• 更新日 : 2026年3月11日

本店移転登記の完全ガイド!自分で行う手続きや必要書類・費用・オンライン申請の方法を解説

Point本店移転登記のポイント

本店移転登記は、会社の住所変更を法務局の登記簿に反映させる法的義務であり、移転日から2週間以内の申請が必須です。

  • 費用:管轄内なら3万円、管轄外移転は計6万円が必要
  • 期限:2週間を過ぎると最大100万円の過料を科されるリスクがある

定款の記載内容により、株主総会の決議が必要となります。自分で申請する場合は、移転先での同一商号・同一本店の重複確認や、賃貸物件が法人登記を許可しているかの確認が不可欠です。

会社の拠点を移転した際、避けて通れないのが「本店移転登記(住所変更の手続き)」です。この手続きは単なる事務作業ではなく、法務局への申請を伴う法的義務であり、遅れると過料というペナルティが発生する可能性もあります。

本記事では、本店移転登記の基本から、管轄外・管轄内での費用の違い、オンライン申請の活用法、そして自分で行う際の注意点まで、専門的な知見をもとに分かりやすく解説します。

本店移転登記とは?

本店移転登記は、会社の住所変更を法務局の登記簿に反映させるための法的義務です。

会社法第915条第1項に基づき、本店を移転した日から2週間以内に登記申請を行わなければなりません。この期限を過ぎて放置すると「登記懈怠」とみなされ、裁判所から最大100万円以下の過料を科されるリスクがあります。

本店移転登記が必要になる主なケース
  • オフィスを賃貸契約して移転したとき
  • 自宅兼事務所の住所が変わったとき
  • バーチャルオフィスやシェアオフィスへ拠点を移したとき

本店移転登記の種類は?

本店移転登記は、移転先の住所が現在の法務局の管轄内か管轄外かによって手続きの複雑さと費用が大きく異なります。

管轄内本店移転

現在の本店所在地と同じ法務局の管轄区域内へ本店を移転する場合です。

例えば、東京都千代田区から同じ千代田区内へ移転する場合や、同じ東京法務局(本局)の管轄である千代田区から中央区へ移転する場合などが該当します。この場合、手続きは移転先の法務局(つまり新所在地の管轄法務局)1ヶ所への申請で済みます。

管轄外本店移転

本店を、現在の所在地とは異なる法務局の管轄エリアへ移転するケースです。

例えば、東京都千代田区(東京法務局管轄)から神奈川県横浜市中区(横浜地方法務局管轄)へ移転する場合などが該当します。この場合、旧本店所在地を管轄する法務局と、新本店所在地を管轄する法務局の両方へ登記申請を行う必要があり、手続きや登録免許税が管轄内移転とは異なります。

本店移転登記の手続きを自分で行う流れは?

本店移転登記は、社内の意思決定から始まり、法務局への申請、行政機関への事後報告までの一連の流れで進めます。

1. 社内での意思決定

まず、本店移転に関する正式な決議を行います。定款に記載されている本店の所在地の書き方によって、株主総会が必要かどうかが決まります。

移転先の住所が決まったら、まずは自社の定款を確認し、以下のどちらのパターンに該当するかを判断することが重要です。

株主総会での定款変更が必要なケース

定款に記載されている地域(最小行政区画)の外へ移転する場合は、株主総会の特別決議が必要です。

該当する事例
  • 定款に「本店を東京都千代田区に置く」とあるが、中央区へ移転する場合。
  • 定款に具体的な番地(東京都千代田区麹町1-1-1)まで記載されており、同じ千代田区内でも別の番地へ移転する場合。
必要な手続き
  • 株主総会を開催し、発行済株式の過半数を有する株主が出席。
  • 議決権の3分の2以上の賛成を得る「特別決議」によって定款を書き換える必要があります。
決定すべき事項
  • 定款変更の決議(例:「東京都中央区」に変更する)
  • 具体的な移転場所と移転日の決定(※取締役または取締役会に委任することも可能です)

株主総会での定款変更が不要なケース

定款に記載された地域内での移転であれば、経営陣の判断のみで迅速に決定できます。

該当する事例
  • 定款に「本店を東京都千代田区に置く」とあり、同じ千代田区内(麹町から永田町など)へ移転する場合。
必要な手続き
  • 取締役会設置会社:取締役会を開催し、過半数の賛成で決議します。
  • 取締役会非設置会社:取締役の過半数によって決定し、「取締役決定書」を作成します。
決定すべき事項
  • 新本店の具体的な所在場所(番地・ビル名・部屋番号まで)
  • 本店移転の具体的な日付(移転日)

2. 申請書類の作成

意思決定が完了したら、法務局へ提出する必要書類を準備・作成します。代理人に依頼する場合は委任状も必要です。

3. 法務局への申請(窓口・郵送・オンライン)

移転の日から2週間以内に管轄の法務局へ登記申請を行います。期限を過ぎると過料の対象となるため注意が必要です。

参考:管轄のご案内|法務局

申請先の法務局
  • 管轄内移転の場合:新本店所在地を管轄する法務局
  • 管轄外移転の場合:まず旧本店所在地を管轄する法務局に申請(2通の登記申請書が必要)し、その後、新本店所在地を管轄する法務局へ書類が送付されます。
申請方法
  • 窓口申請:法務局の窓口に直接書類を持参して申請します。
  • 郵送申請:書留郵便で法務局へ送付します。
  • オンライン申請:登記・供託オンライン申請システム」を利用して申請します。

4. 登録免許税の納付

収入印紙、またはオンラインでの電子納付によって税金を支払います。

本店移転登記の必要書類は?

本店移転登記の移転先の住所が「現在の法務局の管轄内か、管轄外か」によって、手続きの複雑さと費用が大きく異なります。

管轄内移転・定款変更が不要な場合

  • 本店移転登記申請書
  • 取締役会議事録(取締役会設置会社)または取締役決定書(非設置会社)
  • 登録免許税納付用台紙(収入印紙30,000円分)

管轄内移転・定款変更が必要な場合

  • 本店移転登記申請書
  • 株主総会議事録(定款変更の決議)
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録または取締役決定書
  • 登録免許税納付用台紙(収入印紙30,000円分)

管轄外移転の場合(定款変更は原則として必須)

  • 本店移転登記申請書(旧管轄用・新管轄用の計2通が必要)
  • 株主総会議事録(定款変更および本店移転の決議)
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録または取締役決定書
  • 登録免許税納付用台紙(収入印紙 合計60,000円分)
  • 印鑑届書(管轄が変わるため、新管轄の法務局へ改めて提出が必要)

出典:商業・法人登記の申請書様式|法務局

本店移転登記申請書のダウンロード方法は?

「本店移転登記申請書」は法務局のウェブサイトからダウンロード可能です。

Head_Office_Relocation_Registration_Application_Form

出典:商業・法人登記の申請書様式|法務局株式会社本店移転登記申請書

また、マネーフォワード クラウド会社設立でも「本店移転登記申請書」の無料テンプレートをご用意しているので、ぜひご活用ください。

本店移転登記のオンライン申請の方法は?

法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用すれば、インターネット経由で本店移転登記の申請ができます。オンラインで登記申請を行うことができるのは代表取締役等の申請権限者もしくは代理人となります。

オンライン申請のメリット

  • 法務局へ出向く手間と交通費が省ける。
  • 平日の午後9時まで申請を受け付けている。
  • オンライン申請でも登録免許税額は変わりませんが、電子納付が可能です。

準備するもの

  • パソコンとインターネット環境
  • 申請用総合ソフトのダウンロード・インストール
  • 電子証明書
  • ICカードリーダライタ

GビズIDプライムまたはメンバーアカウントは必須ではありませんが、利用できる手続きが広がります。

参考:GビズID|申請アカウントの選択

登記・供託オンライン申請システムの利用手順

  1. 申請用総合ソフトを起動し、申請者情報を登録する。
  2. 申請書様式を選択し、必要事項を入力する(登記すべき事項はテキストファイルで添付も可能)。
  3. 作成した株主総会議事録などの添付書類をPDF化し、電子署名を付与して添付する。
  4. 申請データを送信する。
  5. 到達通知・受付のお知らせを確認後、登録免許税を電子納付する(インターネットバンキングやATMからPay-easyを利用)。

利用手順の詳細については、法務局のウェブサイト「株式会社の本店移転の登記をしたい方(オンライン申請)」ページで確認しましょう。

本店移転登記にかかる費用は?

自分で手続きを行う場合、主な費用は登録免許税と実費のみとなります。司法書士への報酬は発生しません。

登録免許税

  • 管轄内本店移転:30,000円
  • 管轄外本店移転:60,000円 (旧本店所在地法務局分30,000円 + 新本店所在地法務局分30,000円)

登録免許税は、収入印紙を購入し、登記申請書と一緒に提出する台紙に貼付して納付します。

参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

その他の実費

  • 登記事項証明書取得費用:登記完了後や、場合によっては議事録作成の際に会社の情報を確認するために取得(1通490円〜600円程度)
  • 郵送費:郵送申請する場合の書留郵便代など
  • 交通費:法務局へ直接出向く場合の交通費

本店移転登記にかかる期間は?

本店移転登記が完了するまでの期間は、申請先の法務局の混雑状況や申請内容(管轄内か管轄外かなど)によって異なり、一般的には以下の通りです。

  • 管轄内本店移転:申請からおおむね1週間〜2週間程度
  • 管轄外本店移転:旧本店と新本店の両方の法務局での手続きがあるため、通常の1週間〜2週間より日数がかかるケースもあります。

法務局のウェブサイトで、現在の標準処理期間の目安が公開されている場合もありますので、確認してみるとよいでしょう。

本店移転登記完了後に必要な手続きは?

本店移転登記完了後は、以下の関係各所への届出・連絡を忘れずに行いましょう。

税務署への届出

  • 異動届出書:新しい本店所在地を管轄する税務署(場合によっては旧本店所在地を管轄する税務署にも)へ提出します。登記事項証明書(履歴事項全部証明書)のコピーを添付します。
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書:従業員に給与を支払っている場合に必要となる届出です。

参考:C1-8 異動事項に関する届出|国税庁A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁

都道府県・市区町村への届出

新しい本店所在地のある都道府県税事務所および市区町村役場へ、法人住民税・法人事業税に関する届出を行います。登記事項証明書のコピーなどを添付します。

参考:法人事業税・特別法人事業税・地方法人特別税・法人都民税|申請様式(共通)|東京都主税局

年金事務所・労働基準監督署・ハローワークへの届出

  • 健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届:新しい本店所在地を管轄する年金事務所へ提出します。
  • 労働保険名称、所在地等変更届:新しい本店所在地を管轄する労働基準監督署へ提出します。
  • 雇用保険事業主事業所各種変更届:新しい本店所在地を管轄するハローワークへ提出します。

参考:事業所の名称・所在地を変更するとき|日本年金機構労働保険の成立手続|厚生労働省

これらの届出は、移転後速やかに行う必要があります。機関ごとに厳格な期限が設けられている場合があるため、登記完了後は直ちに取りかかりましょう。

その他の届出・手続き

  • 金融機関:取引のある銀行や信用金庫、証券会社、保険会社など金融機関に住所変更の届出を行います。登記事項証明書などが必要になります。
  • 郵便局:転居届を提出し、旧本店所在地宛の郵便物が新住所へ転送されるように手続きします。
  • 許認可関連:許認可を受けて事業を行っている場合は、管轄の行政庁への届出や変更申請が必要な場合があります。

本店移転登記を自分で行うメリット・デメリットは?

本店移転登記を自分で行うことで、コストを抑えられる一方で、ミスによる手間が増えるリスクがあります。

メリット

  • 専門家報酬(3〜7万円)を削減できる:登録免許税と実費のみで済むため、最も安価です。
  • 会社法務の知識が身につく:自社の定款や組織構造を深く理解する機会になります。

デメリット

  • 書類不備による差し戻し:議事録の文言ひとつで修正指示が入ることがあり、法務局へ何度も足を運ぶ可能性があります。
  • 膨大な時間:専門外の作業に数日を費やすことになり、経営者のリソースを奪います。

本店移転登記で注意すべきポイントは?

本店移転登記は、単に書類を出すだけでなく、商号の重複確認や実印の再登録など、慎重な確認が求められます。

1. 同一商号・同一本店の禁止

移転先と全く同じ住所(ビル・部屋番号まで同一)に同名の会社がある場合、その場所での登記は認められません。 商業登記法により「同一住所・同一商号」の登録は禁止されているため、特にシェアオフィスやバーチャルオフィスへ移転する際は注意が必要です。事前に「登記情報提供サービス」等を利用して、移転先に同名の会社が存在しないか必ず調査してください。

参考:登記情報提供サービス

2. 印鑑カードの再発行と印鑑届(管轄外移転のみ)

法務局の管轄外へ移転する場合、旧管轄の印鑑カードは失効するため、新管轄での再登録が必要です。 登記申請時に「印鑑届書」を提出しますが、登記完了までは新しい印鑑証明書を発行することができません。重要な契約を控えている場合は、証明書が必要なタイミングと登記申請時期を慎重に調整しましょう。

3. 賃貸借契約書の使用目的との整合性

住居用物件を本店にする際は、賃貸借契約で「法人登記」が許可されているか事前に必ず確認してください。 法務局での登記自体は受理されますが、契約上の「住居専用」条項に抵触すると、オーナーとのトラブルや強制退去に発展するリスクがあります。後々のトラブルを防ぐためにも、貸主から登記の承諾を得ておくことが不可欠です。

本店移転登記をスムーズに行いましょう

本店移転登記は、移転日から2週間以内に完了させるべき重要な手続きです。管轄内なら3万円、管轄外なら6万円の登録免許税が必要となり、議事録などの書類準備が必須となります。

手続きを怠ると過料のリスクがあるだけでなく、銀行口座の住所変更や法人の契約変更ができなくなる実害も発生します。早めにスケジュールを引き、必要書類を揃えて、新しい拠点でのビジネスを万全の状態でスタートさせましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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