• 作成日 : 2025年12月23日

合弁会社と合同会社の違いは?特徴・仕組み・使い分けを解説

合弁会社と合同会社は名前が似ていますが、意味も仕組みも異なる概念です。両者を正しく理解することで、企業同士の協業や新規事業の立ち上げ、起業時の法人形態の選択をより適切に判断できるようになります。

本記事では、合弁会社の基本から合同会社との違い、似た概念との区別、選ぶべきケースや税務面の注意点などを解説します。

合弁会社とは?

合弁会社は、複数の企業が共同で出資し、新会社を設立して共同事業を行うための仕組みです。概念として使われる用語であり、法律上の会社種類として定められているわけではありません。ここでは、その定義と会社形態との関係を整理します。

合弁会社とは複数企業が共同出資して設立する会社

合弁会社とは、複数の企業が資金や技術などを持ち寄り、共同の事業目的に向けて新しく会社を設立する方式を指します。ジョイント・ベンチャー(Joint Venture)とも呼ばれ、JVという略称でも使われています。参加企業が単独では難しい事業に挑む際、リスクやコストを分散しながら事業基盤を整えるための方法として活用されます。

法律上の会社種類ではなく既存の会社形態で設立される

合弁会社は会社法上の正式な会社形態ではなく、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社といった既存の会社形態を利用して設立されます。会社法が定める会社種類は4つのみのため、合弁会社はあくまで複数企業が共同出資した会社を示す呼称です。

一般的には、出資者が有限責任となる株式会社または合同会社が選ばれるケースが大半です。そのため、合弁会社とは「共同出資で設立された会社」という概念であり、実際の枠組みとしては株式会社や合同会社が用いられます。

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合弁会社と合併・提携の違いは?

合弁会社と合併は、どちらも複数企業が関わる点では共通しますが、企業が存続するのか消滅するのかという根本が異なります。

合弁会社は企業が存続したまま新会社を共同設立する

合弁会社では複数の企業が解散することなく存続し、共同で新会社を設立して事業を進めます。たとえばA社とB社が共同出資してC社を設立する場合、A社もB社もそれぞれ独立したまま残り、C社を通じて共同事業を行います。各企業は自社の法人格を維持したうえで新会社を通じて協力するため、参加企業が一つの組織に統合されるわけではありません。

このように、合弁会社は「既存企業が存続し、別の新会社を設ける方式」であり、企業の統合を目的とする仕組みではありません。

合併は複数企業が統合され一つの企業になる

合併では関係する企業が最終的に一つの法人にまとまり、元の企業が消滅します。A社とB社が合併する場合、新設されたC社にA社もB社も吸収されて消滅する「新設合併」、またはA社が存続してB社を吸収する「吸収合併」といった形式があります。いずれの形式でも、A社やB社といった別々の法人としての姿は、統合の結果、消滅することになります。

したがって、合併は企業の完全な統合を伴う手続きであり、独立した企業が残る合弁会社とは構造的にも目的としても大きく異なります。

提携は新会社を作らず企業同士が協力する

提携は、企業が共通の目的のために協力し合う関係を指し、大きく「業務提携」と「資本提携」に分かれます。

業務提携は技術・ノウハウ・販売網などを共有して協力する形で、出資を伴わないことが多く、新会社を設立する必要もありません。資本提携の場合は、一方の企業が他方に出資して資本関係を築くものであり、A社がB社の株式を取得するケースが典型です。

いずれの場合も、A社とB社の間で関係が完結し、通常は第三の企業を新しく設立するわけではありません。このように、提携は新会社を作らず協力する枠組みであり、新会社を共同出資で設立する合弁会社とは構造が異なります。

合同会社とは?

合同会社は、少人数での起業や柔軟な運営を重視する場合に選ばれやすい会社形態です。ここではその仕組みと特徴を整理します。

出資者全員が経営に参加する柔軟な会社形態

合同会社は、2006年の会社法改正で導入された比較的新しい会社形態で、英語では「Limited Liability Company(LLC)」と呼ばれます。出資者は「社員」として会社の運営に関わる持分会社であり、全員が有限責任を負います。株式を発行しないため、株式会社に比べると制度上の規律が少なく、会社の内部ルールを柔軟に設計できる点が大きな特徴です。

創業メンバーが密に関わる事業や、スピードを重視した運営と相性の良い仕組みといえます。

低コストで設立でき運営の自由度が高い点が特徴

合同会社は設立時の負担が少なく、公証人による定款認証が不要で、登録免許税も株式会社より低く抑えられるため、創業コストを軽減できます。さらに、役員任期の設定が不要で、決算公告の義務もないことから、運営にかかる手間や費用を抑えられる点もメリットです。

また、利益配分は出資比率どおりである必要はなく、メンバー間の合意に基づいて自由に配分方法を決められます。こうした柔軟性と機動力の高さから、合同会社はベンチャー企業やスタートアップ、小規模事業の法人化に選ばれる場面が増えており、広く活用される会社形態となっています。

参考:合同会社の設立手続について|法務省

合弁会社と合同会社の違いは?

合弁会社は「複数企業が協力してつくる新会社」という事業スキームを指し、合同会社は株式会社と並ぶ会社法上の会社形態を指します。

法律上の位置づけ、出資主体、活用シーンから両者を比較した表は以下のとおりです。

比較項目合弁会社(JV)合同会社(LLC)
概念・定義複数の企業が共同出資して設立する会社の総称。会社法上の種類ではない。会社法で定められた正式な法人形態の一つ。持分会社に分類される。
法律上の位置づけ法律上の会社種類ではない。株式会社・合同会社など既存の形式を利用して設立される。株式会社・合名会社・合資会社と並ぶ「会社法上の4類型」のひとつ。
用語の性質共同事業スキーム・協業の方法を示す概念。会社そのものの組織形態を示す用語。
出資者の条件通常、2社以上の独立した企業が参加し、共同で事業を行う。1人でも設立可能。個人・法人を問わず参加可能。
出資者の立場親会社として株主(または社員)となり、出資比率や議決権は契約で調整される。出資者(社員)が会社の経営に関与し、全員が有限責任社員となる。
設立の目的大規模プロジェクト、新市場参入、海外展開など、リスク分散とシナジー獲得が主目的。小規模事業、スタートアップ、外資系の日本法人など、機動性と柔軟性を重視する場合。
新会社の有無共同出資により必ず新会社(共同出資会社)を設立する。合同会社は会社形態そのものであり、合弁の概念とは別。
活用される場面大手企業同士の共同事業、海外企業との協業、研究開発プロジェクトなど。個人事業主の法人化、少人数の起業、外資系企業の日本法人設立など幅広い。

合弁会社のメリット・デメリットは?

合弁会社は、複数企業が共同で事業を進める方式であり、リスク分散やシナジー創出といった利点が期待できます。一方で、複数企業が関与することで調整が必要となり、意思決定に時間がかかる場合もあります。ここでは、合弁会社の利点と注意点を整理します。

リスク分散とシナジー創出ができる点がメリット

合弁会社の利点は、新規事業に伴うコストやリスクを複数の企業で分担できることです。単独では負担が大きい大規模プロジェクトでも、参加企業が資金や技術、ノウハウを持ち寄ることで取り組みやすくなります。また、各社が持つ強みを組み合わせることでシナジー効果が生まれ、単独では得られない成果につながりやすくなります。

さらに海外展開の場面では、現地企業と合弁会社を設立することで市場参入が容易になり、規制対応やローカルネットワークの活用といった恩恵を受けられる点も魅力です。このように、合弁会社は協力による相乗効果とリスク低減を両立できる方式といえます。

方針の不一致や情報管理の難しさがデメリット

合弁会社には複数企業が関与するからこその課題もあります。もっとも大きいのは、経営方針や意思決定に不一致が生じた場合の調整が難しい点です。出資企業の利害や企業文化が異なると、合意形成に時間がかかったり、事業そのものが停滞したりすることがあります。

また、参加企業間で技術やノウハウを共有するため、情報流出のリスクも相対的に高まります。このため、秘密保持や撤退条件などを契約で細かく取り決めておく必要があります。合弁会社を成功させるには、パートナー企業の選定と、事前の契約内容の明確化が重要です。

合弁会社で合同会社を選択するのがおすすめなケースは?

合弁会社を設立する際、法人形態として合同会社を選ぶことで大きなメリットが得られる場面があります。ここでは、合同会社が有効に働くケースについて解説します。

設立・運営コストを抑えて共同事業を立ち上げたい場合

合同会社は株式会社よりも設立コストが低く、定款認証が不要で登録免許税も安価なため、合弁会社として立ち上げる際の初期負担を抑えられます。新規プロジェクトで採算が読みにくい段階や、まずは小規模で試験的に運用したいケースには特に適しています。。

また、決算公告の義務や役員任期がないため、継続的な運営コストも低く抑えられ、合弁事業に必要な資源を事業活動に集中させやすくなります。費用と手間を抑えつつ、共同事業をスムーズに進めたい企業にとって、合理的な選択肢といえます。

経営判断のスピードを重視する協業を行う場合

合同会社は出資者全員が会社の経営に関与できる仕組みであり、株主総会や取締役会が不要なため、意思決定を迅速に行えます。複数企業による合弁では、方針のすり合わせに時間がかかりやすいものの、合同会社であれば合意形成を簡潔に進めることができます。

研究開発や新市場への参入など、スピードが成果を左右するプロジェクトとは相性が良く、柔軟かつ機動的な運営を可能にします。特に少数の企業で構成される合弁会社において、合同会社の迅速な意思決定能力は大きな強みとして働きます。

合弁会社の税務面の扱いは?

合弁会社の税務は、会社そのものの仕組みに左右されるため、名称だけでは判断できません。ここでは、合弁会社の税務がどのように取り扱われるのかを解説します。

採用した会社形態に応じて通常の法人税が課される

合弁会社は会社法上の独立した会社形態ではなく、株式会社や合同会社など既存の法人形態を用いて設立されます。そのため、税務上は「合弁会社だから特別な課税がある」という扱いではなく、選択した会社形態に応じた通常の法人税が課されます。

株式会社を使った合弁会社であれば、通常の株式会社と同様に法人税・地方法人税などが課され、株主に支払う配当については源泉徴収の対象となります。

合同会社を利用する合弁会社の場合も、一般の合同会社と同様に法人としての課税が行われます。利益は法人税の計算後に剰余金として残り、定款で定めた方法に従って構成企業へ分配されます。

つまり、合弁会社の税務上の位置づけは、「どの会社形態を選ぶか」によって決まります。

自社の目的に応じて適切な形態を選ぼう

合弁会社と合同会社は、その意味も用途も大きく異なります。 合弁会社は複数企業が共同出資して設立した会社であり、法律上の会社種類ではない「協業の形態」を指します。一方、合同会社は会社法で定められた法人形態の一つで、少人数でも設立できる柔軟な会社の形です。

複数企業で新事業に挑戦するなら合弁会社という方法が有効ですし、スモールスタートで起業するなら手軽な合同会社が適しているでしょう。それぞれの特徴やメリット・デメリットを踏まえ、自社の目的に合った形態を選びましょう。


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