- 更新日 : 2025年4月18日
会社へ住所変更の報告を忘れていたとき住民税はどうなる?いつまでに連絡すべき?
会社に住所変更の報告を忘れていた場合、住民税を納付するべき地域に納付できていない可能性があります。
また、以下のように疑問に思っている人もいるでしょう。
「住所変更の報告は本来いつまでにすべき?」
「住民税以外にも何か影響は出る?」
そこで本記事では、住所変更の報告を忘れていた場合の影響や住所変更を報告すべきタイミングなどを解説しています。
目次
住民税とは
住民税とは、消防・救急・ごみ処理・学校教育などの行政サービスにかかる費用を負担するための税金です。
前年度に所得がある人は、非課税制度の対象となる場合を除き全員が住民税を納めなければなりません。地方税法の第294条にも「市町村内に住所を有する個人」が納税義務者として規定されています。
住民税の内訳としては、所得割と均等割があります。前年の所得に応じて税額が決まるのが所得割、地域ごとに税額が決まっているのが均等割です。令和6年度から均等割と併せて、森林環境税(国税)が年間1,000円課税されるようになりました。
また住民税は、1月1日時点で住民票がある市区町村に納める必要があります。年の途中で引っ越した場合も、該当年度は1月1日に居住していた市区町村に納付します。
参考:地方税法 | e-Gov 法令検索
総務省|地方税制度|個人住民税
会社に住所変更の報告を忘れていた場合、住民税はどうなる?
住所変更の報告を忘れていた場合、報告忘れに気付いたタイミングによって住民税への影響が異なります。
2024年8月1日に東京都の千代田区から中央区へ引っ越したケースについて考えてみましょう。
年の途中で引っ越したとしても、2024年度の住民税は2024年1月1日時点で居住していた千代田区へ納める必要があります。2025年1月1日は中央区に住所があるため、2025年度の住民税は中央区へ納めなければなりません。
従って住民税への影響は、報告忘れに気付いたタイミングによって以下のように変わります。
- 報告忘れに気付いたのが2024年内:住民税は引き続き千代田区へ納める必要があるため特に問題なし
- 報告忘れに気付いたのが2025年以降:本来納めるべきなのは中央区であるが千代田区へ納めている状態である
2024年のうちに報告忘れに気付いたなら、特に問題はありません。
ただ、2025年に入ってから報告忘れに気付いた場合は、問題ありです。本来納付すべき中央区ではなく千代田区で住民税が課税・納付されているためです。新住所の中央区へ住民税を納付するために手続きが発生し、会社の担当者にも迷惑をかけることになります。
参考:転出入で住所を変更した場合、住民税(特別区民税・都民税)はどこに納めるのですか。|港区ホームページ
住所変更の報告を忘れると、住民税の他にも影響が出る?
住所変更の報告をしなかった場合、住民税以外にも保険や通勤手当などに影響が出る可能性があります。どのような影響が出るのか、以下より詳しく解説します。
健康保険・厚生年金保険
社会保険のうちの健康保険と厚生年金保険に関しては、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていれば特に問題はなく、必要な手続きもありません。
ただし結びついていない場合は、住所が変わったタイミングで会社の担当者に報告して「被保険者住所変更届」を提出してもらう必要があります。
もし住所が変わったことを報告し忘れて変更届を提出できていないと、年金に関する重要な書類が届かなくなる可能性があります。
なお、マイナンバーと基礎年金番号が結びついているかどうかは「ねんきんネット」や年金事務所で確認可能です。
参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)および被扶養配偶者の住所に変更があったときの手続き|日本年金機構
通勤手当
通勤手当に関しては、住所変更の報告をしないと通勤経路も更新されません。よって、支給される通勤手当に過不足が発生します。不足分は後から支給され、超過分は返還を求められる可能性が高いです。
特に超過分については、通勤手当の不正受給とみなされる場合もあります。不正受給とみなされるのは主に以下のケースです。
- 会社に住所変更の報告を忘れていた、もしくは意図的に報告しなかった
- 会社に報告した経路以外で通勤し交通費を浮かせていた
- 電車通勤と偽って車通勤や自転車通勤をしていた
不正受給と判断された場合、超過分の返還だけでなく何らかの処分が下されることも考えられます。
年末調整
住所変更の報告をしないと、年末調整にも影響が出ることがあるでしょう。
年末調整で提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」には、年末調整後の1月1日時点で住民票に登録している住所を記載します。
たとえば、2025年に年末調整をする場合、申告書に記載するのは2026年1月1日時点で住民票に登録している住所です。
つまり、住所変更をしておらず、かつ会社があらかじめ申告書に現住所を記載してくれている場合、現住所の訂正を忘れてしまうと旧住所の市区町村に住民税を納めてしまったり、書類が現住所に届かなかったりすることが考えられます。
労働者名簿
労働者名簿とは、従業員の氏名や住所などを記載した書類です。労働基準法の第107条によって、会社に労働者名簿の作成が義務付けられています。
労働者名簿は従業員の情報を記載したあとも、情報に変更があれば「遅滞なく訂正しなければならない」と規定されています。つまり、従業員の住所が変更された際も労働者名簿を訂正しなければなりません。
労働者名簿は、労働基準監督署が行政調査という抜き打ち調査をするとき・会社が社員情報を管理するときに利用されます。住所変更をしないと、特に会社が社員情報を参照する際に迷惑をかける可能性があるでしょう。
災害が起こったり連絡がつかなかったりしたときに労働者名簿を参照するため、緊急時に安否確認ができないという事態になることもあり得ます。
いつまでに住所変更の報告をするべき?
本来なら、引っ越し後ではなく引っ越しが確定したタイミングで、引っ越し日や新住所を報告するのが理想です。引っ越し後に報告するとしても、2〜3日以内には会社に連絡すべきです。
従業員の住所は、通勤手当の計算をしたり各種書類を提出したりするときに利用されます。従って、住所変更の報告はなるべく早い方が良いでしょう。早く報告すれば、会社の担当者も余裕を持って手続きができます。
また会社によっては、「引っ越しから◯日以内に連絡すること」と定めている場合もあります。期日以外にも、誰に・どのようなフォーマットで・引っ越し後の通勤経路も併せて、など細かく指定されていることもあるため、事前に確認しておくのがおすすめです。
住所変更する際に会社へ提出する書類
住所変更する際に会社へ提出する書類は、会社によって異なります。
「住所変更届」「通勤経路の変更届」「緊急連絡先の変更届」のような書類を提出するよう定めている会社もあります。一方、担当者にメールやチャットツールで新住所を連絡するだけで完了する会社もあるでしょう。
また、住民票の写しやマイナンバーカードのコピーなどの提出を求められる場合もあるため、詳しくは就業規則を確認するか担当者に聞いてみてください。
なお、社会保険の住所変更の手続きをする際に必要な「被保険者住所変更届」は、会社が提出する書類であるため従業員本人が提出する必要はありません。
年末調整のタイミングで、住所変更に伴い「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を求められた場合は、速やかに変更後の住所を書いて会社へ提出しましょう。
住所変更の報告にまつわるQ&A
住所が変わったときの報告にまつわるQ&Aをいくつか紹介します。
住所変更の報告をしないと会社にバレる?
住所変更の報告を従業員本人がしなくても、会社にバレる可能性は十分にあります。
たとえば、納税や各種手続きのタイミングです。税金や保険料などは、従業員に代わって会社が納めたり手続きしたりします。住民票がある住所と会社が把握している住所が異なると、市区町村から連絡が来て住所が変わっていることが判明する場合があります。
また、通勤手当の調査によってバレることもあるでしょう。不正受給を防ぐために、抜き打ちで定期券の履歴を提出させる会社もあります。
他にも、さまざまな手続きに影響が出るため、バレる・バレないを基にするよりも住所が変わったら直ちに会社に報告すべきです。
引っ越しの理由も報告する必要がある?
引っ越し日や新住所は報告しなければなりませんが、引っ越しの理由を会社に報告する必要はありません。引っ越しの理由によって、手続きの内容が変わったり必要な手続きが増えたりすることがないためです。
また、会社の担当者から引っ越しの理由を聞かれることもほとんどないでしょう。もし理由を聞かれても詳細な理由を伝える必要はなく、「諸事情で」「家庭の事情で」などと返答すれば問題ありません。
よって、自分から引っ越しの理由を伝える必要はなく、聞かれても大まかに返答するだけで良いでしょう。
住所変更の報告をしないと何かペナルティはある?
住所変更の報告をしないと、通勤手当の超過分があった場合に返還を求められる可能性が高いです。
数ヶ月も報告をしていなかった場合や故意に報告しなかった場合、悪質と判断されて処分を下されることもあり得ます。また、住所変更の報告を怠ったこと自体が就業規則の違反として規定されている可能性もあります。
処分が下されるかどうか・どのような処分となるかは就業規則の規定によりますが、厳重注意をしたとして記録が残ったり始末書の提出を求められたりすることもあるでしょう。
住所変更の報告漏れに気付いた時点で速やかに連絡しましょう
会社に住所変更の報告を忘れると、住民税・通勤手当・年末調整などに影響が出ます。納めるべき地域に税金を納められなかったり、支給される手当に過不足が生じたりして自身だけでなく周囲にも迷惑をかけることもあり得ます。
住所が変わるときは、引っ越し日が確定したタイミングで報告すべきです。遅くても引っ越しから2〜3日後には担当者に連絡してください。
住所変更の報告をしないと、さまざまなことに影響が出ると理解し、次に引っ越したときは早めの報告を心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
有給休暇と残業時間が相殺されるケースは?関係性や注意点を解説
有給休暇を取得した日や週に残業をした従業員がいる場合、正しい残業時間の計算方法を理解していないと余分に残業代を支給することになります。また、残業時間が長いことを理由に相当分の有給休暇を付与し、有給休暇の取得時間を残業時間から差し引いて残業代…
詳しくみる藤枝市の給与計算代行の料金相場・便利なガイド3選!代表的な社労士事務所も
藤枝市は、静岡県の東部に位置し、豊かな自然と歴史的な文化が調和する魅力的な地域です。農業や製造業を中心に、多様な産業が発展しており、多くの中小企業が活動しています。 このような環境下で、給与計算は企業運営において欠かせない重要な業務ですが、…
詳しくみる時短勤務で給料は減る?減らない?制度や計算方法、2025年の新制度
近年ワークライフバランスの重要性が高まる中、時短勤務制度への注目が高まっています。しかし、時短勤務を導入する際に、給与への影響や制度の運用方法に不安を覚える企業も少なくありません。 本記事では、時短勤務に関する基本的な知識から給与計算方法、…
詳しくみる給与支払報告書の作成は税理士に依頼すべき?メリットや費用相場、社労士との違いを解説
年末調整の業務に追われる中、給与支払報告書の作成と提出は多くの方にとって負担になる業務です。従業員一人ひとりの住民税額を決定する重要な書類だからこそ、ミスは許されません。 この記事では、給与支払報告書の作成・提出を税理士に依頼する具体的なメ…
詳しくみる固定残業代のメリットは?やめとけと言われる理由や効果的な導入を解説
労働基準法は、賃金の全額払いを定めており、残業代も例外ではありません。そのため、企業は残業時間を正確に把握し、残業代を計算する必要がありますが、固定額を支払う企業も存在します。 当記事では、メリットやデメリットをはじめ、固定残業代を網羅的に…
詳しくみる給与計算の外注先は税理士と社労士どちら?業務範囲と違法性を解説
給与計算を外注する際、税理士と社労士のどちらに依頼すべきかは、業務内容によって異なります。税務に関する処理は税理士、社会保険や労務管理に関する手続きは社労士の専門分野です。両者の違いを理解し、必要に応じて連携してもらうことで、違法リスクを回…
詳しくみる