- 更新日 : 2024年11月7日
保守契約書に印紙は不要?必要な場合や金額、どちらが負担するかを解説
保守契約書とは、ハードウェアやソフトウェアの販売・リースなどを行い、ベンダーとユーザーの双方に利益を確保するために交わす契約です。エレベーターやシステムなどの保守契約書には、委託業務の内容に応じて収入印紙を貼るべき場合があります。収入印紙なしで保守契約書を締結すると、追徴課税を受ける恐れがあるのでご注意ください。本記事では、保守契約書の収入印紙の要否・金額・貼る場所・消印(割印)の押し方・当事者のどちらが負担するかなどを解説します。
目次
保守契約書に印紙は必要?不要?
エレベーターやシステムなどの保守契約書に収入印紙を貼る必要があるかどうかは、保守業務の内容によって異なります。
保守業務が仕事の完成を内容とするものであれば、印紙税法上の第2号文書(請負に関する契約書)に当たるため、原則として収入印紙の貼付が必要です。
また、継続的に保守業務を行うことを前提とした基本契約である場合は、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に当たるため、原則として収入印紙の貼付が必要になります。個別契約において仕事の完成を内容とする保守業務を委託する場合は、個別契約にも第2号文書(請負に関する契約書)として収入印紙の貼付が必要です。
これに対して、保守業務が仕事の完成を内容とせず、かつ単発または契約期間が3カ月以内で更新の定めがない場合は、印紙税法上の課税文書に当たらないため収入印紙の貼付は不要です。
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保守契約書に印紙が必要なケース
例えば、以下のような保守契約書には収入印紙の貼付が必要となります。
(例)
- エレベーターの保守契約書
→エレベーターを常に安全に運転できるような状態に保ち、これに対して一定の料金を支払うことを約しているため、第2号文書(請負に関する契約書)に当たります。
- ソフトウェアの不具合の修正や補修作業を含むソフトウェアの保守契約書
→仕事の完成を約する業務が含まれているため、第2号文書(請負に関する契約書)に当たります。
- 継続的な保守業務の委託を前提として締結される基本契約書で、契約期間が3カ月を超え、または更新の定めがあるもの
→第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に当たります。
保守契約書に印紙税が必要な場合の金額
第2号文書に当たる保守契約書に貼付すべき収入印紙の金額は、下表の通り契約書記載の契約金額に応じて異なります。
| 契約金額 | 貼付すべき収入印紙の額 |
|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 400円 |
| 200万円を超え300万円以下 | 1,000円 |
| 300万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 |
| 1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
| 1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
| 5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
| 10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
| 50億円を超えるもの | 60万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 |
消費税および地方消費税の額(=消費税額等)を区分して記載している場合、または税込価格や税抜価格の記載によって消費税額等が明らかである場合には、税抜価格を契約金額とすることができます。
第7号文書に当たる保守契約書に貼付すべき収入印紙の金額は、4,000円です。ただし、契約期間が3カ月以内で、更新の定めがない場合は収入印紙を貼る必要がありません。
保守契約書の原本を2通作成する場合は、各原本に収入印紙を貼る必要があります。
これに対して、原本を1通だけ作成して一方当事者が保管し、相手方当事者は原本の写しを単なる控えとして保管する場合は、原本だけに収入印紙を貼れば足ります。ただし、署名押印があるなど、契約の成立を証明する目的で作成された文書に関しては課税文書となるため注意が必要です。
保守契約書の印紙税はどちらが負担するか
保守契約書にかかる印紙税は、その作成者が納税義務を負うことになります。しかし、どちらの当事者が印紙税を負担しても問題ありません。契約書において、印紙税を負担する当事者を定めておきましょう。
保守契約書の印紙の貼り方、消印の押し方
保守契約書に収入印紙を貼る場所はどこでも構いませんが、契約書の表紙や冒頭に貼るのが一般的です。後に税務調査を受けることを想定すると、すぐわかる場所に収入印紙を貼っておくことが望ましいでしょう。
保守契約書に貼付した収入印紙は、以下のいずれかの方法によって消す必要があります(印紙税法第8条2項、印紙税法施行令第5条)。
- 消印
自己またはその代理人(法人の代表者を含む)、使用人その他の従業者の印章を、契約書と印紙の彩紋にかけて判明に押します。用いる印章の種類は問われません。
- 署名
自己またはその代理人(法人の代表者を含む)、使用人その他の従業者の署名を、契約書と印紙の彩紋にかけて判明に記載します。

印鑑が収入印紙の彩紋にかかっていないと、消印として認められません。署名は氏名を記載して行う必要があり、それ以外の文字(「印」など)を記載することはできません。正しい方法で収入印紙に消印または署名を行いましょう。
保守契約書への割印の押し方
保守契約書の原本と写しを作成するときは、割印を押すのが一般的です(原本を2通以上作成する場合も、割印を押すことがあります)。割印には、2つの文書の内容が同一であることや、両者が関連していることを示す意味があります。
割印を押す際には、まず保守契約書の原本と写しを少しずらして重ね合わせましょう。そして、重なった部分にまたがるように印章を押します。原本と写しの印影を合わせると1つの印鑑になっていればOKです。

割印に用いる印章の種類は何でも構いませんが、契約書への調印に用いるものと同じ印章を用いるケースが大半です。
保守契約書に貼るべき印紙を貼らないとどうなる?
保守契約書に貼るべき収入印紙を貼らなくても、契約自体は原則として有効ですが、過怠税や刑事罰の対象となるので要注意です。
契約書に収入印紙を貼らなかった場合のリスクについては、以下の記事も併せてご参照ください。
契約内容は無効にならない
課税文書である保守契約書に収入印紙を貼付しないと印紙税法違反に当たりますが、契約の有効性には影響をおよぼしません。収入印紙の有無に関わらず、契約書の締結によって当事者間の合意が成立すると考えられるからです。
従って、収入印紙を貼っていない保守契約書も、他に無効事由や取消事由がなければ有効なものとして取り扱われます。
過怠税や刑事罰のリスクがある
課税文書である保守契約書に収入印紙を貼らず、または収入印紙への消印(もしくは署名)を怠ったときは、本税とは別に以下の金額の過怠税が課されます(印紙税法第20条)。
①賦課決定を予知せず、自ら印紙税の不納付を申し出た場合
→本税額の10%
②①を除き、課税文書の作成時までに印紙税を納付しなかった場合
→本税額の2倍
③収入印紙への消印(または署名)を怠った場合
→本税額と同額
※過怠税の合計額が1,000円に満たないときは、1,000円の過怠税が課されます。
また、収入印紙の貼付や消印(または署名)を怠ると、悪質な場合は刑事罰を受ける恐れがあるので十分ご注意ください(印紙税法第21~23条)。
保守契約書の無料ひな形・テンプレート
保守契約書のテンプレートは、以下のページからダウンロードできます。実際に保守契約書を作成・締結する際の参考にしてください。
また、保守契約書の内容や注意点などは以下の記事で解説しているので、併せてご参照ください。
電子契約なら保守契約書の印紙は不要に
書面(紙)で作成する場合は課税文書となる保守契約書も、電子契約で締結する場合には、収入印紙の貼付は不要です。
印紙税の納税義務は、課税文書を作成した場合に生じます(印紙税法第3条)。課税文書である契約書の「作成」とは、書面(紙)を相手方に交付する行為を指します。
電子契約を締結しても、相手方に対して書面(紙)を交付することはありません。従って電子契約の締結は、課税文書の「作成」に当たらないと解されています。
よって、保守契約書を電子契約で締結する際には、印紙税の納付は不要です。
また保守契約書に限らず、その他の課税文書(不動産売買契約書・請負契約書・業務委託基本契約書など)も、電子契約で締結する場合は収入印紙の貼付が不要となります。印紙税を節約したい企業は、電子契約の導入をご検討ください。
電子契約に収入印紙を貼付する必要がない理由については、以下の記事をご参照ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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