• 作成日 : 2025年8月8日

うどん屋の開業後の年収の目安は?相場や成功例、そば屋、ラーメン屋との比較

うどん屋を開業したいと考えたとき、年収はいくら見込めるのか、成功ラインはどこかが気になる方は多いはずです。この記事では、うどん屋を開業した際の年収の目安や、ラーメン屋、蕎麦屋との違い、開業に係る資金の目安について解説します。また、平均年収や利益を出す店舗形態、収益性を上げるコツなどを具体的に解説します。失敗しないために必要な視点を、現実的かつ実行可能な内容で紹介します。

うどん屋開業の年収の目安と成功ライン

うどん屋経営者の年収に関する公的な統計はありませんが、複数の開業支援サイトなどでは300万円〜600万円が目安とされることがあります。

ただし、これは店舗の規模、立地、経営手腕に大きく左右されます。経営が軌道に乗れば年収1,000万円以上も可能ですが、このようなケースは繁華街にある人気店など、立地や話題性などの条件が良い場合に限られます。多くの店舗は厳しい競争環境にあります。

例えば、月間売上150万円、営業利益率10%の場合、オーナーの所得(利益)は月15万円(年180万円)となり、事業を継続するには綿密な収益計画が不可欠です。

独自の戦略で人気のうどん屋の例

独自の戦略で人気を博している店舗の例として、以下が挙げられます。

  • 桔梗屋 難波ミナミ店 大阪ミナミの繁華街にあるこの店は、うどんと割烹を組み合わせた「二刀流」で独自のポジションを築いています。朝4時まで営業することで、30代から50代を中心に深夜帯の集客にも力を入れています。
  • 二代目 甚八 三重県から東京に進出したこの店は、松阪牛を使った豪華なうどんや地酒のラインナップを強化し、さらに三重県産野菜の「お野菜ブッフェ」を導入することで、客単価と顧客満足度の向上を目指しています。

コスパ重視なら「セルフうどん」形式

コスパ重視で成功を目指すなら、「セルフうどん」形式が有効です。調理工程を効率化でき、少人数での営業が可能なため人件費を大幅に抑えられます。低価格設定でも高回転が見込める構造です。一方、フルサービス型で客単価800円以上、セットメニューやディナータイム強化で付加価値をつける業態も成り立ちます。

うどん屋、そば屋、ラーメン屋の年収と売上比較

麺類を提供する飲食店は、業態ごとに客単価・原価率・回転率に違いがあり、経営モデルや収益性に大きな差が生まれます。ここでは、うどん屋・そば屋・ラーメン屋の平均的な客数・売上・利益構造を比較します。

市場の動向

日本フードサービス協会の外食産業市場動向調査によると、麺類全体の売上が好調に推移しています。例えば2023年10月には前年同月比で売上が10.3%増加し、客数は3.1%、客単価は7.0%それぞれ増加しました。また、2023年11月度の売上は前年同月比110.5%、2024年2月度には108.4%と、市場は堅調な伸びを見せています。

客単価と客数の違い

厚生労働省が平成29年度に公表したデータによると、業態ごとの1日平均の客数と客単価は次の通りです。ただし、データはやや古いため、現在の市場とは一部乖離がある可能性があります。あくまで参考値としてご確認ください。

業態1日平均客数(人)平均単価(円)
うどん専門店76.8835.4
そば専門店45.41,165.4
立ち食いそば・うどん店20.0260.0
ラーメン店(参考)一般的に800〜1,000円

そば専門店は客単価が高く、客数はやや少なめ。うどん専門店は客数が多い一方、単価は相対的に低めです。立ち食い業態は回転率に優れ、単価は最も低く設定されています。

参考:飲食店営業 (そば・うどん店)の | 実態と経営改善の方策|厚生労働省

原価率と利益率の比較

一般的にうどん屋の原価率は25%〜30%が目安とされます。これは、スープの材料がシンプルで、自家製麺が主流であるためです。そば店の原価率は30%前後、ラーメン店はスープや

飲食店全体のFL比率(食材費+人件費)は50〜60%が目安で、これを超えると利益が圧迫されます。そば・うどん店の売上総利益率は66.6%、営業利益率は6%が目安です。

業態原価率(%)FL比率(%)
うどん専門店25〜2750〜60
そば専門店約32.950〜60
ラーメン店約43.850〜60

経営モデルと収益性の違い

ラーメン、うどん、そばといった麺類業態は共通して、「高い回転率」が収益性を支えるカギです。うどん屋は食材ロスが少なく、オペレーションが効率的で、「薄利多売」に適したモデルです。特にセルフ式うどん店では、人件費を抑えながら多くの客数をさばくことで利益を確保する運営が可能です。

ラーメン店は原価率が高い分、濃厚スープやこだわり麺などでリピート率を高める戦略を取ることが多く、利益率よりも「差別化」によって集客するモデルが主流です。

うどん屋は、原価率を抑えつつ、回転率を最大化する設計が重要です。提供スピード、店内導線、注文方法、メニュー数の絞り込みなど、細かな工夫が利益に直結します。

うどん屋開業の資金の目安

うどん屋を開業するには、店舗の規模や業態によって資金が大きく変わりますが、平均して約1,200万円〜1,700万円の資金が必要です。個人で10坪〜20坪程度のうどん屋を始める場合、初期費用は700万円〜1,000万円程度が一般的です。この中には、内装工事費、厨房設備費、物件取得費(保証金・礼金など)、備品・食器類、広告宣伝費などが含まれます。

さらに、開業後すぐに黒字化できるとは限らないため、運転資金として3〜6か月分の人件費や仕入れ費を別途確保しておく必要があります。全体では1,500万円〜2,000万円前後が目安です。

一方、小規模な居抜き店舗や間借り営業、キッチンカーなどを活用すれば、500万円〜800万円前後でスタートできるケースもあります。

うどん屋開業の初期費用

うどん屋の開業に必要な初期費用は、主に以下の項目で構成されます。

項目金額目安(15坪の場合)解説
物件取得費100万〜300万円家賃の6〜10ヶ月分相当が相場。立地次第で変動。
内装・工事費300万〜700万円坪単価20万〜50万円。厨房と客席のレイアウト次第で大きく変動。
厨房機器・備品費100万〜300万円茹で釜、冷蔵庫、食器、カウンター、レジなどを含む。
広告・採用費50万〜100万円プレオープン時の販促、チラシ、求人広告など。
届出・資格費用5万〜10万円食品衛生責任者、防火管理者、各種許可申請費。

合計:700万〜1,500万円程度

規模やコンセプトによって金額に幅があります。フランチャイズに加盟する場合は、ここに加盟金や研修費(合計100万〜300万円)が上乗せされます。

うどん屋の運営費用

うどん屋開業後は、毎月の運営コストを継続的に支払う必要があります。主な内訳と売上に対する目安は以下の通りです。

項目売上比率の目安
人件費25〜30%
材料費(小麦粉・つゆ・具材)28〜31%
家賃8〜10%
水道光熱費5〜7%
販促費3〜5%
その他(消耗品、保険など)5〜8%

合計:売上の70%〜85%程度が運営コスト

原価率は比較的低いですが、回転率と客数の確保が収益を左右します。

うどん屋の資金調達の選択肢

うどん屋の開業資金は、自己資金だけで賄うのが難しいケースも多く、以下のような外部調達方法があります。

  • 日本政策金融公庫(JFC)
    創業融資制度や生活衛生貸付制度を活用すれば、設備資金として最大7,200万円、運転資金として最大4,800万円までの融資が可能です。無担保・無保証で借りられる制度もあります。
  • 地方自治体の制度融資
    都道府県や市区町村が独自に設けている制度です。利子補給や信用保証料の補助があることもあります。条件や内容は地域によって異なるため、開業予定地の商工会や金融機関で事前確認が必要です。
  • 信用金庫・地方銀行
    自己資金の割合が重視されますが、地域密着型の相談対応やスピード感のある審査で、中小飲食店との相性が良い場合があります。
  • クラウドファンディング
    応援購入型クラウドファンディングを通じて、開業前からファンを集める手段にもなります。話題性や地域密着型のうどん屋であれば、支援が集まりやすい傾向にあります。
  • 親族・知人からの借入
    契約書を交わし、返済スケジュールを明確にしておくことで、金銭トラブルを回避できます。金融機関からの借入と併用する場合は、バランスに注意が必要です。
  • 小規模事業者持続化補助金(商工会議所経由)などの補助金
    チラシ作成、HP制作、内装費用の一部などが対象になります。ただし、補助金は「事前申請・採択審査・実施後の経費精算払い」が前提で、実際の資金化まで3〜6か月かかることもあるため、即効性は期待できません。資金繰りに余裕がある場合の補完的な活用が適しています。

融資を受けるには、事業計画書の内容が最も重視されます。特に目標売上、損益分岐点、回転率など、数値で説明できる内容を明確にしましょう。

うどん屋開業後の利益率計算と利益を増やす工夫

うどん屋で収益を安定させるには、利益率を正しく理解し、それを高めるための工夫をしましょう。ここでは基本的な利益率の計算方法と、改善策を紹介します。

利益率の計算方法

うどん1杯の材料費を引いた「売上総利益(粗利)」は約70%が目安ですが、そこから人件費、家賃、水道光熱費などを差し引いた「営業利益」は、一般的に売上の5%〜10%程度が目標とされます。

うどん屋オーナーの手元に残る利益を確保するには、FLコスト(食材費+人件費)を売上の60%以内に抑える必要があります。

原価率は「材料費 ÷ 販売価格 × 100」で計算します。例えば、680円のうどんの材料費が190円の場合、原価率は27.9%です 。飲食店における原価率は30%程度が目安です 。

FL比率(Food & Labor Cost Ratio)は「(食材費+人件費)÷売上高×100」で計算され、飲食店の経営で最も重視すべき指標の一つです 。

理想的なFL比率は50%前後、65%を超えると、利益が出にくくなるため早急な見直しが必要です。

項目売上比率の目安 (%)
人件費30%以内
家賃10%以内 (理想8%以下)
原材料費30%程度
水道光熱費5%以内 (適正7%~10%)
その他経費10%~15%以内
FL比率の理想的な目安50%前後

原価率を下げる具体策

利益率向上は、単に「売上を上げる」や「コストを下げる」といった単純な二項対立ではなく、多角的なアプローチの組み合わせによって実現されます。

  • 食材選びの工夫: 旬の野菜、きのこ類、海藻類、根菜類、豆類、鶏肉など、比較的安価で汎用性の高い食材を積極的に活用します 。例えば、かけうどん、ぶっかけうどん、おろしうどん、カレーうどん(大量調理で原価を抑える)などは原価率が低いメニューです。
  • 仕入れと調理の効率化: だしパックの活用は、生の昆布や鰹節を使うよりも時間と手間を削減できます 。自家製麺は、麺の品質を向上させながら、業者からの仕入れより低コストで製造できる可能性があります。
    余剰分の麺は冷凍保存で無駄を減らせます。副菜を手作りすることで、原価を抑えられます(漬物や冷奴など)。
    食材費や人件費をそれぞれ1%ずつ削減するだけでも、利益率に影響します。仕込み作業の効率化やシフト調整で人件費を抑えることが可能です。

回転率と客単価を上げる工夫

うどん屋は「薄利多売型」のモデルであるため、1日の客数と提供スピード=回転率が収益を左右します。

  • メニュー数を絞り、注文から提供までの時間を短縮する
  • 回転数を上げるため、券売機やオーダーシステムを導入する
  • 滞在時間を短くする設計(背もたれのない椅子、BGMの工夫など)
  • 客単価アップの工夫(季節のトッピング、セットメニュー、サイズアップ)
  • ディナー営業や限定メニューで客単価800円以上を目指す

例えば、20席の店舗が満席率70%で1日7回転し、客単価が1,000円の場合、1日の売上は「20席 × 7回転 × 1,000円 × 満席率70% = 98,000円」と計算でき、月商約245万円(25日営業)が黒字化の一つの目安となります。

廃棄率削減の取り組み

食品ロスが多いと、仕入れコストがそのまま無駄になり、利益を圧迫します。食材の廃棄はコスト面の損失だけでなく、食品の価値を下げ、店舗経営の信頼性にも影響を及ぼします。

また、環境面への配慮や社会的責任の観点からも、ロスを減らす姿勢は現代の飲食経営では欠かせません。

大手チェーンもうどんのロス削減に積極的です。

  • はなまるうどん:冷凍技術でうどんの賞味期限を延ばし、廃棄を減らしています。さらに、余ったうどんを飼料やバイオマス発電に活用する取り組みも行っています。
  • 丸亀製麺:一部店舗では、フードシェアリングアプリ「TABETE」を活用し、閉店前の余剰品(天ぷらやおむすび)を消費者に提供することで廃棄を削減しています。

中小のうどん屋でも、以下のような工夫をしてみましょう。

  • 麺や食材の使い切り、日替わりメニューの工夫
  • 在庫状況に応じた仕込みの調整
  • フードシェアアプリの導入 など

うどん屋の開業に必要な資格

うどん屋を開業するには、食品衛生法や消防法、税法に基づいた手続きが必要です。以下に、必須・条件付きの資格や届出を、取得先・提出時期とともに整理しました。

必ず必要な資格・届出

名称取得・提出先提出タイミング補足
食品衛生責任者食品衛生協会または保健所営業許可申請前1店舗に1名。調理師などの有資格者は講習不要。
飲食店営業許可保健所営業開始の10日前まで店舗図面と設備の基準を満たし、検査に合格が必要。
開業届税務署開業後1ヶ月以内青色申告申請で最大65万円の控除あり。

条件に応じて必要な資格・届出

名称取得・提出先提出タイミング該当条件・補足
防火管理者(甲種または乙種)消防署(講習)営業開始前収容人数30名以上の店舗。延床面積に応じて甲種(300㎡超)・乙種(300㎡未満)を選択。
防火対象物使用開始届消防署使用開始の7日前まで火気・厨房設備のある店舗全般。
深夜酒類提供飲食店営業開始届警察署営業開始の10日前まで深夜0時以降に酒類を提供する場合。
水質検査成績書保健所営業許可申請時水道以外の水源(井戸水など)を使用する場合。

食品衛生責任者は、うどん屋のように調理を行う店舗には必須です。未取得の場合、1日講習(受講料1万円程度)で取得できます。調理師や栄養士の資格を持っていれば、講習を受けずに申請のみで対応可能です。

飲食店営業許可は、厨房や客席などが衛生基準を満たしているかどうかを保健所が現地で確認し、許可証を交付します。設計段階から保健所に相談することで、無駄な工事や再検査を防げます。

開業届は、事業の開始を税務署に届け出る書類です。青色申告を同時に申請すると、経費の計上や控除の面で大きなメリットがあります。

うどん屋を開業するまでの流れ

うどん屋を開業するには、コンセプトの整理から行政手続きまで段階的に進めていくことが必要です。準備不足は後戻りの原因になりやすいため、開業3〜6か月前から計画的に着手しましょう。

1. コンセプトと事業計画を固める

まず、「誰に、どんなうどんを、どんなスタイルで提供するか」を具体的に決めます。セルフ式かフルサービス式か、ランチに特化するのかディナーも視野に入れるのか、価格帯や想定客単価、回転率の目標など、事業の軸を明確にします。

このコンセプトに基づいて、資金計画・収支シミュレーション・メニュー構成・ターゲット層を数値で整理し、事業計画書を作成します。計画書は金融機関の融資審査でも使用するほか、開業後の経営指針にもなります。

2. 物件を探して契約する

立地はうどん屋の成否を左右します。通勤・通学路、住宅街、オフィス街など、ターゲットが自然に集まる場所を選びます。商業地域では競合も多いため、客単価や回転率とのバランスを見て検討することが大切です。

用途地域や飲食可否、水回りの設備状況なども確認したうえで契約を進めます。内見の際には厨房スペースや導線の取りやすさもチェックしましょう。

3. 内装工事と設備の準備を行う

物件が決まったら、厨房レイアウト、客席配置、導線計画を設計し、工事に入ります。茹で釜や冷蔵庫、製麺設備、食器類などの厨房機器の手配もこの段階で行います。

保健所の基準を満たすために、工事前に設計段階で事前相談しておくとスムーズです。設備選定はメニューや提供スピードに直結するため、実用性とコストのバランスを見て選びます。

4. 資格取得と行政手続きを進める

工事と並行して、食品衛生責任者の取得、飲食店営業許可の申請、防火管理者の講習受講、税務署への開業届提出などの手続きを進めます。

提出先や必要書類は項目によって異なり、申請から許可まで2〜4週間かかるものもあるため、スケジュール管理が重要です。資格や許可が間に合わないと開業が遅れるため、早めの準備が肝心です。

5. スタッフの採用と研修を行う

ホール・調理スタッフの採用活動を始め、開業の1ヶ月前には研修ができるよう準備します。接客マナー、衛生管理、オペレーションの流れなど、基本的なマニュアルを整備し、現場での混乱を防ぎます。

少人数で運営する場合でも、シフト管理や緊急時の対応体制を考慮して採用計画を立てます。

6.プレオープンと本開業

開業直前には、友人や知人、近隣住民を招いてプレオープンを実施します。本番さながらの営業で、厨房の動線や提供スピード、接客オペレーションの確認ができます。

この段階で発見された課題を改善し、準備が整ったら本開業へと進みます。グランドオープン時には、SNSやチラシなどで積極的に告知し、認知拡大を狙いましょう。

うどん屋の開業は収益を見極めて堅実に

うどん屋を開業した場合、年収は300万〜600万円が一般的な目安とされますが、個々の経営努力に大きく左右されます。原価率の低さや高回転のビジネスモデルにより、うまく運営すれば年収1,000万円超も実現可能です。

ただし、立地や集客、資金繰り、経費管理によって実際の収益は大きく変動します。ラーメン店やそば屋と比べても、うどん屋は価格設定が低めな分、回転率と効率的なオペレーションがより重要になります。

成功のために、数字に基づいた事業計画と、柔軟な経営判断が欠かせません。


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