- 作成日 : 2025年5月28日
固定電話はもういらない?企業のデメリットや解約前後にすべきこと
テレワークやクラウドツールの普及により、「固定電話はいらないのでは?」と考える企業や個人が増えています。スマートフォンやチャットツールで連絡が完結する場面が多くなり、維持コストを削減したいという声もよく聞かれます。しかし、解約する前に注意すべき点もあります。
この記事では、固定電話をやめるときの影響や注意点、代替手段、番号の扱い方までをわかりやすく解説します。
目次
固定電話はもういらない?
働き方改革やリモートワークの普及により、固定電話を使う頻度は大きく減少しています。業務の多くがメールやビジネスチャット、スマートフォンで完結するようになりました。
一方、個人でも「ほとんど着信がない」「営業電話ばかり」といった理由で、解約を検討する家庭が増えています。このような状況から、「固定電話はもういらないのでは?」という考えが一般的になりつつあります。
しかし、企業においては代表番号がなくなると信頼性の低下や取引先からの問い合わせ機会の減少といった課題も出てきます。こうしたリスクを踏まえたうえで、固定電話の必要性を見直すことが求められます。
企業が固定電話を「いらない」と決める前に考えるべきこと
企業が固定電話を廃止する場合、影響範囲は思った以上に広いことがあります。事前に確認しておくべきポイントを整理しておきましょう。
代表番号の信頼性への影響
代表番号として使っていた固定電話を廃止すると、会社の連絡先としての信頼感が弱まるケースがあります。特に法人登記簿、定款、ホームページ、名刺、パンフレットなどに固定電話番号を記載している場合、これが「会社の顔」として機能していることも少なくありません。
代表番号が携帯番号に切り替えられていたり、050番号のみで運用されていると、小規模な企業といった印象を与えることがあります。
また、金融機関や官公庁との連絡でも、固定電話番号の有無が企業の安定性を判断するひとつの要素とされる場面があります。
携帯電話やIP電話に切り替えても問題ないか
固定電話を廃止しても、業務用携帯やIP電話サービス(クラウドPBXなど)へ切り替えることで、業務上の支障は防げます。たとえば、代表番号をクラウドPBXで管理し、各従業員のスマートフォンやパソコンに着信を転送するという運用方法です。これにより、テレワーク中でも代表番号での応対が可能になります。
ただし、インターネット回線の速度や安定性によっては通話品質が低下するおそれがあり、導入前の回線チェックや、操作マニュアルの整備などが必要です。
電話番号変更後の手続きや連絡の対応
代表番号が変更される場合は、銀行、税務署、取引先などに新しい番号を案内する必要があります。また、名刺や封筒、会社案内の見直しも必要です。連絡漏れがあると業務に支障が出るため、十分な準備が欠かせません。
たとえば以下のような対応を順を追って行うことが求められます。
- 銀行口座に登録している電話番号の変更手続き
- 法人登記情報の修正(必要に応じて)
- 定款の修正と株主・役員への報告
- 税務署や社会保険事務所への届出情報の変更
- ホームページ、SNSアカウント、Googleマイビジネスなどオンライン情報の更新
- 名刺・封筒・社用印刷物の修正・再印刷
これらの手続き不十分なままだと、取引先や顧客との連絡に支障をきたす可能性があるため、事前にリストアップして計画的に対応することが大切です。
個人が固定電話を「いらない」と決める前に考えるべきこと
個人にとっても、固定電話の必要性は以前に比べて低くなっていますが、解約前には次の点を確認しておきましょう。
災害時に連絡手段として残すべきか
地震や台風などの大規模災害時、スマートフォンやIP電話は通信回線が混雑してつながりにくくなることがあります。アナログ回線の固定電話は、独自の通信網を使用しているため、停電時でも一部の機種では使用可能です。
たとえば、停電時にも電話線の電力で動作する「ダイヤル式の黒電話」や、モジュラージャックに直接接続する有線式電話機は、非常時の連絡手段として今も有効です。防災意識の高い世帯では、こうした目的で固定電話を残すケースもあります。
契約や認証に使っている電話番号の確認
銀行口座や保険、ガス・電気・水道などの契約において、本人確認や緊急連絡先として固定電話番号を登録している場合があります。特に、音声通話によるワンタイムパスワード認証や、自動音声ガイダンスによる手続きが固定電話で設定されていると、解約後に本人確認が行えなくなる可能性もあります。
解約を検討する前に、どのサービスに固定電話番号を登録しているかを一覧化し、スマートフォンなどへの変更手続きを事前に済ませておくことが重要です。特に金融機関系の登録は、再手続きに時間を要する場合があるため注意が必要です。
高齢の家族や地域からの連絡に支障がないか
高齢の家族がいる家庭では、スマートフォンの操作に不慣れな方が多く、固定電話のほうが通話しやすいという声もあります。受話器を取るだけで話せるというシンプルな操作性は、高齢者にとって安心感があります。
また、地域の自治会、消防団、子ども会などの地域団体からの連絡は、いまだに固定電話が主な手段になっていることも少なくありません。そのような環境では、固定電話を解約すると地域からの情報が届かなくなる可能性もあるため注意が必要です。
これらを踏まえ、固定電話を本当に「いらない」と判断できるかを、一度立ち止まって見直すことが大切です。
災害時の通信手段としての役割
固定電話は災害時に比較的つながりやすい通信手段として位置づけられています。地震や停電時にも動作することがあるため、非常用連絡手段として残しておく選択もあります。なお、ひかり電話などのIP系固定電話は停電時には利用できないことが多いため、残すならアナログ回線の有線機器が前提となります。
電話番号が必要な契約サービス
銀行や保険、各種公共サービスでは、登録電話番号が必要です。固定電話を登録している場合は、解約前にスマートフォンなどに変更しておきましょう。
固定電話がいらないと判断した場合の代替サービス
固定電話はいらないと判断した後は、代わりにどのサービスで連絡体制を維持するかが次の課題です。代表的な3つの選択肢について解説します。
携帯電話・スマートフォン
多くの業務が社用携帯や社員個人のスマートフォンなどのモバイル端末で完結する現在、社用携帯や社員個人のスマートフォンでの運用も一般化しています。営業担当や外出の多い職種では、携帯電話での直接対応が効率的です。通話アプリを使えば、内線化や録音機能の追加も可能です。
ただし、社員の個人携帯を使う場合は、プライバシーやセキュリティの観点から、通話記録や業務内容の把握が難しくなるリスクもあるため、仕事用のスマートフォンの支給や専用アプリの導入が推奨されます。
IP電話・クラウドPBX
IP電話はインターネット回線を利用する通話手段で、050番号や03番号の取得が可能です。クラウドPBXは会社の代表番号(03、06など)をインターネット経由で管理し、複数のスマートフォンや端末に振り分けることができます。
代表番号に着信があると、外出先のスマートフォンにも通知が届き、社内外どこにいても応対可能になります。部署ごとに分けて着信を振り分けるIVR(音声自動応答)機能や、通話録音・ログ管理、営業時間外のメッセージ設定など、従来のビジネスフォンと遜色ない運用が可能です。
固定電話に近い運用を希望する企業にとって、現実的な代替手段となります。
信用やセキュリティへの配慮を忘れずに
固定電話を廃止し、携帯番号や050番号での運用に切り替えると、一部の顧客や取引先が不安を感じることもあります。
このような場合、信頼性を補うためには以下の対策が有効です:
- IP電話でも03や06など地域の市外局番を取得する
- ホームページに運用体制を明記する(例:クラウドPBXを使用し全社で対応可能など)
- 「発信者番号通知」があるサービスを使い、非通知や不明な番号での発信を避ける
また、悪質な営業電話や詐欺対策として、着信フィルター機能や、通話録音機能付きのIP電話サービスを利用する企業も増えています。セキュリティの観点からも、個人の携帯に転送する場合は、専用のビジネスアプリを経由するなどして、業務と私用を分離することが望ましいです。
固定電話の番号は引き継げるのか
固定電話を廃止する際、既存の電話番号を他の回線で使い続けられるかどうかは、契約している通信会社や回線の種類によって異なります。
NTTの加入電話(アナログ回線)であれば、同一市内での移設や、光回線(ひかり電話)に転用することで番号を引き継ぐことが可能です。たとえば、NTTのアナログ回線からフレッツ光に切り替える際、「番号ポータビリティ制度」を使うことで番号変更せずに移行できます。
ただし、引き継ぎにはいくつかの条件があります。
- 同一エリア(同じ市外局番の範囲)内での転用であること
- 対象回線がNTTの番号であること(他社発番の番号は対象外)
- 解約手続きの前に転用手続きを行うこと(順序を間違えると番号が消失する可能性があります)
一方、IP電話への切り替えでは、原則として新しい番号が発行されるケースが多いため、今までの番号を直接引き継ぐことはできません。
番号を引き継ぐ際の注意点
番号を引き継ぐためには、「先に解約してしまうと番号が失われる」点に注意が必要です。回線の切り替えを先に行い、その際に番号の転用申請を済ませておくことが重要です。また、工事や移行手続きに数日から数週間かかる場合もあるため、余裕を持ってスケジュールを組むことが望まれます。
番号の引き継ぎを前提とした運用を希望する場合は、契約中の通信会社やプロバイダに事前に相談し、適切な手順を確認することをおすすめします。
企業が固定電話を解約したらすべきこと
企業の固定電話の解約は、事業運営における信頼性、顧客対応、行政手続きにも関わる大きな変更です。下記のような対応を進めることで、混乱を避けてスムーズな移行が可能です。
1. 代わりの通話手段の導入
まず、固定電話の代わりとなる通話手段(携帯電話、クラウドPBXなど)を導入し、社内での対応体制を整えます。
- 社用携帯またはIP電話の導入・設定
- 着信転送・応対ルールの整備(誰が出るか、時間帯ごとの対応)
- マニュアル作成と社内周知
2. 旧番号の転送や留守電を設定
旧番号にまだ着信がある可能性があるため、一定期間は転送設定や留守番電話機能を活用するのが安心です。
- 転送設定(NTTの場合は「ボイスワープ」など)
- 留守番電話メッセージで新番号案内を流す
- 一時的な番号保留(利用休止)を検討
3. 取引先・顧客への連絡
社外とのやり取りに支障が出ないよう、早めに電話番号変更の案内を行います。
4. 行政や銀行・契約先への変更届出
続いて、電話番号が登録されている各種行政・契約先へ変更手続きを行います。代表的な例は以下のとおりです。
- 税務署:「異動届出書」を提出(書式:各地域の税務署ホームページにあり)
- 年金事務所:「事業所関係変更(訂正)届」等で番号変更を申告(用紙:日本年金機構)
- 労働基準監督署:「労働保険関係成立届」や「労災保険変更届」等の修正が必要な場合あり
- 銀行・信用金庫:法人名義口座の届出電話番号変更(店舗または法人窓口で手続き)
- 保険・リース・警備契約会社など:契約者情報の修正依頼が必要
書式の提出には押印が求められる場合があるため、あらかじめ必要書類を確認し、法人印などを準備しておきましょう。
5. 情報媒体・印刷物・Webコンテンツの修正
すべての外部向け資料や情報発信媒体の電話番号を更新します。
- 名刺・封筒・会社案内・パンフレットなどの印刷物
- ホームページ、Googleビジネスプロフィール、SNS
- 採用媒体、求人票、各種登録フォームなど
このように、固定電話の解約後には多岐にわたる対応が求められます。事前にスケジュールを立て、リスト化しながら順を追って行うことで、信頼を損なわず、スムーズに業務を継続できます。
固定電話の休止、解約、廃止の違い
固定電話を使わなくなったとき、休止、解約、廃止はどう違うのか、それぞれの意味と違いを正しく理解しておきましょう。
利用休止(NTTでは「利用休止制度」)
利用休止とは、一時的に固定電話の利用を停止し、将来的に再開する可能性がある場合に選ぶ手続きです。NTTでは「利用休止制度」として、最長10年間、電話番号を保持できます。
- 月額料金は発生しない(手数料が必要な場合あり)
- 番号を保持したまま将来的に復活できる
- 電話回線は物理的に使えなくなる(着信も不可)
長期間使う予定がないが、将来復活の可能性がある家庭や事業所に適しています。
解約
解約は、契約を正式に終了する手続きです。電話番号は失効し、再契約しても同じ番号を再取得することはできません。
- 基本料金の請求も終了
- 番号は完全に削除される(再取得不可)
- 機器や工事費用の精算が発生することがある
すでに完全に使う予定がない場合や、他の通信手段に完全移行したい場合に選びます。
廃止
廃止は、契約を終了するとともに、回線や設備そのものを撤去する手続きです。解約と似ていますが、物理的な設備まで撤去するという意味合いがあります。
- 電柱や屋内配線の撤去(希望すれば実施)
- 建物を取り壊す際などに利用されることが多い
法人や不動産オーナーなどが建物の用途変更・取り壊しにあたって行うことが多いです。
固定電話がいらない時代にどう対応するか考えよう
固定電話を廃止する動きは、企業・個人を問わず加速しています。コスト削減や働き方の多様化が背景にある一方で、信用や連絡手段としての役割をどのように補うかも考慮すべきです。携帯電話やクラウドPBXなど、実用的な代替手段を活用しながら、業務に支障が出ないよう丁寧に移行しましょう。「固定電話はいらない」と思ったときこそ、移行計画と周知対応を丁寧に進めることが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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