- 更新日 : 2025年9月22日
給与計算に必要な情報は?難しい計算を効率化するツールや法改正の影響も初心者向けに解説
給与計算は、従業員の生活を支えるだけでなく、会社の社会的信用や従業員との信頼関係を維持するための重要な業務です。しかし、初めて給与計算を担当する方や、新しい担当者になったばかりの方は、「何から手をつけていいのか」「どんな情報が必要なのか」と戸惑うことも少なくないでしょう。
この記事では、給与計算を円滑に進めるために必要な情報を整理し、法改正のポイントも交えながら具体的に解説します。
目次
給与計算を始める前に理解しておくべきこと
給与計算業務をスムーズに進めるためには、具体的な作業に入る前に、その全体像と基本原則を把握しておくことが大切です。段取りを理解することで、情報収集の目的が明確になり、手戻りの少ない効率的な業務が実現できます。
給与計算の基本的な流れ
給与計算は、単に従業員の勤怠記録を集計するだけではありません。以下のステップで進めるのが基本的なやり方です。
この流れを頭に入れておくと、各ステップでどの情報が必要になるかが見えてきます。
正確な情報収集が給与計算の質を決める
給与計算のミスは、従業員からの信頼を失うだけでなく、延滞税や不納付加算税といった罰則につながる可能性もあります。計算ミスを防ぐうえで最も重要なのが、計算の元になる情報の正確さです。従業員の個人情報、勤怠データ、適用される保険料率など、一つひとつの情報に誤りがないかを確認する作業が、給与計算業務全体の品質を左右します。
給与計算に必要な情報
給与計算に必要な情報は、大きく分けて「従業員に関する情報」「勤怠に関する情報」「会社に関する情報」の3つに分類できます。これらの情報を体系的に管理することで、複雑な給与計算業務を整理し、抜け漏れを防ぐことができます。
1. 従業員に関する情報
従業員一人ひとりの状況によって、支給額や控除額は変動します。そのため、氏名や住所といった基本情報に加え、扶養家族の状況、社会保険や雇用保険の加入資格、住民税の課税額など、個人に紐づく詳細なデータが欠かせません。
全従業員に共通で必要な情報
雇用形態にかかわらず、すべての従業員の給与計算に次の情報が必要です。特にマイナンバーは、源泉徴収票や法定調書、雇用保険資格取得届など税務・社会保険手続きで必須となるため、厳重な管理が求められます。
- 氏名、住所、生年月日
- 基礎年金番号
- 雇用保険被保険者番号
- マイナンバー(個人番号)
- 給与振込先の金融機関情報
正社員・契約社員の場合
正社員や契約社員など、フルタイム勤務者に近い雇用形態の場合、月給制が多いため基本給の情報が中心となります。また、各種手当の有無や社会保険の加入状況が計算に大きく影響します。
パート・アルバイトの場合
パートタイマーやアルバイトの場合、時給制で働くことが多いため、勤怠データと時給単価が計算の基本です。労働時間や日数によっては社会保険や雇用保険の加入対象となる場合があるため、加入要件を満たしているかの確認も重要になります。
- 時間給(時給)または日給の単価
- 社会保険の加入状況(加入要件を満たす場合)
- 雇用保険の加入状況(加入要件を満たす場合)
中途採用者・退職者がいる場合
月度の途中で入社した中途採用者については、給与の日割り計算が必要になる場合があります。また、前職の源泉徴収票を提出してもらい、年末調整の対象に含める準備をします。一方、退職者については、最後の給与計算だけでなく、住民税の一括徴収や社会保険・雇用保険の資格喪失手続き、源泉徴収票の発行など、通常とは異なる事務処理が発生します。
2. 勤怠に関する情報
総支給額を計算する上で、勤怠情報は直接的な根拠となります。労働日数、実労働時間、時間外労働(残業)時間、休日労働時間、深夜労働時間、そして欠勤や遅刻・早退の時間など、給与計算期間内の勤務状況を正確に記録したデータが必要です。タイムカードや勤怠管理システムから、締め日までに正確なデータを収集します。
3. 会社に関する情報
給与計算には、従業員個人の情報だけでなく、事業所として定められている情報も必要です。例えば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や労働保険(雇用保険・労災保険)の適用事業所であることの証明となる情報や、それぞれの保険料率、給与の支払サイクルや締め日・支払日といった会社の規定がこれにあたります。これらの情報は、会社の労務管理の根幹をなすものです。
給与計算を効率化するツール
必要な情報を集めても、計算自体が難しいと感じるかもしれません。ここでは、初心者の事務担当者でも業務を効率化できるツールと、情報の覚え方を紹介します。
給与計算シミュレーションサイト
まずは手軽に計算の仕組みを理解したい場合、無料の給与計算シミュレーションサイトが役立ちます。総支給額や扶養家族の人数などを入力するだけで、おおよその手取り額を計算できます。複雑な控除の仕組みを体感的に理解するのにぴったりです。
給与計算ソフトやアプリ
手作業での計算ミスを防ぎ、業務を大幅に効率化したいなら、給与計算ソフトやアプリの導入が有効です。多くのソフトは、勤怠管理から給与計算、明細発行、振込データの作成までを自動で行います。法改正にも自動でアップデート対応してくれるため、担当者の負担を大きく減らせます。
給与計算に関連する最新の法改正
法改正は給与計算業務に直接的な影響を与えます。担当者は常に最新の情報を把握し、正しく業務に反映させなくてはなりません。
定額減税の対応と月次減税事務
2024年から始まった所得税・住民税の定額減税は2024年限りで終了し、2025年以降は基礎控除の引上げなど別の改正点を考慮する必要があります。最新の税制改正情報を確認し、年末調整に備えましょう。
社会保険料・労働保険料率
健康保険料率や介護保険料率、雇用保険料率は、毎年見直されます。特に健康保険料率は、加入している健康保険組合や都道府県(協会けんぽ)によって異なります。給与計算を行う際は、必ず自社に適用される最新の保険料率を確認してください。誤った料率で計算すると、追徴や還付といった面倒な事務処理が発生します。
賃金デジタル払いの導入状況
2023年4月に解禁された「賃金のデジタル払い(デジタル給与)」の導入には、労基則第7条の2に基づき、労使協定の締結や労働者の同意を得ることが必要です。導入を検討する場合は、労使協定の内容や資金移動業者の要件を把握して進めましょう。
正確な情報収集で、スムーズな給与計算を
給与計算を正確かつ効率的に行うためには、計算スキルそのものだけでなく、その土台となる情報の収集と管理がどれほど重要かをご理解いただけたかと思います。従業員の個人情報から日々の勤怠記録、そして会社自体のルールや最新の法改正情報まで、集めるべき情報はたくさんあります。
これらの情報を、誰が、いつ、どのように更新するのか、社内でのルールをはっきりさせておくことが、継続的で安定した給与計算業務の実現につながります。この記事で整理した必要な情報のリストを参考に、自社の管理体制を見直し、ミスのない円滑な給与計算業務を目指してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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