が有効であるか否かが正しく検証できなくなるので署名自体の信頼性が失われます。
法的に有効であるためには署名が有効な証明書で行われている必要がありますが、有効期限が過ぎると契約の真正性や当初の証明が失われる可能性があります。その結果、契約内容を証明する力が弱まり、万が一の法的紛争の際には契約が無効と見なされることもあります。
特に長期間の取引や重要な文書の保存が求められる場合は、タイムスタンプ付きの長期署名を用いる必要があります。
セキュリティリスクの増加
電子署名の有効期限が切れた文書は不正や改ざんのリスクが高まります。期限内の電子署名は認証局が発行した証明書により真正性が保証されていますが、有効期限切れの署名にはこの保護がなくなります。
証明書が期限切れとなると署名の改ざん防止機能が低下するため、不正アクセスや偽造の危険が増加し、契約の安全性が脅かされてしまいます。
セキュリティ維持の観点からも、重要な文書には長期署名やタイムスタンプを付与した方がよいでしょう。
電子署名の有効期限の確認方法
電子署名の有効期限を確認するには署名情報や証明書の詳細を参照しましょう。多くの電子署名ツールでは有効期限が表示される機能が搭載されており、署名された文書に添付されている証明書の有効期間を簡単に確認できます。定期的に証明書を更新し、有効期限の管理を行いましょう。
電子契約システムを利用している場合、アラート機能で有効期限が近づいた際にデバイスに通知が表示されるので、期限切れのリスクを未然に防ぐことができます。
長期署名が必要になる契約書の種類
長期署名が求められるのは7年や10年といった長期保管が求められるケースです。特に法令で定められた保管期間を満たすために、契約書の信頼性を保つ長期署名が推奨されます。
7年間保管の必要がある契約書
7年間の保管が求められる書類には、税務関連の書類や会計帳簿などが挙げられます。
例えば売上帳、仕入帳、貸借対照表、損益計算書などが該当し、これらの書類は企業の経営状況を証明するために重要な役割を果たします。
国税関係の書類は7年間の保管義務があるため、電子化して管理する場合は信頼性を担保するため通常の電子署名ではなく長期署名が適用されることが望ましいでしょう。
10年間保管の必要がある契約書
10年間の保管が必要とされる契約書には、建設業関連の契約書や重要な取引契約書が含まれます。例えば、建設工事請負契約書や工事完了証明書などの契約書や書類は法的に10年間の保管が義務付けられています。このような長期保管が必要な契約書においても、電子化する場合は長期署名の付与が求められます。
長期署名を付与することで契約締結から長期間経過していても改ざんされていないことが証明できるため、長期間にわたって契約の信頼性が確保されます。
長期署名を10年以上延長する方法
長期署名を10年以上延長するためにはタイムスタンプを再付与する方法が一般的によく用いられます。タイムスタンプとは電子署名をした日時などが記録された情報のことで、日本データ通信協会の認定を受けた業者のみ付与が認められています。
一般的にタイムスタンプには最長10年間の有効期間がありますが、10年以上長期署名の有効性を保ちたい場合は「保管タイムスタンプ」や「アーカイブタイムスタンプ」と呼ばれる専用のタイムスタンプを使用しましょう。保管用のタイムスタンプは付与するたびに有効期間が延長できるので、10年、20年、30年とかなり長いスパンで管理が必要な書類にも利用できます。
長期署名を行う手順
長期署名を行うためには電子署名ができる形態で契約を締結し、電子署名・タイムスタンプの付与をします。ここからはその詳細な手順をご紹介します。
電子文書の準備
対象となる契約書や文書の内容を電子化するか、電子契約ツールで契約書を作成し、電子署名が付与できる形式に整えます。
電子署名の付与
信頼性のある電子証明書を使用して電子署名を行います。署名時点の内容が証明され、改ざんされていないことが最長5年間保証されます(有効期限は使用するツールなどによって異なります)。
タイムスタンプの付与
電子署名後、第三者のタイムスタンプサービスを使用して、署名時点の日時を証明・記録します。タイムスタンプを付与することで最長10年間、またそれ以降も契約書や書類の署名の有効期限内に定期的に更新されることで、長期間にわたる署名の有効性を維持します。
タイムスタンプの更新
保管期間が10年以上の長期間にわたる場合、有効期限が近づいたら以前使用したタイムスタンプまたは新たな保管用タイムスタンプを付与します。電子署名の有効期限を再度延長し、文書の信頼性を長期間保つことができます。
長期署名の更新はできるか
長期署名の更新は可能です。更新の手順はタイムスタンプの再付与をするだけです。保管用のタイムスタンプにはタイムスタンプの失効情報・電子証明書の情報など検証に必要なデータが含まれており、付与することで電子署名の有効期限を延長できます。
長期的な証明が必要な電子契約書や重要書類は、電子署名の有効期限が切れる前に定期的にタイムスタンプを再付与すれば文書の信頼性と法的効力が保持され、長期保管が可能となります。ただし、有効期限が切れてしまった後の期間延長はできないので、必ず有効期限内に更新を行いましょう。
長期署名の国際規格
長期署名においては、電子署名の信頼性と有効性を長期間維持するため、国際規格が設けられています。代表的な国際規格には「CAdES」「XAdES」「PAdES」があり、それぞれ異なる用途や特徴があります。
| 規格名 | 規格名の例 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| CAdES (CMS Advanced Electronic Signatures) |
| 電子メールやファイルの署名を対象とし、署名の信頼性を長期間保持 | 電子メール、ファイル署名 |
| XAdES (XML Advanced Electronic Signatures) |
| XML形式の文書に対応し、電子署名を付与可能 | 電子契約書、XML文書 |
| PAdES (PDF Advanced Electronic Signatures) | PAdES ESTI TS 102 778 | PDF形式の文書に適した署名規格で、PDFファイルに長期署名を付与可能 | 電子契約書、PDF文書 |
規格によって適したファイル形式があるので、契約書のフォーマットや希望する署名検証の環境に合わせて選びましょう。
長期署名を行う際の注意点
長期署名を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。以下のような事柄を念頭に置いておきましょう
有効期限内にタイムスタンプを更新する
まず、有効期限が切れないように定期的にタイムスタンプを更新することが必要です。長期的に保存する文書は電子署名の有効期限を過ぎると法的効力が失われる可能性があるため、適切なタイミングで更新し、証明力を維持しましょう。
信用できるサービスを使う
利用する電子署名サービスやタイムスタンプの信頼性にも注意が必要です。信頼性の高い認証機関の電子証明書を使用し、最新の国際規格(CAdES、XAdES、PAdESなど)に準拠した形式で署名を行うことで書類の信頼性・法的有効性が長期間にわたり確保されます。
保存環境を整える
保存環境やバックアップの管理も重要です。電子文書の劣化や破損、セキュリティリスクに備え、安全なストレージと定期的なバックアップが推奨されます。これらの対策を講じることで、長期署名による信頼性を保ちながら、重要な文書の保管が可能になります。
マネーフォワード クラウド契約は10年間の長期署名を付与できる
マネーフォワードクラウド契約であれば通常の電子署名はもちろん、最長10年の長期署名も付与可能です。最高レベルのセキュリティ対策を施しており、改ざんやなりすましのリスクを極限にまで軽減。紙の契約書も電子契約書も一元管理が可能で、後から目的の書類を検索しやすいUIを実現。最短数分で、いつでも・どこでも契約を締結できるから、業務効率が大幅に向上します。
無料のトライアルもご用意しておりますので、ぜひ使い勝手をお試しください。
長期署名を利用して長期契約に備えよう
長期署名は電子署名の有効性を延長できる仕組みで、電子署名だけでなくタイムスタンプを併用することで一般的な電子署名よりも長い期間署名の有効性を担保できます。より長い期間有効性を保ちたい場合は、タイムスタンプの有効期限までに再度タイムスタンプを付与するだけでOKです。
ただ、本文でもご紹介したように、契約書のフォーマットによって適した国際規格が異なるため、信頼できるサービスを使用する必要がある点には注意が必要です。
今回解説した長期署名の仕組みや特徴が、長期契約や長期保存が必要な書類の管理に役立てば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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