- 更新日 : 2026年4月22日
社会保険は強制加入?入りたくない社員への対応はどうする?
通常、会社員など事業所に雇われて働く人は社会保険に加入し、給与から保険料を天引きされています。では、社会保険は強制加入なのでしょうか。また、パートやアルバイトなどの短時間労働者はどうなのでしょうか。この記事では事業所に加入義務が発生する社会保険加入条件や、従業員の加入要件について説明します。
目次
社会保険は強制加入?
社会保険の加入については、加入の義務がある「強制適用事業所」とそうでない事業所があります。この「強制適用事業所」に該当する事業所は、被保険者となる従業員を必ず社会保険に加入させなければなりません。強制適用事業所に該当する事業所とは、被保険者1人以上の法人事業所、または常時5人以上を雇用している個人事業所(法定17業種に該当する場合)です。
一方、農林水産業、畜産業、飲食サービス業、宿泊業、理美容業、宗教業などは現行では強制適用事業所に含まれません。また、学校法人事業所の場合は、社会保険ではなく私立学校教職員共済制度に加入します。
なお、2025年6月に成立した年金制度改正法により、2029年10月からは法定17業種の限定が撤廃され、常時5人以上を使用する全業種の個人事業所が社会保険の適用対象となる予定です(ただし、施行時点で既に存在する事業所は当分の間、対象外とする経過措置あり)。
上記のように強制適用事業所に当てはまらない事業所でも「任意適用事業所」として社会保険に加入する方法があります。従業員の半数以上が適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣に認可されることです。
社会保険の適用を除外されるのは、日雇い、2ヶ月以内の期間を定めて雇用される人、所在地が一定しない勤務先に勤める人、季節的業務(4ヶ月以内)に雇用される人、臨時的事業(6ヶ月以内)に雇用される人などです。ただし、日雇いや2ヶ月以内の契約、季節的業務、臨時的事業に就いている人でも、継続して雇用される見込みがある場合には被保険者となります。
このように、一部の業種と短時間労働者を除き、継続的に事業所に雇われている人のほとんどは社会保険に強制加入だと言っても良いでしょう。
参考:適用事業所と被保険者|日本年金機構
参考:社会保険の加入対象の拡大について|厚生労働省
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社会保険の加入条件
前述しましたが、強制適用事業所の場合、被保険者となる従業員は社会保険に加入しなければなりません。では、被保険者となる要件、すなわち加入要件にはどのようなものがあるのでしょうか。
まず、常勤で働く70歳未満の人や役員、法人の代表者などは被保険者です。常勤とは、雇用契約の有無などは関係なく、労務を提供し賃金を受け取るという関係が常的である状態をいいます。試用期間であっても、勤務形態が同じで賃金が支払われるのであれば被保険者となります。
また、パートタイムやアルバイトなどで働く人も、1週間および1ヶ月間の労働時間が、常勤で同様の業務を行う人の4分の3以上であれば被保険者です(いわゆる「4分の3ルール」)。
なお、4分の3ルールに該当しない短時間労働者であっても、以下の要件をすべて満たす場合には被保険者となります(2026年4月時点)。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が2か月を超えて見込まれること
- 賃金が月額8.8万円以上であること
- 学生でないこと
- 従業員51人以上の事業所(特定適用事業所)に勤めていること
この加入要件は、2025年6月に成立した年金制度改正法により、今後段階的に緩和・撤廃されます(詳細は次章を参照)。
参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構
2025年成立の年金制度改正法による社会保険適用拡大
社会保険は、被保険者が支払う保険料でお互いを支え合う制度です。働き方の多様化を受けて、短時間労働者への社会保険の適用範囲は段階的に拡大されてきました。これまでの主な改正経緯は以下のとおりです。
- 2016年10月:従業員501人超の事業所に勤務する短時間労働者に適用拡大(スタート)
- 2022年10月:従業員101人以上の事業所に拡大、雇用期間要件が「1年以上」から「2か月超」に変更
- 2024年10月:従業員51人以上の事業所に拡大
年金制度改正法(2025年6月成立)による今後のスケジュール
2025年6月13日に成立した年金制度改正法により、短時間労働者の社会保険適用拡大がさらに進められることが確定しました。主な改正スケジュールは以下のとおりです。
| 時期 | 改正内容 |
|---|---|
| 2026年4月 | 健康保険の被扶養者認定(「130万円の壁」)の判定基準を、「実際の収入実績」から「労働契約書・労働条件通知書に記載された年収見込み」ベースに変更 |
| 2026年10月 | 賃金要件(月額8.8万円以上)を撤廃(いわゆる「106万円の壁」の撤廃) |
| 2027年10月 | 企業規模要件を51人以上→36人以上に引き下げ |
| 2029年10月 | 企業規模要件を21人以上に引き下げ/個人事業所の法定17業種限定を撤廃(5人以上の全業種が適用対象) |
| 2032年10月 | 企業規模要件を11人以上に引き下げ |
| 2035年10月 | 企業規模要件を完全撤廃 |
これらの改正により、将来的には「週20時間以上働く短時間労働者(学生を除く)」は、企業規模や賃金額にかかわらず社会保険の加入対象となります。
新たに加入対象となる労働者への保険料軽減措置
社会保険の加入拡大により新たに加入対象となる短時間労働者の負担を緩和するため、3年間の保険料軽減措置が設けられています。対象は、従業員数50人以下の企業などで働き、企業規模要件の見直しなどにより新たに加入対象となる短時間労働者で、標準報酬月額が12.6万円以下の者です。事業主が保険料の負担割合を引き上げることで被保険者の負担を最大50%軽減でき、事業主の追加負担分は制度全体で支援されます。
適用拡大の目的の一つは、中小企業で働くパートやアルバイトなどの短時間労働者にも社会保障が与えられ、不公平感がなくなることです。また、職業選択がより自由になり事業所の労働力確保がしやすくなることや、被保険者が増えることで社会保障の財源が増え、より手厚い保障を被保険者が受けられることを目指しています。
社会保険に社員が入りたくない場合はどう対処する?
パートやアルバイトで働く人のなかには、社会保険で配偶者の扶養に入ることのできる年収130万円未満を意識して働いている人も多いでしょう。しかし、従業員51人以上の事業所で週20時間以上働き、月額8.8万円以上の賃金をもらっている人は、年収130万円未満であっても社会保険に加入しなければなりません。さらに、2026年10月からは月額賃金の要件も撤廃されるため、加入対象者はさらに拡大します。
これまで配偶者の扶養に入っていた人や、社会保険加入の対象とならず国民年金や国民健康保険に加入していた人の中には、社会保険料を支払うことで収入が減ってしまうと感じる人もいるでしょう。
では、社会保険に入りたくない、という従業員が出てきた場合には、どのように対処したらよいのでしょうか。
結論から言えば、強制、任意にかかわらず、適用事業所に勤めている限り社会保険は強制加入です。入らないという選択肢はありません。事業所は、対象となるすべての従業員を加入させる義務があります。社会保険に加入したくないという従業員には、入った場合のメリットを説明し、説得しましょう。
社会保険に加入すると、以下のようなメリットがあります。
加入対象者の中に未加入の従業員がいると判明した場合、ペナルティもあります。
まず、従業員を正しく社会保険に加入させていない場合、刑事罰があります。事業主に対する罰則で、健康保険法や厚生年金保険法により「6ヶ月以下の懲役または50万円以内の罰金」と定められています。
また、未加入の従業員については最大2年間さかのぼって加入させることになります(健康保険法第193条、厚生年金保険法第92条に基づく時効規定)。すなわち、最大2年分の未払いの保険料を請求されるということで、膨大な金額を支払わなければなりません。支払った後に従業員本人に請求することもできますが、既に退職していて連絡がとれないなど、回収できない場合もあります。金額によっては刑事罰よりも事業所へのダメージが大きい場合もあるでしょう。
参考:健康保険法|e-Gov法令検索
参考:厚生年金保険法|e-Gov法令検索
社会保険制度は助け合いの制度
社会保険に加入する事業所は、その適用が義務となる強制適用事業所と、任意で適用を申請する任意適用事業所に分かれます。強制適用事業所は、要件を満たす従業員の全員を社会保険に加入させなければなりません。また、任意適用事業所は、従業員の半数以上の合意を得て申請し認可されれば社会保険に加入することができますが、その場合も、任意適用事業所に同意した従業員だけではなく、要件を満たす従業員全員を加入させなければなりません。
短時間労働者の社会保険適用要件は、2016年の導入以来、段階的に拡大されてきました。2022年10月には企業規模要件が「従業員501人以上」から「101人以上」へ、2024年10月には「51人以上」へと引き下げられ、さらに2025年6月成立の年金制度改正法により、2026年10月の賃金要件撤廃、2027年10月以降の企業規模要件の段階的撤廃、2029年10月の個人事業所全業種拡大など、さらに適用範囲が広がることが決定しています。
社会保険とは、被保険者が支払う保険料によって相互に助け合うための制度です。しかし、いま、私たちの社会は少子高齢化を迎え、支え合いのバランスが崩れつつあります。
社会保障制度を支える裾野を広げ、より充実した保障を皆が受けられるようにすることが喫緊の課題です。これまで加入の対象でなかった人は保険料が上がってしまうなどのデメリットもありますが、多くの保障の対象となるメリットもあります。もし、入りたくないという従業員がいたら、メリットを充分に説明し、加入させましょう。
よくある質問
社会保険は強制加入ですか?
強制適用事業所・任意適用事業所で働いていて、一定の要件を満たしている人はすべて強制加入です。詳しくはこちらをご覧ください。
社会保険に入りたがらない社員にはどう対処すればよいですか?
要件に当てはまる以上、社会保険に入らないということはできません。社会保険に入った場合のメリットを説明し、説得しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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