• 作成日 : 2025年11月6日

事業資金の借り方で悩んだら?個人事業主や中小企業が融資を受ける方法からビジネスローンまで徹底比較

事業の成長や継続に不可欠な「事業資金」。しかし、いざ資金調達が必要になったとき、どこで、どのように借りればよいか迷う個人事業主や経営者の方は少なくないでしょう。特に開業したばかりで実績が少ない場合、その悩みは一層深くなるものです。

この記事では、事業資金の借り方について、日本政策金融公庫のような公的融資から民間のビジネスローンまで、それぞれの特徴やメリット・デメリットを分かりやすく解説します。自社に最適な資金調達方法を見つけ、事業を前進させるための第一歩としてお役立てください。

事業資金を借りるには、どのような方法があるのか?

事業資金を借りる方法は、大きく分けて「日本政策金融公庫などからの公的融資」「民間金融機関からの融資」「ビジネスローン」の3つが代表的です。

これらの調達先は、金利、融資スピード、審査の通りやすさなどが大きく異なります。そのため、事業の状況(創業期か成長期か)、必要な金額、資金が必要になるまでの期間などを総合的に考慮し、自社に最も適した方法を選ぶことが極めて重要です。ここでは、それぞれの借り方の特徴を具体的に見ていきましょう。

  • 公的融資
    • 主な機関:日本政策金融公庫、地方自治体(制度融資)など
    • 金利の目安:年利1%台後半〜2%台前半程度が一般的です。
    • 融資スピード:3週間〜2ヶ月程度と、時間はかかります。
    • 特徴:創業者や個人事業主への支援が手厚く、有利な条件で借りやすいのが最大の魅力です。
  • 民間金融機関の融資
    • 主な機関:銀行、信用金庫、信用組合など
    • 金利の目安:年利1.0%〜4.0%程度が目安です。
    • 融資スピード:3週間〜1ヶ月程度です。
    • 特徴:事業の実績や信用力が重視されます。まとまった金額を借りやすく、長期的な取引関係を築けるメリットがあります。
  • ビジネスローン
    • 主な機関:消費者金融、信販会社、一部の銀行など
    • 金利の目安:ノンバンク系で年利10%前後〜20%近くになるケースもありますが、銀行系ではより低い水準です。
    • 融資スピード:最短即日〜1週間程度と非常にスピーディーです。
    • 特徴:審査のハードルが比較的低く、急な資金需要に迅速に対応できる点が特徴です。

「公的融資」とは?

公的融資とは、政府系金融機関や地方自治体が、中小企業や個人事業主の支援を目的として行う融資のことです。営利を第一目的としないため、低金利で長期の返済期間が設定されているなど、事業者にとって有利な条件で借りられる点が最大の魅力です。

  • 日本政策金融公庫:政府が100%出資する金融機関。特に創業者や小規模事業者への融資に積極的です。
  • 制度融資:地方自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携して行う融資。自治体が利子の一部を負担してくれる場合もあります。

「民間金融機関からの融資」とは?

銀行や信用金庫といった、一般的に馴染みのある金融機関からの借入です。事業実績や財務状況が安定している企業向けの融資(プロパー融資)と、信用保証協会の保証を付けて融資を受ける方法(信用保証協会付融資)があります。実績のある企業であれば、低金利で高額の融資を受けられる可能性があります。

「ビジネスローン」とは?

主にノンバンク(消費者金融や信販会社など)が提供する事業者向けのローン商品です。公的融資や銀行融資に比べて審査基準が柔軟で、スピーディーに資金を調達できるのが特徴です。急な運転資金が必要になった場合に頼りになりますが、金利が高めに設定されている点には注意が必要です。

開業したばかりの個人事業主でも借りやすい融資はある?

開業したての個人事業主でも借りやすい融資はあります。特に「日本政策金融公庫」の新規開業・スタートアップ支援資金制度は、事業実績の少ない個人事業主や創業者にとって、最も借りやすい選択肢の一つといえます。

日本政策金融公庫は、民間金融機関では融資が難しい創業者や小規模事業者の支援を目的とした政府系金融機関です。そのため、事業の実績よりも将来性や計画の妥当性を重視して審査を行う傾向があり、無担保・無保証人で利用できる制度も充実しています。

なぜ日本政策金融公庫は個人事業主に人気なのか?

多くの個人事業主が最初の借入先として日本政策金融公庫を選ぶのには、明確な理由があります。

  • 低金利:民間のビジネスローンに比べ、圧倒的に低い金利で借りられます。
  • 長期返済:運転資金で5年〜7年、設備資金では10年〜20年といった長期での返済計画が可能です。
  • 無担保・無保証制度:「新規開業・スタートアップ支援資金」など、代表者保証が不要な制度があります。
  • 実績がなくても申込可能:これから事業を始める方や、開業して間もない方でも申し込めます。

日本政策金融公庫の代表的な融資制度

個人事業主や中小企業が利用しやすい代表的な制度には、以下のようなものがあります。

  • 新規開業・スタートアップ支援資金:新たに事業を始める方や事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象。原則、無担保・無保証人で利用可能です。
  • 中小企業経営力強化資金:認定支援機関(税理士など)のサポートを受けながら事業計画を立てることで、低金利での融資が期待できる制度です。

資金ゼロからでも挑戦可能?自己資金の重要性について

「個人事業主 資金ゼロ」といったキーワードで検索される方もいますが、融資を受けるうえで自己資金は今でも重要な判断材料の一つです。以前は「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」が求められていましたが、2024年3月の制度改正により、この要件は廃止されました。

とはいえ、自己資金があることは「事業に対する真剣さ」や「返済能力の裏付け」として評価される傾向があるため、準備しておくことで審査が有利に進む場合があります。自己資金がゼロでも申請自体は可能ですが、ある程度の資金を用意しておくほうが、事業の信頼性を高める意味でも望ましいと言えるでしょう。

融資の審査では、どのような点が重要視されるのか?

融資の審査では、「事業計画の妥当性」「資金使途の明確さ」「自己資金の額」「経営者の信用情報」の4点が特に重要視されます。

金融機関は、貸した資金が事業の成長に繋がり、計画通りに返済されるかという「返済能力」と「事業の将来性」を厳しく評価します。これらのポイントをしっかり押さえた上で申し込むことが、審査通過の確率を高めることに直結します。

ポイント1:説得力のある事業計画書の作成

事業計画書は、審査担当者に「この事業は成功する」と確信させるための最も重要な書類です。事業内容、ターゲット顧客、市場分析、収支計画などを具体的かつ客観的なデータに基づいて記述する必要があります。特に飲食店経営の場合は、想定客単価や回転数、損益分岐点売上高などを明確に示しましょう。

ポイント2:運転資金か設備資金か、資金使途を明確にする

「何に」「いくら」必要なのかを具体的に示すことが求められます。

  • 運転資金:商品の仕入れ代、人件費、家賃など、日々の事業運営に必要な資金。
  • 設備資金:店舗の内外装工事費、厨房機器の購入費、PCや車両の購入費など。 見積書などを添付し、金額の根拠を明確にすることが重要です。

ポイント3:自己資金はどれくらい用意すべきか

前述の通り、自己資金は事業への熱意の証明です。希望する融資額に対して、少なくとも3分の1程度の自己資金を用意しておくのが一つの目安といわれています。コツコツと貯めてきた経緯がわかる預金通帳などを提示できると、計画性の高さをアピールできます。

ポイント4:個人の信用情報(クレジットヒストリー)の確認

法人としての融資であっても、経営者個人の信用情報は必ずチェックされます。クレジットカードやローンの支払遅延、税金の滞納などがあると、審査に悪影響を及ぼす可能性が非常に高いです。心当たりがある場合は、事前に信用情報機関(CIC、JICCなど)で自身の情報を確認しておきましょう。

すぐに運転資金が必要な場合、どの借り方がおすすめなのか?

緊急で運転資金が必要な場合は、審査スピードが速い「ビジネスローン」が有力な選択肢です。ただし、金利が高めである点には十分な注意が必要です。

ビジネスローンは、公的融資や銀行融資に比べて提出書類が少なく、保証人や担保を必要としない商品が多いため、審査プロセスが簡略化されています。これにより、最短即日〜数日という短期間で資金を調達できるのが最大のメリットです。

ビジネスローンのメリットとデメリット

メリットデメリット
審査・融資がスピーディー金利が高い
無担保・無保証で利用できることが多い借入限度額が低めな場合がある
資金使途が比較的自由長期的な返済には向かない
提出書類が少ない安易に利用すると返済が困難になる

「審査が甘い」ビジネスローンは存在する?注意すべき点

「審査甘い」「誰でも借りられる」といった謳い文句には注意が必要です。正規の貸金業者は必ず返済能力の審査を行います。安易な言葉で勧誘する業者は、違法な高金利を要求するヤミ金融の可能性があります。必ず、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で正規の業者かどうかを確認してから申し込むようにしてください。

融資を申し込む際の具体的な手順とは?

融資の申し込みは、一般的に「相談・情報収集 → 書類準備 → 申込 → 面談 → 審査 → 契約・融資実行」という流れで進みます。

各ステップを計画的に進めることが、スムーズな資金調達の鍵となります。特に、融資の成否を大きく左右する「書類準備」と「面談」には、十分な時間をかけて対策を講じることが重要です。

STEP1:融資先の選定と事前相談

まずは、自社の状況に合った金融機関を選びます。創業者であれば日本政策金融公庫、地域密着で事業を展開しているなら信用金庫など、特徴を理解して選びましょう。窓口で事前に相談することで、必要な書類や審査のポイントについてアドバイスをもらえます。

STEP2:必要書類の準備

一般的に、以下のような書類が必要となります。

  • 事業計画書(創業計画書)
  • 企業の概要がわかる書類(履歴事項全部証明書、定款など)
  • 決算書確定申告書(直近2〜3期分)
  • 見積書(設備資金の場合)
  • 許認可証の写し(飲食店営業許可証など)
  • 代表者の本人確認書類

STEP3:申込手続き(オンライン・窓口)

必要書類が揃ったら、金融機関の窓口やウェブサイトから申し込みます。書類に不備がないか、提出前に再度チェックしましょう。

STEP4:担当者との面談で気をつけるべきこと

申込後、担当者との面談が設定されます。ここでは、事業計画書の内容について深掘りされます。事業への熱意やビジョン、返済計画の具体性などを自分の言葉でしっかりと伝えることが重要です。質問には誠実に、自信を持って答えましょう。

STEP5:審査結果の通知と契約手続き

面談後、最終的な審査が行われ、結果が通知されます。審査に通過したら、契約手続きに進み、その後指定の口座に資金が振り込まれます。

自社に最適な借り方を見つけ、事業成長を加速させる

事業資金の借り方には、公的融資からビジネスローンまで様々な選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。最も重要なのは、自社の状況や事業フェーズ、資金の使い道に合った方法を冷静に選択することです。

この記事で解説したポイントを参考に、まずは信頼できる機関に相談し、説得力のある事業計画を準備することから始めましょう。適切な資金調達は、個人事業主や中小企業の挑戦を力強く後押ししてくれるはずです。


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