- 作成日 : 2025年9月22日
キッチンカーでデザート販売するには?メニューや許可、設備も解説
キッチンカーでクレープやワッフルといったデザートを販売するには、メニューに応じた営業許可の取得、専門の厨房設備、そして食品衛生法に沿った仕込みルールの理解が必要です。見た目も華やかでインスタ映えしやすく、子供から大人まで幅広い客層にアピールできるデザートは、キッチンカーで人気のジャンルです。
この記事では、販売に必要な許可や資格、車両と設備、調理や仕込みのルール、利益を生む価格設定、そして事業計画の立て方まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。
目次
キッチンカーのデザート人気メニュー
キッチンカーで提供するデザートは、注文を受けてから短時間で提供でき、思わず写真に撮りたくなるような「インスタ映え」するメニューが人気です。どのようなデザートメニューが良いか、いくつか見ていきましょう。
クレープ
クレープは、色とりどりのトッピングやアレンジの幅広さが最大の魅力です。もちもち食感の生地やパリパリ食感の生地といった違いを出し、季節のフルーツや自家製クリームを組み合わせることで、お店独自のメニューも作り出せます。お客様の目の前で焼き上げるライブ感も、行列を生むきっかけとなるでしょう。
ワッフル・チュロス
ワッフルやチュロスは、あたりに漂う甘く香ばしい香りが、道行く人の足を止めさせます。こうした焼きたて・揚げたてならではの香りと食感を提供できるのが強みです。とくにチュロスは片手で手軽に食べられるため、イベント会場などでの「食べ歩き」の需要にぴったり。シンプルなメニューだからこそ、生地の配合や揚げ方で他店との差をつけたいところです。
フルーツサンド・フルーツ飴
旬のフルーツをふんだんに使ったフルーツサンドやフルーツ飴は、その鮮やかな断面や見た目の美しさがインスタ映えにつながりやすく、SNSでの拡散が期待できるメニューです。質の良いフルーツの仕入れルート確保や、フードロスを減らすための計画的な仕込みが成功につながるでしょう。
かき氷・アイスクリーム
かき氷やアイスクリームは、夏のイベントやお祭りに、絶大な人気を誇るメニューです。氷とシロップという少ない材料から始められる手軽さがありながら、近年は純氷を使ったふわふわ食感のかき氷も人気を集めています。ただし、大量の氷などをストックするための大型冷凍庫と、それを動かす安定した電源の確保がとても大切になります。
キッチンカーでデザートを販売するには?
キッチンカーでデザートを販売するには、メニューの種類に関わらず、共通して必要となる許可や手続きがあります。衛生的で安全な事業を運営するために必要ですので、一つひとつ着実に進めましょう。
食品衛生責任者
キッチンカー(施設)1台につき、1名以上の「食品衛生責任者」の配置が求められます。これは、施設における衛生管理の責任者としての資格です。すでに調理師や栄養士などの資格を持っている方は、保健所に申請するだけで食品衛生責任者になれます。資格がない場合でも、各都道府県の食品衛生協会が実施する養成講習会を受講すれば取得できます。
飲食店営業許可
営業する地域を管轄する保健所で「飲食店営業」の許可を取得しなければなりません。クレープやワッフル、フルーツサンドなどのデザートメニューで、車内で生地を焼いたりフルーツを盛り付けたりといった最終的な調理を行う場合です。
生地を粉からこねる作業や、フルーツをカットするといった事前の仕込みは、食品衛生法上、キッチンカー内では行えず、別途許可を得た施設で行う必要があります。
また、提供するデザートの形態によっては、「飲食店営業」とは別に、以下のような専門的な許可が必要になるケースがあります。
- 菓子製造業許可
パンやケーキ、クッキーといった、包装された菓子を製造する場合に主に必要となる許可です。キッチンカーでクレープ生地などを仕込み場所で製造し、それを包装して他の場所へ納品するようなケースでは、この許可が関連してくる可能性があります。 - アイスクリーム類製造業許可
ソフトクリームサーバーで液体ミックスからソフトクリームを作る場合には、この専門の許可が必要です。専用の製造室や殺菌設備など施設基準が非常に厳しく、キッチンカーでこの許可を取得するのは極めて難しいでしょう。
どの許可が必要になるかは、提供するメニューと調理工程によって判断が分かれます。自己判断はせず、車両を準備する前に必ず設計図などを持参して出店予定地の保健所に事前相談を行いましょう。
車両登録や保険、届け出
事業で使う車両に関する手続きや、事業者としての届け出も必要になります。
- 車両登録:
調理設備を持つキッチンカーは、運輸支局で「特殊用途自動車(8ナンバー)」として登録します。 - 保険への加入:
万が一のリスクに備え、「PL保険(生産物賠償責任保険)」と、車両のための「自動車保険(任意保険)」の両方に加入しましょう。 - 各種届け出:
個人事業主として事業を始めるには、管轄の税務署へ「開業届」を提出します。また、フライヤーなどで火気を使用する場合は、所轄の消防署への届け出が必要になることもあります。
出店場所の許可
キッチンカーは、営業する場所の種類に応じて、それぞれの管理者から許可を得る必要があります。イベント会場や商業施設といった「私有地」、警察署が管轄する「公道」、自治体が管轄する「公園」など、場所によって申請先やルールが異なります。
キッチンカーでデザートを販売する車両と設備
キッチンカーで提供するデザートメニューによって、必要となる厨房設備は異なります。車両選びとあわせて、自身のメニューに最適な設備を選定しましょう。
ベースとなるキッチンカー
まず、事業の規模や運営スタイルに合った車両を選びます。
- 軽トラックベース:
車両価格が比較的安く、小回りが利くため狭い場所でも出店できます。ただし作業スペースは1人でのオペレーションが基本となり、搭載できる機材も限られます。 - 普通車(1.0t~1.5tトラック)ベース:
2名での作業にも対応できるスペースを確保できます。厨房設備も充実させられるため、デザートのキッチンカーではこのサイズを選ぶ事業者が多いようです。 - 大型車:
広い厨房スペースを確保できますが、その分、車両価格や出店場所の制約も大きくなります。
基本の設備
- シンクと給排水タンク
保健所の基準で設置が義務付けられており、「手洗い用」と「食器・器具洗浄用」でシンクを2槽以上設置するよう指導されるのが一般的です。また、給水タンクと排水タンクも規定の容量(40L~200Lなど)を満たすものを搭載しなければなりません。 - 冷蔵庫・冷凍庫(コールドテーブル)
冷蔵・冷凍設備は、クリームやフルーツ、生地、氷など、品質管理に欠かせません。とくに、天板が作業台になる「コールドテーブル」は、限られたスペースを有効活用できるため人気があります。夏場の車内温度でもしっかり冷却能力を保てる業務用のものを選びましょう。 - 作業台(ワークスペース)
盛り付けや調理準備のための衛生的なスペースです。シンクの上に天板を設けて作業台とするケースもあります。清掃しやすいステンレス製がおすすめです。 - 換気扇
熱や蒸気、油煙を車外に排出するために必要です。とくにフライヤーやガス式の焼き器を使う場合は、保健所から設置を義務付けられることがほとんどです。 - 収納棚・戸棚
包材や調理器具、乾燥食材などを衛生的に保管するために欠かせません。走行中の振動で物が落下しないよう、必ず扉が付いたものを選びましょう。 - 電源設備
冷蔵庫や調理器具、照明などを動かすための電源を確保しなければなりません。出店場所で電源を借りられない場合に備え、自前で用意するのが一般的です。使用する電気製品の合計消費電力(ワット数)を確認し、それに見合った容量の「発電機」や、静音性に優れた「ポータブル電源」などを準備します
関連:キッチンカーの電源はどう確保する?発電機の種類や電力不足の対策を解説
メニュー別に必要となる設備
キッチンカーで提供するデザートに合わせた専門的な調理器具を搭載します。
- クレープの場合:
円形の鉄板である「クレープ焼き器」が必須です。熱源はガス式と電気式があります。 - ワッフルの場合:
ワッフルを焼くための「ワッフルベーカー(ワッフルメーカー)」が必要です。 - チュロス・ドーナツの場合:
生地を揚げるための「フライヤー」が中心的な設備です。LPガスを使用することが多いため、安全面からも十分な換気能力が求められます。
キッチンカーでデザートの調理や仕込みできる?
デザートのキッチンカーを運営するうえで、とくに生地の取り扱いには注意が必要です。食品衛生法上、キッチンカー内で行える作業と、別途許可を得た施設で行うべき作業が明確に分かれています。
原則として、キッチンカー内で行えるのは「最終加熱」や「盛り付け」といった、提供直前の工程のみです。
- できることの例:
- 冷凍生地を焼く、揚げる
- フルーツなどを盛り付ける
- クリームを絞る、ソースをかける
- できないこと(別途仕込み場所が必要)の例:
- 生地調整:小麦粉などの粉類と液体を混ぜ合わせる作業。
- フルーツのカット:皮をむき、包丁で切る作業。
- クリームの泡立て:生クリームをホイップする作業。
これらの作業は、衛生管理の観点から、営業許可を取得した別の施設(仕込み場所)で行う必要があります。自宅のキッチンは、生活空間と営業用の調理場が兼用となるため、仕込み場所として認められません。そのため、「間借り」や「レンタルキッチン」などを探す必要があります。
キッチンカーでのデザート価格設定
キッチンカー事業で利益を確保するには、原価に基づいた戦略的な価格設定が求められます。デザートはトッピングなどで価格が変動しやすいため、ベースとなる考え方をしっかり理解しておきましょう。
1. 1食あたりのフードコスト(原材料費)を計算する
デザート1食分に使われるすべての材料と資材の費用を洗い出し、原価を正確に計算します。ここでは例として、いちごチョコクレープの原価を計算してみましょう。
- クレープ生地:30円
- ホイップクリーム:40円
- いちご(3粒):90円
- チョコレートソース:10円
- 包み紙・スプーンなど:30円
- 合計フードコスト(原材料費):200円
2. フードコスト率から基準価格を算出する
求めた原価から販売価格の基準を考えます。飲食店の原価率(フードコスト率)は、一般的に売上の30%前後が目安とされています。この基準を当てはめて計算してみましょう。
この計算から、約667円という数字が導き出されます。これが、フードコストのみを基にした場合の基準価格となります。
3. 諸経費をふまえて価格を決定する
キッチンカーの運営には原材料費以外にも出店料やランニングコストなどさまざまな経費がかかります。最終的な販売価格は、これらの費用も考慮して決定しなければなりません。
- 運営経費(ランニングコスト)
出店場所の使用料、キッチンカーで使うLPガスや発電機の燃料費(電気代)、駐車場代、保険料といった費用も、価格に反映させる必要があります。1ヶ月の総経費を予測販売数で割るなどして、1食あたりに乗せるべき経費を大まかに把握することも価格設定の一助となります。 - 市場価格と付加価値
計算上の価格だけでなく、実際に出店する場所の相場観も重要です。周辺のカフェや競合キッチンカーのデザート価格をリサーチしましょう。また、お客様が感じる「インスタ映え」する見た目や、特別なフルーツを使っているといった付加価値も価格に反映できる要素です。
これらの要素を総合的に判断し、「700円」や「800円」といったきりの良い最終的な販売価格を決定していきましょう。また、トッピングを追加することで価格を上げるメニュー構成も、客単価向上の有効な手段です。
キッチンカーでデザートを販売する事業計画書の作り方
事業計画書は、金融機関からの融資や、自身の事業の方向性を定めるための設計図となります。客観的な視点で、事業の全体像をまとめることが大切です。
事業計画書には、一般的に以下の項目を盛り込みます。
- 事業のコンセプト:
ターゲットは誰か(子供向け、若い女性など)、どのような価値を提供したいのかをはっきりさせます。たとえば、「写真映えするカラフルなデザート」といった方向性です。 - 資金計画(開業・運営):
車両購入費や設備費、許可取得費用といった「開業資金」と、材料費や出店料、燃料費などの毎月の「運営費用」を詳細にリストアップします。 - 収支計画:
売上、経費、利益のシミュレーションです。客単価や販売予測数から売上を算出し、経費を差し引いて、どれくらいの利益が見込めるのかを具体的な数字で示します。 - マーケティング計画:主な出店場所の戦略や、InstagramなどSNSを活用した集客方法について計画します。
キッチンカーのデザート販売は相談しながら計画的に進める
見た目も華やかで多くの人を笑顔にできるデザートのキッチンカーは、非常にやりがいのある事業です。提供したいデザートを決め、それに必要な営業許可や設備、そして食品衛生法に沿った調理や仕込みのルールを正しく理解しましょう。
準備を進める際は、自己判断ではなく、保健所や専門機関へ相談しましょう。こうした相談を通じて得た情報を元に、一つひとつの課題を事業計画へ落とし込み、着実に準備を進めることが、安全で収益性の高い事業運営につながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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