- 更新日 : 2025年4月10日
電子契約の同意書や事前承諾書が必要な書類は?作り方やひな形を紹介
電子契約の導入により、多くのビジネス契約書が電子的に締結できるようになりました。ただし下請事業者や消費者保護の観点から、一部の契約では電子化に関する事前承諾が法的に求められています。
本記事では、電子契約における同意書・承諾書の作成方法や実務で使えるひな形、注意点まで詳しく解説します。
目次
電子契約の同意書や事前承諾書が必要な書類
DX推進の流れもあり、多くのビジネスシーンで電子契約が可能になりつつあります。ただしそういった中でも下請事業者や消費者保護の観点から、一部の契約では電子化に関する事前承諾が必要です。
以下に、電子契約が可能ではあるものの事前承諾書が必要な書類を紹介します。
建設工事の請負契約書
建設工事の請負契約では、2001年4月の建設業法改正により電子契約が可能となりました。ただし、電子契約を実施するためには契約相手方から事前承諾を得ることが必要不可欠です。
この承諾には、電磁的措置の具体的な方法や種類、内容について技術的基準を満たさなければなりません。さらに、契約書データの改ざんを防止するための適切な措置を講じることも求められています。
下請会社に対する受発注書面
下請法では、電子的方法による書面交付には下請事業者からの事前承諾が必須です。また、承諾を得る際には、電子的方法の具体的な種類としてメールやWebシステムなどの利用方法を明示する必要があります。
不動産売買や賃貸借契約に関する契約書
2022年5月の宅建業法改正により、事前の承諾・同意を条件に不動産取引の電子契約が可能になりました。電子化の対象となる書類には、媒介契約書、重要事項説明書、賃貸借契約書、売買契約書などが含まれます。
貸金業法に関する契約書
金銭消費貸借契約書は、電子化しての契約締結が可能です。民法587条の2により、電磁的記録による契約は書面とみなされ、法的な効力を持ちます。ただし事前の承諾がなければ電子契約はできません。
投資信託契約約款
投資信託契約約款の電子化は可能ですが、金融商品取引業者は電子契約で投資信託契約を締結する前に、投資信託約款について、また電子化について相手方からの事前承諾が必要です。
旅行契約の説明書面
旅行契約の説明書面は、旅行業法に基づき、取引条件説明書面の電磁的交付が認められています。ウェブサイト上に取引条件説明書面を掲示し、旅行者がその内容を了承した旨のアイコンをクリックするなどの方法で承諾を得なければなりません。
労働条件通知書面
2019年4月より、労働基準法施行規則の改正によって労働条件通知書面の電子化が可能になりました。従業員が電子化を希望している場合に限り認められ、紙面でプリントアウトできること、また従業員が確認できる形式で受け渡すことも電子化の条件になっています。
派遣労働者への就業条件明示書面
就業条件明示書も労働条件通知書面同様、当該派遣労働者の合意・希望が得られた場合に限り、PDFデータやメール、SNSなどでの交付が認められています。
電子契約の同意書や事前承諾書を作成する方法
電子契約を行うにあたっての同意書や事前承諾書に、法的に定められた書式はありません。ただし、トラブルを防ぐためのいくつかのポイントを抑えておく必要があります。
対象となる案件名を明示したうえで、電子交付の種類や方式、根拠法令などを記載しましょう。また作成日と承諾を得た日付欄も必要です。署名欄は、双方の欄を設けます。
そのほかにも特記事項があれば、明記しておきましょう。
電子契約の同意書や事前承諾書のひな形・テンプレート
電子契約の同意書や事前承諾書のひな型を、官公庁が公開しています。盛り込むべき事項がわからないなどの不安があれば、契約内容にあわせてカスタマイズしたうえで積極的に活用することをおすすめします。
重要事項説明書の電磁気的方法による交付の同意書
国道交通省が提供している、説明の相手方向けのWord形式の同意書テンプレートです。電子化の根拠となる法令などが記載されています。
参考:国土交通省 同意書ひな形(説明の相手方向け)(wordファイル)
電子受発注に係る下請事業者の承諾書
中小企業庁による「下請取引適正化推進講習会テキスト」には、下請法3条書面電子化の事前承諾書の例が掲載されています。下請事業者の承諾書は原則としてこのテンプレートに従うと安全でしょう。151ページで確認できます。
電子契約の同意書や事前承諾書を作成するときの注意点
電子契約に同意書や事前承諾書を作成する際には、以下の点を押さえておきましょう。
- 電子化の対象書類を記載する
- 相手にとっての電子化のメリットを伝える
電子化の対象書類を記載する
電子化の対象となる書類は、業法や関連法令に基づいて正確に特定する必要があります。電子化する書類の根拠法令や条文番号を明記することが、認識の相違によるトラブルなどの防止につながります。
相手にとっての電子化のメリットを伝える
電子契約であれば時間や場所を問わず契約締結が可能である、紙の保管が不要であることなど、電子化によるメリットを相手方に説明しましょう。
理解が得られれば、承諾を得やすくなることが期待できます。
電子契約の合意締結証明書とは
電子契約における契約成立を客観的に証明するための文書が、合意締結証明書です。
電子契約は、その性質上システム障害やログイントラブルといったリスクを完全に防ぐことはできません。合意締結証明書があれば、万が一システム上で契約内容を確認できなくなった場合でも、契約締結の事実を証明できます。
なお、この証明書の名称はサービス提供会社によって異なる場合がありますが、役割に変わりはありません。さらに、電子契約サービスが終了した場合でもこの証明書が契約の証明手段になります。
電子契約は事前承諾が必要なケースもある点に注意
電子契約の導入は、ビジネスの効率化に大きく貢献しますが、相手方の事前承諾や同意が必要なケースもあります。また、関連法令の改正も多く、電子契約の導入に消極的な事業者も少なからず存在するのも事実です。
そのため法令で定められた要件を満たすのはもちろん、相手方の理解を得ながら、段階的に電子化を進めていくことが望ましいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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