• 更新日 : 2025年12月15日

パート・アルバイトの社会保険料はいくら引かれる?計算例で解説

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パートやアルバイトとして働く際、「社会保険料はいくら引かれるのか」「そもそも加入しないといけないのか」と疑問に思う場面は多いでしょう。企業に勤めている正社員だけでなく、パート・アルバイトとして働く方も、一定の条件を満たすと社会保険料を納める必要があります。

特に2024年10月からは社会保険の適用対象がさらに広がり、これまで対象外だった方も加入するケースが増えています。

この記事では、パート・アルバイトの方が社会保険に加入する条件や、月収別に「いくら引かれるのか」をシミュレーションします。手取り額や扶養との関係も解説しますので、働き方を考える参考にしてください。

パートやアルバイトにも社会保険料はかかる?

パートやアルバイトであっても法律で定められた条件を満たせば社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入し、保険料を支払う必要があります。

近年、短時間で働く方のセーフティネットを強化するため、社会保険の適用拡大が進められています。

  • 2022年10月~:従業員数101人以上の企業で働く方
  • 2024年10月~:従業員数51人以上の企業で働く方

対象となる企業(事業所)の規模が広がっており、より多くの方が社会保険に加入できるようになりました。勤務先の従業員数が51人以上で、次の章で説明する条件を満たす場合、社会保険料が発生すると考えましょう。

なお、2025年の年金制度改正法により、上記の企業規模要件は段階的に縮小され、2035年までに撤廃されることが決まっています。今後、より多くのパート・アルバイトの方が社会保険に加入することになります。

パート・アルバイトが社会保険に加入する条件とは?

勤務先の従業員数(51人以上)に加え、パート・アルバイトの方が社会保険の加入対象となるのは、以下の4つの条件をすべて満たした場合です。

① 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満であること

契約上の所定労働時間が週20時間以上であることが必要です。雇用契約書などで定められた時間で残業などは含まれません。しかし、週の所定労働時間が20時間未満であったとしても、実労働時間が2ヶ月連続して週20時間以上、かつ引き続き20時間以上見込まれる場合は、3ヶ月目から社会保険が適用されます。

② 2ヶ月を超える雇用の見込みがあること

雇用期間の定めがない場合や、契約期間が2ヶ月を超える場合は対象となります。 当初の雇用契約が2ヶ月以内であっても、就業規則や雇用契約書に「更新する場合がある」といった記載がある場合 や、同じ職場で同様の契約の方が2ヶ月を超えて働いた実績がある場合 は、最初の雇用時から加入対象と見なされます。

③ 賃金月額が8.8万円以上(年収106万円以上)であること

契約上の賃金が月額8.8万円以上である必要があります。

この月額賃金には、以下の手当は含まれません。

  • 残業代、休日手当、深夜手当
  • 賞与(ボーナス)や臨時に支払われる結婚手当など
  • 通勤手当、家族手当、皆勤手当

基本給や毎月決まって支払われる手当の合計が8.8万円以上になるかどうかで判断しましょう。

なお、2025年の年金制度改正法により、この要件については法律の公布から3年以内に廃止されることが決定しています。その時期は全国の最低賃金が時給1,016円以上(週20時間以上働くと年収約106万円)になるタイミングを見極めての判断となります。(2025年度の全国の最低賃金は時給1,023円以上で決定)

④ 学生でないこと

学生は社会保険の適用対象外です。対象の学校とは学校教育法に定められた学校(大学、高等学校、専修学校など)になります。

なお、以下のような場合は学生であっても加入対象となります。

  • 卒業見込証明書があり、卒業前から就職し、卒業後も引き続き同じ会社で働く予定の方
  • 休学中の方
  • 夜間学部や定時制、通信制の課程に通う方

参考:
社会保険適応拡大特設サイト|厚生労働省
社会保険の適応拡大について|厚生労働省

パート・アルバイトの社会保険料はいくら引かれる?

パート・アルバイトの社会保険料がいくら引かれるかは、給与額を基に算定される「標準報酬月額」や賞与額を基に算定される「標準賞与額」、加入する健康保険(協会けんぽ、健康保険組合 など)、お住まいの地域、年齢(40歳以上64歳以下の場合、介護保険料が健康保険料とあわせて徴収されるため)によって異なります。

社会保険料の計算に使う「標準報酬月額」「標準賞与額」とは

社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、毎月の給与や賞与の額そのものではなく、「標準報酬月額」「標準賞与額」という基準額を基に計算されます。

標準報酬月額とは、給与(報酬月額)を一定の区切り(等級)にあてはめたものです。健康保険は1~50等級、厚生年金保険は1~32等級に区分されます。

例えば、厚生年金保険の場合、月額8.3万円以上9.3万円未満の方の標準報酬月額は「8.8万円」となります。健康保険料も同様に、都道府県ごとに定められた等級表(協会けんぽの場合)にあてはめて計算されます。

標準賞与額とは、実際に支払われた賞与の額から1,000円未満の端数を切り捨てた額のことです。なお、年間(4月~3月)の上限額があり、健康保険料では573万円、厚生年金保険料では150万円とされています。

各保険料の料率と計算方法

健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料(40~64歳のみ)は、「標準報酬月額」「標準賞与額」を基に計算され、保険料の総額を会社と従業員で半分ずつ(労使折半)負担します。

雇用保険には標準報酬月額という区分はなく 、毎月の給与(賃金、手当、賞与など)の総額(賃金総額)に 、所定の保険料率をかけて計算されます。雇用保険料のみ、会社と労働者で負担する割合が異なります。

各保険料の計算方法の概要は以下のとおりです。

保険の種類労働者負担分の計算方法備考(料率例:2025年11月現在)
健康保険料(標準報酬月額または標準賞与額 × 保険料率) ÷ 2料率は加入する健康保険や地域で異なる
例)令和7年度
協会けんぽ東京支部 介護保険第2号被保険者(40~64歳)に該当しない 9.91%
介護保険料(標準報酬月額または標準賞与額 × 保険料率) ÷ 240歳以上64歳までの方が対象

例)協会けんぽ東京支部 1.59%

厚生年金保険料(標準報酬月額 または標準賞与額× 18.3%) ÷ 2保険料率18.3%は固定
雇用保険料雇用保険料=賃金総額(給与・賞与 × 雇用保険料率料率は労使折半ではなく事業の種類によって異なる

例)令和7年度

一般の事業 1.45%
(事業主負担:0.9%/労働者負担0.55%)

※介護保険料は40~64歳の健康保険料に上乗せして計算

参照:令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)|協会けんぽ・全国健康保険協会
雇用保険料率について|厚生労働省

【月収別】パート・アルバイトの社会保険料シミュレーション

実際に月収別にいくら社会保険料が引かれるのかを試算してみましょう。

以下の条件でシミュレーションします。

  • 勤務地:東京都
  • 加入保険:協会けんぽ
  • 年齢:40歳以上64歳以下(介護保険料あり)
  • 事業内容:一般の事業(雇用保険料率)
  • 料率:令和7年度の保険料率を使用、健康保険料は東京都の保険料率で算出

※あくまで概算であり、通勤手当や残業代の有無、賞与によって実際の金額は変動します。

月収8万円の場合

月額賃金が8.8万円未満のため、社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)の加入条件を満たさないため、社会保険料はかかりません。ご自身で国民健康保険や国民年金に加入して、保険料を支払うか、社会保険に加入している配偶者などの扶養に入る必要があります。

ただし、社会保険の加入条件とは別に、週の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがある場合は、雇用保険のみ加入対象となります。その場合は、雇用保険料が給与から引かれます。

雇用保険料(労働者負担試算): 80,000円 × 0.55% = 440円

月収8.8万円(年収106万円)の場合 (加入義務発生ライン)

月収8万8,000円のパート・アルバイトの社会保険料は以下のとおりです。

社会保険への加入義務が発生し、雇用保険の加入要件(週所定労働時間20時間以上、31日以上の雇用見込)を満たす場合は、各保険料の支払いが発生します。

保険区分保険料
厚生年金保険厚生年金保険料:88,000×0.183=16,104円

従業員負担額:16,104÷2=8,052円

健康保険健康保険料:88,000×0.0991=8,720.8円

従業員負担額:8,720.8÷2=4,360.4円

介護保険介護保険料:88,000×0.0159=1,399.2円

従業員負担額:1,399.2÷2=699.6円

雇用保険雇用保険料:88,000×0.0145=1,276円

会社負担額:88,000×0.009=792円

従業員負担額:88,000×0.0055=484円

社会保険料合計

(従業員負担の目安)

13,596円

月収10万円の場合(年収120万円)

月収10万円のパート・アルバイトの社会保険料は以下のとおりです。

標準報酬月額は98,000円として厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料を、賃金総額は100,000円として雇用保険料を計算します。

保険区分保険料
厚生年金保険厚生年金保険料:98,000×0.183=17,934円

従業員負担額:17,934÷2=8,967円

健康保険健康保険料:98,000×0.0991(※)=9,711.8円

従業員負担額:9,711.8÷2=4,855.9円

介護保険介護保険料:98,000×0.0159=1,558.2円

従業員負担額:1,558.2÷2=779.1円

雇用保険雇用保険料:100,000×0.0145=1,450円

会社負担額:100,000×0.009=900円

従業員負担額:100,000×0.0055=550円

社会保険料合計

(従業員負担の目安)

15,152円

月収12万円の場合(年収144万円)

月収12万円(年収144万円)のパート・アルバイトの社会保険料は以下のとおりです。

計算方法は月収10万円の場合と同じです。

保険区分保険料
厚生年金保険厚生年金保険料:118,000×0.183=21,594円

労働者負担額:21,594÷2=10,797円

健康保険健康保険料:118,000×0.0991=11,693.8円

労働者負担額:11,693.8÷2=5,846.9円

介護保険介護保険料:118,000×0.0159=1,876.2円

労働者負担額:1,876.2÷2=938.1円

雇用保険雇用保険料:120,000×0.0145=1,740円

会社負担額:120,000×0.009=1,080円

労働者負担額:120,000×0.0055=660円

社会保険料合計

(従業員負担の目安)

18,242円

月収20万円の場合(年収240万円)

月収20万円(年収240万円)のパート・アルバイトの社会保険料は以下のとおりです。

計算方法は月収10万円、12万円の場合と同じです。

保険区分保険料
厚生年金保険厚生年金保険料:200,000×0.183=36,600円

従業員負担額:36,600÷2=18,300円

健康保険健康保険料:200,000×0.0991=19,820円

従業員負担額:19,820÷2=9,910円

介護保険介護保険料:200,000×0.0159=3,180円

従業員負担額:3,180÷2=1,590円

雇用保険雇用保険料:200,000×0.0145=2,900円

会社負担額:200,000×0.009=1,800円

従業員負担額:200,000×0.0055=1,100円

社会保険料合計

(従業員負担の目安)

30,900円

参考:令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|協会けんぽ・全国健康保険協会

パート・アルバイトで扶養内で働きたい場合はどうする?

今は配偶者の扶養の範囲内で働きたいと考える方もいるでしょう。その場合は、「年収の壁」を意識して働き方を調整する必要があります。

年収106万円以内にする(社会保険加入の壁)

この記事で解説した勤務先の従業員数が51人以上の場合で、「週20時間以上」、「月額8.8万円(年収106万円)以上」、「2ヶ月超の雇用見込み」、「学生ではない」の4条件を満たすと配偶者等の扶養から外れ、社会保険に加入する必要があります。

130万円の壁(社会保険の扶養の壁)

106万円の壁の条件(週20時間など社会保険の加入要件)を満たさない場合でも、年収が130万円以上になると、配偶者が加入する健康保険の「被扶養者」や国民年金の「第3号被保険者(配偶者が保険料を支払う)」とは認められなくなります。この場合、勤務先の社会保険にも入れないため、ご自身でお住まいの市区町村の「国民健康保険」と「国民年金」に加入し、保険料を全額自己負担で支払う必要があります。

もし「扶養の範囲内」での勤務を希望する場合は、これらの壁(特に106万円の壁)を超えないよう、勤務先の担当者と相談のうえ、週の所定労働時間や月収が基準未満になるよう調整することが考えられます。

パートやアルバイトの社会保険加入ラインと働き方を把握しましょう

パートやアルバイトの社会保険料の計算方法について解説しました。各種保険料については、自身の月収からどの等級に区分されるかを確認して計算しましょう。

今後パート・アルバイトとして働く方は、年収が130万円以上になると扶養から外れて社会保険に加入しなくてはなりません。一方で週の所定労働時間や雇用期間など4つの条件を満たしていれば、年収106万円が社会保険加入のボーダーラインとなります。

給与が上がればその分負担する社会保険料が増える一方で、将来受け取れる年金額が増えたり、健康保険による給付内容が充実したりなどのメリットもあります。社会保険加入ラインをよく把握して、自身が望む働き方を検討しましょう。

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