- 作成日 : 2025年12月11日
合名会社・合資会社・合同会社・株式会社の違いやメリットをわかりやすく解説
会社を設立しようとする際、日本には主に「合名会社」「合資会社」「合同会社」、そして「株式会社」という4つの形態があります。これら4つの形態には、設立コストから運営のルール、そして事業に失敗したときの責任の重さまで、決定的な違いがあります。
この記事では、合名会社、合資会社、合同会社、株式会社の違いをわかりやすく解説します。それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、あなたがどの形態を選ぶべきかの判断基準を明確にします。
目次
合名会社・合資会社・合同会社・株式会社の違いは?
まず、4つの会社形態の最も重要な違いを一覧表で見てみましょう。 決定的な違いは、出資者が負う責任の範囲です。
| 比較項目 | 株式会社 | 合同会社 | 合名会社 | 合資会社 |
|---|---|---|---|---|
| 出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 | 無限責任 | 無限責任 & 有限責任 |
| 責任の範囲 | 出資額まで | 出資額まで | 全財産 | 全財産 (一部、出資額まで) |
| 出資者の呼称 | 株主 | 社員 | 社員 | 社員 |
| 必要な出資者数 | 1名以上 | 1名以上 | 1名以上 | 2名以上 (無限・有限 各1名以上) |
| 業務執行権 | 取締役 | 社員全員 | 社員全員 | 無限責任社員 |
| 設立費用 | 約20万円〜 | 約6万円〜 | 約6万円〜 | 約6万円〜 |
| 決算公告の義務 | あり | なし | なし | なし |
| 資金調達 | 簡単) | 難しい | 難しい | 難しい |
| 知名度・信用度 | 高 | 中 | 低 | 低 |
有限責任とは?
有限責任とは、会社の債務(借金)に対し、自分が出資した金額の範囲内でのみ責任を負う仕組みです。
例えば、100万円を出資して会社を作った場合、その会社が1億円の負債を抱えて倒産しても、出資者は「出資した100万円を失うだけ」で済みます。個人の貯金や家などの財産まで差し押さえられることはありません。
現代の会社設立では、この有限責任が基本です。
無限責任とは?
無限責任とは、会社の債務に対し、個人の全財産をもって返済しなければならないという、非常に重い責任です。
例えば、会社が1億円の負債を返せなくなった場合、たとえ出資額が100万円でも、残りの全額(1億円)を自分の貯金や家、土地などを売ってでも支払う義務が生じます。事業の失敗が、即座に個人の破産につながるリスクがあります。
参考:有限責任と無限責任について教えてください。|ビジネスQ&A|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
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合名会社・合資会社・合同会社・株式会社の特徴は?
合名会社、合資会社、合同会社は、3つまとめて「持分会社」と呼ばれます。ここでは、それぞれの特徴や株式会社との違いをわかりやすく解説します。
合名会社とは?
合名会社は、出資者全員が「無限責任社員」で構成される持分会社です。最も古くからある会社形態の一つで、出資者=社員同士の極めて強い信頼関係に基づいています。
- 設立の柔軟性:金銭以外の「信用」や「労務(労働力の提供)」だけでも出資が可能とされています。
- 信用力が高い:社員全員が全財産で責任を負うため、債権者(お金を貸す側)から見れば返済が保証されており、理論上の信用力は高くなります。
- 無限責任のリスク:事業の失敗が個人の破産に直結します。
- 意思決定の難しさ:社員が1人でも退社すると原則解散となるなど、人的な結びつきが強いゆえの制約があります。
合資会社とは?
合資会社は、「無限責任社員」と「有限責任社員」の両方で構成される持分会社です。
無限責任社員と有限責任社員が最低1名ずつ、合計2名以上いなければ設立できません。合名会社と同様、現代ではほとんど新規設立されません。
- 役割分担:事業の経営は「無限責任社員」が行い、「有限責任社員」は出資のみを行う(経営には参加しない)、といった役割分担が可能です。
- 資金調達のしやすさ:経営リスクを負いたくないスポンサー(有限責任社員)から出資を募ることができます。
- 無限責任社員の存在:少なくとも1名は無限責任の重いリスクを負う必要があり、設立の大きなハードルとなります。
合同会社(LLC)とは?
合同会社は、出資者全員が「有限責任社員」で構成される持分会社です。
2006年の会社法施行により導入された、比較的新しい形態です。アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルにしており、日本版LLCとも呼ばれます。
現在、持分会社の中で新規設立数が圧倒的に多いのが、合同会社です。
- 有限責任:出資者は株式会社と同様に、出資額以上のリスクを負いません。
- 設立費用が安い:株式会社と比べて、定款認証(公証役場の手数料)が不要で、登録免許税も最低6万円(株式会社は最低15万円)と安価です。
- 経営の自由度が高い:役員の任期がなく、利益の配分方法も出資額に関わらず自由に(例えば、貢献度に応じて)決めることができます。
- 運営コストが低い:株式会社で義務付けられている「決算公告」が不要です。
- 知名度・信用度が低い:株式会社と比べると、まだ一般的な知名度は低く、取引先によっては信用度が劣ると見なされる場合があります。
- 資金調達が難しい:株式会社のように株式を発行して市場から資金を集めること(上場=IPO)ができません。資金調達は銀行融資や社債発行が中心です。
株式会社とは?
株式会社は、日本で最も一般的で、社会的信用も高い会社形態です。出資者(株主)全員が「有限責任」で、「所有(株主)」と「経営(取締役)」が分離しているのが原則です。
- 信用度が最も高い:「株式会社」という名称だけで、取引や採用、銀行融資において有利に働く場面が多くあります。
- 資金調達に優れる:株式を発行して出資者を募ることができ、将来的に「上場(IPO)」を目指すことも可能です。
- 設立費用が高い:定款認証(公証役場の手数料約3〜5万円)が必要なほか、登録免許税も最低15万円かかり、合同会社より高額です。
- 運営コスト・手間がかかる:毎年の「決算公告」が義務付けられています。また、役員には任期があり、定期的な変更登記(手続きと費用)が必要です。
会社設立時はどの形態を選ぶべき?
合名会社・合資会社・合同会社・株式会社の違いをわかりやすく見てきましたが、現代の日本で会社を設立する場合、現実的な選択肢は「合同会社(LLC)」または「株式会社」のほぼ二択です。
「無限責任」というリスクは、現代のビジネスにおいてあまりにも過大です。無限責任を伴う合名会社と合資会社は、法人格を持つメリット(有限責任)を活かせず、現在では歴史的な存在となりつつあります。
合同会社がおすすめなケースは?
合同会社は、設立・運営コストを最小限に抑えたい場合や、少人数・家族経営、スモールスタートを切りたい場合に最適です。
- コストを最小限に抑えたい(設立費用、運営費用)
- 個人事業主からの法人成り(マイクロ法人)
- スモールビジネス、BtoC(消費者向け)ビジネスから始めたい
- 家族経営や、気心の知れた少人数で経営したい
- 外部からの大規模な資金調達や上場は考えていない
株式会社がおすすめなケースは?
株式会社は、将来的な事業拡大(上場)、大規模な資金調達、またはBtoB(法人向け)取引における高い信用度が必要な場合に適しています。
- 社会的信用度を最優先したい
- 大手企業との取引(BtoB)がメインになる
- 将来的に株式上場(IPO)を目指している
- ベンチャーキャピタル(VC)など外部から大規模な資金調達をしたい
- 採用活動において、求職者への信頼感やイメージを重視したい
会社形態選びは責任の範囲の理解から
この記事では、4つの会社形態の違いを、特に責任の範囲に焦点を当ててわかりやすく解説しました。
- 合名会社:全員が無限責任
- 合資会社:無限責任の人と有限責任の人が混在
- 合同会社:全員が有限責任
- 株式会社:全員が有限責任
これから会社設立を行う方は、無限責任のリスクを避け、ご自身の事業規模や将来の展望に合わせて、合同会社と株式会社のどちらが最適かを慎重に検討してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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