- 更新日 : 2025年2月4日
誓約書を守らなかった場合はどうなる?法的効力や対応方法などを解説
誓約書は、ビジネスや個人間において、提出した側が受け取った側に対して一定の取り決めを守ることを明文化した文書です。誓約書には一定の法的効力があるため、守らなかった場合は規定のペナルティが発生する可能性があります。
この記事では、誓約書の基本概念や必要とされる場面、法的効力、守られない場合の対処方法について解説します。
目次
そもそも誓約書とは?
誓約書とは、誓約する者が特定の行動や義務を約束し、その内容を遵守することを示す文書です。誓約書は、当事者の名前や具体的な誓約内容、条件、期間などが明文化されており、違反した際のペナルティについても記載します。
誓約書は契約書と同様に法的拘束力をもつため、誓約する人(誓約者)はその内容を遵守しなければなりません。また、署名・押印があることで誓約者の意思が明示され、信頼性の担保につながります。なお、誓約書の署名・押印は誓約する者のみが行います。
誓約書を作成する主な目的は、後々のトラブルを防ぐことです。法的拘束力をもつ誓約書は、万が一トラブルが発生した場合でも重要な証拠として機能します。また、誓約する者の責任が明確化されることで、お互いの誤解や認識のずれを抑止できます。
誓約書が必要となる場面
誓約書が必要な場面にはいくつかあり、いずれも合意内容を明確にし、法的拘束力をもたせることを目的としています。以下に、誓約書が用いられる代表的なシーンを紹介します。
機密保持契約
業務に関して知った秘密情報を、第三者に開示しないことを約束するために用いられます。
コンプライアンス
金融機関や医療機関といった特定の業界で、関連する法規制やルールを遵守するために用いられます。
ローン契約
借入やローン契約を結ぶ際、返済条件や利息に関わる誓約書を取り交わすことでトラブルを防げます。
誓約書の法的効力
誓約書は、当事者が行動や義務を遵守することを約束するもので、法的に拘束力をもちます。ただし、有効性を確保するにはいくつかの条件もあるため、作成時には注意が必要です。
例えば、具体的な内容や条件、当事者の自発的な同意が得られていることが必須で、いずれかが漏れていると正式な文書として認識されない可能性があります。
誓約書に法的拘束力が付与される利点は、トラブルが発生した際に重要な証拠として機能することです。万が一、契約違反や義務の不履行が起きたとしても裁判などでの証拠として提出でき、法的措置による問題解決に役立ちます。
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誓約書を守らなかった場合はどうなる?
誓約書を守らなかった場合、具体的にどのようなリスクを負うのでしょうか。ここでは、3つの例を用いて解説します。
退職時の誓約書を守らなかった場合
退職時の誓約書を守らなかった場合、起こりうるのが損害賠償などの問題です。
一般的に、企業が雇用する従業員と取り交わす誓約には秘密保持契約(NDA)が含まれており、従業員は退職した後も企業の秘密情報を漏らすことが禁じられています。
同時に、違反した際のペナルティについても言及されるため、元の雇用主から損害賠償を請求される可能性があります。さらに、取引先リストや個人情報の持ち出しは、誓約書の違反以前の問題として、不正競争防止法や個人情報保護法といった法的責任も問われます。
また、誓約書に競業避止義務が含まれるケースでは、仕事上の問題も生じます。競業避止義務とは、同業他社への転職や自らの起業が制限されることで、元の雇い主との競合を避けるための取り決めです。これに違反すると、元の雇い主から、損害賠償請求だけではなく、業務差し止め請求をされる可能性があります。
離婚時に夫婦間で交わす誓約書を守らなかった場合
離婚時に夫婦間で交わされる誓約書も法的拘束力をもつ文書の1つです。その内容を守らなかった場合、法的および経済的なペナルティ、子どもへの影響、親子関係の悪化といったさまざまなリスクを伴います。
例えば、誓約書で取り決めた財産分与や養育費の支払いの義務に違反した場合、相手方から調停を起こされる可能性があります。もし裁判所でなされた調停や審判の内容に従わなければ、相手方から強制執行の手続きが行われ、預金や給与の差し押さえが実施される可能性があります。
今後一切関わらない誓約書を守らなかった場合
特定の相手との接触を避けることを約束するため、今後一切関わらない誓約を書面で行うケースがあります。これを守らなかった場合には、法的なトラブルが生じるだけでなく、個人の信用や社会的な評価にも影響が及ぶ可能性があります。
例えば、元夫婦やビジネスパートナーの相手に対して接触した場合、違反者は民事訴訟を起こされることがあります。その後、裁判所から接近禁止命令が発出されたにもかかわらず再度違反行為が行われると、罰金か懲役の厳しい措置を受ける可能性があります。さらに、誓約書違反が続いた際は刑事事件として取り扱われ、より重い罰則が科されるリスクがあります。
誓約書を守らなかった場合の対応方法は?
誓約書を取り交わした相手方が違反した場合、対応方法には3つのステップがあります。ここでは、具体的な流れとポイントを解説します。
話し合いと交渉
相手方が誓約書の内容に違反した際に、まず対処したいのが話し合いと交渉です。法的手続きを進めるには、証拠収集や弁護士への相談、裁判所への申し立てなどで多くの時間を要しますが、相手方と直接話し合いをすることで早期解決が期待できます。
さらに、相手方が違反した理由や状況も把握できるため、建設的な対話を通じて双方の協力関係が生まれます。
また、当事者間で解決するもう1つの方法が警告書の送付です。この文書には、誓約書の内容や違反行為の詳細、是正を要求する旨などを明記した上で、その期限も設けます。これにより、相手方に是正に向けた猶予を与えられ、同時に、後々の法的手続きに役立つ重要な証拠となります。
弁護士に相談する
相手方との交渉がうまく進まない場合、次の手段として有効なのが弁護士への相談です。
弁護士は、専門家の立場から違反の事実を検証し、相談者にどのような権利があり、どのような対応策があるのかを的確に判断できます。仮に違反者に対して法的措置を取る場合でも、裁判に向けた証拠収集や法的手続きをサポートしてもらえます。
また、弁護士は損害賠償のリスクを評価し、相談者に最適な和解方法の提案が可能です。これにより、長期間の裁判を避けることができ、弁護士費用や裁判費用といった経済的な負担が軽減されます。
さらに、今後のリスクを回避するためのアドバイスも受けられ、誓約書の見直しや将来的なトラブルの予防にもつながります。
裁判で争う
相手方との和解が進まない場合、最終的な手段として用いられるのが法的手続きです。法的手続きでは裁判を進めるための準備や法的知識も要求されるため、一般的には弁護士に依頼した上で進められます。
具体的な手順として、まず実施するのが証拠収集です。当事者間で署名した誓約書のコピーだけでなく、違反を証明するための文書やメール、写真、目撃証言などを準備します。その後、訴状とあわせて裁判所に提出し、審理のスケジュールが決定されると裁判が始まります。
なお、裁判においては、誓約書の有効性や違反の深刻度が争点となり、提出された証拠が詳しく検討されます。損害賠償を求める際は、その違反行為の重要度に応じて金額が決定され、さらに、違反行為を今後防ぐための是正措置が命じられることもあります。
誓約書を守らなかった場合に請求できるものは?
誓約書を守らなかった場合、その違反に対していくつかの請求が行えます。ここでは、一般的な請求項目について解説します。
損害賠償請求
誓約書は法的拘束力をもつ文書であるため、その違反に対して損害賠償請求が可能です。
そもそも損害賠償請求とは、違反行為によって生じた損害を補填するためのもので、実際の損害額を元に算出されます。ただし、損害賠償は直接的な損害額だけでなく、信用失墜や逸失利益といった間接的な損害も含まれ、裁判所はその金額を算定して違反者に支払いを命じます(民法416条)。
違約金
損害賠償とは別に、金銭を請求できるのが違約金です。誓約書では、違反行為を抑止するための違約金に関わる条項が含まれることが多く、違反の際は、その条項に基づいて違約金を請求できます。
例えば、秘密保持契約(NDA)に違反すると、相手方には誓約書に定められた違約金を支払う義務が生じ、裁判所を通じて違約金の支払いを命じられることがあります。
裁判費用や弁護士費用
相手方の違反行為によって法的トラブルに発展した場合、裁判費用や弁護士費用を請求できる可能性があります。
誓約書を守ってもらうための注意点は?
誓約書は作成すれば必ず守ってもらえるものではなく、有効性をもたせることが重要です。ここでは、誓約書を作成する際の注意点について4つ解説します。
関連法規をチェックする
誓約書を守ってもらうためには、内容が関連法規に違反していないことが原則です。労働基準法や個人情報保護法は、合意の如何を問わず適用される「強制法規」にあたるため、これに違反した誓約書は無効とされます。
また、無理やり署名させたり騙したりする行為も法律によって禁じられており、これで同意を得たとしても効力が失われます。そのため、誓約書を作成する際は、弁護士に相談するか、専門家が監修したテンプレートを用いるのがおすすめです。
署名・押印を実施する
誓約書に信頼性をもたせるためには、署名と押印も忘れてはなりません。署名と押印は、相手方が自身の責任を理解していることを示す証拠となり、法的な有効性が高まります。逆に、署名と押印がないまま同意を得ると、法的トラブルの際に不利になる可能性があります。
また、署名と押印は誓約書の内容を遵守する意識を高め、相手方の違反行為に対する抑止力としても有効です。
誓約書を公正証書にする必要はない
誓約書は、当事者同士が同意することを示す契約書とは異なり、誓約する人だけが記名押印するものです。
契約書を公正証書とする目的は、私人間で作成された契約書などの私文書に公的な法的根拠を与えるものであるため、誓約する人の意思を示す一方向的な文書を公正証書にする意味はありません。
誓約書のひな形・テンプレート
以下のページより、誓約書のひな形をダウンロードできます。誓約書を作成する際にご活用ください。
誓約書を守らなかった場合に備えて法的効力をもたせよう
誓約書を相手方が守らなかった場合のために、その法的効力と対応方法について知ることは重要です。誓約書は正しく作成することで法的手続きが有効となり、違反された際は、損害賠償や違約金などを請求できます。
違反された際の手順として、まずは相手方との交渉を試みましょう。もしこれに応じてもらえなければ、弁護士に相談することで法的なアドバイスが受けられます。また、裁判に発展する場合は証拠をしっかりと準備し、法的手続きに備えることが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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