• 作成日 : 2025年8月8日

スマホ決済の手数料はいくら?主要サービス比較と会計上の扱いを解説

スマホ決済の手数料は、導入のハードルとなる大きな要因の一つです。PayPay、楽天ペイ、d払いなど主要サービスの料率は異なり、店舗負担が利益を圧迫することもあります。

この記事では、手数料の仕組みや各社の比較、会計処理、経営への影響、さらに手数料を抑える方法までを整理し、導入判断に必要な情報をわかりやすく解説します。

スマホ決済の手数料とは

スマホ決済を導入すると、手数料は店舗側が負担する仕組みです。仕組みや契約方法によって料率が異なるため、理解したうえでの導入が不可欠です。

スマホ決済の種類

スマホ決済には大きく分けて、QRコード決済と電子マネー決済があります。

QRコード決済は、PayPay、楽天ペイ、d払い、メルペイなどが代表的で、お客様がスマホアプリでQRコードを読み取るか、店舗が提示するQRコードを読み取って決済します。

電子マネー決済は、SuicaやPASMOといった交通系ICカード、楽天EdyやiD、WAONなどの流通系電子マネーがあり、専用のリーダーにスマホやカードをかざして決済する非接触型決済です。

どちらの方式も、決済処理を提供する事業者(決済代行会社や各ペイメントサービス運営会社)が、その利用に対して店舗から手数料を徴収する仕組みです。

スマホ決済の手数料の仕組み

スマホ決済における手数料は、売上金から差し引かれる形で請求されるのが一般的です。

お客様がスマホ決済を利用して商品やサービスの代金を支払うと、その取引情報が決済代行会社を介して各ペイメントサービス運営会社に送られ、処理が行われます。この決済処理にかかる費用が手数料として店舗に請求されます。

例えば、売上が1,000円で手数料率が3.0%の場合、店舗に入金されるのは970円となります。手数料は1回の決済ごとに発生し、月末に合算・精算されるケースが多いです。

この手数料は、決済アプリを利用する顧客側ではなく、決済サービスを提供する側(=店舗)が負担するのが原則です。

スマホ決済の契約方法

スマホ決済の導入には、主に二つの契約方法があります。

一つは個別契約で、PayPayや楽天ペイ、d払い、メルペイといった各スマホ決済サービスと個別に契約する方法です。この場合、それぞれのサービスと直接契約し、各社の規定する手数料率が適用されます。

もう一つは、複数のスマホ決済代行サービスとの一括契約です。決済代行会社を利用すると、一つの契約で複数のQRコード決済電子マネー決済に対応できるため、導入や管理の手間を大幅に削減できます。

しかし、決済代行会社によっては、個別に契約するよりも手数料が若干上乗せされる場合があるため、両者を比較検討することが重要です。

スマホ決済の導入を検討する際は、初期費用、月額費用、入金サイクル、そして手数料率を総合的に比較し、自身の店舗に合った契約方法を選びましょう。

主なスマホ決済サービスの手数料を比較

スマホ決済サービスを選ぶ際、各社の手数料率は最も気になる点でしょう。ここでは、主要なスマホ決済サービスの手数料を一覧で比較します。

QRコード決済サービスの手数料一覧

サービス名決済手数料率 (税別)初期費用補足事項
PayPay1.60%~1.98%無料QRコードの利用シェアが1位
楽天ペイ2.20%~3.24%無料
※別途カードリーダーの購入費用
プランやキャンペーンにより異なる
d払い2.60%無料同じQRコードでメルペイユーザーも利用可能
メルペイ2.6%%無料同じQRコードでd払いユーザーも利用可能
au PAY2.60%無料24時間のサポート体制あり

※決済代行会社を利用する場合の手数料は、3.24%から3.75%程度に設定されていることが一般的です。

電子マネー決済サービスの手数料一覧

サービス名決済手数料率 (税別)初期費用補足事項
交通系ICカード
Suica
PASMO
2.95%〜4%契約する決済代行会社によって異なるSTORES決済では1.98% 。
iD3.24%〜3.25%契約する決済代行会社によって異なる不正防止などのセキュリティ機能あり
QUICPay3.24%〜3.25%契約する決済代行会社によって異なる全国300万ヵ所以上で利用できるサービス

※上記は2025年6月時点で公表されている標準的な条件です。実際の契約内容やキャンペーン適用により異なる場合があります。

手数料はサービスや契約プランで変動する

同じPayPayでも、「通常契約」と「PayPayマイストア(ライトプラン)」では手数料が異なります。また、売上規模や契約年数、キャンペーン中の申込によっても料率が変動するケースがあるため、導入時にしっかりと条件を確認する必要があります。

入金サイクルと手数料の関係も重要

手数料率に加え、「いつ売上が口座に入金されるか」も実務では重要です。

例えば、楽天ペイは楽天銀行口座を指定すれば入金までが早く、他行では時間がかかるといった条件差があります。また、一部のサービスでは即日入金や週次入金を選べますが、これに追加手数料が発生する場合もあるため注意が必要です。

決済代行会社の手数料は高く見えるが一括で導入できる

STORES 決済やAirペイなどの代行会社を利用すると、複数のスマホ決済やクレジットカード決済を一括で管理できるというメリットがあります。手数料はやや高めに見えるかもしれませんが、管理の手間や一元化のしやすさを評価する声も多く、特に小規模店舗にとっては利便性の高い選択肢です。

スマホ決済の手数料の会計上の扱い

スマホ決済の手数料は、店舗の会計処理においてどのように扱われるのでしょうか。正確に仕訳しておくことで、帳簿の整合性を保ち、税務調査や決算時のトラブルを避けられます。

勘定科目の分類を理解する

スマホ決済の手数料は、会計上「支払手数料」または「販売促進費」などの勘定科目で処理するのが一般的です。

  • 支払手数料:PayPay、楽天ペイ、d払いなどの決済利用料は、サービスの対価としてこの項目で計上します。銀行の振込手数料やクレジットカード手数料と同じ扱いです。
  • 販売促進費:QRコードの作成費用や決済端末の導入費用、キャンペーン参加料など、売上向上を目的とした支出がこれに該当します。たとえば、「キャッシュレス決済導入支援キャンペーン」などで発生した費用はここで処理されることがあります。

会計ソフトを使用している場合も、自動仕訳だけに頼らず、内容を確認して科目を適切に振り分けることが大切です。

手数料にかかる消費税の扱い

スマホ決済の手数料は、課税対象のサービス利用料に該当するため、手数料には消費税(現行10%)がかかります。

:10,000円の売上に対して手数料率2.6%(260円)の場合

260円 × 10% = 26円(消費税)

合計:286円が手数料として支払う総額です。なお、このうち消費税分の26円は、課税事業者であれば仕入税額控除の対象となります。

消費税の部分は、「仕入税額控除」として消費税の申告時に控除可能です。帳簿上で消費税の区分(課税・非課税)を分けておくと、後の処理がスムーズになります。

免税事業者と課税事業者で対応が異なる

免税事業者の場合、そもそも消費税の申告義務がないため、手数料にかかる消費税も経費としてそのまま処理します。一方で、課税事業者は仕入税額控除を適用できるため、消費税額を切り分けて記録しておく必要があります。

特に2023年から導入された「インボイス制度」により、仕入控除のためには適格請求書の保存が求められるようになりました。スマホ決済サービス提供事業者から発行される「手数料明細」や「インボイス対応の請求書」は、保管義務の対象です。

スマホ決済の手数料が経営に与える影響

スマホ決済の手数料は、少額に思えるかもしれませんが、店舗の売上が大きくなるにつれて、無視できない経営コストとなります。

売上から手数料を差し引いた利益を計算する

スマホ決済の手数料は、売上高に応じて変動するため、売上が増えるほど手数料の絶対額も増加します。例えば、手数料率2.6%のサービスで月間100万円の売上があった場合、手数料は26,000円です。年間では312,000円にもなります。

この金額は、店舗の粗利から差し引かれるため、利益率の低い業種や商品では、利益を大きく圧迫する可能性があります。

特に、原価率が高い飲食店や、薄利多売のビジネスモデルでは、手数料が経営に与える影響はより顕著になります。毎月の売上から手数料を差し引いた後の実質的な入金額を常に意識し、経営計画に織り込む必要があります。

例えば、月間売上200万円、粗利率30%の飲食店を考えてみましょう。

  • 売上:200万円
  • 粗利:200万円 × 30% = 60万円
  • スマホ決済利用率50%(100万円)で、手数料率2.6%と仮定した場合、手数料は26,000円。
  • この26,000円が粗利から差し引かれるため、実質的な粗利は574,000円になります。

このように、具体的な数字でシミュレーションすることで、年間でどれくらいのコストが手数料としてかかるのか、それが経営に与える影響を明確に理解できます。

現金決済、クレジットカード決済との手数料を比較する

店舗での決済方法として、現金決済、クレジットカード決済、そしてスマホ決済があります。

  • 現金決済は、手数料がかかりませんが、レジ締め作業や現金管理の手間、盗難リスク、銀行への入金作業などがあります。
  • クレジットカード決済の手数料は、一般的に3%〜4%程度とスマホ決済よりも高めに設定されていることが多いです。しかし、高額商品の購入にはクレジットカードが利用されることが多く、売上単価が高い店舗では重要な決済手段となります。
  • スマホ決済は、クレジットカードよりも手数料が低い傾向にあり、少額決済から高額決済まで幅広く利用されるようになってきています。

それぞれの決済手段の手数料と、それらがもたらす利便性や管理コストを総合的に比較し、店舗の状況に合わせた最適な決済手段の組み合わせを検討しましょう。お客様の多様なニーズに応えるキャッシュレス決済は、集客面でも欠かせない要素です。

決済手段をもとに手数料の負担をシミュレーションする

自身の店舗の売上予測に基づいて、具体的な手数料負担のシミュレーションを行うことは、経営判断において極めて重要です。

例えば、月間の売上構成を「現金30%、クレジットカード40%、スマホ決済30%」と仮定し、それぞれの決済手段の手数料率を当てはめて計算します。

例:月間売上100万円の場合
  • 現金:30万円(手数料0円)
  • クレジットカード:40万円 × 3.5% = 14,000円
  • スマホ決済:30万円 × 2.6% = 7,800円
  • 合計手数料:21,800円

このように、具体的な数字でシミュレーションすることで、年間でどれくらいのコストが手数料としてかかるのか、それが経営に与える影響を明確に理解できます。

さらに、キャンペーン期間中の手数料率や、特定の決済サービスの導入が売上全体に与える影響なども考慮に入れ、より詳細なシミュレーションを行うことで、最適な決済戦略を立てられます。

「手数料が高すぎる」と感じる場合でも、その影響を数値で把握することで、対策を講じやすくなります。

スマホ決済の手数料を抑える方法

スマホ決済を導入する際、手数料をできるだけ抑えることは利益確保のうえで不可欠です。手数料を抑えるための工夫について解説します。

複数の決済サービスを比較検討する

スマホ決済には多様なサービスがあり、それぞれ手数料率や提供条件が異なります。以下のような視点で比較検討を行いましょう。

  • 手数料率の違い:PayPay、楽天ペイ、d払い、メルペイなどは通常1.5〜3.5%前後の範囲で変動します。
  • 期間限定の優遇条件:新規加盟店向けのキャンペーンで数ヶ月手数料が無料になる場合もあります。
  • 業種別の特典:小売や飲食など、特定業種にだけ提供される優遇料率が設定されていることもあります。

また、全ての決済サービスを導入する必要はありません。自店舗の客層がよく使うサービスを優先的に選ぶことで、使われない決済にかかる無駄な手数料を避けることができます。

決済代行会社を慎重に選定する

複数のスマホ決済サービスを一括で導入・管理できる決済代行会社を利用すれば、運用の手間を削減できます。ただし、代行会社ごとに手数料やサービス内容に差があります。

  • 例:SquareやAirペイなどは、クレジットカード・電子マネー・QRコード決済に対応した統合型の決済サービスを提供しています。
  • 決済端末も1台で複数方式に対応できるため、スペースや操作面でも利便性があります。

選定時には、手数料率、入金サイクル、初期費用、サポート体制を総合的に比較しましょう。手数料だけで判断せず、店舗の運営スタイルに合った利便性の高いサービスを選ぶことが結果的なコスト削減につながります。

国や自治体の支援制度をチェックする

過去には、国の施策としてキャッシュレス・消費者還元事業のような取り組みが行われ、キャッシュレス決済を導入する店舗に対して、決済手数料の一部を補助したり、消費者へのポイント還元を支援したりする制度がありました。

2025年現在、同様の大型事業は行われていませんが、中小企業を対象としたIT導入補助金や、地方自治体独自のキャッシュレス化推進事業などが実施されることがあります。

これらの補助金や助成金を活用することで、決済端末の導入費用やシステム利用料の一部を賄い、実質的な手数料負担を軽減できる可能性があります。常に最新の情報を収集し、活用できる制度がないか確認しましょう。

スマホ決済は手数料をかけてでも導入すべき?

スマホ決済は、手数料が発生する分、経営にとっては固定費に近い扱いとなります。それでも導入すべきかどうかは、店舗の業態や客層、運営スタイルによって異なります。判断の材料となるのは「それ以上の価値があるかどうか」です。

スマホ決済を導入することによって得られる主なメリットは以下の通りです。

  • キャッシュレス志向の顧客を取り逃がさない
  • 会計のスピードと正確性が上がり、回転率が改善される
  • レジ締めや現金管理の手間を削減できる
  • ポイント還元やキャンペーンによる集客効果が見込める
  • 決済履歴が自動記録され、経理処理が簡素化される
  • 小規模でも導入しやすい端末・サービスが整ってきている

一方で、売上規模が小さい、客層の大半が高齢者で現金決済が中心、あるいは1日あたりの取引数が極端に少ないといった店舗では、スマホ決済の導入メリットは限定的かもしれません。

「売上の〇%がスマホ決済になりうるか」「導入によって新規顧客が増えるか」「現金管理の人件費と比較してどうか」など、数値をもとに検討することで、手数料に対する納得感が得られます。

スマホ決済の導入は、手数料というコストを超えて、店舗運営の効率化と顧客満足度向上につながる手段として機能する場面が多くなっています。

スマホ決済を導入は、手数料と利便性を踏まえる

スマホ決済の手数料は、導入判断において無視できないコストですが、それと同時に集客力や業務効率といった利便性の高さも見逃せません。

直接契約は手数料を抑えやすい反面、サービスごとの管理が煩雑になる可能性があり、決済代行サービスは一括運用に優れる一方で手数料が高くなる傾向があります。

どちらにも長所と短所があり、店舗の業種や規模、顧客層、売上構成によって最適な選択は異なります。

大切なのは、手数料だけに着目するのではなく、入金サイクルや経理処理の手間、顧客の利便性まで総合的に判断することです。費用対効果を見極め、自店舗に合ったスマホ決済の導入を進めることが、利益を守りつつキャッシュレス化を実現する第一歩となります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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