• 更新日 : 2026年10月6日

働き方改革でできることとは?中小企業の取り組みやリスク

Point働き方改革でできることは?

企業と従業員それぞれが役割に応じて取り組める施策があります。

  • 労働時間や休暇の制度を見直す
  • 柔軟な働き方の仕組みを整える
  • 業務効率化ツールを活用する

制度を導入するだけでは定着せず、現場の運用まで見据えた準備が欠かせません。

働き方改革でできることは、企業が行う制度整備と、従業員自身の日々の工夫の両方に分けて整理できます。政府主導の取り組みが進む一方で、何から手をつければよいか分からない担当者も多いため、本記事では企業・従業員それぞれの視点から具体的な取り組み方を紹介します。

参照:「働き方改革」の実現に向けて|厚生労働省

働き方改革で企業が守るべき義務は?

働き方改革関連法により、企業規模を問わず「年5日の有給休暇取得」と「時間外労働の上限規制」が義務化されています。違反した場合は罰則の対象となるため、中小企業でも対応が欠かせません。

参照:働き方改革のポイント|厚生労働省

年5日の有休取得義務

年5日の有休取得義務では、年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、年5日を確実に取得させる必要があります。

  • 対象は管理監督者を含む全労働者(パート・アルバイトも付与日数10日以上で対象)
  • 取得方法は本人の請求・計画年休・使用者による時季指定のいずれか
  • 労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し5年間(当分の間、3年間)保存する

取得させなかった場合は労働基準法違反として罰則の対象となるため、年度初めに取得計画を立て、進捗を月1回確認する運用が有効です。

参照:年次有給休暇の時季指定|厚生労働省

時間外労働の上限規制

時間外労働の上限規制では、残業時間の上限が原則として月45時間・年360時間と定められています。

臨時的な特別の事情があっても以下の上限を超えることはできません。

  • 年720時間以内
  • 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
  • 単月100時間未満(休日労働を含む)
  • 月45時間を超える残業月は6か月以内

上限を超えた場合は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。中小企業は2020年4月から適用されており、労働時間の客観的な把握が対応の第一歩になります。

参照:時間外労働の上限規制|厚生労働省

2つの義務の違いを整理すると、次のとおりです。

項目 有休取得義務 時間外労働の上限規制
対象 年10日以上付与の全労働者 原則としてすべての労働者
(管理監督者など、一部除外あり)
基準 年5日の取得 原則月45時間・年360時間
(一部業種は独自の特例あり)
罰則 労働者1人当たり30万円以下の罰金 6か月以下の拘禁刑または
30万円以下の罰金
施行時期 2019年4月〜 中小企業は2020年4月〜

労働基準監督署の調査で違反が発覚するケースもあるため、勤怠管理システムを導入して労働時間や休暇取得状況を正確に把握することがポイントです。

その他に対応が求められる項目

罰則はないが対応が求められる項目には、同一労働同一賃金や勤務間インターバル制度などがあります。

  • 同一労働同一賃金:
    正社員と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消(罰則はないが行政指導・行政ADRの対象)
  • 勤務間インターバル制度:
    終業から翌日の始業までに一定の休息時間を確保する努力義務
  • 労働時間の客観的な把握:
    タイムカードや勤怠システムで労働時間を把握する義務(罰則の定めはない)

罰則がなくても、行政指導や是正勧告の対象になり得るため、優先度の高い義務項目とあわせて計画的に取り組むことが望ましいでしょう。

参照:同一労働同一賃金|厚生労働省

企業ができる働き方改革の取り組みとは?

企業が主体となって進められる働き方改革は、労働時間・働き方の制度・待遇・業務プロセスという複数の領域にまたがります。それぞれの領域で何ができるのかを見ていきましょう。

労働時間の是正

労働時間の是正では、時間外労働の上限規制を踏まえた勤務体制の見直しが土台になります。

  • 月45時間・年360時間の上限を超えない勤務体制にする
  • 勤務間インターバル制度を導入し休息時間を確保する
  • 有給休暇の取得状況を月次で確認する
  • 時間外労働の実績を早めに把握し突発的な長時間労働を防ぐ

柔軟な働き方の制度導入

柔軟な働き方の制度導入では、テレワークとフレックスタイム制の組み合わせが現実的な選択肢になります。

  • テレワークを導入し通勤負担を減らす
  • フレックスタイム制で始業・終業時刻を柔軟にする
  • 対象部署や業務内容を絞って段階的に制度導入を広げる
  • 出社が前提の職種には時差出勤や短時間勤務を検討する

待遇・評価制度の見直し

待遇・評価制度の見直しでは、正規雇用と非正規雇用の間にある不合理な待遇差の解消が中心的なテーマです。

  • 同一労働同一賃金の観点で待遇差を点検する
  • 待遇差がある場合は理由を説明できる体制を整える
  • 労働時間や雇用形態ではなく業務の内容や責任の程度を評価軸に取り入れる
  • 管理職向けに評価基準の説明会を行い運用のばらつきを防ぐ

業務効率化・ICT活用

業務効率化・ICT活用では、紙やハンコを前提とした業務プロセスの電子化が優先度の高い取り組みです。

  • 申請・承認をシステム上で完結できるようにする
  • 勤怠管理・経費精算・給与計算をクラウド化する
  • 紙の帳票をデジタル化し出社せずに処理できるようにする

従業員・現場でできる働き方改革への関わり方とは?

働き方改革は企業の制度整備だけで完結するものではなく、従業員一人ひとりの取り組みによって効果が定着します。現場でできることを整理します。

業務の見直しと効率化

業務の見直しと効率化では、日々の作業のなかにある無駄な手順を洗い出すことから始められます。

  • 会議の目的・参加者を必要最小限に絞る
  • 資料の作成方法を簡略化する
  • 繰り返し発生する作業をテンプレート化する
  • 緊急度の低い作業を後回しにする判断をする

柔軟な働き方制度の活用

柔軟な働き方制度の活用では、用意されている制度を実際に使ってみることが第一歩になります。

  • テレワークやフレックスタイム制を実際に利用する
  • 育児や介護の事情は早めに上司へ相談し調整する
  • 制度の利用実績を周囲と共有する

スキルアップへの取り組み

スキルアップへの取り組みでは、限られた時間で成果を出すための知識や技術を継続的に習得する姿勢が求められます。

  • 業務効率化ツールの操作方法を学ぶ
  • 資格取得や社内外の研修に挑戦する
  • 教育訓練給付制度など外部支援を活用する
  • 学んだ内容を業務に落とし込み周囲と共有する

中小企業が働き方改革でできることは?

中小企業では大企業に比べて人員や予算に制約があるため、費用のかからない取り組みから着手し、支援制度を活用しながら段階的に進める発想が現実的です。

中小企業が今日からできる取り組み

中小企業が今日からできる働き方改革は、費用をかけずに着手できる取り組みから始めると、無理なく定着させやすくなります。

今日から着手できる代表的な取り組みは次の表のとおりです。

取り組み 具体的な内容 目安の期間
ノー残業デーの設定 週1日、定時退社を徹底する曜日を決める 即日〜1週間
有給休暇取得計画表の作成 従業員ごとに年5日分の取得予定を可視化する 1週間程度
会議ルールの明文化 1回30分・参加者を必要最小限に絞るルールを決める 即日
勤怠打刻方法の統一 エクセル管理から打刻ツールへの切り替えを検討する 2週間〜1か月
相談窓口の周知 労働時間や働き方に関する相談先を朝礼や掲示で共有する 即日

活用できる支援制度・助成金

活用できる支援制度・助成金では、働き方改革推進支援助成金をはじめとした公的支援を確認しておくと導入コストを抑えられます。

働き方改革推進支援助成金は、労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進に取り組む中小企業を対象に、勤怠管理システムの導入費用や就業規則の見直しにかかる専門家への委託費用などを助成する制度です。主なコースと上限額の目安は次の表のとおりです。

コース名 取り組みの主な内容 上限額の目安
労働時間短縮・年休促進支援コース 60時間超の残業削減・有休の計画的付与制度の導入など 最大150万円
※取り組み内容、助成対象経費、賃金引上げ加算等により異なる
勤務間インターバル導入コース 終業から翌日の始業までの休息時間(インターバル)の新規導入、適用範囲拡大など 最大150万円
※休息時間数や取り組み内容等により異なる
業種別課題対応コース 所定外残業の削減・一定時間以上のインターバル制度導入など(業種により異なる) 最大250万円
※業種、取り組み内容、対象経費等により異なる

このほか、生産性向上のための設備投資に使える業務改善助成金、非正規雇用労働者の正社員化等を支援するキャリアアップ助成金、業務効率化やDX化に向けたITツールの導入費用を補助するデジタル化・AI導入補助金なども活用できます。都道府県ごとに設置されている働き方改革推進支援センターでは、社会保険労務士などの専門家に無料で相談できる窓口も設けられています。

参照:助成金のご案内|厚生労働省

段階的な取り組みの進め方

段階的な取り組みの進め方では、全社一斉の制度変更ではなく、影響の小さい部署から試験的に始める方法のほうが定着しやすくなります。自社の労働時間や有給取得率といった現状を数値で把握したうえで、優先度の高い課題から着手すると、限られたリソースでも効果を実感しやすくなります。

取り組みの成果を社内で共有し、他部署への展開につなげる流れを作ることも、全社的な浸透には欠かせません。試験導入の期間をあらかじめ決めておくと、効果を検証したうえで本格導入に移りやすくなります。

働き方改革を進めるうえで注意したい点は?

制度を整えるだけでは、かえって現場の負担が増えたり、狙った効果が得られなかったりする場合があります。

制度が形骸化しやすい

制度が形骸化しやすいケースでは、経営層が方針を示すだけで、現場の運用ルールまで落とし込まれていないことが多く見られます。例えばフレックスタイム制を導入しても、実質的にコアタイムが長時間に設定されていれば柔軟性は生まれません。

制度の目的を現場の管理職まで浸透させ、実際の働き方に反映されているかを定期的に確認する仕組みが必要です。制度の運用状況を人事部門が定期的にモニタリングし、形だけの導入にとどまっていないかを確認することも重要になります。

現場の負担が増えるおそれ

現場の負担が増えるケースでは、業務量を変えないまま労働時間だけを削減しようとすると、しわ寄せが特定の従業員に集中しがちです。残業時間の上限を守るために、持ち帰り業務が増えてしまっては本末転倒です。

業務量そのものの見直しや人員配置の調整と並行して進めることで、無理のない働き方改革につながります。特定の従業員に業務が偏っていないか、担当業務の棚卸しを定期的に行う運用も有効です。

制度と実態のギャップ

制度と実態のギャップでは、規程上は整っていても、実際の職場文化が変わっていないことが原因で利用が進まないケースがあります。有給休暇の取得を促す制度があっても、周囲が取得しない雰囲気のなかでは利用しづらいものです。

管理職自らが制度を活用する姿勢を見せることが、ギャップを埋める近道になります。制度の周知だけでなく、実際に利用した従業員の声を社内で共有すると、利用への心理的なハードルも下がりやすくなります。

働き方改革によって生じるリスクと対策とは?

働き方改革を進める際は、思わぬ副作用が生じることもあるため、代表的なリスクと対策をあわせて押さえておくと安心です。

押さえておきたい主なリスクと対策

押さえておきたい主なリスクと対策では、コスト・生産性・労務管理など複数の観点でリスクを整理しておくと備えやすくなります。

想定されるリスク 主な対策
システム導入費や研修費など
初期コストが発生する
助成金を活用し、投資対効果を事前に試算しておく
制度変更直後は業務が滞り
生産性が一時的に下がる
移行期間を設け、マニュアル整備と研修を並行して行う
テレワーク対象外の職種との間で
不公平感が生じる
対象外の従業員にも時差出勤など代替の柔軟性を用意する
勤務形態が多様化し労働時間の把握が
難しくなる
勤怠管理システムで労働時間を一元管理する
稼働時間短縮により
取引先への対応速度が落ちる懸念がある
運用変更を事前に周知し、緊急時の連絡体制を整備する

働き方改革でできることを実現するには何が必要?

制度や施策を検討する前に、自社の労働時間や業務プロセスの現状を把握しておくと、優先すべき取り組みが明確になります。

現状把握と課題の整理

現状把握と課題の整理では、部署ごとの残業時間や有給取得率、業務にかかっている工数などを数値で可視化することが出発点になります。感覚的な課題認識だけで施策を決めてしまうと、実態に合わない制度になりかねません。勤怠管理システムなどを使ってデータを蓄積しておくと、施策の効果測定もしやすくなります。現状把握の結果は経営層とも共有し、優先度の高い課題から着手する合意を事前に得ておくと、施策を進めやすくなります。

業務効率化ツールの活用

業務効率化ツールの活用では、勤怠管理や経費精算、労務手続きなどをクラウド型のシステムに置き換えることで、担当者の作業時間を大きく削減できます。紙やExcelでの管理を続けている場合、まずは負担の大きい業務から電子化を検討すると導入効果を実感しやすくなります。マネーフォワード クラウドをはじめとしたクラウド型の業務システムを活用すれば、労働時間の客観的な把握や申請・承認業務の効率化を同時に進められます。複数の業務を個別のツールで管理していると情報が分散しやすいため、データを一元管理できるシステムを選ぶことも検討したいポイントです。

働き方改革でできることを整理し、自社に合う取り組みから始めよう

働き方改革でできることは、企業が整備する制度と、従業員が日々の業務のなかで実践できる工夫の両方に分けて考えると具体的な行動に移しやすくなります。労働時間の是正や柔軟な働き方の導入だけでなく、業務効率化ツールを活用した現状把握も欠かせない取り組みです。

まずは自社の課題を数値で把握し、優先度の高いところから着手することが、無理のない働き方改革の第一歩になります。

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