• 更新日 : 2025年8月19日

フランチャイズを1人で開業するには?向いている業種と個人経営の注意点

フランチャイズは1人でも開業できますが、業種選びや体制づくりを誤ると負担が集中して経営が立ち行かなくなることもあります。1人での開業は初期費用を抑えられる反面、すべての業務を一人で担う必要があるため、向き不向きがはっきりと分かれる経営方法です。

この記事では、フランチャイズを1人で始めるメリットや「やめたほうがいい」といわれるワンオペならではの課題、向いている業種、必要な資金、失敗しないための本部の選び方まで、わかりやすく解説します。

フランチャイズは1人でも開業できる?

フランチャイズは1人でも開業できますが、選ぶ業種や本部の支援内容によって運営のしやすさは大きく異なります。

フランチャイズは、本部(フランチャイザー)と加盟店(フランチャイジー)が契約を結び、加盟店が本部の商標やサービス、運営ノウハウを使う権利を得て事業を行う仕組みです。この仕組みは、複数人のスタッフで運営する大規模な店舗だけでなく、オーナーが1人で運営する「ワンオペ」形態の事業にも対応しています。

フランチャイズと個人開業の違い

1人で事業を始める点では同じですが、フランチャイズの開業は、すでに成功しているビジネスモデルのノウハウ、商品・サービスを活用して事業を行います。ブランド名、商品、運営マニュアル、研修制度などが提供されるため、事業経験がない方でも比較的スムーズに開業準備を進められます。その対価として加盟金やロイヤリティを本部に支払う義務が生じ、運営方法にも一定の制約があります。

これに対し、個人開業は、事業のアイデア出しから屋号の決定、商品開発、集客方法まで、すべてを自分自身でゼロから構築する必要があります。自由度が高い反面、事業が軌道に乗るまでには多くの試行錯誤が伴うでしょう。

1人開業が可能なフランチャイズの特徴

1人でも運営できるフランチャイズには、共通した特徴があります。

まず、作業工程がシンプルで標準化されていることが挙げられます。複雑な調理や製造工程がない業態なら、1人でも効率的に運営できるでしょう。また、接客時間が短く、回転率の高いビジネスモデルも1人運営に向いています。

さらに、本部のサポート体制が充実していることも重要です。研修制度やマニュアル整備、トラブル時のフォロー体制がしっかりしていれば、1人でも安心して運営できます。初期投資額が比較的少なく、固定費を抑えられる業態も個人開業には適しているといえるでしょう。

1人でのフランチャイズ開業に向いている業種とは

1人でフランチャイズを開業する場合、作業負担が少なく、効率的に運営できる業種を選ぶことが求められます。複雑なオペレーションや大人数での対応が必要な業種は、1人運営には向きません。ここでは、1人での開業に適した業種の具体的な特徴を解説します。

省スペース・無店舗で始められる「サービス業・教育関連」

店舗を持たずに開業できる、あるいは自宅の一部を事務所として利用できるサービス業や教育関連のフランチャイズは、1人運営に適しています。

ハウスクリーニング・リペア業

専用の機材や洗剤を用いて、顧客の自宅やオフィスを清掃したり、建物の傷を補修したりする仕事です。大きな店舗が不要で、スケジュールも自分で調整しやすいため、1人でも始めやすいでしょう。本部による技術研修が充実しているケースが多く、未経験からでも専門技術を身につけられます。

出張型サービス・訪問介護

顧客のもとへ訪問してサービスを提供するため、店舗を持つ必要がありません。とくに訪問介護は、高齢化社会において需要が高まっている分野であり、安定した収益を見込めます。介護保険外サービスを中心として訪問型支援など、資格が不要なフランチャイズも一部存在します。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年4月から有資格者が足りない場合のみ、無資格者でも訪問介護サービスを行うことが可能になりました。しかし、一般的な訪問介護は公的資格や指定申請が必要です。

教育関連

学習塾や英会話教室、パソコン教室などの教育系フランチャイズでは、少人数制のクラス運営が基本となるため、講師1人でも十分対応できます。

とくに個別指導塾なら、同時に指導する生徒数をコントロールしやすく、未経験でも研修を受ければ始められるでしょう。

在庫リスクが少ない「買取・修理業」

大量の在庫を抱える必要がない業種も、1人運営の負担を軽減します。

買取専門店

ブランド品や貴金属、骨董品などを査定・買取するビジネスです。小さなスペースで開業でき、在庫は買い取った商品のみです。真贋(しんがん)を見極める専門知識が求められますが、本部の査定システムや研修を利用することでカバーできます。顧客が来店するのを待つスタイルなので、1人でも業務を回しやすいのが特徴です。

スマートフォンの修理サービス

故障したスマートフォンやタブレットの修理を行います。修理用の部品在庫は必要ですが、商品そのものを大量に仕入れるわけではないため、在庫リスクは限定的です。専門技術が必要ですが、こちらも本部による研修で習得できる場合がほとんどです。

オペレーションが簡易な「飲食・デリバリー業」

飲食店は多忙なイメージがありますが、業態を選べば1人での運営も可能です。

デリバリー・テイクアウト専門店

客席を持たないため、調理と商品提供に集中できます。調理工程がマニュアル化されていたり、本部から半調理済みの食材が供給されたりするフランチャイズを選べば、1人でも効率的に運営できるでしょう。近年では、複数のデリバリーブランドを1つの厨房で運営する「ゴーストレストラン」のフランチャイズも増えています。

キッチンカー(移動販売)

車両1台で開業できるため、店舗取得費を大幅に抑えられます。イベント会場やオフィス街など、人が集まる場所に移動して販売できるため、立地に縛られない強みがあります。メニューを数種類に絞ることで、1人でも無理なく対応できます。

フランチャイズを1人で開業するメリットとデメリット

フランチャイズでの1人開業は、未経験者にとって魅力的な選択肢ですが、良い面ばかりではありません。メリットとデメリットの両方をふまえたうえで、慎重に判断することが求められます。「やめたほうがいい」という意見があるのも事実であり、その背景にあるリスクも理解しておきましょう。

メリット:ブランド力とサポート体制

フランチャイズに加盟する最大のメリットは、本部の持つ知名度や経営ノウハウを活用できる点にあります。

ブランド力を利用できる

既に世間に認知されているブランドの看板を掲げて開業できるため、ゼロから始める個人店に比べて集客面で有利です。開業初期から、ある程度の顧客獲得を見込めるのは大きな強みでしょう。

経営ノウハウが提供される

商品開発や仕入れ、接客マニュアル、効果的な広告宣伝の方法など、事業を成功させるためのノウハウが本部から提供されます。これにより、経営経験がない人でもスムーズに事業を軌道に乗せやすくなります。

充実した研修とサポート

開業前には、事業に必要な知識や技術を学ぶ研修が用意されています。また、開業後も経営に関する悩みやトラブルについて、スーパーバイザー(SV)と呼ばれる担当者からアドバイスをもらえるなど、継続的なサポートを受けられます。

デメリット:費用の発生と経営の自由度

一方、個人開業と比べフランチャイズには、ロイヤリティなどの手数料や、経営の自由度が低いなど、デメリットもあります。

ロイヤリティなどの費用

ブランドやノウハウを使用する対価として、毎月本部にロイヤリティ(売上の数%など)を支払う必要があります。この費用が経営を圧迫する可能性も考えられます。加盟時には、加盟金や保証金といった初期費用もかかります。

経営の自由度が低い

フランチャイズは、ブランドイメージや品質を全店舗で統一するために、運営マニュアルやルールを定めています。そのため、オーナーが「もっとこうしたい」と思っても、独自のアイデアを商品やサービス、店舗運営に反映させることが難しい場合があります。

本部の経営方針に左右される

万が一、本部が不祥事を起こしたり、経営状況が悪化したりすると、自分の店舗に直接的な問題がなくても、ブランド全体の評判低下という悪影響を受ける可能性があります。

「やめたほうがいい」と言われる理由とワンオペのリスク

インターネットなどで「フランチャイズの1人開業はやめたほうがいい」という意見が見られるのは、主にワンオペならではのリスクと、本部との関係に原因がある場合があります。

もっとも大きな課題は、自分に何かあったときの代替がきかない点です。病気やケガで休業を余儀なくされた場合、その時点で売上が止まります。突然の休みも取りづらく、体力面や精神面での負荷が大きくなりがちです。

また、日々の業務を1人でこなす中で、悩みを共有する相手がいない孤独感もつきまといます。本部に相談できる体制があっても、期待していたほどの支援が受けられないこともあるでしょう。

さらに、サポート内容やロイヤリティに関する不満がきっかけで、本部との関係がうまくいかなくなることもあります。契約内容をしっかり理解せずに加盟すると、「思っていたのと違う」と感じる事態に陥ることもあるため注意が必要です。

1人のフランチャイズ開業に必要な資金計画

フランチャイズで1人開業するには、どのくらいの資金が必要になるのでしょうか。開業時に必要な「初期費用」と、事業を継続させるための「運転資金」の2種類を準備しなくてはなりません。ここでは、資金計画の立て方と調達方法を解説します。

開業時にかかる初期費用(加盟金・物件取得費など)

フランチャイズの初期費用には、加盟金、研修費、物件取得費、設備費、備品購入費などが含まれます。

業種や加盟するフランチャイズ本部によって大きく異なりますが、主な内訳は以下のとおりです。無店舗型のフランチャイズであれば、物件取得費や内装工事費を大幅に抑えることができます。

  • 加盟金: 本部に加盟する権利を得るための費用。
  • 保証金: ロイヤリティの未払いなどに備えて本部に預ける費用。契約終了時に返還されることが多い。
  • 研修費: 開業前に受ける研修にかかる費用。
  • 物件取得費: 店舗を借りる際の保証金や礼金、仲介手数料など。
  • 内装・外装工事費: 本部の指定に沿って店舗を改装するための費用。
  • 設備・什器費: 事業に必要な機材や備品、家具などの購入費用。

経営を続けるための運転資金

運転資金は、開業してから事業が軌道に乗り、安定した収益を上げられるようになるまでの「つなぎ資金」です。売上がなくても、家賃や人件費(自分への給与含む)、水道光熱費、仕入れ代金、ロイヤリティなどの支払いは発生します。

最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分程度の運転資金を準備しておくと、安心して経営に集中できるでしょう。とくに1人運営の場合、不測の事態で休業せざるを得ない可能性も考慮し、余裕を持った計画を立てることが大切です。

自己資金だけでない資金調達の方法

開業資金のすべてを自己資金でまかなうのが理想ですが、不足する場合は外部からの資金調達を検討します。その際、融資・補助金のいずれを活用する場合でも、事業内容や収益見込みを具体的に示す「事業計画書」の作成が重要になります。

※本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。最新の制度については公式情報をご確認ください。

日本政策金融公庫

政府系の金融機関であり、民間の銀行に比べて創業者への融資に積極的です。無担保・無保証人で利用できる場合があり、多くの創業者に利用されています。

出典:創業融資のご案内|日本政策金融公庫

制度融資

地方自治体、信用保証協会、金融機関が連携して行う融資制度です。自治体が利子の一部を負担してくれるなど、創業者にとって有利な条件が設定されていることが多いです。お住まいの地域の役所や商工会議所で相談してみましょう。

親族からの借入れ

親や親族から支援してもらう方法です。ただし、親しい間柄であっても、返済期間や利率などを定めた「金銭消費貸借契約書」を作成し、トラブルを避けるようにしましょう。

補助金、助成金の活用

補助金や助成金は、国や自治体が政策目標を達成するために、事業者の取り組みを金銭的に支援する制度です。原則として返済が不要なため、積極的に活用したいところです。ただし、いずれも申請期間が定められており、事業開始後の申請が基本となることが多い点に注意が必要です。

また、補助金を利用するには、その趣旨に合った事業計画(補助事業計画書)を作成し、審査を通過しなくてはなりません。申請から入金まで数ヶ月から半年以上かかることも珍しくないため、開業直後の運転資金としてあてにすることは難しいでしょう。

IT導入補助金

中小企業や小規模事業者が、業務効率化や生産性向上のためにITツールを導入する際の経費の一部を補助する制度です。1人運営の効率を上げるために、以下のようなツールの導入で活用できる可能性があります。

  • 会計ソフト、決済システム
  • 予約管理システム
  • 顧客管理・分析ツール
  • POSレジシステム

出典:IT導入補助金2025|中小企業庁

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者が、地域の商圏や顧客のニーズに合わせた販路開拓や業務効率化に取り組む際の経費の一部を補助する制度です。例えば、以下のような取り組みで活用できるでしょう。

  • 集客用のチラシやウェブサイトの作成
  • 店舗の看板や内装の改装
  • 地域のイベントへの出展費用

出典:小規模事業者持続化補助金|商工会地区小規模事業者持続化補助金事務局

地方自治体独自の創業補助金

都道府県や市区町村が、地域経済の活性化を目的として独自に設けている補助金・助成金もあります。開業する地域の自治体のウェブサイトを確認したり、商工会議所などで相談したりしてみましょう。

信頼できるフランチャイズ(FC)本部の見極め方

フランチャイズでの1人開業は、パートナーとなる本部選びにかかっているといっても過言ではありません。契約してから後悔しないために、加盟を決める前に本部を多角的に調査し、信頼性を見極めましょう。

契約前に「法定開示書面」を読み解く

フランチャイズ契約を検討する際には、本部から「法定開示書面」という書類が提供されます。これには、本部の財務状況、訴訟の有無、契約の具体的な内容、加盟店が負担する費用、解約条件など、重要な情報が記載されています。

専門用語が多く難解に感じるかもしれませんが、隅々まで熟読し、不明な点や納得できない点は、必ず担当者に質問して解消しましょう。少しでも曖昧(あいまい)な回答しか得られない場合は、その本部との契約は慎重に考えるべきです。

複数の既存加盟オーナーへ実情をヒアリングする

本部が提供する情報は、当然ながら良い面が強調されがちです。そこで、実際にそのフランチャイズで経営している先輩オーナーの話を聞くことが参考になります。本部から紹介してもらうだけでなく、できれば自分でいくつかの店舗を訪ね、アポイントをとって話を聞いてみましょう。

  • 「本部のサポート体制は本当に充実していますか?」
  • 「開業前の説明と、実際の運営でギャップはありませんでしたか?」
  • 「収益モデルは説明どおりでしたか?」
  • 「もしもう一度選ぶとしても、このフランチャイズに加盟しますか?」

ウェブサイトやパンフレットだけではわからない、現場のリアルな声を聞き出すことが、失敗のリスクを減らすことにつながります。

本部のサポート体制は十分か見極める

とくに1人での開業では、本部のサポート体制が生命線となります。開業前の研修はもちろんのこと、開業後のフォロー体制がどうなっているかを確認しましょう。

スーパーバイザー(SV)の役割

SVは定期的に店舗を巡回し、経営指導を行う役割があります。SV1人あたりが担当する店舗数はどのくらいか、巡回頻度はどの程度か、どのような指導をしてくれるのか、などを具体的に確認します。SVの経験や能力にばらつきがないかどうかも、見極めたいポイントです。

トラブル時の対応

急な機材の故障や顧客とのクレーム対応など、不測の事態が発生した際に、本部がどのようなサポートをしてくれるのかも確かめておきましょう。24時間対応のヘルプデスクの有無なども確認しておくと安心です。

1人でのフランチャイズ開業は事前の情報収集と計画で決まる

1人でフランチャイズを開業することは、自由な働き方を実現できる魅力的な選択肢の一つです。しかし、その成功は、思いつきや勢いだけでつかめるものではありません。

この記事で解説したように、自分自身の適性を見極め、1人運営に向いた業種を慎重に選び、無理のない資金計画を立てましょう。

そして何より、信頼できるパートナーとなるフランチャイズ本部を、自らの目と耳で確かめて選定することが求められます。十分な情報収集と緻密な計画こそが、1人でのフランチャイズ開業を成功に導くための確実な道筋となるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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