• 更新日 : 2023年3月23日

契約書のレビューはどんな流れで行う?AIサービスも紹介

契約書のレビューはどんな流れで行う?AIサービスも紹介

契約書のレビューでは、作成された契約書について「契約として有効であるかどうか」「その内容が適切であるかどうか」といったチェックを行います。

この記事では契約書のレビューのやり方について解説し、作業全体の流れや、その際に特に確認すべき具体的なポイントも紹介します。

契約書をレビューする際の大まかな流れ

契約書レビューは、以下のような流れで行います。

  1. 契約内容を把握する
  2. 自社にとって問題となる箇所の有無をチェックする
  3. 修正案の作成
  4. 作成した修正案をチェックする

なお、報酬を得て法律事務を行う場合、弁護士資格がなければ弁護士法第72条規定の「非弁行為(弁護士以外が報酬目的で弁護士業務を行うこと)」に該当し、違法となる可能性があります。

会社に雇用されている法務部員などが自社の契約書をレビューする場合は弁護士資格がなくても非弁行為とはなりませんが、弁護士資格を持っていない業務委託の方が契約書のレビューする場合は非弁行為に該当する可能性があるため、注意が必要です。

1. 契約内容を把握する

契約書レビューを行うにあたり、まずは契約内容を把握しましょう。特に着目すべきポイントは「契約の概要と目的」「契約期間と契約金額」です。

契約の概要と目的

契約書をレビューする際は、何のための契約なのか、契約によって何をしようとしているのかをあらかじめ認識しておくことが大切です。契約締結の目的がはっきりしていると、契約書に足りないことや修正すべきことなどを見つけやすくなります。

例えば、秘密保持契約は「自社の秘密情報を漏らされないため」「目的外利用をされないため」といった目的で交わされると考えられます。自社がこの目的を実現するためにはどのような条項を設ける必要があるのか、取引先との関係性も鑑みてどのようなルールを作ることが効果的なのかを考えましょう。

契約期間と契約金額

契約書のレビューでは契約の概要や目的を把握した上で具体的な条項を見ていくことになりますが、特に契約期間や契約金額はしっかり目を通しておきましょう。

「いつまで契約関係が続くのか」「いつまで権利を持つのか」「いつまで義務を負うのか」「いくら対価を得られるのか」「いくら支払わなければならないのか」といったことを確認しましょう。

契約書に記載されている情報と認識にズレがあると、大きな問題に発展するリスクが高くなります。

2. 自社にとって問題となる箇所の有無をチェックする

自社にとってリスクとなり得る箇所は、特に注意深くチェックしましょう。

目的物と対価が適切に記載されているか

契約の目的物と対価については、適切な形で記載されていることを確認しましょう。自社が認識したとおりの金額や目的物が設定されているだけでなく、契約書における記載方法や表現が適切であるかどうかも確認すべきです。

例えば読み手によって解釈が異なるような形で記載されていると、後々トラブルに発展するおそれがあります。そのため、「別の意味で捉えられる書き方になっていないか」といった視点でもレビューを行う必要があります。

例えば「10万円」という契約金額でも、それが単価なのか月額なのかによって大きな差が生じます。契約前の相手方との協議においてその意味が明らかであったとしても、契約書には明記しておくべきです。

金額だけでなく、その他の条項についてもしっかり表現の適切さや明確さを確認しましょう。

必要な項目は漏れなく、重複なく入っているか

契約を締結する目的を達成するために必要な項目が漏れなく入っているかどうか、逆に同じような内容が重複して記載されていないかも確認します。

同じような条項が記載されていても大きな問題にはなりづらいですが、同じような内容であるにもかかわらず生じる効果に差がある場合は混乱を招くおそれがあります。

例えば、契約金額について「月額○○円」と記載されており、別の箇所で何の説明もなく契約金額について「単価○○円」などと記載されていると、どちらが正しい契約金額なのかわかりません。単に記載を間違えたのか、それとも月額費用の支払いに加えて納品のたびに単価に応じた支払いが必要なのかがわからず、混乱してしまいます。

契約書のひな形を流用していると削除すべき条項も出てきますし、このような重複にも注意が必要です。

不利益を被る項目はないか

自社にとって不利益となる項目については、特に注意する必要があります。

リスクとなる条項が一切含まれていないのが理想ですが、契約の締結は相手方との合意が前提となるため、バランスを上手く取らなければなりません。

例えば、損害賠償・違約金に関する項目には注意が必要です。自社の契約違反のリスクが低いとしても、過剰な損害賠償の支払いを認めるべきではありません。契約に違反してしまった場合も想定し、業界で一般的に設定されている賠償金額に近いものにしてもらうといった交渉を行うべきです。そのため、レビューを行うにあたっては契約に関する相場を知っておくことも大切です。

逆に自社が強い立場にあり、自社に有利で取引先に不利な条項を設けることができる状況だとしましょう。この場合でも、相場を逸脱して必要以上に相手方に負担をかけるべきではありません。契約には定めたものの、いざ当該条項が適用された場合にトラブルとなる可能性がありますし、契約時の印象も悪くなります。良好な関係性を築きづらくなりますし、極端な場合は法令に抵触するおそれもあります。

契約は当事者間で自由に定められるのが原則ですが、法令で制限が設けられていることがあります。また法令上のルールがなくても、あまりに高額な違約金などは公序良俗に反するとして、無効になることもあります。

3. 修正案の作成

ここでは、契約書の修正を行う際の具体的なフローを見ていきます。

誤字・脱字を修正する

契約書に限らず、書類作成において誤字・脱字のチェック・修正は欠かせません。

これは、書類の見栄えが悪くなるのを防ぐためだけの行為ではありません。特に契約書においては1つの誤字が契約内容を大きく変えるおそれがあるため、個々の文言をよく確認する必要があります。

「てにをは」や「または」「かつ」「あるいは」などの使い方が間違っていないか、また「甲」「乙」が逆になっていないか、注意してレビューを進めていきましょう。

曖昧な部分を明確にする

条件や義務の内容は明確にし、範囲についても明確かつ適切な内容になるように修正しましょう。

例えば、業務委託契約において「乙は、当契約に基づく業務の履行にあたり、甲の指示に従わなければならない」と記載されることがよくあります。
しかし、「無条件で指示に従わなければならない」とも読み取ることができ、乙としては不利益が大きいといえます。そこで、「甲の合理的な指示に従わなければならない」といった形で修正を行います。合理的な指示の範囲は定かではないものの、リスクの範囲を狭めるためには「合理的な」という文言が役に立ちます。

「義務」と「努力義務」の使い分けも大切です。

100%実現することが難しい事柄に対して「しなければならない」という文言がある場合は、「努めなければならない」などに修正しましょう。逆に実現可能性のある事柄で、相手方に特に守って欲しいルールに関しては「努める」ではなく「しなければならない」という表現を使うべきです。

また、賠償額についても注意して範囲を定めましょう。

単に「乙の故意または過失により甲に損害が生じた場合、乙はその損害を賠償する」などと定めたのでは、乙は上限なく賠償義務を負うことになってしまいます。乙としてはリスクヘッジのため、但し書きで「過去○ヶ月の間に乙が甲から受領した対価を上限とする」などと定めるのも1つの手段です。。

このような文言の追加について相手方の了承が得られない場合でも、上限のない定めとするのではなく、双方の納得が得られる形で上限額を模索していくことが大切です。

不利益を被る項目を排除する

自社が不利益を被る項目については排除できないか、相手側に交渉してみましょう。

特にバランスが悪く、一方的な義務が課せられているような条項については、スルーせずに指摘するべきです。

また、契約解除に関する規定もしっかり確認しましょう。

契約の継続によって自社に不利益が生じる可能性がある場合、この契約をスムーズに解除できるようにしておくと不利益を最小限に抑えやすくなります。

4. 作成した修正案をチェックする

契約書の修正案ができたら、以下のポイントを押さえて最終チェックを行いましょう。

関係先や担当者と認識のズレがないか確認する

修正後の内容が取引先やその他関係先の認識とズレていると、契約を締結することができません。

そこで、契約書のレビューを行う法務部門のみならず、現場の担当者にもヒアリングを行い、契約を締結することになった背景や、相手方との関係性などを調査しておくことが望ましいです。

自社の利益だけを追求するのではなく、互いにストレスのない取引ができるように調整しましょう。

一読してわかるか確認する

解釈の違いが生じない内容にしようとするあまり、非常に読みにくい契約書になってしまうケースがあります。

全体を通して判読性が十分かどうかにも着目し、意味が伝わる範囲で簡潔かつ明確な記載を目指しましょう。

また相手方に提出する修正案は、校閲モードなどを使って修正箇所をわかりやすく示し、コメント機能などを使って修正の意図や自社の要望などを伝えるとよいでしょう。

AIがチェックする契約書レビューサービスとは?

契約書のレビューを行う方法として、外部の弁護士に依頼する方法やAIを使った契約書レビューサービスもあります。

AIを使った契約書レビューサービスはアプリ上に契約書をアップロードし、AI技術を用いて当該書類に記載されている内容を読み取り、法的観点から有利・不利などの審査を行うものです。

ユーザーにとっては非常に便利なサービスですが、当該サービスが非弁行為にあたり、違法ではないかとの指摘もあります。

法務省はこのようなサービスに対して、「非弁行為にあたり違法になる可能性がある」という旨の回答を公表しています。

参考:新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表

このようなサービスの利用を検討する場合は、適法なサービスかどうかの見定めも必要です。

契約書レビューはさまざまな事情を考慮して慎重に進めよう

契約書のレビューは慎重に行わなくてはなりません。契約内容をわかりやすくまとめること、解釈の違いが生じないようにすること、自社に不利な内容とならないこと、法令に反する内容にしないこと、誤字・脱字がないようにすることなど、さまざまな事柄を考慮して総合的にバランスの取れた内容に仕上げる必要があります。

自社のみで対応することが難しい事案である場合は、弁護士などに相談してレビューを進めましょう。

よくある質問

契約書レビューはどのような流れで行いますか?

契約内容の把握や自社に不利な箇所のチェック、修正案の作成、作成した修正案のチェックといった流れで契約書レビューを進めます。詳しくはこちらをご覧ください。

契約書のAIレビューサービスとは何ですか?

契約書をアップロードしてアプリ上でAIが契約内容を審査し、法的観点から有利・不利などの結果を示すサービスです。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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