- 更新日 : 2025年11月25日
【テンプレ付】休職とは?手当や給与の手続き、復職までの流れを解説
休職とは、従業員が病気やケガなどの自己都合により、雇用契約を維持したまま一時的に労働義務を免除される制度です。法律で定められた制度ではないため、休職期間や給与の有無は会社の就業規則によります。
人事担当者の方は、従業員から「うつ病で休職したい」と相談を受けた際、給与計算や社会保険料の手続き、傷病手当金の申請方法などで迷う場面もあるでしょう。
この記事では、休職の定義や種類といった基本から、給与・手当の扱い、社会保険料の徴収方法、休職から復職までの具体的な手続きまでをわかりやすく解説します。
目次
休職とは?法的な定義はある?
休職とは、自社の従業員が業務に従事させられない状況となった場合に、一時的に仕事を休む制度です。雇用主は、休職が必要な従業員に対し、労働契約を維持したうえで労務への従事を免除または禁止します。
休職と欠勤・休業の違いは?
従業員が仕事を休む状態には、休職、欠勤、休業 などがありますが、それぞれ意味合いが異なります。特に休職は、法律上の定義がない点を理解しておく必要があります。
| 区分 | 概念・主な理由 | 法律上の定義・給与・就業規則 |
|---|---|---|
| 休職 | 勤務先が従業員に対して労働義務を免除する制度。 【主な理由】 従業員都合(私傷病、留学など) | 【法律上の定め】 特になし(企業が任意で規定) 【給与・手当】 【就業規則】 |
| 欠勤 | 勤務先が稼働している日に休むこと。 【主な理由】 | 【法律上の定め】 特になし(労働義務の不履行) 【給与・手当】 【就業規則】 |
| 休業 (会社都合) | 勤務先の都合で従業員の就業を不可能に(拒否)すること。 【主な理由】 | 【法律上の定め】 あり(労働基準法)。不可抗力以外は、60%以上の休業手当の支払い義務あり 【給与・手当】 【就業規則】 |
| 休業 (自己都合) | 勤務先が従業員に対して労働義務を免除する長期休業の制度。
【主な理由】 | 【法律上の定め】 あり(労働基準法第65条育児介護休業法第5条、第11条) 【給与・手当】 【就業規則】 |
休職期間の定めはある?
休職の期間は、法的に定められていません。ただし、各事業所が就業規則などに定める場合は、事業所ごとの判断に委ねられます。一般的には、勤続年数に応じて休職期間の上限を設けるケースが見られます。例えば、「勤続1年未満は3ヶ月、勤続1年以上5年未満は6ヶ月、勤続5年以上は1年」といった規定です。
特に業務外の病気やケガによる私傷病(ししょうびょう)休職の場合、健康保険から支給される「傷病手当金」の支給期間(最長1年6ヶ月)を一つの目安として設定する企業もあります。
各事業所が休職を定める場合は雇用契約を交わす際に書面などで、休職についての事項を明示しなければなりません。
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休職にはどのような種類がある?
休職は、その理由によっていくつかの種類に分類されます。就業規則でどの範囲の理由を休職として認めるかを定めておくことが大切です。
私傷病(ししょうびょう)休職
雇用する従業員が業務外の私的な事情でケガや病気(うつ病などのメンタルヘルス不調を含む)をした場合、その療養期間として充てる休職制度です。
私傷病の従業員を雇用する使用者は、就業規則などで定めた休職期間内に、休職している従業員の復職が可能か判断をしなければなりません。
私傷病休職中は、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき給与は支給されないのが一般的です。その代わり、従業員の生活保障として、本人が健康保険に加入していれば「傷病手当金」を申請できます。傷病手当金は、連続する3日間の待期期間を満了した4日目以降から、通算で最長1年6カ月まで支給されます。
休職制度は解雇を一定期間猶予する目的もあるため、期間中の即時解雇は困難です。会社は、就業規則で定めた休職期間が満了する際に、主治医や産業医の診断をもとに、復職が可能か、あるいは(就業規則の定めに従い)自然退職または解雇とするかを慎重に判断する必要があります。
事故欠勤休職
業務以外の事情、例えば私的な理由や不慮の事故により就労不能になった場合など、何らかの理由で長期欠勤が必要な場合に活用される休職です。私傷病休職と似ていますが、病気療養以外での長期離脱を想定している場合に用いられることがあります。
自己啓発休職(留学休職)
従業員が海外の大学院への留学や、業務に関連する高度な資格取得など、自身のスキルアップやキャリア形成のために学習に専念する期間として認められる休職です。従業員の自発的な成長を支援する目的で導入されることがあります。
ボランティア休職
従業員が国内外での社会貢献活動(NPO活動、災害支援、青年海外協力隊など)に専念するため、会社が一定期間の休みを認める休職制度です。企業のCSR(社会的責任)の観点や、従業員に多様な経験を積んでもらう目的で設けられる場合があります。
家族帯同休職
配偶者の海外赴任や国内の遠隔地への転勤に家族として帯同するため、現職を一時的に離れることを認める休職制度です。従業員のライフイベントの変化に柔軟に対応し、優秀な人材の離職を防ぐ目的で利用されます。
出向休職
自社の従業員を、関連会社やグループ会社、あるいはまったく別の他社に出向させる際、籍は自社に置いたまま(雇用契約は維持したまま)出向先で勤務させる形態をとる休職です。グループ会社間の人材交流や、経営指導、技術指導などの目的で活用されます。
公職就任休職
従業員が国会議員や地方議員などの公職に就任し、企業の職務と議員活動の両立が困難な場合に適用される休職です。公務に就任した従業員が長期間にわたり職務から離れるための休職制度となります。
組合専従休職
企業の労働組合の役員(専従者)が、会社の業務には従事せず、労働組合の活動にのみ専従する期間として認められる休職制度です。労働組合の専従者が、賃金の発生する就業中に組合活動を行うと、会社からの経費援助(不当労働行為)とみなされる可能性があります。そのため、組合専従者は休職扱いにして活動することが適切とされます。
起訴休職
従業員が刑事事件などで起訴されて就業できなくなったときの休職制度です。従業員が何らかの犯罪の嫌疑をかけられた場合、そのまま就業させることが企業の社会的な信用問題にも関わるため、企業側として早めに休職処理をすることが推奨されています。
医療機関の診断をもとに復職か解雇かを慎重に判断する必要があります。
休職中の給与や賞与(ボーナス)はどうなる?
休職中は、出勤せず仕事も免除されるため、給与の支給や賞与・ボーナスの査定にも影響します。
給与は原則「ノーワーク・ノーペイ」
休職中は、実質仕事に従事していないため、給与が支給されません。労働契約の原則である「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づきます。
休職の理由が業務外で起きたケガや病気の場合は、健康保険から傷病手当金が支給されます。私傷病手当金の支給は、仕事を休んだ日から連続する3日間の待期期間を満了した4日目以降から、最長で1年6カ月までが支払い対象です。
賞与(ボーナス)の扱い
休職中の賞与・ボーナスの支給は、会社の就業規則や賞与規程によります。多くの企業では、賞与の算定対象期間(例:4月~9月、10月~3月)における出勤日数や人事評価に基づいて支給額を決定します。休職期間は欠勤扱いとなり、算定対象期間のすべてを休職していた場合は賞与が支給されないか、出勤日数に応じて減額されるのが一般的です。
会社により一部支給や補償制度もある
大企業などを中心に、法定の手当とは別に、会社独自の「私傷病見舞金」や「所得補償制度」を設けている場合があります。
また、民間の保険会社が提供する「GLTD(団体長期障害所得補償保険)」いわゆる「休職保険」に従業員が加入できるようにし、傷病手当金の支給終了後も一定期間所得を補償する仕組みを導入している企業もあります。
休職中に受け取れる手当とは?
休職中は無給となるのが原則ですが、従業員の生活を支えるために公的な保険制度から手当が支給される場合があります。
休職中は、すでに加入している各種保険から支給される手当が受給可能です。ここでは、休職中に受け取れる手当の制度について、金額や期間、条件などを詳しく解説しましょう。
傷病手当金
傷病手当金は、業務外で発生したケガが病気を理由に仕事を休む際に支給される手当金です。業務外で発生した傷病(私傷病)が対象となるため、会社の業務とは関係ない病気で入院し療養が必要な場合にも支給されます。
| 支給金額 | (支給開始日前の12カ月間、継続して支給されていた各月標準月額の平均額)÷ 30日×3分の2 = 日あたりの支給金額 |
|---|---|
| 支給期間 | 支給開始日より通算して1年6カ月 |
| 支給条件 |
|
出典元:全国健康保険協会|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金) をもとに作成
労災保険給付
労災保険給付(休業等給付)とは、保険給付として業務災害の場合は休業補償給付、通勤災害の場合は休業給付が支給されます。なお、労災保険では社会復帰促進等事業から保険給付と併せて休業特別支給金(給付基礎日額の20%)も支給されます。
| 支給金額 | 給付基礎日額(疾病発生前3カ月間に支給された賃金総額を同期間の暦日数で割った1日あたりの金額)× 60%= 1日の支給金額 |
|---|---|
| 支給期間 | 支給期間休業4日目から休業終了まで |
| 支給条件 |
|
出典元:厚生労働省|労災保険給付の概要 をもとに作成
会社の規定による手当
産前産後休業、育児休業中等に支給される手当もあります。ただし、休業期間等会社ごとに内容が異なるケースもあるため、確認が必要です。
出産手当金
出産手当金は、出産のための休暇を取った健康保険の被保険者に支給される手当金です。
| 支給金額 | (支給開始日前12カ月間の各月標準報酬月額)÷ 30日 × 3分の2 = 1日あたりの支給金額 |
|---|---|
| 支給期間 | 出産日(または出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)~出産日翌日以降56日までの範囲内で休業により給与の支払いがなかった期間 |
| 支給条件 |
|
※参考:全国健康保険協会「出産手当金について」をもとに作成
育児休業給付金
育児休業給付金は、1歳未満の子を養育する目的で休暇を取った場合、雇用保険から被保険者に支給されます。
| 支給金額 | 休業開始時賃金日額(直近6カ月の賃金を180日で割った金額)× 支給日数 × 67%(育休開始から181日目から50%で計算) |
|---|---|
| 支給期間 | 1歳未満の子を養育する目的で休暇 |
| 支給条件 |
|
出典元:厚生労働省|育児休業給付の内容と支給申請手続をもとに作成
介護休業給付金
介護休業給付金は、ケガや病気などで常時介護を必要(目安として2週間)とする家族を介護するための休業に対して、雇用保険より支給される給付金です。
| 支給金額 | 休業開始時賃金日額(休業開始前6カ月の賃金を180日で割った金額)× 支給日数 ×67% |
|---|---|
| 支給期間 | 93日を限度に3回まで |
| 支給条件 | 介護休業の開始日前の2年間に被保険者期間が12カ月以上あること(同期間中に本人の疾病がある場合は期間について緩和される場合あり) |
出典元:厚生労働省|Q&A~介護休業給付 をもとに作成
参照: 労災保険給付の概要|厚生労働省
休職中の社会保険料や税金(住民税)の支払いは?
休職中は無給でも、会社に在籍している限り、社会保険料や給与から差し引かれる税金の支払い義務も発生します。毎月の給与から支払う必要がある税金は、所得税と住民税です。
健康保険料
健康保険料は、休職中でも支払う義務があります。また、支払額も休職前と変わらず、会社負担分と本人負担分の折半で支払います。ただし、休職中は無給となるため、病気やケガなどで休職している場合は、支払い方法について会社と確認が必要です。病気やケガなどで休職している場合は、健康保険から支給される傷病手当金を利用して社会保険料の本人負担分を支払うことが一般的です。
介護保険料
休職中は、社会保険料に含まれる介護保険料についても支払い義務が発生します。介護保険料は、健康保険料と合わせて毎月の給与から会社負担分と本人負担分で支払っている保険料です。休職中は無給状態が考えられるため、健康保険料の本人負担分と合わせて会社が立替え後日まとめて請求される場合もあります。
厚生年金保険料
休職中の厚生年金保険料は、健康保険料や介護保険料と同じく毎月の支払いが義務付けられています。休職中の無給状態でも会社に所属している限り、所属先の会社を経由して厚生年金保険料は支払わなければなりません。
雇用保険
休職中の雇用保険は、会社から給与が支給されない無給状態であれば支払う義務がありません。雇用保険とは、仕事をして得た給与に対して発生する保険です。休職中の無給期間であれば、雇用保険料は発生しません。
所得税
所得税は、毎月支給される給与所得に対して納める金額が決まります。給与所得があれば、その額に応じた所得税を支払わなければなりません。ただし、休職中は給与が支給されないため、毎月の給与額が0円となるため、所得税を支払う必要がないでしょう。
住民税
給与から天引きされる税金には、住民税があります。住民税は、前年度の所得状況により支払う金額が決定する税金です。そのため、休職中は無給でも支払わなければなりません。
ただし、住民税の場合は社会保険料のように会社側の負担がありません。全額本人負担となります。
従業員が休職する際の手続きの流れは?
従業員から休職の申し出があった場合、会社(人事労務担当者)は以下の流れで手続きを進めます。
① 従業員からの申し出と診断書の受理
まず、従業員本人または上司経由で、休職したい旨の相談を受けます。 私傷病休職の場合は、その理由(病状や療養の必要性)を証明する医師の診断書を提出してもらいます。就業規則に「休職の際は医師の診断書を要する」と規定しておきましょう。
② 休職の発令と面談(休職期間、連絡方法の確認)
診断書の内容をふまえ、就業規則に基づき休職を決定します。「休職発令通知書」といった書面で、以下の内容を従業員本人に通知し、認識を合わせます。
- 休職開始日と(予定)期間
- 休職中の給与・賞与の扱い
- 休職中の社会保険料・住民税の支払い方法
- 休職中の連絡方法と頻度(例:月に1回、メールで体調を報告)
- 復職の手続きについて
③ 傷病手当金などの申請サポート
私傷病休職の場合、従業員が無給期間中の生活に困らないよう、傷病手当金の申請手続きを案内・サポートします。 申請書には会社が記入する事業主証明欄があるため、従業員から依頼があれば速やかに記入・捺印して返送します。
④ 休職期間中の定期的な状況確認
休職期間中、従業員を放置するのではなく、事前に取り決めた方法(メールや電話など)で定期的に連絡を取ります。 ただし、特にメンタルヘルス不調(うつ病など)の場合は、頻繁な連絡がプレッシャーとなり療養の妨げになることもあります。産業医の意見も聞きながら、本人の負担にならない頻度(例:月に1回程度)に留める配慮が必要です。
従業員が休職から復帰までの流れは?
休職制度を活用する従業員は、休職から復帰までの手順があります。こちらでは、私傷病で仕事を休む場合の休職から復帰までの流れを解説します。
① 休職に必要な手続きをする
休職する従業員は、会社に対して必要な手続きをしなければ休職制度が認められません。そのため、必要な手続きを済ませる必要があります。会社の上司または人事労務部署などに相談して休職に必要な手続きの説明を受けましょう。一般的な手続きについては次の通りです。
- 会社規定の休職に必要な申請書類の提出
- 医師(産業医)による診断書(病気休業診断書)の作成および会社への提出
- 会社と休職中の待遇や対応についての打ち合わせ(確認・相談)
- 傷病手当金の申請手続きをする
- 休職中に相談できる機関の紹介 など
② 休職期間中は心身ともに休める
休職期間中は、会社から業務に就くことを免除され、仕事から離れられる期間です。そのため、会社や仕事のことを忘れて心身ともに休むのが適切と言えるでしょう。
また、休職期間は、職場の上司や同僚との連絡が減ります。精神疾患で休職した場合、職場の上司など人間関係が原因といった精神疾患で休職した場合、職場からの連絡は控えるのが妥当です。
休職中の会社とのやり取りは、会社の人事労務担当者が窓口になることが考えられます。休職中の不安や心配なことは、適切な機関に相談しましょう。ちなみに、公的機関の相談先では、次の窓口が利用できます。
厚生労働省「こころの耳(電話・SNS・メールなどの相談窓口)」
③ 医師による復帰可能の判断を得る
会社は休職中の従業員に対して病気やケガが治ってからの職場復帰の確認を求めてくるでしょう。ケガの場合は、全治何週間と診断されますが、精神疾患の場合は将来的な病状回復を確約しにくいものです。
休職者の職場復帰は、復帰後の業務遂行能力について職場と医師(産業医)による精査のうえで判断します。たとえ、本人が病状からの回復を実感していたとしても、医師の見解と職場の意向をすり合わせなければなりません。
④ 職場復帰に向けたプランを作成する
休職中の従業員は、休職期間終了後の職場復帰について考えることでしょう。精神疾患の場合は、ケガとは違い「心の病」のため見た目では判断が難しいため、復帰する職場の理解や、復帰支援プランの作成とプランに沿った復帰への取り組みが求められます。
精神疾患で休職している場合は、早期の職場復帰はハードルが高いでしょう。そのため、傷病手当金の支給期間と照らし合わせたリハビリ出勤の導入も効果的です。休職期間中の復帰支援プランにリハビリ出勤の日を少しずつ組み込みましょう。
⑤ 復職のための面談を行う
休職中の従業員は、復帰支援プラン(リハビリ出勤など)によって、休職前の状態まで病状が回復傾向になった場合、主治医による復職診断書の作成や復職時期を決める必要があります。リハビリ出勤で職場への出社や業務遂行が問題なくできれば、復職のための面談を行いましょう。
復職面談では、会社の在籍部署の管理責任者や人事労務担当者、産業医などが同席し、復職可否の判断をします。面談の際は、現在の体調や休職中の生活リズム、復職後に再度休職をしないための再発防止策について答えられるように準備しておきましょう。
⑥ 復帰する意思を明確にする
復職面談において重要なことは、復職する意思を明確にすることです。休職者は、復帰する意思が曖昧になっていると、会社側としても復職を容認するかどうか迷う可能性があります。会社側の人員調整を考慮したうえで、復帰する意思を明確に伝えましょう。
労務担当者による休職から復帰までの手続き
会社の労務担当者は、休職制度を進めるにあたり、復帰までの手続きが必要です。詳細は以下の通りです。
休職に必要な書類を準備案内する
休職制度の利用には、申請に必要な書類を用意しなければなりません。会社内で作成する休職の申請書類だけではなく、休職する従業員のケガや病気を診断する主治医による証明書類(診断書)が必要です。なお、主治医による診断書の作成費用は、休職する従業員の自己負担となります。
また、労務担当者は従業員の休職開始にあたって、休職制度の説明や休職期間中の経済的な補償(傷病手当金など)、不安になったときの相談窓口などを紹介しましょう。
休職期間中のサポート
傷病による休職期間中は、自宅や入院先での療養が続きます。職場から離れた時間を過ごす休職者は、作業途中だった業務や取引先との約束などが不安になる可能性もあるでしょう。労務担当者や部署の管理責任者は、休職者の精神的安全のため、休職期間中のサポート体制について計画しておきましょう。
主に以下の事項について、明確に決めるのが適切です。
- 精神的に負担のかからない担当者を選定(社内でも中立的な立場の人など)
- 休職中の事務手続きのサポート(社会保険や税金、傷病手当金の手続きなど)
- 会社と主治医、家族で連携して病状に適した柔軟な対応
休職理由がうつ病などの精神疾患の場合は、些細な言動でも病状に良からぬ影響を与える恐れがあります。周囲の関係者は、求職者の病状への理解と柔軟な対応ができるように意識しましょう。
復帰に向けた準備・手続き
従業員が休職から復帰する際は、復帰に向けた準備や手続きが必要です。以下の通り、まとめましたので、ご参考にしてみてください。
- 主治医による職場復帰の可否を確認する
- 復帰可能であれば復職診断書の提出を求める
- 会社側の関係者で復職が可能か判断する
- 復職診断書に基づいた職場復帰支援プランを作成する
- 職場復帰支援プランに沿ってリハビリ出勤などで試してみる
- 復職面談を行い、復職意思を確認する
- 復職の日程や復職後の業務内容、時間などを説明し職場復帰を決定する
休職者の病状によっては、リハビリ出勤のステップを省略して復職を決定する場合もあります。
復職後の再休職や体調悪化を防止する対応
復職後は、病状の再発による再休職や体調悪化などに注意が必要です。復職後の再休職や体調悪化を防ぐには、職場における準備や対応が求められます。
- 産業医や主治医の見解を無視した対応は避ける
- 可能な限り元の職務に復帰させる(配置転換は最終手段とする)
- 復帰した休職者に自然な態度で接する
復職には、職場の理解や協力が欠かせません。上司や同僚などの理解や協力を求める形で、自然な流れで復職を進めていきましょう。
休職に関するよくある質問やトラブル対応策
休職、特にメンタルヘルス不調による休職は、デリケートな問題を含んでおり、対応を誤るとトラブルに発展しかねません。人事担当者として知っておきたい対応策を紹介します。
「休職したら終わり」って聞くけど本当ですか?
従業員の中には「うつ病で休職したら、キャリアが終わってしまう」「復職しても居場所がない」といった不安から、不調を隠して働き続け、かえって症状を悪化させるケースがあります。私傷病による休職期間中は、就業規則で定められている休職期間が満了するまでに回復できれば、解雇される可能性は低くなります。
会社としては、休職は回復のために必要なプロセスであり、不利な取り扱い(休職を理由とした解雇や不当な降格)は行わないことを日頃から周知しておくことが大切です。
また、うつ病などの精神疾患により休職している人の50%以上は、もとの職場に復帰しています。
出典元:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「Press Release」
「うつ病での休職はずるい」のでしょうか?
メンタルヘルス不調は外見からわかりにくいため、周囲の従業員から「忙しい時期にずるい」といった誤解や不満が出ることもあります。
うつ病での休職は、あくまでも病気療養のための休職です。うつ病だけではなく病気やケガで休むことは、誰にでも起きる可能性があります。
このような状況を放置すると、職場の人間関係が悪化し、復職する本人の妨げにもなります。管理職や人事部は、うつ病も病気の一種であることを全社的に教育(メンタルヘルス研修など)し、休職者が出た場合は他の従業員の業務負荷が過重にならないよう配慮(業務分担の見直し、一時的な人員補充)することが求められます。
「休職するなら退職しろ」と言われた場合は?
万が一、上司などが休職を相談した従業員に対し「休職するくらいなら辞めろ」といった発言をした場合、それはパワーハラスメントや退職強要にあたる可能性があります。
上司が休職ではなく退職を強要する場合は、次の手順で対応しましょう。
- 退職強要にあたる言動を録音やメモなどで証拠を残しておく
- 行政機関(管轄の労働基準監督署・労働組合)に相談
- 法的な処置の場合は弁護士に相談
労働基準監督署や労働組合に相談した場合は、職場の労働環境の改善に動く可能性があります。ただし、法的な処置を行う場合は、弁護士への相談が必要です。
休職中に転職活動をしてもいい?
休職中の転職活動は、特に法律で制限されていません。ただし、企業によっては、就業規則で休職中の転職活動を禁止している場合もあるため、事前に就業規則を確認しておきましょう。
休職期間満了時の対応(自然退職・解雇)
就業規則で定めた休職期間が満了しても、従業員の病状が回復せず、復職が困難な場合もあります。 この場合、多くの企業では「休職期間の満了をもって自然退職(または自動退職)とする」と就業規則に定めています。
「解雇」とすることも可能ですが、私傷病による休職期間満了時の解雇は、客観的・合理的な理由が必要であり、トラブルになりやすい側面があります。「自然退職」として扱う方が、会社・従業員双方にとって円満な雇用契約の終了となるケースが多いでしょう。いずれにせよ、就業規則への明確な規定が不可欠です。
休職制度の整備は、従業員と会社双方を守る体制づくりを
休職制度の整備は、従業員と会社双方を守る体制づくりにつながります。休職は法律で定められた制度ではなく、企業が独自に就業規則で定めるものです。従業員が病気やケガで休職する際は、給与はノーワーク・ノーペイの原則に基づき無給となるのが一般的ですが、健康保険から傷病手当金を受け取れる場合があります。
人事担当者は、社会保険料の徴収方法や手続きを明確にし、従業員が安心して療養に専念できる環境を整え、スムーズな復職を支援することが求められます。万が一の事態に備え、自社の休職規定を今一度確認しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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