- 作成日 : 2025年6月20日
法人の代表者変更登記の手続きは?必要書類や費用、注意点まで徹底解説
法人の代表者が変わったら、法務局へその変更を届け出る「代表者変更登記」が法律で義務付けられています。この手続きを怠ると、過料の制裁や取引上の不利益を被る可能性も否定できません。
この記事では、代表者変更登記の具体的な手続きの流れ、必要書類、費用、かかる期間、注意点などをわかりやすく解説します。自分で手続きを行う方も、専門家への依頼を検討している方も必見です。
目次
そもそも代表者変更とは
代表者変更とは、法人の代表権を持つ役員(株式会社であれば代表取締役、合同会社であれば代表社員など)が交代することを指します。例えば、以下のような場合に代表者変更が発生します。
- 新たな代表者の就任:前任者の辞任、解任、任期満了、死亡などにより、新しい人物が代表者として就任する。
- 代表者の退任のみ:代表者が辞任・死亡等により不在に。後任が未定、あるいは他の役員が代表権を引き継ぐ。
- 代表権の付与・喪失:既に役員である人物に新たに代表権が付与される、または代表権を持っていた役員がその権限を失う。
これらの変更は、会社の意思決定や対外的な責任体制に直結するため、法的に公示する必要があります。
法人の代表者変更登記の法的義務
法人登記(商業登記)は、法人の名称、本店所在地、役員の氏名といった重要情報を法務局に登録し、一般に公開することで、取引の安全と法人の信用を担保する制度です。代表者は法人を代表して契約などの法律行為を行うため、その情報が正確であることは極めて重要です。
会社法第915条第1項では、登記事項に変更が生じた場合、本店所在地においては2週間以内に変更登記を申請しなければならないと厳格に定められています。代表者の変更もこの登記事項に含まれるため、迅速な対応が求められます。
法人の代表者変更登記を怠った場合のリスク
代表者変更の登記を怠ると、以下のような深刻なリスクが生じる可能性があります。
- 過料の制裁
会社法第976条第1号に基づき、登記を怠った場合、代表者個人に対して100万円以下の過料が科されることがあります。 - 信用の失墜
登記事項証明書に記載された代表者と実際の代表者が異なると、金融機関からの融資審査や、取引先との契約時に不信感を与え、信用を損なう恐れがあります。 - 法的手続きの遅延・不受理
重要な契約、許認可申請、訴訟手続きなどで登記事項証明書の提出が必要とされる際、情報が古いために手続きが滞ったり、受理されなかったりする事態に陥ることがあります。 - みなし解散のリスク
株式会社の場合、最後の登記から12年間何も登記がされないと、活動実態がない「休眠会社」とみなされ、法務局の職権により解散させられる(みなし解散)リスクがあります。代表者変更登記も、この期間をリセットする重要な手続きの一つです。
これらのリスクを回避するためにも、代表者変更が発生したら速やかに登記手続きを進めることが肝要です。
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法人の代表者変更登記でやること・手続き一覧
では、実際に代表者変更の登記手続きはどのように進めれば良いのでしょうか。ここでは、株式会社の代表取締役変更を例に、準備から登記完了までのステップを具体的に解説します。合同会社など他の法人形態では一部手続きが異なりますのでご注意ください。
後任者の選任と就任承諾の取り付け
まず、新しい代表者を選任する社内手続きを行います。株式会社における代表取締役の選任方法は、会社の機関設計(取締役会の設置の有無など)や定款の規定によって異なります。
取締役会設置会社の場合
一般的に、取締役会で代表取締役を選定します。株主総会で取締役を選任した後、その取締役の中から取締役会で代表取締役を選定する流れです。
取締役会非設置会社の場合
- 株主総会で代表取締役を選定する
定款に定めがあれば、株主総会の決議で直接代表取締役を選定できます。 - 取締役の互選で代表取締役を選定する
定款に「代表取締役は取締役の互選によって定める」といった規定があれば、取締役同士の話し合い(互選)で決定します。 - 各取締役が代表権を持つ
定款に特段の定めがない場合、原則として各取締役が代表権を持つことになりますが、通常は特定の代表取締役を定めます。
選任された新しい代表者は、その就任を承諾する意思表示が必要です。これは「就任承諾書」という書面で証拠を残します。
代表者変更の必要書類の準備
登記申請には、法務局へ提出するための様々な書類が必要となります。不備があると手続きが遅れるため、慎重に準備しましょう。代表的なものは以下の通りです。
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 取締役会議事録(取締役会設置会社の場合)
- 就任承諾書
- 辞任届(または死亡を証する書面など)
- 印鑑証明書
- 委任状 など
取締役会非設置会社の場合、取締役会議事録が不要になるなど、必要書類が簡略化される場合があります。自社の状況に合わせて確認が必要です。
変更登記申請書の作成と添付書類の準備
登記申請の中核となるのが「変更登記申請書」です。法務局のウェブサイトから様式や記載例をダウンロードできますので、参考にしながら正確に作成しましょう。申請書の主な記載事項は、以下の通りです。
- 会社の商号、本店所在地、会社法人等番号
- 登記の事由
- 登記すべき事項
- 登録免許税の額
- 添付書類の名称と通数
- 申請年月日
- 申請人
記載内容は、実態と登記事項証明書(登記簿謄本)の記載との整合性を取る必要があります。「登記すべき事項」は、いつ、誰が、どうなったのかを正確に記載します。例えば、「代表取締役A 辞任」「代表取締役B 就任」といった形で、変更前後の情報がわかるようにします。
申請方法は、法務局の窓口へ持参、郵送、またはオンライン(「登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと」や「GビズID」を利用した「かんたん登記申請」など)があります。
法務局への登記申請と登録免許税の納付
必要書類一式が整ったら、管轄の法務局へ登記申請を行います。本店所在地を管轄する法務局は、法務局のウェブサイトで簡単に調べられます。
また、代表者変更登記には、登録免許税の納付が必要です。収入印紙を購入し、登記申請書または専用の台紙に貼付して納付します。オンライン申請の場合は電子納付が可能です。
登記完了と登記事項証明書の取得・確認
登記申請後、法務局で審査が行われ、不備がなければ登記が完了します。
法務局の混雑状況や申請方法にもよりますが、通常、申請から1週間〜2週間程度で完了します。申請時に法務局の窓口で完了予定日を確認できます。
登記が完了したら、必ず新しい情報が反映された「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、内容に誤りがないか確認しましょう。取得は、法務局の窓口、郵送、またはオンラインで行えます。
法人の代表者変更登記に必要な費用
代表者変更登記には、どの程度の費用を見込んでおけば良いのでしょうか。
登録免許税
法務局に納める登録免許税の金額は、以下の通りです。
- 資本金1億円以下の会社:1万円
- 資本金1億円超の会社:3万円
専門家に依頼する場合の報酬相場
司法書士に代表者変更登記を依頼する場合、登録免許税に加えて司法書士への報酬が必要です。報酬額は事務所や案件の難易度によって異なりますが、一般的には3万円〜7万円程度が相場とされています。
議事録の作成支援や、複雑な定款変更が伴う場合などは、追加費用が発生することもあります。事前に見積もりを取り、サービス内容と費用を確認しましょう。
法人の代表者変更登記にかかる期間
代表者変更の事由が発生してから2週間以内に登記申請を行う義務があるため、期間を意識して迅速に行動することが重要です。
ご自身で手続きを行う場合
書類収集や作成に慣れていない場合、数日から1週間以上かかることもあります。申請後の法務局の審査期間が1〜2週間程度なので、トータルで2〜4週間程度を見込むのが一般的です。書類に不備があると、修正に時間がかかり、さらに長期化します。
専門家に依頼する場合
司法書士のスケジュールにもよりますが、通常数日〜1週間程度です。法務局の審査期間を含めると、こちらもトータルで2〜3週間程度が目安となります。専門家は手続きに精通しているため、スムーズな進行が期待できます。
法人の代表者変更登記で注意すべきこと
代表者変更登記を進める上で、特に注意しておきたい点についてまとめました。
代表取締役の姓が変わった場合
代表取締役の姓が変わった場合は「氏名変更」として変更登記を行います。戸籍謄本など、氏名の変更を証明する書類を添付します。
代表取締役の住所変更も同時に行う場合
代表取締役の「氏名」だけでなく「住所」も登記事項です。そのため、代表取締役が転居した場合も、住所変更登記が必要となります。
代表者の交代と同時に、新代表者の就任に伴う住所変更がある場合は、代表者変更登記と併せて、住所変更登記も同時に申請できます。この場合、登録免許税は、代表者変更と役員の住所変更を同一の申請書で行う場合でも、代表者変更にかかる登録免許税のみで済むのが一般的です。
代表者が死亡した場合
代表者がお亡くなりになった場合も、速やかに代表者変更登記が必要です。この場合、登記原因は「辞任」ではなく「死亡」となり、戸籍謄本や除籍謄本、死亡診断書の写しなど、死亡の事実を証明する書類を添付します。
代表者変更登記の後にやること
法務局への登記変更後、税務署、都道府県税事務所、市町村役場への異動届の提出、年金事務所への届出、銀行口座の名義変更、取引先への通知など、多くの関連手続きが発生します。これらも忘れずに行いましょう。
法人の代表者変更登記は会社の信頼を守る重要な手続き
法人の代表者変更登記は、単なる事務手続きではなく、会社の法的安定性と社会的信用を維持するために不可欠な手続きです。変更が生じたら2週間以内に申請するという法的義務を遵守し、正確な情報で登記簿を最新の状態に保ちましょう。
ご自身で手続きを進める方も、専門家のサポートを受ける方も、この記事がスムーズな代表者変更登記の一助となれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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