- 更新日 : 2026年1月14日
【シート付】MBO(目標管理制度)とは?意味、やり方、メリットをわかりやすく解説
本来MBOは、経営学者ドラッカーが提唱した、社員の主体性と成長を引き出すためのマネジメント手法です。
本記事では、MBOの正確な定義から、OKRやKPIとの違いを明確に比較。さらに、目標の形骸化を防ぐSMART原則に基づいた実践的な設定手順や、公平な評価を実現するフィードバックのノウハウまでを徹底解説します。
目次
MBO「Management by Objectives(目標による管理)」とは?
MBOは「Management by Objectives(目標による管理)」の略で、経営学者のピーター・ドラッカーが提唱した考え方です。社員それぞれがモチベーションを保ちながら、会社全体としての目標達成に向けて取り組める目標管理制度として知られています。
もともとは内発的な動機づけを重視する管理手法でしたが、1990年代に成果主義が国内へ導入されたことを背景に、現在は人事評価制度の一環として定着しました。
目標を設定する際には、会社や部門が掲げている大きな目標と自分の目標とがしっかり結びつくように意識しなければなりません。
ただ個人の目標を決めるだけではなく、自分の役割が組織全体の成功にどうつながるかをはっきりと言葉にすることが、制度の形だけが残る状態(形骸化)を防ぐポイントとなります。
また、上司と部下が話し合いを重ねて合意をつくり上げていくプロセスは、職場内のコミュニケーションを活発にする役割も果たします。
適切な目標管理によって、個人の成長と組織の持続的な発展を同時に実現しましょう。
略語が似ている「Management Buyout(経営陣による買収)」との違いは?
同じMBOという略語で「Management Buyout」という言葉があります。「Management Buyout」とは、会社の経営陣が金融支援を受けることによって、自ら自社の株式や一事業部を買収し会社から独立する手法を指します。
具体的には、グループの経営方針によって親会社が子会社や一事業部を切り離す際に、第三者に売却せず経営陣がその株式を取得し会社から独立するために用いられることが多いです。
また、株式公開のメリットが薄れた上場企業が、会社自ら株式非公開に踏み切る手段として活用されることもあります。また、経営陣と社員が一体となって株式を譲り受けるケースをManagement Employee Buyoutと言います。
MEBOは、経営陣と従業員が一体となって買収を行うことで、現場の意向を経営に反映しやすくなり、組織の結束力を維持したまま独立できるという特徴があります。MEBOは、あくまで資本政策やM&Aに関する用語であり、人事評価制度としての「目標管理(MBO)」とは全く別の概念である点に注意しましょう。
MBOの歴史
「Management by Objectives」はどのような歴史で現代の普及した状況に至ったのでしょうか。続いて、MBOの歴史について解説します。
MBOは、時代の流れとともに目的を少しずつ変えながら、日本企業に広く浸透してきました。
MBOは、1954年にピーター・ドラッカーによって提唱され、1960年代には国内の大手企業で導入されました。
当初は人材育成や意欲向上を主眼としたマネジメント手法として活用されましたが、1990年代のバブル崩壊をきっかけに、大きな転換期を迎えます。
年功序列から成果主義へと移行する流れの中、MBOは達成度を人事評価に反映させる仕組みとして急速に広まりました。
2000年代以降は、運用面での課題が明らかになったため、各企業が自社の理念や実情に合わせて、制度を柔軟に改良しています。
現在では、約7割から約8割の企業がMBOを導入していると言われており、一般的な目標管理の方法として定着しています。
MBOの目的とは?
MBOの主な目的は、社員が自分から積極的に行動できるようにし、組織全体の成果を最大限に高めることです。社員自身が目標を設定することで、「やらされている」という受け身の気持ちをなくしやすくなります。PDCAサイクルをしっかり根付かせて業務を効率化したり、数値に基づいた公平な人事評価を行いやすくなるメリットもあります。
社員のモチベーションの向上
MBOを導入すると、社員が主体性を持って業務に取り組める環境が整い、モチベーションも大きく高まります。
上司から一方的に課せられるノルマとは異なり、社員自身が目標設定に参加することで、「自分で決めた」という強い当事者意識が生まれるためです。
自らの意思で定めた目標に挑戦する過程では、スキルアップや成長を実感しやすくなり、内発的な意欲も高まります。
個人の目標が会社全体の成功と結びついていることをきちんと理解できれば、自分が組織にどのように貢献しているのかが明確になり、仕事の意義も見いだしやすくなります。
「やらされ感」をなくして社員の能力を最大限に引き出すためには、主体性を大切にした運用を意識しましょう。自己決定の機会を増やすアプローチによって、組織全体の活性化が期待できます。
業務効率の向上
MBOを導入すると、組織全体の業務効率を大きく向上させられます。
目標の設定から実行、改善までの流れが、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)の浸透を自然に後押しするからです。
明確な目標を意識することで、日々の業務において何に優先的に取り組むべきかがはっきりとし、成果に直接つながらない作業を大きく減らせます。
限られた時間や予算をどこに使うべきか、判断がしやすくなる点も大きなメリットです。
定期的に進捗を確認する機会を設けることで、現場の課題を早い段階で見つけ、すぐに修正に取りかかる習慣が身につきます。
無駄な工程を省き、持っているリソースを最適に使えるようになれば、生産性の向上にも大きく貢献します。
客観的で納得感のある人事評価の実現
MBOは、客観的な事実に基づくため、納得感のある人事評価を実現できます。
あらかじめ期限や達成すべき水準が数値や文書として設定されているので、評価基準が曖昧になることはありません。
感情や主観的な判断を排除し、目標をどれだけ達成したかという明確な実績によって評価が行われます。
MBOにより、評価者ごとの判断の違いも抑えられ、組織全体で公平な評価が可能です。
評価の根拠が明確に示されていれば、社員は自分の評価結果を正しく理解できるため、不満や疑問を感じにくくなります。
透明性の高い評価制度を運用することで、社員の会社に対する信頼もより深まるでしょう。
MBOを使用した目標設定のポイントは?
MBOを形骸化させずに成果につなげるためには、具体的で適切な難易度の目標を設定することが大切です。
目標には期限を設け、行動計画をはっきりさせましょう。組織の目標と個人の役割を結びつけることで、社員の成長と組織の成功を同時に目指せます。
具体的でわかりやすい目標にする
目標を設定する際には、誰が見ても達成基準が明確になるように、「具体的で測定可能な表現」を使うことが大切です。
たとえば「いつまでに」「どの程度」達成するのかなど、数値や期限といった指標をはっきりと決めるほど、目標達成までの道筋が一層はっきりします。
内容を細かく具体化しておくことで、その後の計画実行の段階への移行も、よりスムーズになります。
目標が明確であれば、取り組むべきタスクも細かな単位で整理しやすくなり、着実に行える行動計画を立てることが可能です。
曖昧な表現を取り除き、ゴールをしっかり描くことが、実行の質を高め、最終的な成果へとつながります。
目標のレベルが高すぎたり低すぎたりしない
MBOの目標は、今の能力で容易に達成できるものではなく、努力して初めて100%達成できる適切な難易度に設定するべきです。
簡単すぎる目標では成長につながりませんし、反対に高すぎる目標は意欲を失う原因になるからです。
また、上司と部下がしっかりと話し合い、お互いが納得できる合意をつくることが、強い当事者意識を生むポイントになります。
たとえ未経験の分野であっても、必要な学習やサポートを計画にきちんと組み込めば、着実に人材を育てられます。
期限を設ける
目標には明確な期限を設定すべきです。
終了の期日を決めることで業務に適度な緊張感が生まれ、集中力を高い状態のまま保って取り組めるからです。
一方で、期限があいまいなままだと、どうしても行動を先延ばしにしやすくなり、作業が長引いてしまう可能性があります。
「いつまでに何を終わらせるのか」を具体的に決めれば、迷わず速やかに実行に移せます。
時間の制約を設けて効率的に予定を立てることで、目標の達成確率を高めましょう。
具体的な取り組み方を明記する
成果だけでなく具体的な取り組み方も明記しましょう。成果は運にも左右されますが行動は再現性があります。目標達成に向けた行動をできるだけ具体的に計画し、実行できた行動も評価することで今後の成長が期待できます。
会社の戦略や自身の役割と関連付ける
企業の経営目標や所属チームの目標を共有して、その達成に貢献できるような個人目標を設定することが重要です。マネージャーは、目標設定の際に個人の成長が会社の成長にもつながるということを伝えるようにしましょう。
MBOシート(目標管理シート)の無料テンプレート・ひな形
MBOを実施し成功するためには、明確な目標設定と徹底した管理が不可欠です。そのため、目標管理を行う際は、専用のテンプレートをご利用いただくことをお勧めします。このテンプレートは、個々の目標を明確に記述し、進捗を追跡するのに役立ちます。
また、定量目標と定性目標の設定に役立つ目標設定ワークシートのテンプレートもご用意しております。定量目標は、数値や数量で表せる目標のことで、定性目標は、数値化できない目指すべき状態を表した目標のことです。
マネーフォワードクラウドでは、今すぐ実務で使用できる、テンプレートを無料でダウンロードいただけます。ベースを保ちつつ、自社の様式に応じてカスタマイズすれば使い勝手の良い書類を作成できるでしょう。この機会にぜひご活用ください。
MBOを使用するメリットは?
MBOの導入は、社員の主体性を育て、組織全体の成果を高める効果があります。
自分自身で目標を立てることにより、経営への参加意識が生まれ、モチベーションの向上につながります。無理のない範囲で少し高めの目標に挑戦することが、個人の能力を最大限に発揮させるきっかけにもなるでしょう。
社員のモチベーション向上
MBOは自分で達成過程をマネジメントしながら目標を達成し、自分で評価する非常に自主性の高い制度です。あわせて、設定する目標は会社全体の目標ともリンクするため、個人の目標達成が会社の目標達成やチームの目標達成の貢献につながります。このように、MBOは社員の業務への自発的な参加と経営への参加意識を高める制度のため、社員のモチベーション向上が促進されます。
社員の能力を引き出す
「今までの方法では達成することは難しいけれど、少し工夫をすれば達成できる程度」の目標を掲げて努力する過程で、社員の能力を引き出せます。
業務の効率化と組織目標達成の確実性向上
MBOを導入することで、組織全体が目標を達成できる可能性を大幅に高められます。
個人の目標を会社の経営戦略と結び付けることで、組織の全員が共通の方向を目指して行動しやすい環境が作られるからです。
目指すべきゴールがはっきりすれば、日々の業務でも優先順位を判断しやすくなります。
各社員が組織への貢献を意識して行動を選び、限られたリソースを成果につながる作業に集中する習慣が身につきやすくなります。
全社的な戦略と個人の活動をしっかりと結び付けることで、無駄のない効率的な組織運営を実現しましょう。
MBOを使用するデメリットは?
MBOには、成果だけが重視されてプロセスが軽視されたり、評価を気にして目標設定が慎重になりすぎたりするリスクがあります。
運用がノルマ管理のようになってしまうと、メンバーのやる気が下がるだけでなく、管理職の負担も大きくなるため注意が必要です。
プロセスが無視されがちになる
目標を設定して目標達成に向けて活動していくMBOの特性上、目標の達成/未達成にのみ注目する傾向があります。そのように成果にばかり重点をおくと、社員の自主性や頑張りというプロセスが無視されがちになるというデメリットもあります。
ノルマ管理になってしまう場合も
MBOがノルマ管理制度になってしまうと、社員のモチベーション低下につながりかねません。また、与えられた目標では会社や上司から押し付けられたという感じが拭えず、社員のモチベーションや生産性の向上にはつながらないでしょう。
目標の質が下がる傾向がある
MBOが人事考課の判断材料として導入されている場合、良い評価を得るために達成しやすい簡単な目標設定をする傾向があります。MBOを適切に使用しないと、個々のスキルアップや企業の成長にはつながりません。
評価者(管理職)の負担が増大する
MBOの導入には、管理職の業務負担が大きく増えるという側面があります。
目標設定や進捗確認、評価後のフィードバックまで、部下との面談を重ねたり、関連する事務作業に多くの時間がかかるためです。
公平な評価を行い、部下が納得できるように対話するには、評価者である管理職に高いマネジメントスキルが求められます。基準が曖昧なまま運用すれば、現場の混乱を招きかねません。
人事制度としてMBOを導入する際の手続きは?
MBOを導入する際には、SMART原則に基づいて質の高い目標を設定し、進捗の確認や評価後のフォローまでを一貫して行う運用フローを整えることが大切です。
社員の主体性を尊重しつつ、客観的な基準に沿ってPDCAサイクルを回すことで、組織としてしっかりと成果を生み出せるでしょう。
SMART原則の構成要素と形骸化を防ぐ効果
MBOを実効性の高いものにするには、目標設定の質を高める「SMART原則」の活用が有効です。
SMART原則に基づき明確な指標を用いることで、目標が具体的かつ測定可能となり、進むべき方向がわかりにくくなったり、誰も行動しないまま形だけになる事態を防げるからです。
以下の5項目を基準に、設定した目標の内容をしっかりと見直しましょう。
| 要素 | 意味 | 具体的チェックポイント |
|---|---|---|
| S(Specific) | 具体的に | 誰が読んでも解釈が一致する具体的な表現か? |
| M(Measurable) | 測定可能に | 達成度を数値や指標で客観的に判定できるか? |
| A(Achievable) | 達成可能に | 努力すれば届く、適切なストレッチレベルか? |
| R(Relevant) | 関連性がある | 会社の戦略やチームの目標に関連しているか? |
| T(Time-bound) | 期限を定める | いつまでに達成するか期日が設定されているか? |
1.目標設定
MBOの導入において、最初のステップである目標設定は、組織の方向性と個人の意欲を一致させるために重要な工程です。
経営目標を各部門へ展開する「下方展開」と、社員が自分で目標を考える「ボトムアップ」の両方を取り入れることで、組織全体との一貫性を確保しなければなりません。
目標を立てる際にはSMART原則を用い、具体的で測定可能な指標をしっかり設定することが大切です。
達成基準を曖昧にせず、数値で明確にできれば、上司と部下のあいだに客観的な共通認識が生まれます。
社員が自ら主体的に目標を考え、目標の難しさや適切さについてマネージャーが確認するプロセスが、組織への貢献意識を高める基礎となります。
2.計画実行
目標を設定した後は、社員が自ら主体的に計画を進め、PDCAサイクルを回すことで、着実に成果を積み上げていきます。
具体的な数値をもとに行動計画を立てることで、進捗状況が分かりやすくなり、業務改善の精度も向上します。
マネージャーは細かい指示を出しすぎず、社員の自律的な実行を信頼する姿勢を持つことが大切です。
問題が発生した場合には、必要なリソースや専門知識を提供しながら伴走者の役割に徹することで、社員の挑戦をしっかりと支えられます。
3.進捗確認
実行段階では、月1回や隔週などの頻度で「1on1ミーティング」を実施し、着実に進捗を確認しましょう。
定期的な対話の場を設ければ、社員自身が自分の行動を振り返り、状況に応じて計画を見直せます。
マネージャーの助言だけでなく、本人が主体的に改善を繰り返すプロセスによって、現場の問題解決能力は大きく向上します。
対話を通じて現状を正しく把握し、目標達成に向けた軌道修正も素早く行える体制を維持しましょう。
4.評価とフォローアップ
期間の最後に目標達成について社員が自ら評価し、その後最初に決めた評価基準に基づいてマネージャーが評価を行います。重要なのは努力の量ではなく目標への達成度を客観的に評価することです。もし目標達成ができなかった場合には、目標達成ができなかった理由や次はどのようにすれば目標達成ができるのか社員に考えるように促し、気づきが得られるようにマネージャーがサポートしましょう。
MBOを導入している企業事例
先ほども説明しているように、日本では多くの企業でMBOが導入されています。ここでは以下の企業の事例を紹介します。
- グリー株式会社
- ヤフー株式会社
- 株式会社ユー・エム・アイ
なお、掲載している内容は、2025年12月24日時点の情報です。
グリー株式会社
グリー株式会社は、ゲームを中心にエンターテイメント事業に取り組んでいる会社です。同社では2007年からMBOによる目標管理を導入しています。目標達成の基準を5段階の指標で明確にしている点が特徴であり、1on1の面談も実施するなど、個人が成長できるように制度を整えています。
出典:GREE
ヤフー株式会社
大手IT企業であるヤフー株式会社では、2012年の人事制度改定に伴い四半期に一度のサイクルでMBOを導入しています。しかし、導入したことで目標達成に依存しすぎてしまう問題が起こりました。この点を改善するために同社では「バリュー評価」と「プロフィット評価」という2つの評価軸を設け、制度を改良しました。
株式会社ユー・エム・アイ
プラスチック製品やアルミ・チタン製品などを製造する株式会社ユー・エム・アイは、職場環境の改善を目的としてMBOを導入しました。この背景には、現場で優れたスキルを発揮する人材だからといってマネジメント能力が高いわけではないという課題がありました。MBOを通して一人ひとりのマネジメント能力を高めることで、管理職となったときのマネジメントに生かしていきたいという狙いがあると考えられます。
MBOとOKR、KPIとの違いは?
MBOと混同されやすいOKRやKPIですが、運用の目的や評価との結びつきが大きく異なります。
人事評価を重視するMBOに対して、OKRは挑戦を後押しし、KPIは目標達成までのプロセスを数値で測定するという特徴があります。これらの手法の違いを正しく理解したうえで、自社の組織文化に最も合った制度を選ぶことが大切です。
OKRとの違い
MBOとOKRは、運用期間や目標の難易度において大きく異なります。
MBOは目標の100%達成を前提としていますが、60%から70%の達成でも成功とみなされるような、より挑戦的な目標を設定します。
OKRが四半期単位で運用されるのは、変化の激しい環境下で迅速に軌道修正することを目的としているためです。
OKRは目標を全社に公開して組織内のつながりを強めることや、失敗を恐れずに挑戦できるよう、人事評価とは切り離して運用する点も特徴的です。
確実に業務を進めたい、成果を人事評価に直接結び付けたい企業には、MBOの方が適しています。
KPIとの違い
KPIとは、「重要業績評価指標」を意味する言葉です。MBOが人事評価に直結するものであるのに対して、KPIは目標を達成するために細分化された指標であるため、人事評価に直接的に影響を与えることはありません。また、MBOは基本的に上司と部下の間で共有されますが、KPIはプロジェクトメンバー間などで共有される指標です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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