- 作成日 : 2025年8月5日
エクセルのIRR関数とは?XIRR関数との違いや投資の収益性の評価方法を解説
IRR関数(読み方:アイ・アール・アール関数)は、Excelで投資の収益性を評価する際に役立つ関数です。
「この投資は本当に利益を生むのか?」という疑問に対し、感覚ではなく数値に基づいた判断が可能になります。資金回収のスピードや効率を見える化し、投資判断の精度を高めたい方にとって、IRR関数は強力なツールです。
目次
IRR関数とは?なぜ投資分析に不可欠なのか
IRR関数は、「内部収益率(Internal Rate of Return)」を算出するためのExcel関数です。内部収益率とは、ある投資案件から将来的に得られるキャッシュフローの現在価値と、初期投資額の現在価値が等しくなる割引率のことです。
簡単に言うと、その投資がどれくらいの利回りで運用されているのかを示す指標です。
IRR関数でわかること
IRR関数を使うことで、以下の重要な情報が手に入ります。
- 投資案件の収益性評価:複数の投資案件を比較する際に、IIRRが高いほど投資効率が高いとみなされますが、資本コストを上回っているかどうかの比較が前提となります。
- 投資判断の客観化:感覚や経験だけでなく、具体的な数値に基づいて投資の良し悪しを判断できるようになります。
- 資金回収の効率性:投資した資金がどの程度の効率で回収できるのかを把握する目安になります。
IRR関数は、一連の複雑なキャッシュフローを単一のわかりやすいパーセンテージに変換するため、財務分析や資本予算作成に欠かせないツールとなります。
IRR関数の基本的な使い方
IRR関数の構文は非常にシンプルです。
- 値 (必須):投資に関連するキャッシュフローのセル範囲を指定します。
- ポイント1:最初の数値(通常は初期投資額)はマイナスの値で入力します。これは、資金が出ていくこと(支払い)を意味します。
- ポイント2:その後の数値(将来の収入)はプラスの値で入力します。これは、資金が入ってくることを意味します。
- ポイント3:これらのキャッシュフローは、等間隔(通常は年単位や月単位)で発生するものとして扱われます。
- 推定値 (省略可能):計算の開始点となる推定の内部収益率を指定します。通常は省略しても問題ありませんが、複数の解がある場合や、計算が収束しない場合に指定すると、より正確な結果が得られることがあります。
例:簡単な投資案件でIRRを計算してみよう
ある事業に100万円を投資し、1年後に30万円、2年後に40万円、3年後に60万円の収入が得られるケースを考えます。
| 期間 | キャッシュフロー |
|---|---|
| 0年目 | -1,000,000 |
| 1年目 | 300,000 |
| 2年目 | 400,000 |
| 3年目 | 600,000 |
この場合、IRR関数は以下のように入力します。
=IRR(A2:A5)
(A2セルに-1,000,000、A3セルに300,000、A4セルに400,000、A5セルに600,000が入力されていると仮定します。)
計算結果として、たとえば「約10.68%」のような数値が表示されます。これは、この投資が年間約10.68%の利回りで運用されていることを示しています。実際の利回りとは異なる点に留意しましょう。
IRR関数の利用シーン
IRR関数は、主に以下のようなシーンで活用されます。
1. 複数の投資案件の比較検討
複数の投資案件がある場合、それぞれのIRRを計算し、比較することで、最も収益性の高い案件を見つけられます。一般的に、IRRが高いほど、その投資案件は魅力的と判断されます。
2. 新規事業への投資判断
新しい事業を立ち上げる際や、既存事業への設備投資を検討する際に、将来のキャッシュフローを予測し、その事業のIRRを算出することで、投資に値するかどうかを判断する材料にします。新規または既存のベンチャーへの投資評価は、IRR関数が主に適用される分野です。
3. 資金調達方法の評価
自己資金、借入金、株式発行など、さまざまな資金調達方法を比較する際に、それぞれの調達コストをIRRで評価することで、最も費用対効果の高い方法を選択できます。
4. 既存プロジェクトの評価
進行中のプロジェクトや既に完了したプロジェクトについて、当初の計画に対する実際のIRRを計算し、その収益性を評価する際にも役立ちます。これにより、将来のプロジェクト計画に活かせます。
IRR関数の応用
IRR関数は、単体で使うだけでなく、他の要素と組み合わせることで、より高度な分析が可能になります。
1. 複数回の資金投入や回収がある場合
IRR関数は、初期投資だけでなく、プロジェクト期間中に複数回資金を投入したり、資金を回収したりするような複雑なキャッシュフローにも対応できます。重要なのは、正確な日付順にキャッシュフローを並べることです。
2. 予想されるキャッシュフローの変動を考慮する
投資案件のキャッシュフローは常に予測通りとは限りません。IRR関数を使用する際に、楽観的なケース、標準的なケース、悲観的なケースなど、複数のシナリオでキャッシュフローを仮定し、それぞれのIRRを計算することで、リスクとリターンのバランスを多角的に評価できます。
3. 類似関数との使い分け:XIRR関数
IRR関数は、キャッシュフローが等間隔で発生する場合(例:ローンの年間返済額)に有効です。しかし実際のビジネスでは、キャッシュフローの発生間隔が不規則なこともあります。そのような場合は、キャッシュフロー間の正確な期間を考慮する「XIRR関数」を使用します。
- XIRR関数の構文:=XIRR(値, 日付, [推定値])
- 値:キャッシュフローのセル範囲。
- 日付:各キャッシュフローが発生した日付のセル範囲。
たとえば、初期投資は今日、1回目の収入は3ヶ月後、2回目の収入は1年半後、といった不規則な間隔のキャッシュフローがある場合は、XIRR関数が適しています。
IRR関数のよくあるエラーと対策
IRR関数を使用する上で、初心者の方がつまずきやすいポイントと、その対策について解説します。
1. #NUM! エラー
#NUM! エラーは、Excelが有効な内部収益率を見つけられないことを意味します。これは通常、提供されたキャッシュフローデータまたは反復計算プロセスに問題があることが原因です。主に以下の原因で発生します。
- 正と負のキャッシュフローがない:IRR関数は、少なくとも1つの正のキャッシュフロー(収入)と1つの負のキャッシュフロー(支出)がなければ計算できません。投資なので、通常は初期投資(マイナス)と将来の収入(プラス)が存在するはずです。
- 計算が収束しない:IRR関数は反復計算によって解を見つけます。キャッシュフローのパターンによっては、関数が有効なIRRを見つけられない場合があります。
- 対策:推定値引数に、よりIRRに近いと思われる数値を入力してみましょう。たとえば、0.1(10%)や-0.05(-5%)など、大まかな利回りを指定してみます。
- キャッシュフローが非現実的:非常に大きな値と小さな値が混在するなど、キャッシュフローの数値が現実離れしている場合もエラーの原因になります。
2. #DIV/0! エラー
稀なケースですが、キャッシュフローの配列にエラー値(例:#N/A)や空のセルが含まれている場合に発生することがあります。
- 対策:キャッシュフローのセル範囲に、数値以外の値やエラー値が含まれていないか確認しましょう。
3. キャッシュフローの符号間違い
最もよくある間違いの一つです。初期投資額をプラスで入力してしまうと、関数は正しい計算ができません。
- 対策:資金が出ていく(支出)場合はマイナス、資金が入ってくる(収入)場合はプラスで入力されているか、必ず確認してください。
4. キャッシュフローの時系列間違い
IRR関数は、キャッシュフローデータが時系列に並んでいることを前提としています。
- 対策:必ず、最も古いデータ(初期投資)から最新のデータ(最終キャッシュフロー)まで、厳密に時系列順でキャッシュフローが入力されているか確認しましょう。
IRR関数で賢い投資判断を
IRR関数は、投資案件の収益性を数値で把握できる便利な分析ツールです。初期投資と将来のキャッシュフローをもとに、期待される収益率を算出することで、感覚に頼らず投資の妥当性を判断できます。ただし、より的確な意思決定には、NPVやMIRRなど他の指標とあわせて活用することが効果的です。
はじめは少し難しく感じるかもしれませんが、実際に手を動かしながら使い方を試すことで、理解は確実に深まります。投資判断の精度を高めたい方は、ぜひIRR関数の活用を取り入れてみてください。
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