- 更新日 : 2025年8月20日
給与支払報告書の訂正方法は?eLTAX・郵送、期限後・過年度別に手順を解説
給与支払報告書を市区町村へ提出した後で、記載内容の誤りに気づき、どのように訂正すれば良いか悩んでいる経理担当者の方も多いのではないでしょうか。特に、提出期限を過ぎてしまった場合や、過去の年度の訂正が必要になったケースでは、対応に迷うことも少なくありません。
この記事では、給与支払報告書の訂正について、eLTAXによる電子提出と紙媒体での郵送、それぞれの具体的な手順を解説します。また、期限後や過年度分といった状況別の対応方法、そして訂正手続きに伴う注意点まで解説します。
目次
給与支払報告書の訂正が必要となるケース
給与支払報告書の提出後に訂正が必要になるのは、いくつかの典型的なパターンがあります。提出後も改めて確認し、これらのケースに該当しないか注意することが大切です。
従業員情報の誤り
従業員の氏名やフリガナ、住所、マイナンバー(個人番号)といった基本的な個人情報に誤りがあるケースです。特に、転居や結婚などで情報が変更された際に、古い情報のまま提出してしまうことがあります。マイナンバーの記載ミスも速やかな訂正が必要です。
給与や社会保険料などの金額の誤り
支払った給与や賞与の総額、源泉徴収税額、社会保険料の金額、各種控除額などに計算間違いや入力ミスがあった場合です。これらの金額は住民税額の算定に直接影響するため、判明次第、速やかに正しい内容で報告し直さなければなりません。
提出漏れや二重提出
退職者や特定の従業員の給与支払報告書を提出し忘れていた提出漏れや、誤って同じ従業員のデータを二重に提出してしまったケースも訂正が必要です。提出漏れの場合は追加提出、二重提出の場合は片方を取り下げるための訂正手続きを行います。
提出方法別|給与支払報告書の訂正方法
訂正方法は、給与支払報告書をeLTAXで電子データにより提出したか、紙(郵送・持参)で提出したかによって異なります。ご自身の提出方法に合わせて、適切な手順で対応してください。
eLTAX(電子提出)での訂正方法
eLTAXで電子データによる提出をした場合、基本的には訂正後の正しい内容でデータを作成し、再度送信します。
訂正データを再送信する際は、個人別明細書の摘要欄に訂正分であることを示すため、訂正と明記しましょう。利用している給与計算ソフトや会計ソフトによっては、提出データの作成時に訂正や追加といった区分を選択できる場合があります。具体的な操作方法は、各ソフトのマニュアル等で確認してください。
参考:eLTAX
紙での訂正方法
紙で提出した場合は、訂正した書類一式を再提出する必要があります。まず、訂正後の正しい内容で総括表と個人別明細書を改めて作成してください。
その際、作成し直した総括表と個人別明細書のそれぞれの上部空きスペースに、赤字ではっきりと訂正を明記します。元の書類の誤った箇所に二重線を引いて修正するだけでは、正式な訂正として受理されない可能性があるため、必ず書類ごと作り直しましょう。
時期・状況別|給与支払報告書の訂正方法
訂正が必要になった時期によっても、対応の仕方が変わります。特に期限後や過去の年度の訂正は、注意深く進める必要があります。
提出期限後(2月1日以降)に訂正する場合
給与支払報告書の提出期限である1月31日を過ぎてから誤りに気づいた場合でも、訂正は可能です。期限後の訂正で最も重要なのは、1日でも早く手続きを行うことです。
新しい年度の住民税額の通知書は、自治体によって発送時期が異なりますが、一般的に5月頃に発送されるケースが多いです。通知書の発送前に訂正が完了すれば、正しい税額で通知されます。しかし、発送後に訂正した場合は、一度古い税額で通知が届いた後、改めて税額の変更通知を送付してもらうことになり、従業員に混乱を与えてしまう可能性があります。
過年度(前年度以前)の給与支払報告書を訂正する場合
前年度以前、つまり過去の年度分の給与支払報告書を訂正することも可能です。住民税の賦課決定は、地方税法にもとづき、増額の場合は3年、減額の場合は5年まで遡って変更できる可能性があります。
過去分の給与支払報告書を修正すると、従業員の住民税額が変更され、追加徴収や還付が発生することがあります。手続きは当年度の訂正よりも複雑になるため、必ず提出先の市区町村の担当課に電話などで連絡を取り、必要な書類や手順を詳しく確認してから進めてください。
給与支払報告書の訂正に関する注意点
最後に、訂正手続きを行う上で共通する注意点をいくつか紹介します。スムーズな手続きのために、あらかじめ把握しておきましょう。
提出先市区町村への事前連絡
訂正手続きを行う前には、提出先の市区町村の担当課(住民税課や課税課など)へ一度連絡を入れることが望ましいです。特に、期限後や過年度分の訂正、記載方法が不明な場合などは、事前に相談することで二度手間を防ぎ、より円滑に手続きを進めることができます。
源泉徴収票の訂正
給与支払報告書と源泉徴収票は、記載される金額などが基本的に同じものです。そのため、給与支払報告書の金額などを訂正した場合は、従業員へ交付した源泉徴収票も必ず訂正しなければなりません。
訂正後の正しい内容で源泉徴収票を再作成し、摘要欄や上部の空きスペースに再交付と明記して従業員へ渡してください。その際、なぜ訂正が必要になったのか経緯を説明すると、より丁寧な対応となります。従業員が確定申告を行う際や、住宅ローンの審査などで必要になる重要な書類であるため、必ず正しいものを交付しましょう。
税務署への手続き
給与支払報告書は市区町村へ提出する住民税計算のための書類です。したがって、その訂正を税務署へ直接届け出る必要は原則としてありません。
ただし、源泉徴収票の交付後や年末調整の提出期限を超過した場合は、従業員自身が税務署に対して確定申告や更正請求を行う必要があります。
また、従業員がすでに訂正前の源泉徴収票を使って確定申告を済ませているケースもあります。その場合は、従業員本人が税務署に対して修正申告(納税額が増える場合)や更正の請求(納税額が減る場合)を行う必要がありますので、その旨を従業員へ伝え、サポートすることが重要です。
給与支払報告書の訂正に関するよくある質問
ここでは、給与支払報告書の訂正に関して、経理担当者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
退職した従業員の訂正は必要ですか?
必要です。少額でも給与を支払った従業員については、退職者であっても給与支払報告書の提出対象となります。そのため、退職した従業員の給与支払報告書の内容に誤りが見つかった場合も、在職中の従業員と同様に訂正手続きを行ってください。
訂正に二重線や訂正印は使えますか?
紙媒体で提出した場合、二重線や修正液による訂正は認められません。必ず訂正後の内容で書類一式を新規に作成し直し、訂正と明記して再提出してください。提出前の書類であれば、二重線と訂正印で修正をしても問題ありません。
郵送で訂正する場合、添え状は必要ですか?
必須ではありません。しかし、訂正箇所や経緯を簡潔に記載した添え状を同封することで、受け取った市区町村の担当者が状況を把握しやすくなり、処理がスムーズに進む可能性が高まります。丁寧な対応として、同封することをおすすめします。
給与支払報告書のミスに気づいたら速やかに訂正を
給与支払報告書の訂正は、ミスに気づいた時点で迅速かつ正確に行うことが最も重要です。訂正の手順は、eLTAXか紙かといった提出方法や、期限後か過年度分かといった時期によって異なります。この記事で解説した手順を確認し、ご自身の状況に合った方法で落ち着いて対応してください。
手続きに少しでも不安や不明な点があれば、自己判断で進めずに、必ず提出先の市区町村の担当課へ事前に連絡を取り、指示を仰ぎましょう。適切な訂正手続きは、企業のコンプライアンスを守り、従業員や行政との信頼関係を維持するために不可欠です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
【テンプレ付】給与支払見込証明書とは?パートの扶養に必要?書き方もわかりやすく解説
給与支払見込証明書は、従業員の収入見込みを第三者に証明するために使用される書類です。扶養控除や社会保険の手続き、住宅ローン申請などで必要になる場合があります。 本記事では、給与支払見込証明書の用途や作成方法、また発行されない場合の対処法につ…
詳しくみる昇給の稟議書の書き方は?テンプレートや例文でポイントが分かる!
昇給稟議書の例文やテンプレートをお探しの方も多いのではないでしょうか。本記事では、昇給の稟議書の書き方を具体的に解説し、テンプレートや例文を交えてポイントを分かりやすく紹介します。昇給に必要な情報や注意点を押さえ、適切な稟議書を作成できるよ…
詳しくみる給与制度(賃金制度)とは?種類や設計手順、見直し方法を完全ガイド
社員の頑張りに応えたいが、どんな給与制度が適切かわからない。そんな悩みを抱える経営者や人事担当者は少なくありません。給与制度は、従業員の働き方と企業の方向性をつなぐ「報酬のルール」です。 適切に設計されていないと、モチベーションの低下や退職…
詳しくみる同一労働同一賃金とは?目的や根拠法などをわかりやすく解説
働き方改革の重要施策の1つに「不合理な待遇差を解消するための規定の整備」があります。これが、いわゆる「同一労働同一賃金」であり、その目的は、同一企業内での無期雇用のフルタイム労働者と非正規労働者との不合理な待遇差の解消にあります。 同一労働…
詳しくみる基本給の決め方と低い場合のデメリットとは?
基本給は給与の基本になる重要な賃金ですが、手取り額は気にしても基本給の額はあまり気にしない人が多いのではないでしょうか。 基本給は賞与や退職金、残業代などに影響する重要な金額ですから、基本給が低いためにデメリットになる場合も出てきます。 今…
詳しくみる休業手当の計算方法をケースごとに紹介!
会社都合での休業は、平均賃金の60%以上の「休業手当」を支払わなければいけません。しかし休業には自然災害や経営悪化など様々な事情があります。雇用形態により計算方法は異なり、細かい判断も必要です。 今回は、休業手当の定義から休業補償との違い、…
詳しくみる