• 作成日 : 2025年8月5日

ExcelのLET関数の使い方!基本から複数定義の方法、エラー対策を解説

LET関数(レット関数)を使えば、複雑な数式をすっきり整理し、Excelの計算効率を大幅に向上できます。「同じ計算を何度も書いて数式が長くなる」「数式が読みづらくてミスしやすい」そんな悩みを抱える方にぴったりの関数です。

この記事では、LET関数の基本的な使い方から応用例、導入時の注意点までを初心者向けにわかりやすく解説します。LET関数を使うことで、計算の処理速度が向上するだけでなく、数式が劇的に見やすくなり、ミスの削減にもつながります。

新しい関数、LET関数とは?

LET関数は、Excelの数式内で名前付きの計算結果を定義できる新しい関数です。簡単に言えば、数式の中で一時的に変数(値)に名前を設定し、その変数を使って計算を進められます。

LET関数でできること

LET関数を導入することで、主に以下のメリットが得られます。

  • 数式の可読性向上:長い数式や繰り返し出てくる計算に名前を付けることで、数式が格段に読みやすくなります。まるでプログラムコードのように、計算の意図が明確になります。
  • 計算パフォーマンスの改善:同じ計算が複数回登場する場合、LET関数を使えば一度だけ計算し、その結果を再利用できます。これにより、特に大規模なデータや複雑な計算において、理論的に処理速度の向上が期待できます。
  • 数式のメンテナンス性向上:計算内容に変更があった場合でも、名前を定義した箇所だけを修正すればよいため、変更漏れやミスのリスクを減らせます。

LET関数の基本的な使い方

LET関数の構文は以下の通りです。

=LET(名前1, 値1, [名前2, 値2, …], 計算)
  • 名前1, 名前2, …:数式内で使用する名前(変数名)を指定します。
  • 値1, 値2, …:定義した名前に割り当てる値、または計算式を指定します。
  • 計算:定義した名前を使って実行する計算式を指定します。

具体的な例を見てみましょう。

例1:消費税計算をスマートに

商品の税抜き価格に消費税(10%)を加えて税込み価格を計算する場合を考えます。

通常の数式:=A2*(1+0.1)

LET関数を使った数式:=LET(税抜き価格, A2, 消費税率, 0.1, 税抜き価格 * (1 + 消費税率))

このように、税抜き価格や消費税率といったわかりやすい名前を定義することで、数式の意味が直感的に理解できるようになります。

例2:複雑な計算を段階的に

たとえば、「売上から原価を引いた粗利を計算し、さらにその粗利から広告費を引いた営業利益を計算する」といった多段階の計算を行う場合です。

LET関数を使わない場合:= (A2 – B2) – C2

LET関数を使った場合:=LET(売上, A2, 原価, B2, 広告費, C2, 粗利, 売上 – 原価, 粗利 – 広告費)

粗利という中間結果に名前を付けることで、計算のステップが明確になり、途中の計算結果も把握しやすくなります。

LET関数の利用シーン

LET関数は、長い数式を短くできるため、さまざまな場面でその真価を発揮します。

1. 繰り返し計算の効率化

特定の計算結果を何度も参照する場合に有効です。たとえば、データの平均値を算出し、その平均値に基づいて各データが平均より上か下かを判定するようなケースです。平均値をLET関数で一度定義すれば、繰り返し平均値を計算する数式を使う必要がなくなります。

2. 条件付き書式やデータ入力規則の数式

通常、条件付き書式やデータ入力規則に複雑な数式を設定すると、その数式の意味を把握するのが難しくなりがちです。LET関数を使えば、条件の定義部分に名前を付けられるため、設定内容が格段にわかりやすくなります。

3. 動的配列関数との組み合わせ

FILTER関数やSORT関数などの動的配列関数と組み合わせることで、さらに強力な数式を作成できます。たとえば、FILTER関数で抽出した結果をLET関数で名前付けし、その名前を使ってさらに別の計算を行うことが可能です。

4. 複数シート参照の簡略化

異なるシートから同じ値を何度も参照する場合、LET関数でその参照に名前を付けておくことで、数式全体の長さと複雑さを軽減できます。

LET関数の応用テクニック

基本的な使い方に慣れてきたら、さらにLET関数を使いこなすための応用テクニックを見ていきましょう。

1. 複数の名前を定義する

LET関数は、複数の名前と値を順番に定義できます。これにより、より複雑な計算も段階的にわかりやすく記述できます。

=LET(変数1, 計算式1, 変数2, 計算式2, …, 最終計算)

変数2の計算式では、変数1で定義した値を使うことも可能です。

2. IF関数など他の関数と組み合わせる

LET関数で定義した名前は、IF関数やSUMIF関数、VLOOKUP関数など、あらゆるExcel関数の中で使用できます。これにより、条件分岐を含む複雑な数式も、より論理的に構築できます。

例:売上目標達成度に応じた評価

月間売上目標売上評価
120100達成
80100未達

評価を自動で表示したい場合、以下のように記述できます。

=LET(達成率, B2/C2, IF(達成率>=1, “達成”, “未達”))

3. 計算結果のデバッグに活用する

LET関数で定義した各段階の計算結果は、数式バーでカーソルを合わせるとツールヒントとして表示されることがあります(Excelのバージョンや設定による)。これにより、数式の途中で期待通りの値が計算されているかを確認しやすくなり、エラーの原因特定に役立ちます。

LET関数のよくあるエラーと対策

LET関数を使用する上で、いくつか注意すべき点と、よくあるエラーの対策について解説します。

1. 名前の重複

LET関数内で同じ名前を複数回定義することはできません。もし重複した場合、#VALUE!エラーが表示されます。異なる名前を使用するように注意しましょう。

2. 名前の命名規則

名前に使えるのは、文字、数字です。ただし、数字で始まる名前や、セル参照と紛らわしい名前(例:A1, B2など)は使用できません。また、スペースも使えないため注意が必要です。わかりやすく、かつ規則に沿った名前を付けるように心がけましょう。

3. 計算式の誤り

LET関数自体の構文は正しくても、定義した値や最終的な計算式に誤りがあれば、当然ながらエラーが発生します。エラーメッセージ(#DIV/0!, #N/A, #REF!など)を確認し、どの部分に問題があるのか特定するようにしましょう。

4. Excelのバージョン

LET関数は、Microsoft 365のExcelおよびExcel 2021で利用できる機能です。古いバージョンのExcelでは使用できませんので、共有する相手のExcel環境にも注意が必要です。もし古いバージョンを使用しているユーザーとファイルを共有する場合は、LET関数を使わずに互換性のある数式に置き換える必要があります。

LET関数でExcelスキルを向上させよう

LET関数は、数式を読みやすく整理し、計算のパフォーマンスを向上させる便利な機能です。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、繰り返しの計算を簡潔にまとめたり、メンテナンス性の高い数式を作成したりと、活用の幅は広がります。まずはシンプルな計算から始めて、少しずつ慣れていきましょう。

LET関数を使いこなせば、Excelスキルは確実にレベルアップし、業務の効率化にも直結します。


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