• 作成日 : 2025年6月30日

2店舗目出店のタイミングは?戦略や手続き、補助金を解説

2店舗目の出店は、1店舗目の安定が前提です。まず確認すべきは、既存店舗の経営が安定しており、一定の利益を継続的に確保できているかどうかです。この記事では、2店舗目を出店する最適なタイミングや戦略、手続き、補助金について、わかりやすく解説します。

2店舗目出店の最適なタイミングとは?

最適な出店タイミングは、1店舗目の経営が月次で安定して黒字を出し、運営体制と人材が整っている状態です。経営者の「勢い」や「感覚」で出店するのではなく、数字と仕組みで判断する必要があります。

月商300万円以上・営業利益率10%以上が目安

2店舗目を検討する段階では、1店舗目の売上が月300万円以上、営業利益率が10%以上を半年〜1年以上維持している状態が1つの目安です。例えば月商300万円の店舗で営業利益が30万円以上出ていれば、収支バランスが整っているといえます。

売上に波がある業態(例:繁忙期と閑散期が明確な居酒屋など)の場合は、年単位の平均利益で判断するのが安全です。加えて、家賃・人件費・原価率・販促費といった固定費変動費のバランスが適正かどうかも確認します。

店舗運営を任せられるスタッフ体制が整っているか

2店舗目を成功させるには、1店舗目から経営者が手を離してもまわる体制が必要です。社員・アルバイトを含めて、信頼して店舗を任せられる十分なスタッフ体制が整い、シフトや急な欠勤にも対応できる配置になっているかが重要です。

特に、2店舗目に配置予定の店長・副店長・キッチン責任者など、キーパーソンの人材は事前に育成が必要です。中途採用での即戦力確保も可能ですが、教育・研修にかかる時間とコストを見積もっておきましょう。

出店エリアに十分な通行量があるか

出店先の候補地では、ターゲットとなる顧客層の通行量や人流が十分に見込めるエリアを選ぶことが重要です。駅前、商業施設近隣、学校・オフィスが集まる地域など、安定した人通りがある場所を選びましょう。具体的な通行量の目安は業態や立地によって大きく異なるため、現地での実地調査や時間帯別の人の流れを確認し、自店舗のターゲットや売上目標に応じて判断することが大切です。

また、競合店舗数が3店舗以上あるエリアは需要がある反面、差別化やブランド認知が不可欠です。出店前には実地調査を行い、近隣店舗の価格帯・客層・ピーク時間帯を調べ、需要とポジショニングのバランスを確認します。

2店舗目出店の戦略立案

戦略のない出店は失敗のリスクを高めます。2店舗目の出店はターゲット、市場特性、立地条件、組織体制に応じて柔軟な戦略を立てましょう。

ターゲットを再定義しコンセプトを磨く

1店舗目の成功要因がそのまま別のエリアで通用するとは限りません。ターゲットを設定し直し、エリア特性に合った店舗コンセプトを設計することが戦略の第一歩です。

例えば、オフィス街でのランチ中心の店舗と、住宅地でのファミリー層向け店舗では、同じメニューでもボリュームや価格帯を調整する必要があります。

市場調査では以下の点を確認します。

  • 想定客層の年齢層・職業・ライフスタイル
  • 平日・休日の来店傾向
  • エリア特有の嗜好(辛味が好まれる、地元食材への関心が高い等)

この情報をもとに、「この立地に合った新しい形の店舗」を設計することが大切です。

立地は「目的客」を意識して選ぶ

立地は「人通りが多い」だけでは不十分です。大切なのは、自店のターゲット層が「目的を持って来店しやすい立地」であるかどうかです。

例えば、ビジネスパーソン向けの弁当専門店を展開する場合、オフィスビルから徒歩3分圏内にあることが条件になります。一方、ファミリー向けの店舗であれば、駐車場の広さや、ベビーカーでも入りやすい導線がある郊外型店舗が適しています。

立地選定のチェックポイント:

  • 昼夜の通行量と属性(学生、会社員、主婦など)
  • 近隣施設(スーパー、オフィス、学校など)との動線
  • 競合店の存在と価格帯
  • 建物の視認性と導線(駅から見えるか、通り沿いか 等)

物件選定は一度きりではなく、最低でも3〜5件を比較検討することをおすすめします。

オペレーションを仕組化する

2店舗目以降は、オペレーションを属人的にせず、再現性のある「仕組み」に落とし込む必要があります。マニュアルがないまま出店を重ねると、店舗ごとに品質がばらつき、ブランドが損なわれます。

以下の業務は標準化しておくべきです:

  • 接客対応のフロー(例:来店〜注文〜会計〜退店)
  • 調理工程とレシピ(計量基準、調理時間、盛り付けルール)
  • 衛生管理とクレンリネス基準
  • トラブル時の対応マニュアル(クレーム、食中毒疑い 等)

また、クラウド型POSレジ、在庫管理ツール、スタッフの勤怠管理システムなどを導入することで、店舗間の情報を一元管理できる体制を構築できます。

2店舗目出店に必要な許認可と手続き

飲食店の2店舗目を出店する際も、1店舗目と同様に法的な許可や手続きが必要です。ただし、地域や施設条件によって申請内容が変わるため、事前に確認しましょう。

飲食店の営業許可

飲食店営業を開始するには、出店エリアの所轄保健所に「飲食店営業許可」を申請する必要があります。以下の準備が必要です。

  • 店舗の図面(厨房や手洗い、客席などを明記)
  • 食品衛生責任者の資格証明書
  • 水道水質検査結果(井戸水を使用する場合)

申請から許可取得までの日数は、自治体や申請内容によって異なりますが、通常は数日から2週間程度かかる場合が多いです。事前相談を行い、店舗改装や設備工事の前に、保健所の基準を満たすか確認しておくとスムーズです。

営業許可の有効期限は多くの自治体で5~8年程度ですが、自治体ごとに異なります。1店舗目とは別途の許可が必要ですので、住所変更や営業内容の変更があれば都度申請し直す必要があります。

食品衛生責任者の設置

すべての飲食店には、1店舗ごとに「食品衛生責任者」を1名以上配置することが義務付けられています。調理師、栄養士などの資格保持者であればそのまま就任できますが、未保有の場合は都道府県の指定する6時間程度の講習会を受講する必要があります。

この講習は随時開催されており、費用は1人当たり1万円前後です。2店舗目では、店長または調理責任者に資格を取得させておくとよいでしょう。

消防署への防火管理者届出

収容人数が30人以上になる店舗では、防火管理者を選任し、所轄消防署に届け出る必要があります。30〜299人の場合は「乙種防火管理者講習」(1日)、300人以上は「甲種防火管理者講習」(2日)を受講し、修了証の提出が求められます。

また、新たに改装工事を行う場合には、「防火対象物使用開始届出書」や「防火設備等の設置届出」などの書類提出も必要となります。

その他の主な手続き

  • 税務署:開業届出書、青色申告の承認申請書など(法人の場合は別途法人設立届出)
  • 年金事務所:従業員が5人以上いる場合は社会保険の加入手続き
  • 労働基準監督署・ハローワーク:労働保険(労災・雇用保険)関連の書類提出

これらの手続きは出店準備と並行して進める必要があります。申請書類が多岐にわたるため、行政書士や開業支援サービスのサポートを利用するのも1つの手です。

2店舗目出店の補助金や助成金

2店舗目を出店する際にも、複数の補助金や助成金を活用できます。ただし、1店舗目のみに限定された制度もあるため、申請条件を慎重に確認しましょう。補助金は一般に「事前申請・事後支給型」のため、申請してから交付されるまでに数か月かかります。自己資金で一時的に支出を賄える余力があることも前提となります。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者が販路開拓や業務効率化のために行う取り組みを支援する制度です。2店舗目の出店に際しては、チラシ作成、ホームページ開設、内外装費用、広告宣伝などが対象となる場合があります。

補助率は2/3で、一般型(通常枠)の場合、補助上限は50万円(インボイス特例適用で最大100万円)、「創業型」枠では、創業後3年以内の事業者に最大200万円の補助が可能です。申請には商工会・商工会議所のサポートが必要です。

参考:商工会地区小規模事業者持続化補助金事務局 小規模事業者持続化補助金【一般型・通常枠】

IT導入補助金

業務効率化やDX推進を目的として、POSレジ、予約管理システム、会計ソフト、クラウド勤怠管理などのITツール導入に使える補助金です。2店舗目以降の運営効率を上げるためのツール導入を計画している場合に活用価値があります。

通常枠では補助率1/2、補助額5万円~450万円ですが、インボイス枠では小規模事業者に対し、補助額50万円以下の部分について最大4/5(80%)の補助が出ます。50万円を超える部分については2/3の補助率となります。申請では、IT導入支援事業者との連携が必須です。

参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構 IT導入補助金2025

中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金は、中小企業が人手不足を解消し、生産性を向上させるために、IoTやロボットなどの省力化製品を導入する際に支援する制度です。作業の自動化や業務効率化を目的とした設備投資に活用でき、飲食店などの労働集約型の業種に適しています。

この補助金はカタログ型と一般型がありますが、飲食店の2店舗目出店の場合は、あらかじめ登録された省力化製品の中から選んで導入できるカタログ型が現実的です。

補助率は中小企業で1/2、小規模事業者や再生事業者は2/3、補助上限額は従業員数21名以上の場合、通常は1,000万円、大幅な賃上げ要件を達成した場合は1,500万円まで支給されます。この補助金は、企業の付加価値向上や賃上げを促進することを目的としています。

参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業省力化投資補助金

これらの補助金制度は、いずれも事前に公募があり、審査・採択後に事業を開始することが前提となります。申請時には、具体的な売上目標や費用計画を含む事業計画書の提出が求められます。

計画の内容が不十分であったり、数字に根拠がない場合は不採択となる可能性があるため、綿密な準備が必要です。出店のスケジュールと照らし合わせながら、余裕を持って申請計画を立てることが大切です。

2店舗目出店の成功と失敗の違い

2店舗目の出店は、事業を成長させる大きなチャンスです。しかし、店舗を増やすことでかえって経営が苦しくなるケースも少なくありません。ここでは、よく見られる展開をもとに、成功につながったパターンと、失敗しやすい注意点を紹介します。

成功につながる出店の特徴

1店舗目で安定した利益を出し、業務マニュアルや接客ルールを整備していたA社は、2店舗目も同様の体制でスムーズに立ち上げました。オープン前から人材育成を行い、既存店の運営に負荷をかけずに進められたことが大きな要因です。

計画段階から数字に基づいた戦略を立て、既存の顧客層に近いエリアを選んだことも、再現性のある出店につながりました。

失敗しがちな出店の傾向

1店舗目の好調を受けて勢いで出店を決めたB社は、人員や資金の準備が不十分なままオープン。駅前の目立つ物件に出店したものの、直後からスタッフ不足が発生し、営業に支障が出ました。

また、立地の市場調査も甘く、平日の来店が想定以下に。補助金の申請も間に合わず、半年以内で撤退を決断しました。出店時には、人材・資金・立地の3点を冷静に見極めることが不可欠です。

2店舗目出店後の運営ポイント

2店舗目の出店は「複数店舗を持つ経営者」としての視点が求められます。店舗数が増えることで、現場との距離が生まれやすくなるため、マネジメント体制や業務の標準化が不可欠です。

店長に任せられる体制を整える

経営者が常に現場に立ち続けることは難しくなります。そのため、各店舗を任せられる店長や責任者を育てることが、店舗運営の安定に直結します。役割の明確化と評価制度の整備により、責任感と成長意欲を高める仕組みづくりが必要です。

店長育成では、単に業務を覚えさせるだけでなく、数値管理(売上・原価・人件費)や人材マネジメントに関する教育も行い、店舗を「運営」できる力をつけることが大切です。

業務の標準化と共有化

複数店舗の運営では、業務の属人化を避け、どの店でも同じサービス品質・同じオペレーションが提供できるようにすることが求められます。接客、調理、清掃、発注など、あらゆる業務をマニュアル化し、誰が入っても一定の水準を維持できる体制が理想です。

さらに、日報や月次報告などを通じて、各店舗の状況を可視化し、経営側と現場の間に情報の共有・循環をつくることも欠かせません。

デジタルツールで経営を効率化

2店舗以上になると、アナログな管理では手が回らなくなります。POSレジ、勤怠管理、在庫管理、クラウド会計などのツールを導入することで、データの一元管理と分析が可能になり、迅速な意思決定につながります。

例えば、売上動向をリアルタイムで把握することで、人件費の最適化や仕入れの調整がしやすくなります。また、スタッフの勤怠データも一括で管理できるため、労務トラブルのリスク軽減にも役立ちます。

2店舗目出店には段階的な準備が欠かせない

2店舗目の出店は、事業成長の大きなステップですが、準備不足や判断ミスがあれば経営全体に影響します。成功のポイントは、1店舗目での安定経営、人材育成、数値に基づく出店計画、そして柔軟な運営体制です。

補助金の活用や業務の標準化も、リスクを抑え持続的な成長につながります。焦らず、今の店舗の状況を客観的に見つめ直すことが、次の一手を確かなものにします。


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