• 更新日 : 2026年9月17日

業務のボトルネックはどう解消する?原因と手順を解説

Point業務のボトルネックはどこから手をつければ解消できる?

処理時間を測って、最も遅い工程を1つに絞り込むところから始めます。

  • 作業の流れを書き出して所要時間を記録する
  • 仕掛かりが溜まる場所を突き止める
  • 担当者に待ち時間の実感を聞き取る

ボトルネック以外を改善しても、全体の処理能力は変わりません。

業務のボトルネックは、処理能力が最も低い工程を1つ見つけ、そこに集中して手を入れて解決していきます。しかし、実際の現場では、目についた作業から改善に着手してしまうことで、思ったように効果が出ないケースが少なくありません。

この記事では、ボトルネックの見つけ方から解消の手順までをわかりやすく紹介します。

そもそもボトルネックとは?解消が欠かせない理由は?

ボトルネックとは、業務全体の流れを最も強く制限している工程のことです。ここが詰まっている限り、ほかの工程をどれだけ速くしても全体の処理量は増えません。まずは言葉の意味と、解消を後回しにできない理由を確認します。

瓶の首のように全体の流れを絞り込んでいる工程を指す

ボトルネックは、瓶(ボトル)の細くなった首(ネック)が中身の流れ出る量を決めてしまう様子になぞらえた言葉です。

ビジネスの場面では、一連の作業のなかで最も処理能力が低く、全体の停滞を招いている箇所を指します。「ネック」と略して呼ばれることもあります。

たとえば、申請書を作成するのに30分しかかからないのに、上長の承認待ちで3日間止まっているとします。この場合、作業そのものではなく承認のプロセスがボトルネックです。業務が人から人へ渡るつなぎ目に生まれやすいのが特徴になります。

全体の処理量はボトルネックの能力を超えて増えない

1日あたりの処理件数は、最も遅い工程の件数がそのまま全体の上限になります。

たとえば、ある製品の工程が次のようになっているとします。

  • 制作:1日20件
  • 検品:1日10件
  • 出荷:1日15件

この流れで1日に世に出せるのは10件です。制作の担当者が頑張って25件に増やしても、検品の手前に未処理の在庫が積み上がるだけで、出荷数は1件も増えません。改善に取り組んだのに成果が見えないという状況は、たいていこの構図で起きています。

放置すると納期の遅れと担当者の疲弊が同時に進む

詰まった工程には仕事が溜まり続けるため、納期の遅れと特定の担当者への負荷集中が同時に起こります。

後工程の従業員には手待ちの時間が生まれ、自分の仕事を早く終えても全体が進まないという状態が続きます。達成感を得にくく、職場全体の士気が下がっていきます。

一方でボトルネックを担う本人は、常に山積みの案件に追われ、残業が慢性化します。焦りから確認漏れや入力ミスが起きると、差し戻しでさらに時間を失うという悪循環に入ります。取引先への納品が遅れれば、信頼そのものを失いかねません。

IT分野では機器やシステムの性能の頭打ちを指す

同じ言葉が、CPUやネットワーク回線など、処理速度の上限を決めている部品を指して使われることもあります。

パソコンの動作が遅い原因を探る場面で「CPUがボトルネックになっている」といった言い方をします。高性能なグラフィックボードを積んでも、CPUが追いつかなければ全体の速度は上がりません。

考え方の骨格は業務の場合とまったく同じで、最も遅い箇所が全体の速さを決めます。この記事では、業務プロセスに現れるボトルネックを扱います。

業務のボトルネックはどこで起きやすい?

ボトルネックは、製造ラインのような特別な現場だけで起きるものではありません。承認や引き継ぎなど、仕事が人から人へ渡るつなぎ目に集中して現れます。バックオフィスでよく見られる場所を部門ごとに見ていきます。

経理では請求書処理と経費精算の承認待ちが滞りやすい

月末月初に処理が集中するうえ、承認者が出張や会議で席を外すと支払業務全体が止まります。

紙の伝票を回覧して押印を集める運用では、書類が今どこにあるのかを誰も把握できません。記入漏れで差し戻しになると、また最初から回覧をやり直すことになります。

締め日の直前に申請が一気に集まる点も、詰まりを大きくする要因です。日頃は余裕のある担当者でも、月に数日だけ処理が追いつかない状態になります。

人事・総務では入退社手続きの書類のやりとりが止まりやすい

入社日が決まっていても、本人から必要書類が揃わなければ社会保険や給与の登録に進めません。

マイナンバーの提出や扶養控除の申告書など、集めるべき書類は複数にわたります。誰の何が未提出なのかが一覧で見えていないと、催促そのものが手間になります。

さらに、貸与品の準備を情報システム部門、席の手配を総務が担うといったように、部署をまたいで作業が分かれている点も進行を遅らせます。

営業では見積の作成と社内承認の往復に時間がかかる

値引きの決裁が必要な案件などは、顧客へ提出できるまでの待ち時間が長くなる傾向にあります。

上長へ確認を依頼し、不在で返答が翌日になり、条件を直して再提出するという往復が発生します。商談の熱が冷めないうちに提示したくても、社内の手続きが足を引っ張る形です。

部門ごとに詰まりやすい場所を整理すると、次のようになります。

部門 詰まりやすい工程 主な原因
経理 請求書の承認・経費精算 承認者の不在、月末への集中
人事・総務 入退社手続き、書類回収 提出状況が見えない、部署間の分担
営業 見積作成、値引きの決裁 承認の往復、確認待ちの発生
情報システム 問い合わせ対応、権限申請 担当者への属人化、依頼の重複

ボトルネックはどうやって見つける?

解消の成否は、どの工程を選ぶかでほぼ決まります。「たぶんあそこが遅い」という感覚のまま手を動かすと、労力が空振りする可能性があります。記録した数字をもとに、1カ所へ絞り込む進め方を紹介します。

業務の流れを工程ごとに分けて書き出す

担当者が変わる場所と、承認や確認が入る場所で区切ると、工程の粒度がそろいます。

表計算ソフトや付箋を使い、着手から完了までを左から右へ並べます。細かく分けすぎる必要はありません。

この作業をすると、担当者の記憶だけで回っていた手順や、誰も必要性を説明できない確認作業が浮かび上がってきます。書き出す段階で改善の糸口が見つかることも珍しくありません。

工程ごとの処理件数と所要時間を記録する

測るのは「手を動かしていた時間」と「次の担当者へ渡すまでの待ち時間」の2種類です。

多くの職場では、後者のほうが圧倒的に長くなります。実作業は20分でも、机の上で2日間眠っているといった具合です。作業時間だけを見ていると、この待ち時間を見逃してしまいます。

月次の締め処理がある業務なら、繁忙期をまたぐように測ると実態に近づきます。

仕掛かりが溜まっている工程を探す

未処理の書類やタスクが積み上がっている工程がボトルネックの候補になります。

未承認の申請が何件残っているか、返信していない依頼メールが何通あるかを数えます。時間を測るより手軽で、目で見て判断できる点が利点です。

物理的な書類の山や、チャットで未読が続いている相手も手がかりになります。仕事が滞留している場所は、たいてい何らかの形で外から見えています。

担当者に待ち時間の実感を聞き取る

数字で候補を絞ったうえで現場の声を突き合わせると、原因の取り違えを防げます。

記録した数値には、たまたま発生した特殊な案件が紛れ込んでいることがあります。「先月の数字が大きいのは、あの1件だけの事情だった」といった補足は、本人にしかわかりません。

聞き方は「何に一番待たされていますか」と尋ねるのが有効です。担当者を責める場ではなく、流れの詰まりを一緒に探す場だと伝えたうえで進めます。

確認すべき項目をまとめると、次のとおりです。

確認する項目 見るもの ボトルネックの疑いがある状態
工程の分け方 業務フロー図 担当や承認の切れ目が書けていない
作業時間 工程ごとの実測値 1件あたりの時間が突出して長い
待ち時間 次工程へ渡るまでの日数 作業時間より待ち時間がはるかに長い
仕掛かり 未処理の件数 特定の工程の手前だけ積み上がる
現場の実感 担当者への聞き取り 同じ工程の名前が繰り返し挙がる

ボトルネックを解消する手順は?

ボトルネックの解消には、TOC(制約理論)という考え方が広く使われています。物理学者のエリヤフ・ゴールドラット博士が提唱したもので、全体の成果は最も弱い部分によって決まるという前提に立ちます。次の5段階を順に踏みます。

制約になっている工程を特定する

複数の候補が挙がっても、最初に手を入れるのは最も処理能力が低い1つだけに絞ります。

2カ所も3カ所も同時に着手すると、どの施策が効いたのか判断できなくなります。前章で記録した数値をもとに、順位をつけて1位から取りかかります。

いまある人員と設備のまま能力を引き出す

設備投資や増員を考える前に、その工程が止まっている時間をなくす工夫から始めます。

たとえば承認がボトルネックなら、承認者が資料を探す時間や、記入不備を確認する手間を周囲が肩代わりします。休憩の時間帯をほかの工程とずらし、稼働が途切れないようにする方法もあります。

この段階でできる改善は費用がかからず、翌週から試せるものがほとんどです。効果を確かめてから次に進みます。

ほかの工程のペースをボトルネックに合わせる

前工程が全力で作業しても、詰まっている手前に未処理の山ができるだけで成果は変わりません。

先ほどの例なら、検品が1日10件しか処理できないのに制作が20件つくっても、10件分は置き場所を占領するだけです。原材料費と保管の手間が先に出ていくぶん、かえって損失が膨らみます。

制作の稼働を10件に合わせ、空いた時間をほかの業務に振り向けるほうが合理的です。全体の速度を最も遅い工程にそろえる、という発想の転換になります。

投資や増員でボトルネック自体の能力を上げる

前の2段階をやり切ってもなお足りない場合に、はじめて予算をともなう手を検討します。

システムの導入、人員の補充、外部への委託、担当者の教育などが選択肢です。順番を守ることで、本来なら不要だった投資を避けられます。

投資の効果を測るときは、その工程の処理件数ではなく、全体の完了件数がいくつ増えたかで判断します。局所的な数値だけを見ていると、改善したつもりで終わってしまいます。

新しく現れたボトルネックに取りかかる

1カ所の詰まりが解けると、次に遅い工程が新たな制約として姿を現します。

検品が1日20件に増えれば、今度は15件しか処理できない出荷が全体の上限になります。これは失敗ではなく、改善が進んだ証拠です。

最初のステップに戻り、同じ流れをもう一度回します。1回きりの取り組みで終わらせず、日常業務のなかに見直しの習慣を組み込むことが成果につながります。

段階 やること 費用の目安
1. 特定 最も遅い工程を1つに絞る なし
2. 活用 止まっている時間をなくす なし
3. 同期 ほかの工程を制約に合わせる なし
4. 強化 システム導入や増員を行う 発生する
5. 繰り返し 新たな制約を特定し直す なし

投資をせずにボトルネックを解消する方法は?

予算の承認を待たなくても、明日から着手できる改善策はあります。作業の見直しに使われるECRSという4つの視点を、効果の大きい順に当てはめていきます。

なくせる作業を見つけて工程ごと削る

作業そのものをやめてしまえば、時間はゼロになり、効果は4つの視点のなかで最も大きくなります。

「以前トラブルがあったから」という理由だけで続いている二重チェックや、誰も読んでいない日報が代表例です。念のために残してある確認作業は、いったん外して支障が出るかを試してみます。

承認の階層も見直しの対象です。少額の経費まで役員決裁を必要としている規定を緩めるだけで、待ち時間が大きく縮むケースがあります。

似た作業をまとめて処理の回数を減らす

同じ種類の仕事をまとめて片づけると、そのつど段取りをやり直す手間が消えます。

届いた申請を1件ずつ処理するのではなく、午前と午後に時間を決めて一括で承認する運用が典型です。集中して処理できるぶん、判断の質も安定します。

複数の申請書に同じ内容を書かせている場合は、様式を1つに統合できないかを検討します。入力の手間と転記ミスが同時に減ります。

順番や担当を入れ替えて待ち時間を縮める

順番に回していた承認を並行に変えるだけで、決裁までの日数が半分近くになることもあります。

A部長、B部長、C部長と順に回覧する運用では、1人が不在なら後ろがすべて止まります。3人へ同時に依頼すれば、最も遅い1人の時間だけで済みます。

担当を入れ替える手も有効です。ボトルネックになっている人が抱えている業務のうち、ほかの人でもできるものを移すと、本人は制約となる作業に専念できます。

手順を単純にしたうえでツールに任せる

複雑な手順のまま自動化すると、わかりにくい仕組みがそのまま固定されてしまいます。

先の3つで作業をそぎ落としてから、残った部分をツールに載せるのが正しい順番です。表計算ソフトの関数で転記をなくす、定型の連絡を自動送信にするといった小さな範囲から始められます。

承認のプロセスが詰まっているなら、申請から決裁までを電子化する仕組みの導入が効果的です。誰のところで何日止まっているかが画面上で見えるようになり、次の改善点を探す手間も減ります。

視点 問いかけ 具体例
E(排除) この作業はなくせないか 形だけの二重チェックをやめる
C(結合) まとめて処理できないか 承認を1日2回にまとめる
R(交換) 順番や担当を変えられないか 直列の回覧を並行に切り替える
S(簡素化) もっと簡単にできないか 入力項目を減らして自動化する

ボトルネック解消でよくある失敗は?

手順どおりに進めたつもりでも、成果に結びつかないことがあります。つまずきやすい3つのパターンを、あらかじめ押さえておきます。

ボトルネックではない工程を改善して成果が出ない

最も多い失敗は、目についた工程や改善しやすい工程から手をつけてしまうことです。

声の大きい部署の要望や、担当者が「大変だ」と訴えている作業が、必ずしも全体を止めている原因とは限りません。改善そのものは進んでも、納期は1日も縮まらないという結果になります。

着手する前に、その工程を速くすると全体の完了件数が増えるのかを一度立ち止まって考えます。答えが「増えない」なら、そこは後回しで構いません。

人を増やしても処理能力が上がらない場合がある

原因が人手ではなく手順や仕組みにある場合、増員しても詰まりは残ります。

承認の権限が1人に集中しているなら、部下を何人つけても決裁のスピードは変わりません。使っているシステムの動作が遅いことが原因なら、操作する人数を増やしても意味がありません。

人を増やす前に、その工程の時間が何に費やされているかを分解します。作業そのものより、探す時間や待つ時間が大半を占めているケースは多いものです。

解消したあとに別の工程へ移る前提が抜けている

1つ解決すれば終わりだと考えていると、次の詰まりに気づくのが遅れます。

改善の直後は全体の流れが速くなるため、うまくいったという判断で取り組みを打ち切りがちです。しかし数週間後には、別の場所に未処理の山ができ始めます。

測定の仕組みを残しておくと、この移動を早く察知できます。月に一度、工程ごとの件数と滞留日数を見る時間をつくるだけでも十分です。

ボトルネックの解消は測って直す繰り返しで進める

業務のボトルネックは、最も処理能力が低い工程を数値で特定し、そこだけに集中して手を入れることで解消できます。作業時間と待ち時間を記録し、未処理が積み上がっている場所を突き止めるところが出発点です。感覚で選んだ工程を改善しても、全体の速度は変わりません。

手順は、特定してから現状の能力を引き出し、ほかの工程を合わせ、それでも足りなければ投資を検討するという順番になります。作業をなくす、まとめる、入れ替える、簡単にするという視点を先に通せば、費用をかけずに詰まりがほどける場面も少なくありません。1カ所直せば次の制約が現れる前提で、測って直す流れを日常業務に組み込んでいきましょう。

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