- 更新日 : 2026年1月7日
労働保険の年度更新申告書を間違えたら?訂正方法を解説
労働保険の年度更新(毎年6月1日~7月10日)の申告書を提出してから、間違いに気づいたという方もいらっしゃるでしょう。
賃金総額の計算などで、「通勤手当を入れ忘れた」「役員報酬を誤って含めてしまった」といったケースの場合はどのようにすればよいのでしょうか。
労働保険の申告書の記入を間違えたと気づいた時、いつ気づいたかによって対処法は異なります。申告書を提出する前であれば簡単な訂正で済みますが、提出・納付を終えた後では、「訂正申告」や「還付請求」といった手続きが必要になります。
この記事では、労働保険申告書(様式第6号)の記入を間違えた場合の対処法を、時期や状況別に、訂正申告の記入例や時効なども含めて詳しく解説します。
目次
労働保険の年度更新申告書を間違えた!まず何を確認すべき?
労働保険の年度更新申告書(様式第6号)の記入間違いに気づいた時、まず確認すべき点は「いつ気づいたか」そして「間違いによって保険料がどう変わるか」の2点です。
この2点によって、その後の手続きが変わります。
- 申告書の提出(納付)前に気づいた場合
まだ申告書が手元にある、あるいはe-Govで送信する前であれば、手続きは簡単です。 - 申告書の提出(納付)後に気づいた場合
この場合は、正式な「訂正申告」 が必要です。 さらに、間違いが「保険料の不足(少なく申告した)」か「保険料の過払い(多く申告した)」か を確認しなければなりません。
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提出前に労働保険の年度更新申告書を間違えた場合は?
労働保険の年度更新申告書(様式第6号)の提出前(納付前)でまだ手元にある段階で間違いに気づいた場合、手続きは比較的簡単に済みます。
1. 紙の申告書(OCR様式)で訂正する場合
労働保険の年度更新申告書上部の「確定保険料算定内訳」や「概算保険料算定内訳」の計算欄など、金額の計算根拠となる部分を訂正します。
- 間違えた箇所の数字を線で消します。
- その上や近くの余白に、正しい数字を、申告書右上に記載されている「標準字体」 を使ってハッキリと記入します。訂正印は不要です。
参照:継続事業用 令和7年度労働保険 年度更新 申告書の書き方
2. 領収済通知書(納付書)の金額は訂正不可
労働保険の年度更新申告書と一体になっている下部の「領収済通知書(納付書)」 に記載する内訳・納付額の金額は、訂正できません 。これは金融機関での処理に使うため、手書きでの修正が認められていないためです。
もし納付額を間違えて記入してしまった場合は、その用紙は使えません。 管轄の都道府県労働局や労働基準監督署の窓口 で、新しい領収済通知書の用紙を受け取った上で正しい内容を記入し直す必要があります 。
3. 計算支援ツールや電子申請の場合
計算支援ツール(Excel)を使っている場合
厚生労働省が提供する「年度更新申告書計算支援ツール」 を利用している場合は、大元の「算定基礎賃金集計表」シート の数字を修正すれば、「申告書記入イメージ」シート にも自動で正しい金額が反映されます。
e-Gov(電子申請)の場合
申請データを送信する前であれば、e-Govの画面上で入力内容を修正して送信するだけです 。
提出後に労働保険の年度更新申告書を間違えた場合は?
労働保険の年度更新申告書(様式第6号)を提出し、保険料も納付した後に「あの手当を賃金総額に入れ忘れた」「役員報酬を間違えて含めてしまった」など、計算間違いに気づくこともあるでしょう。
このような申告・納付が終わった後に間違いが発覚した場合は、申告書提出前のように簡単に訂正はできません。正しい保険料額で申告をし直す「訂正申告」という正式な手続きが必要になります。
間違いの内容によって、保険料を「追加で納付する」か、「返金(還付)してもらう」か、手続きが異なります。
賃金計算が少なかった(申告した保険料が不足していた)場合の訂正方法
申告・納付が終わった後に「通勤手当を賃金総額に入れ忘れた」などで、本来納めるべき保険料が少なかった(不足額が出た)場合。 この場合は、速やかに「訂正申告」を行い、不足額を納付する必要があります。
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出典:様式第6号 労働保険 概算保険料申告書(下書き用)|厚生労働省
訂正申告(様式第6号)の手続きの流れ
1. 管轄の労働局・労働基準監督署へ連絡
まずは間違いがあった旨を、管轄の都道府県労働局の労働保険徴収部などまたは労働基準監督署に電話で連絡し、訂正申告を行いたい旨を伝え、指示を仰ぎましょう。
2. 訂正申告書(様式第6号)、確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表の準備
新しい「労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書」(様式第6号)、「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」 を準備します(都道府県労働局などの窓口で受け取ります)。 申告書の用紙の余白(右上など)に「訂正申告」と赤字で大きく記載します。
3. 算定基礎賃金集計表の作成、申告書の記入と不足額の計算
算定基礎賃金集計表、申告書には、前回提出した間違った内容ではなく、すべて正しい金額で記入し直します。
申告書⑧⑩欄(確定保険料・一般拠出金)
正しい賃金総額(千円未満切捨)をもとに、正しい確定保険料・一般拠出金(1円未満切捨) を再計算して記入します。
申告書⑱欄(申告済概算保険料額)
ここには、前回(訂正前)の申告書に記載した(印字されていた)概算保険料額(前年度の年度更新で申告・納付した概算保険料額)を記入します 。申告書⑳欄(差引額)
⑩欄(正しい確定保険料額)と⑱欄(訂正前の申告で申告書に記載した概算保険料額)を比較し、差額を計算します。
4. 申告書等の提出
訂正申告書などを管轄の都道府県労働局などに提出します。提出書類は以下の通りです。
- 訂正前の申告書(事業主控の写し)と算定基礎賃金集計表
- 訂正後の申告書と算定基礎賃金集計表
- 訂正理由書(様式自由ですが、提出方法については管轄都道府県労働局などの指示を仰ぎましょう:後述のとおり)
5. 不足額の納付
計算した結果、追加で納付すべき保険料(不足額) が発生します。この不足額を、新しい領収済通知書(納付書) を使って金融機関で納付します。訂正申告書(様式第6号)の用紙を都道府県労働局で受け取る際に領収済通知書(納付書)も受け取るとよいでしょう。
労働保険の訂正を申告する理由書は必要?
労働保険の訂正を申告する理由書は、様式は決まっていませんが、なぜ訂正が必要になったのかを説明するために添付を求められることがあります。 訂正申告を行う前に管轄の都道府県労働局または労働基準監督署に確認し、指示を仰ぎましょう。
- 件名:労働保険料 訂正申告理由書
- 日付、宛先(〇〇労働局 御中)、事業所名と所在地、代表者名、連絡先、労働保険番号
- 理由(記載例):「令和〇年度 確定保険料の算定において、賃金総額に含めるべき「通勤手当」が集計から漏れていたため。正しい賃金総額に基づき再計算し、訂正申告いたします。」
賃金計算が多かった(申告する保険料が過払いであった)場合の訂正方法は?
逆に「役員報酬を間違えて賃金総額に含めてしまった」など、保険料を多く払いすぎていた(過払い) 場合は、訂正申告書を提出するだけでは、お金は自動的に返金(還付)されません 。
「訂正申告(正しい額の確定)」と「還付請求(返金依頼)」の2つの手続きが必要です。また、この場合は労働局による申告内容の調査(算定基礎調査等)を行う場合があります。
訂正申告と還付請求(様式第8号)の手続き
1. 訂正申告書(様式第6号)の作成
まず、上記(不足額が出た場合)と同様に、確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表を作成します。新しい申告書(様式第6号)には「訂正申告」と赤字で書き、すべて正しい(より低い)金額で再計算したものを作成します。これにより、正しい保険料額を確定させます。
2. 還付請求書(様式第8号)の作成
次に、「労働保険料・一般拠出金還付請求書」(様式第8号) の用紙を入手し、必要事項を記入します。 この様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
3. 還付請求書の記入内容
還付請求書 には、労働保険番号、事業主名称・住所・代表者氏名、還付を希望する金融機関の口座情報(銀行名、支店名、金融機関コード、支店コード、口座種別、口座番号、フリガナ) 、還付理由(1~3の番号から選択)、還付金発生年度を記入します。
4. 訂正申告書等を提出
作成した「算定基礎賃金集計表」「訂正申告書(様式第6号)」「還付請求書(様式第8号)」「訂正申告理由書」を、管轄の労働局または労働基準監督署に提出します。訂正前の算定基礎賃金集計表と訂正申告書(事業主控)もあわせて提出します。
労働保険料の修正申告に時効はある?
労働保険料の修正申告や還付請求には時効があります。
保険料を多く払いすぎた(過払い)場合、そのお金を返してもらう権利(還付請求権)は、年度更新申告書を提出した日の翌日から起算して2年を経過すると時効により消滅します 。(年度更新の提出期限後に申告書を提出していた場合は起算日が異なります。)
たとえば、令和5年7月10日に納付した保険料について、令和7年7月11日以降に間違い(過払い)に気づいても、その分を取り戻すことはできなくなります。
逆に、保険料の納付が不足していた場合、政府がその不足分を徴収する権利(徴収権)の時効も原則として2年です。
ただし、この時効は、労働局からの納付の通知(督促)や、労働保険調査(算定基礎調査)などによって「中断(時効の進行がリセット)」されます。
現実的には、時効だから支払わなくてよい、ということにはなりません。間違いに気づいた時点で自主的に訂正申告 を行わなければ、もし後日、調査などで発覚した場合、追徴金(不足額の10%) をあわせて徴収される可能性があります。気づいた時点で速やかに申告しましょう。
労働保険の申告書の控え紛失やその他トラブルの対処法は?
年度更新の手続きでは、計算ミス以外にも、実務的なトラブルが起こりがちです。
労働保険の申告書の控えを紛失した場合
「労働保険申告書(事業主控)」 は、翌年の年度更新の際に、⑱欄「申告済概算保険料額」 の欄に、前年に申告した金額を転記する必要があるため、非常に重要です。
もし控えを紛失してしまうと、この金額がわからなくなってしまいます。
労働保険の申告書の控えは原則として「再発行」されません。 対処法としては、管轄の労働局に連絡し、「情報開示請求」の手続き(時間がかかります)を行うか、翌年の年度更新時期(5月下旬~6月)に、労働局の担当窓口に電話で問い合わせて「昨年度の申告済概算保険料額」を口頭で教えてもらう方法があります。
申告書を切り離してしまった場合
労働保険の年度更新申告書(様式第6号)は、申告書(提出用)、申告書(事業主控)、領収済通知書(納付書)が複写式で一体となっています 。
このうち、金融機関で納付する際に必要な「申告書(提出用)」と「領収済通知書(納付書)」を、誤って切り離してしまうケースがあります。
まず注意すべきは、セロハンテープなどで貼り直さないでください。機械処理(OCR) の妨げになる可能性があります。
この場合の正しい対処法は以下のとおりです。
- 切り離した「申告書(提出用)」のみを、管轄の労働局または労働基準監督署に持参するか、郵送で提出します。
- 切り離した「領収済通知書(納付書)」は、別途、金融機関の窓口に持参し、保険料を納付します。
なぜ労働保険の申告書の間違いは起こる?
労働保険の年度更新申告書において 「賃金総額(=保険料の算定基礎となる賃金)をどの範囲で集計するか」 が間違いの原因となるケースがあります。
賃金総額の集計ミス(含めるもの・含めないもの)
年度更新で計算する「賃金総額」 とは、「労働の対償として支払うすべてのもの」を指し、所得税の課税・非課税とは関係ありません。
- 基本給
- 通勤手当(非課税分も含む)
- 賞与(ボーナス)
- 残業手当、深夜手当、休出手当など各種手当
- パート、アルバイトへの賃金
- 役員報酬:労働者性のない役員(代表取締役など)の報酬は含めません。
- 退職金
- 出張旅費、宿泊費(実費弁償的なもの)
- 結婚祝金、死亡弔慰金、見舞金など
集計表や計算支援ツールを活用して計算する
労働保険の年度更新申告書にいきなり数字を書くのではなく、まずは厚生労働省が用意している「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」 を使いましょう。
この集計表 で、月ごと、労働者の区分(常用、役員、臨時など)ごとに賃金を集計することで、算入漏れを防げます。
また、厚生労働省が提供する「年度更新申告書計算支援ツール」(Excel) も大変便利です。
このツール は、「賃金集計表」シートに月々の賃金を入力するだけで、労災保険料、雇用保険料、一般拠出金を自動で計算し、「申告書記入イメージ」シート に転記すべき数字を正確に表示してくれます。端数処理(千円未満切捨 や1円未満切捨 )のミスも防げるため、計算に不安がある場合はぜひ活用してください。
参照:主要様式ダウンロードコーナー(労働保険適用・徴収関係主要様式)|厚生労働省
参考:年度更新申告書計算支援ツール|厚生労働省
労働保険申告書の間違いに気づいたら早めに申告を
労働保険申告書の間違いに気づいた時、提出前であれば慌てずに訂正しましょう。提出後であれば、速やかに管轄の労働局や労働基準監督署に連絡し、「訂正申告」 を行ってください。
保険料を払いすぎていた場合は「還付請求書(様式第8号)」 の提出が必要で、これには2年の時効 がある点に注意が必要です。不安な点があれば、まずは管轄の行政窓口に相談することから始めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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