- 作成日 : 2024年5月2日
独占交渉権に関する合意書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
独占交渉権に関する合意書は買い手が売り手と独占的な交渉を行う際に締結する合意書です。この記事では独占交渉権に関する合意書とはどのような書類なのか、どのような内容を盛り込むべきなのかをご紹介します。テンプレートもご用意していますので、ぜひ参考にして独占交渉権に関する合意書を作成してみましょう。
目次
独占交渉権に関する合意書とは
独占交渉権とは一定期間の間、買い手が売り手と独占的に売買交渉できる権利のことを指します。この期間中、売り手は勝手に他者と交渉することはできません。売買交渉はもちろん、勧誘や営業活動もできなくなります。
ちなみに合意書とは当事者同士の合意事項を記した書類であり、署名捺印した時点で合意が形成されたとみなされます。一方、契約書は契約時(取引の開始時)の合意内容を記した書類のことです。合意書と契約書は名前が違いますが、法的拘束力は変わりません。
独占交渉権に関する合意書を作成するケース
独占交渉権に関する合意書を作成するケースとしては、物品の売買交渉を行う際が挙げられます。希少性が高い物を売り買いする場合、売り手が他の買い手と交渉して売却してしまうかもしれません。こういった事態を防ぐために独占交渉権に関する合意書を作成することがあります。
もう一点挙げられるのがM&Aを行う際です。M&Aに向けて交渉を進めていても、やはり譲渡側が他の譲渡先候補と交渉することで、他者に先を越されてしまう可能性があります。そこで、ある程度交渉によって条件などがまとまってきたら、一定期間他の候補と交渉ができなくするために独占交渉権に関する合意書を締結するケース、もしくは基本合意書に独占交渉権について記載するケースが多いです。
なお、今回はM&Aの際に締結する独占交渉権に関する合意書を前提として解説を進めていきます。
M&Aの際に締結する契約については、以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。
独占交渉権に関する合意書のひな形
独占交渉権に関する合意書を独自で一から作成するのは大変です。特にはじめて作られる方は、どのような書式で、どのような事柄を盛り込めばいいかわからないと思われるかもしれません。そこで、今回はすぐに使えるテンプレートをご用意しました。こちらを参考にして作成してみましょう。
独占交渉権に関する合意書に記載すべき内容
ここからは独占交渉権に関する合意書に盛り込むべき内容について、項目ごとにご説明します。ぜひテンプレートをダウンロードしていただいて参照しながら読み進めてみましょう。
当事者の名称
まずは誰と誰が合意を形成するのかを明らかにします。譲渡側を甲、譲受側を乙というように置き換えて記載するのが一般的です。
独占交渉権について
譲受側に一定の期間独占交渉権が発生する旨、その間は譲渡側が他者と交渉しない旨と、その期限について記載します。
調査について
M&Aを行う際には譲受側が譲渡側の経営状況や将来の見通しなどについて調査を行いますが、その内容と調査を行う法人または個人(譲受者とコンサルタントなど譲受者から調査依頼を受けた法人または個人)が譲渡側に対して調査を行う旨を記載します。
最終契約に向けて
譲渡側と譲受側が交渉を進め、内容に合意した場合は最終契約を締結する旨を記載します。
秘密保持について
交渉を進めるにあたって譲渡側、譲受側が守るべき秘密保持に関するルールについて記載します。秘密保持の対象外となる事例や、条項の有効期限についても記載しましょう。
協議
合意書に記載されている内容で解決できないような問題などが発生した場合に、両当事者が協議して解決を目指す旨を記載します。
合意管轄
両当事者間で紛争が発生した際に調停や裁判を開く裁判所名を記載します。一方の本店所在地を管轄する地方裁判所を指定しましょう。
署名押印欄
最後に両当事者が合意書に記名押印したうえで保管する旨を記載します。また、合意が成立した日付と両者の記名押印欄(住所、会社名、代表者名、押印欄)を設けましょう。
独占交渉権に関する合意書の作成ポイント
以上で独占交渉権に関する合意書に盛り込むべき内容についてご紹介しました。ここからは独占交渉権に関する合意書を作成する際の注意点についてご説明します。以下の点を意識して作成しましょう。
独占交渉権の期間と範囲を明確にする
譲受側が独占交渉権を行使すれば譲渡側は他の候補者と交渉することができなくなります。とはいえ、譲渡側にも譲渡先を選ぶ権利はあり、いつまでも拘束しておくわけにはいきません。独占交渉権の有効期間を明確に決めましょう。ケースバイケースですが、2~3ヶ月間に設定することが多いようです。
また、独占交渉権が及ぶ範囲についても明確にしておく必要があります。テンプレートには「本件期間内は、乙以外の法人又は個人との間で本件譲渡及び類似の行為を含めて、甲の経営権の移転に関する交渉を一切行わず、第三者を通じて行うこともしない。」と記載しており、このように譲渡側はどのようなことができないのかを記載しましょう。
デューデリジェンスの範囲と調査者を明確にしておく
M&Aを行う際には譲受側が譲渡側の会社の経営状態や財務状況などを調査し、価値を評価します。これをデューデリジェンスといいます。どういった内容を調査して評価するのかといったことも独占交渉権に関する合意書にて明らかにしておきましょう。また、調査やデューデリジェンスは譲受側の経営者などはもちろん、コンサルタントや会計士などが行う場合もあります。誰が調査を行うかについても明確にしておくことが大切です。
秘密情報の取り扱いについてルールを定めておく
M&Aでは上記のようにデューデリジェンスが行われ、譲渡側企業のさまざまな情報が譲受側に伝わります。秘密情報が漏れると譲渡側企業の経営に悪影響を及ぼしかねません。また、譲受側の企業に関しても、秘密情報の漏洩によって交渉が破談になってしまうリスクがあります。
一連の交渉や調査で得た情報をどのように扱うのか、どのような情報を第三者に漏らしてはいけないかを明らかにしましょう。
独占交渉権に関する合意書にも効力が発生する
今回は、独占交渉権に関する合意書の書き方についてご紹介しました。「合意書」と名がついていますが、法的効力は契約書と同等です。譲受側は他の候補者に先に越されないために、独占交渉権の範囲や期間、調査内容や調査者をしっかりと明確にしておきましょう。一方、譲渡側は自社に不利な条項が盛り込まれていないかを確認し、納得したうえで署名捺印することが重要です。
双方にとって実りがある取引を実現するためにも、今回ご紹介したポイントを意識して独占交渉権に関する合意書を作成・チェックしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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