- 更新日 : 2024年9月4日
なぜダブルチェックでミスが起こるのか?原因とやり方、1人の場合を解説
ミスをなくすために実施されるダブルチェックですが、ダブルチェックをしても見落としが生じることもあります。なぜダブルチェックでもミスがなくならないのか、また、ダブルチェックのやり方や見落としをなくすための対策についてまとめました。一人でミスなく経理業務をする方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ダブルチェックとは?
ダブルチェックとは、重要な決定や重大な結果を招くミスを防ぐために、作業やプロセスを2回確認する方法です。例えば経理や医療指示など、正確性が求められる場面で採用され、エラーの発見・修正、リスク軽減、品質保証のために行われます。
ダブルチェックは、複雑な計算や多段階のプロセスを含む作業、または人の生命や健康、大きな金額に影響を及ぼす可能性がある場合に必要です。ただし、ダブルチェックをしてもすべてのミスを回避できるわけではなく、その限界を理解しておかなくてはなりません。
ダブルチェックは意味がないといわれる理由
ダブルチェックが意味がないとされるおもな理由は、リンゲルマン効果によるものです。グループ内での個人の貢献が減少する心理的現象を指し、ダブルチェックの文脈では、以下のように現れます。
安心感による手抜き:ダブルチェックを行うことで生じる安心感が、個人が最初のチェックで手を抜く原因となることがあります。
責任の分散::複数の人が関与することで、個々の責任感が薄れ、最終的な品質が低下する可能性があります。
ダブルチェックのやり方、方法
ダブルチェックのやり方にはさまざまなタイプがあり、チェックの目的や状況に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。ここでは、おもなダブルチェックのタイプと特徴をご紹介します。
| 必要な人数 | ダブルチェックの方法 | やり方 |
|---|---|---|
| 1人 | 1人連続型 | 2回目は1回目終了後すぐ |
| 1人時間差型 | 各回の実施は間を空ける | |
| 1人双方向型 | 2回目は1回目と逆の順序でチェックする | |
| 2人 | 2人連続型 | 1人目終了後2人目がチェックする |
| 2人同時双方向型 | 2人が同時に反対の順序でチェックする | |
| 1人、2人 | クロスチェック | 方法や観点を変えて2回チェックを実施する |
| 1人~3人 | トリプルチェック | 人や時間、方法を変えて3回チェックを実施する |
2人連続型
2人連続型とは、 1人が作業を行い、その後別の1人がチェックを行うダブルチェックの方法です。作業の流れがスムーズで、一人が集中して作業を完了できます。チェックする人は作業に関与していないため、新鮮な目でエラーを発見できます。
ただし2人連続型は、作業者とチェックを行う人とのコミュニケーション不足がエラーの見逃しにつながる可能性があるのはデメリットです。チェックのタイミングが遅れると、エラーの修正に時間がかかることがあります。
2人同時双方向型
2人同時双方向型とは、2人が同時に作業を行いながら、お互いの作業をチェックするダブルチェックの方法です。即時フィードバックが可能で、エラーを迅速に修正できます。作業者同士のコミュニケーションが促進され、作業の質が向上するのがメリットです。
一方、2人同時双方向型のダブルチェックは、作業の進行が遅くなる可能性があります。お互いの作業に集中しすぎると、本来の作業の効率が落ちることがあるため注意が必要です。
1人連続型
1人連続型とは、同一人物が作業とチェックの両方を行うダブルチェックの方法です。作業の一貫性が保たれ、作業者のスキルに応じた柔軟な対応が行え、コミュニケーションの手間が省けます。
しかし、自己チェックによる盲点が生じやすく、エラーの見逃しが発生しやすい点はデメリットです。また作業の疲労により、チェックの質が低下する可能性もあります。
1人時間差型
1人時間差型とは、同一人物が時間を空けて作業とチェックを行うダブルチェックの方法です。時間を置くことで新鮮な目でチェックが行え、自己チェックの盲点を減らせる点がメリットだといえます。また、作業とチェックのスケジュール調整も容易です。
ただし、1人時間差型によるダブルチェックは作業とチェックの間に時間が空くため、作業の詳細を忘れてしまうことがあります。そのため、緊急の作業には対応しにくいです。
1人双方向型
1人双方向型とは、作業とチェックを交互に行いながら進めるダブルチェックの方法です。 作業の各段階でチェックが行われるため、エラーを早期に発見しやすくなります。また、作業の流れを頻繁に確認することで、全体の質を高めることが可能です。
1人双方向型のダブルチェックは作業の中断が多く、集中力が途切れやすいのはデメリットです。そのため、作業の進行が遅くなる可能性があります。
トリプルチェック
トリプルチェックとは、3人以上でチェックを行う方法です。複数の視点からのチェックにより、エラーの発見率が高まり、チェックの精度も向上します。
ただし、3人分の工数が発生するため、人件費が増加するのがデメリットです。また、トリプルチェックの場合、コミュニケーションの複雑さが増し、作業の進行が遅くなることがあります。
クロスチェック
クロスチェックとは、異なる部署や専門分野の人がチェックを行う方法です。専門的な知識を持つ人によるチェックが可能で、異なる視点からのフィードバックにより、作業の質が向上します。
ただしクロスチェックは、専門外の作業に対する理解が必要となり、チェックに時間がかかることがあるのはデメリットです。部署間のコミュニケーションの壁が障害となることがあります。
ダブルチェックでミスが起こる原因
ダブルチェックを行っても、ミスが完全になくならないのはなぜでしょうか。その原因を探ることは、より効果的なチェック方法を導入するために重要です。ここでは、ダブルチェックでミスが起こるおもな原因をご紹介します。
チェック方法が不適切
チェック方法が目的と合っていない場合、ミスが見落とされることがあります。そのため、チェックプロセスは目的に応じて適切に設計される必要があります。例えば、精密機器の品質管理では、単に外観を確認するだけではなく、機能テストや耐久性試験が必要です。適切な方法を用いない場合、重大な不具合を見逃すリスクがあり、最終製品の信頼性に影響を与えかねません。
慣れによる注意力の低下
ダブルチェックを頻繁に行う業務では、慣れによって注意力が低下することがあります。繰り返し行われる作業は、従業員が自動的に行うルーチンとなり、注意力が散漫になりがちです。特に、過去にミスが発生していない場合に顕著で、チェックの必要性を感じなくなり、結果として重要なエラーを見逃す可能性が高まります。
チェックのための時間が不十分
チェックに十分な時間を確保しないと、急いで作業を行うことになり、ミスを見落とす可能性が高まります。特に、時間に追われている場合、注意力が低下しやすくなります。時間による圧力は、チェックの質を低下させる大きな要因です。納期が迫っていると、従業員は急いで作業を終わらせようとし、細部にわたる注意を払えなくなり、重要なエラーが見逃されることがあります。
チェック担当者のスキル不足
チェックを担当する人のスキルや経験が不足していると、ミスを見つける能力が低くなります。チェックを行う人が適切なトレーニングを受けていない、または必要な専門知識が不足している場合、エラーを見つける能力が低いかもしれません。特に、新しい技術や複雑なシステムが関わる場合に問題となります。
チェック担当者の疲労や心理的要因
疲労やストレスが溜まっている場合、集中力が低下し、ミスを見落としやすくなります。長時間労働や高いストレスレベルは、従業員の集中力とモチベーションを低下させるため注意が必要です。その結果、チェックを適切に行う意欲を失い、ミスを見逃す可能性が高まります。
システムの不備
チェックシステムが不十分であったり、チェック工程が複雑すぎる場合、ミスが発生しやすくなります。効率的なチェックシステムが存在しない場合、従業員は自分たちの判断に頼らざるを得ません。また、チェックプロセスが複雑すぎる場合、従業員はそれを避ける傾向があり、結果としてエラーが発生しやすくなります。適切なシステムやツールを導入することで、チェック工程を効率化し、ミスを減らすことが可能です。
ダブルチェックの見落としを減らす対策
ダブルチェックの見落としを減らすためには、以下の対策が効果的です。
ミスの原因を分析する
まずは、ミスが発生した原因を詳細に分析します。どの工程でミスが発生したのか、どのような条件下でミスが起こりやすいのかを把握することが重要です。
ミスが発生した際には、作業環境、作業手順、従業員のスキルレベル、コミュニケーションの問題など、多岐にわたる要因を考慮に入れる必要があります。例えば、作業手順が複雑すぎるためにミスが発生している場合、手順を簡素化することでミスを減らすことが可能です。
ルールを徹底する
チェック手順やルールを明確にし、全員に徹底させることも必要です。新しい従業員に対するオリエンテーション、定期的なトレーニング、作業手順書の更新といった方法で、ルールを徹底できます。ルールを視覚的にわかりやすく表示することも効果的です。
違う観点から確認する
1つのタスクに対して、異なる視点からの確認を行うことで、見落としが発生するリスクを減らすことができます。例えば、一人が作成した文書に対して、別の人が校正を行うことで、ミスを発見しやすくなります。また、時間を置いて自分で再確認することも有効です。
チェックする時間を確保する
チェック作業に十分な時間を確保することは、急いで作業を行うことによるミスを防ぐために重要です。業務の効率化を図ることで、チェック作業に集中するための時間を作り出せます。例えば、定型作業を自動化することで、人的リソースをチェック作業に振り分けることが可能です。
適度に休憩を取る
人間の集中力は持続的ではなく、一定時間が経過すると低下します。定期的な休憩を取ることで、集中力を回復させ、ミスの発生を防ぐことが可能です。なお、短い休憩を数回取ることのほうが、長時間の休憩を一度取るよりも効果的だといわれています。
システムやツールを使う
業務効率化ツールやシステムを導入することで、チェック作業を効率化し、ミスを減らすことができます。例えば、データ入力作業においては、フォームの自動化やエラーチェック機能を持つソフトウェアを導入することで、入力ミスを減らすことが可能です。また、プロジェクト管理ツールを使用することで、タスクの進捗状況を一目で把握し、漏れや重複を防げます。
一人経理のダブルチェック方法
中小企業で一人経理を行う場合、うっかりミスを防ぐためには、ダブルチェックを定期的に実施することが大切です。ここでは、一人経理のダブルチェック方法をご紹介します。
1回目と2回目の方法を変える(クロスチェック)
経理業務を1人で行う場合、同じミスを繰り返すことがあります。このリスクを軽減するためには、クロスチェックが有効です。例えば、1回目のチェックでは伝票の合計金額を確認し、2回目のチェックでは各項目の単価と数量を掛け合わせて再計算します。
このように異なる方法でチェックを行うことで、計算ミスや入力ミスを見つけやすくなるのがメリットです。また、伝票の日付や取引先名など、金額以外の情報も異なる視点から確認することも重要です。
1人時間差型を活用する
1人時間差型のチェックは、作業の間に意図的に時間を空けることで、新鮮な目で資料を見直す手法です。1回目のチェックを行った後、数時間後や翌日に再度確認することで、初回に見落としたミスに気づきやすくなります。
また、長時間同じ資料を見ていると発生する「見慣れの誤認」を防ぐのに役立ちます。この時間を利用して他の業務に取り組むことで、効率的な時間管理にもつながるでしょう。
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例えば、経理の主担当が1人だけであったため、振り込みの際のダブルチェックができず、金額の間違いや振込手数料の負担先の確認など、神経を使う債務処理を行う企業が、マネーフォワード クラウドを導入しました。その結果、請求書の取りまとめに関する不安がほぼなくなり、承認フローの導入により請求内容のチェック体制が強化されました。
また、毎月の請求書処理にかかる時間を1.5日分削減し、資金繰りの状況もタイムリーに把握できるようになりました。
ツールを活用してミスのない経理を実現しよう
ツールを利用することにより、経理業務を簡略化できるだけでなく、ミス防止にも役立ちます。効率的な業務運営を実現するために、ダブルチェックや業務効率化ツールの導入を検討しましょう。適切な対策を講じることで、業務の正確性と効率を向上させることが可能です。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選【部署別紹介】
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