• 作成日 : 2025年3月3日

法令遵守とは? 意味やコンプライアンスとの違いを簡単にわかりやすく解説

法令遵守とは、法律や省令・規則、条例などをしっかりと守ることです。企業において、法律や規制などの法令遵守は、社会的信頼の構築につながり、企業の持続的な成長に不可欠といえます。

本記事では、法令遵守の意味やコンプライアンスとの違いをわかりやすく解説し、企業にとっての法令遵守の必要性と、法令遵守を徹底するためのポイントをわかりやすく紹介します。

法令遵守とは

法令遵守とは、企業や個人が活動を行う上で、関係する法令を理解し、それを守ることです。

意味が似ている言葉として「コンプライアンス」があります。コンプライアンスは、法令遵守より広い概念として使われます。法令を守るだけでなく、社内規則や社会規範、倫理観を踏まえて適切な行動をすることを指して使われることが多い言葉です。

例えば、法令遵守は企業活動において最低限求められる必須要件であり、コンプライアンスは組織全体がスムーズに機能するための重要な取り組みといえるでしょう。

法令遵守の定義

法令遵守とは、企業や組織、個人が何かしらの活動をする際に、その行動に関連した法律や規則、条例などの各種法令を正しく理解し、それらに従って行動することです。

例えば一般的な企業活動においては、会社法・労働法・独占禁止法などの、事業内容や形態に関連する法令を理解した上で、違法行為をしないような行動をすることを指します。

法令遵守は企業を運営する上では基本的な責務であり、法律違反となる罰則を避けるために最低限の必須条件といえます。

法令遵守とコンプライアンスの違い

法令遵守は、法令や条文など、明文化された規則を厳守することを指し、主に法的義務に焦点を当てています。

一方でコンプライアンスは、法令遵守を含む、広義な社会的ルールを守ることを意味します。具体的には、社会規範や倫理観など、明文化はされていなくても社会的に見て適切であると考えられることを、理解して行動をすることが求められます。

つまり、2つの言葉は含まれている範囲が大きく異なります。法令遵守はコンプライアンスの一部であるといっていいでしょう。

法令遵守の読み方

法令遵守の読み方は「ほうれいじゅんしゅ」です。

遵という字はあまり使い馴染みがなく、尊という言葉が入っているため「そん」と読み間違える方もいるため、注意が必要です。遵は一文字でも「じゅん」と読み、法則に従って行動することを意味します。

表記は「法令順守」としても誤りではないですが、正式には「法令遵守」です。

法令遵守の英語表記

法令遵守を英語で表記する際は、「Legal Compliance」または「Regulatory Compliance」という言葉を使用するのが一般的です。

また、法律を守る、という意味合いの言葉として「keep the law」「protect the law」という表現を使用することもあります。

法令遵守の使い方・例文

ビジネスシーンでは、主に企業の方針や規程、報告書などの文書などで法令遵守という言葉が使用されます。具体的な例文としては、次のとおりです。

  • 「当社は法令遵守を経営の最重要課題と位置付けています」
  • 「法令遵守の観点から、この取引は見送りとさせていただきます」
  • 「法令遵守を徹底するため、全社員を対象とした研修を実施します」
  • 「法令遵守責任者を各部署に配置し、管理体制を強化いたしました」

上記のように、法令遵守は「~を徹底する」「~の観点から」といった使い方をされることが多くあります。

このように、単に企業が法令を守ることだけでなく、その意識を社内外に示すことで、企業の信頼性向上につながります。

法令遵守が求められる業界

企業活動を行う上で、法令遵守はすべての業界に必須です。しかし、公共性の高い事業を行っているなど、特に厳格な法令遵守が求められる業界が存在します。

次に、そのように法令遵守が求められる業界と具体例を、いくつかご紹介します。

介護業界

介護業界では、利用者の安全と福祉を確保するために厳格な法令遵守が求められます。

介護施設では、適切なサービスを提供するために、法令遵守を徹底する必要があります。例えば、介護保険法や高齢者福祉法を遵守することにより、介護職員が利用者に対して適切なケアを行い、安全で質の高いサービスを提供できるようになります。

利用者の生活を支え、利用者の家族から信頼を預かる業界であるため、厳しく法令遵守を心がける必要があります。

医療業界

医療業界は患者の命に直結する仕事が多いため、法令遵守は極めて重要です。医療機関で守らなければならない関連法令は、医師法や薬機法、医療法など多岐にわたります。これらの法律を遵守し、適切な医療行為をすることが必要です。

例えば、医者が患者に対して適切なインフォームドコンセントを行う必要があることや、看護師が医師の指示なく医療行為をしてはいけないことなどが、法令に則した行動となります。また、医療事故を防ぐためのガイドラインにもとづき、感染症やミスを防ぐ対策を講じることも重要です。

患者の安全を確保して信頼を築くために、厳格な法令遵守が必要となります。

金融業界

金融業界は、顧客の資産保護や経済基盤の安定という重要な役割を担っており、法令遵守を徹底することが不可欠です。

金融商品取引法や銀行法にもとづき、顧客へ適切な情報提供やリスク説明を行うなど、公平・公正な取引が求められます。

また、インサイダー取引禁止規制により、内部情報を利用した不正な利益獲得も禁じられています。 さらに、マネーロンダリング防止のため、顧客確認や取引モニタリングを通じて、犯罪収益の洗浄を阻止する責任も負っています。

多くの人々の資産や重要な情報を取り扱う金融業界は、高い社会的責任を伴い、厳格な法令遵守が求められるのです。

建設業界

建設業界では、安全性の確保と環境への配慮などから法令遵守が求められます。

建設業法や労働安全衛生法にもとづき、現場での安全基準を守り、適切な建設施工を行う体制が必要です。例えば、建築物の設計や施工においては、耐震基準や環境基準に適合している建築物にしなければなりません。また、労働者や下請けとなる施工企業の従業員の安全を守るための安全対策や、定期的な安全教育の実施も法令により必要とされています。

従業員や完成した建築物を使用する人の生命に関わる業界であるため、企業や従業員の法令遵守の意識が非常に重要となります。

法令遵守を怠った場合のリスク

法令遵守を怠ると、企業は深刻な影響を受ける可能性があります。具体的には、法的制裁、経済的損失、社会的信用の失墜など、複数の面でリスクが発生します。

法的制裁を受ける可能性

法令遵守に違反した場合、行政処分や刑事罰、損害賠償の支払いなど、法的な罰則を受けることになります。

罰則の内容は、違反の内容や程度、社会的な影響や行為の反復性によって異なり、重い罰則が科されるケースも少なくありません。また、責任の所在となる役員や従業員個人が逮捕・起訴される場合もあります。

罰金や損害賠償請求などの金銭的な罰則のほか、業務停止命令や営業許可の取り消しなど、事業継続に直接関わる処分を受けることもあるため、その後の経営にも影響を及ぼします。

経済的損失を被る可能性

法令遵守に違反をした場合、さまざまな方面への金銭的な損害が発生する可能性があります。

具体的には、違法行為による罰金の支払いや、当該行為によって損害を被った企業や個人への損害賠償金の支払いなどです。

さらに、法令に違反したことにより、取引先からの契約解除、株価下落など、会社として間接的に経済的損失が発生する可能性もあります。

また、法令違反の事実公表や、顧客等への謝罪にかかる費用、再発防止策の実施コストなども必要となります。

信用失墜をする可能性

法令遵守ができていないことが明らかになった場合、顧客やビジネスパートナーからの信用が失墜するおそれがあります。

また企業の信用が損なわれると、取引先が離れて事業の存続自体が難しくなったり、ブランドイメージの低下により顧客が離れて売上が減少したりする可能性もあります。従業員個人の法令遵守違反であったとしても、企業自体にネガティブな評判が広がってしまい、それにより新たなビジネス機会を失うリスクも高まります。

さらには、社内からの信頼も失い、優良な従業員の流出や社内のモチベーションの低下を招く可能性もあるのです。

法令遵守を徹底するためのポイント

上記のようなリスクを回避するために、企業は法令遵守を徹底しなければなりません。そのためには、以下のようなポイントで法令遵守に対する取り組みを行う必要があります。

社内規程やマニュアルを整備する

関連した法律や規制にもとづいた社内規程・マニュアルを整備することは、法令遵守の第一歩です。

法令を具体的な行動規範として落とし込んだ社内ルールを作成することにより、従業員は具体的な行動指針を得られ、法令を遵守した行動がしやすくなります。

社内ルールを作成をするだけではなく、理解してもらうための説明会や、チェックリストを作成することで、従業員の理解不足から生じる違反行為を防ぎやすくなります。

従業員教育を実施する

従業員に対して、法令遵守に関する教育や研修を定期的に実施することも重要です。

研修を行うことにより、従業員は業務や業界に関連する法律知識や遵守すべき規制を理解し、日常業務で自分がするべきことを実践できるようになります。

研修プログラムは、社内での集合研修や業務中の指導、さらには外部研修の参加など、さまざまな形態を組み合わせることで、法令遵守に対する理解をいっそう深められます。

さらに、新入社員研修や昇進時研修など、階層別の教育プログラムも重要です。

内部監査やコンプライアンス委員会を設置する

法令遵守が適切に行われているかをチェックする機能も重要です。

具体的には、内部監査の実施や、コンプライアンス委員会の設置などにより、組織の運営を定期的にチェックすることが必要になります。これにより、組織内部での問題を発見し、改善策を講じられます。

また客観性をもって法令遵守を確認するために、業務に直接従事している関係者以外の第三者的な視点でのチェックも有効な手段の1つです。

リスクアセスメントを実施する

リスクアセスメントとは、特定の活動やプロジェクトに関連する潜在的なリスクを特定、分析、評価することです。

企業の法令遵守におけるリスクアセスメントでは、業務プロセスごとに存在する法令違反リスクを特定し、その影響度や発生する可能性を評価します。そして対策が必要な優先度の高いリスクに対して、予防措置を講じます。

リスクアセスメントを行うことにより、企業は想定される問題に対する対応力を高められ、リスク回避の行動を社内規則などにして従業員に伝えられます。

法令遵守の重要性と実践ポイント

企業における法令遵守とは、業務や業種に関連する法律に従うことであり、それを怠ると法的制裁、経済的損失、信用の失墜といったリスクが生じます。最悪の場合、企業そのものの存続に関わる大きな問題に発展しかねません。

これらのリスクを回避するためには、企業として従業員教育を充実させ、内部統制を強化することが必要です。企業全体で法令遵守に取り組むことで、社内外からの信頼が向上し、さらには社会的意義のある存在として成長していけるでしょう。


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