- 更新日 : 2026年1月20日
配偶者の扶養に入ったまま社会保険には加入できる?外れる条件や手続き
会社員の配偶者(妻や夫)がパートタイマーで働いている場合、収入によっては扶養から外れて所得税の控除を受けられなくなったり、配偶者自身に社会保険の加入義務が生じて新たに保険料負担をしなければならなくなったりすることがあります。
本稿では、会社員の配偶者が扶養から外れる条件やその際に必要となる手続き、外れた場合のデメリット・メリットについてわかりやすく解説します。
目次
配偶者の扶養に入ったまま社会保険に加入することはできる?
結論から言いますと、ご自身が勤務先で社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する場合、配偶者の社会保険上の扶養からは外れることになります。
「配偶者の扶養に入ったまま(被扶養者のまま)、自分の会社の社会保険にも入る」という形で二重に加入することはできません。
ここで重要なのが「社会保険上の扶養」は外れても、「税制上の扶養」は残る場合があります。「税制上の扶養(配偶者控除・配偶者特別控除)」は別物であるという点に注意しましょう。
つまり、「自分の会社の社会保険には加入する(保険料を払う)けれど、配偶者の税制上の扶養(控除)には入ったまま」という状態はあり得ます。
- 社会保険上の扶養(健康保険・年金)
扶養家族が保険料の負担なく、医療や年金(配偶者のみ)を受けられる仕組み。 ご自身で勤務先の社会保険に加入すると、こちらの扶養からは必ず外れる。 - 税制上の扶養(所得税・住民税)
家族を養う配偶者の税負担を軽くするための仕組み。 ご自身で社会保険に加入していても、年収などの条件を満たせばそのまま残る。
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社会保険において配偶者の扶養から外れる条件とは?
いくら稼ぐと配偶者の社会保険上の扶養から外れ、自分で加入しなければならなくなるのでしょうか。それには主に「106万円の壁(従業員51人以上の企業で働く場合)」と「130万円の壁(全員対象)」の2つのパターンがあります。
1. 従業員数51人以上の企業で働く場合(106万円の壁)
従業員数が51人以上の企業で働くパート・アルバイトの方は、以下の条件をすべて満たすと、配偶者の扶養から外れて勤務先の社会保険に加入する必要があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円以上)
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
【重要】月額賃金には交通費は含まない
月額賃金の8.8万円には、交通費(通勤手当)、残業代、賞与などは含まれません。あくまで契約上の「基本給+固定額の手当」だけで8.8万円を超えるかが判断基準となります。
なお、2025年に成立した年金制度改正法により、上記のうち企業規模(従業員数)要件の縮小・撤廃と、賃金要件(年収106万円以上)の撤廃(2025年6月から3年以内)が決定しているため、注意が必要です。
2. 従業員数50人以下の企業で働く場合(130万円の壁)
従業員数が50人以下の会社で働く場合は、 月収8.8万円(年収約106万円)以上であっても、配偶者の扶養に入り続けることができます。
ただし、年収が130万円(月収約10.9万円)以上になると、企業の規模に関わらずすべての人が社会保険上の扶養から外れます。
なお、2025年10月以降、健康保険の被扶養者(配偶者以外)のうち、19歳以上23歳未満の方については、年収が150万円(月収12.5万円)以上で扶養から外れることになります。
【重要】交通費を含む
この年収130万円(月収約10.9万円)には、交通費(通勤手当)も含まれます。 「交通費を入れたら130万円を超えてしまった」というケースに注意が必要です。
なお、税金(所得税)の計算では交通費は非課税(ただし限度額あり)になります。
【重要】残業代の取扱い変更(2026年4月以降)
2026年4月以降、被扶養者認定の年収要件の判定にあたって、労働契約の際に明示された労働条件で残業(時間外労働など)が見込まれていない場合、残業代(時間外手当など)による増収が社会通念上妥当な範囲の額であれば、これを含めないことになるため、あわせて注意が必要です。
【働き方の例】社会保険上の扶養から外れる?外れない?
勤務先の規模と働き方によって、扶養から外れるかどうかが変わります。
会社員の配偶者であり、2カ月を超える雇用の見込みがあるとして、具体的なモデルケースを見てみましょう。
| 勤務先の規模 | 働き方・月収 | 結果(扶養と保険) |
|---|---|---|
| ①51人以上 | 週20時間(時給1,200円) (週4日×1日5時間など) 月収 約10.4万円(年収 約124.8万円) | 扶養から外れる (週20h・月8.8万円以上のため) |
| ②51人以上 | 週15時間(時給1,500円) (週3日×1日5時間など) 月収 約9.7万円(年収 約116万円) | 扶養のまま (月8.8万円以上だが週20h未満のため) |
| ③50人以下 | 週20時間 月収 約10.4万円(年収 約124.8万円・交通費含む) | 扶養のまま (週所定労働時間が30時間未満であり、年収130万円未満であるため) |
| ④50人以下 | 週24時間 (週4日×1日6時間など) 月収 約12万円(年収 約144万円・交通費含む) | 扶養から外れる (年収130万円以上であるため) |
社会保険上の扶養から外れる条件になったら、すぐに手続きが必要?
「今月だけ残業が多くて、扶養認定される基準を超えてしまった」 「時給が上がって、計算すると年収の壁を超えそう」といった場合、すぐに扶養から外れなければならないのでしょうか?
結論から言うと、「一時的なものか、継続的なものか」によって判断が分かれます。
繁忙期などの一時的な増収なら外れなくても良い
繁忙期で残業が増え、一時的な収入増により年収130万円の基準を超えても、直ちに外れる必要はありません。政府の支援策により、事業主の証明があれば引き続き扶養に入り続けられます。なお、2026年4月以降の被扶養者認定においては、入社時に明示された労働条件で、時間外労働などが見込まれていない場合には、増収額が社会通念上妥当な範囲であれば収入要件の判定に時間外(残業)手当などを含めない取扱いとなります。
雇用契約が変更され基準を超えた場合は扶養から外れる
一方で、一時的な残業ではなく、契約更新で所定労働時間を増やしたり、基本給が上がったりして恒常的に基準を超えた場合は、変更があった月から速やかに手続きが必要です。
特に従業員51人以上の企業で働く方の「106万円の壁」は、実労働ではなく契約内容で加入義務が決まるため、契約条件が変わり社会保険の加入条件を満たした時点で直ちに勤務先の社会保険への加入が必要となります。自己判断せず、必ず配偶者の勤務先や健康保険組合へ確認し、必要な手続きを行いましょう。
配偶者の社会保険上の扶養から外れた場合の手続き
社会保険上の扶養から外れる条件(社会保険の加入条件)に該当した場合、手続きは「自身の勤務先」と「配偶者の勤務先」の双方で行う必要があります。
会社による手続きの期限は「5日以内」が原則
原則として、ご自身が社会保険の加入条件を満たし、扶養から外れる理由が発生した日(就職日や雇用契約の変更日など)から「5日以内」に、会社が年金事務所などに届け出る必要があります。
従ってご自身の勤務先と配偶者の勤務先の双方に対して速やかに申し出る必要があります。
1. 自身の勤務先での手続き(加入手続き)
ご自身が働くパート先などで、社会保険の加入条件を満たした場合、会社側が手続きを行います。
手続き完了後、数日~数週間でマイナ保険証のデータが更新され、新しい保険情報で利用できるようになります。
※マイナ保険証を持っていない方には「資格確認書」が発行されます。
2. 配偶者の勤務先での手続き(扶養削除手続き)
忘れがちなのが、配偶者の会社での手続きです。自身が社会保険に入ったことを配偶者の会社では自動的には把握できません。必ず配偶者を通して、勤務先の担当部署へ「夫または妻が社会保険に加入したので、扶養から外す手続きをしたい」と申し出る必要があります。
- 提出書類:「健康保険被扶養者(異動)届」「国民年金第3号被保険者関係届」など
- 返却物:手元に従来の保険証がある場合は配偶者の会社へ返却する。
【重要】古い保険情報は絶対に使わない
自身の社会保険の資格取得日(働き始めた日など)以降は、配偶者の被扶養者としての保険証(マイナ保険証上の古いデータ含む)は使えません。もし使ってしまった場合、後日、国や健保組合から医療費(自己負担分以外の7割分)の返還請求が来ることになります。
手続き中(保険証が届く前)に病院に行きたい場合は?
手続きをしてからマイナ保険証にデータが反映されるまでには、数日〜数週間程度のタイムラグが発生することがあります。「切り替え中だが、風邪で病院に行きたい」「定期通院がある」という場合は、以下の2つの方法で受診できます。
方法1:会社に「資格証明書」を発行してもらう(おすすめ)
勤務先に「健康保険被保険者資格証明書」の発行を依頼しましょう。これは「手続き中ですが、間違いなく保険に入っています」と証明する公的な書類です。
これを病院の窓口で提示すれば、マイナ保険証がなくても通常通り3割負担で受診できます。
※発行には数日かかる場合があります。即日必要な場合は、協会けんぽや健康保険組合などに会社経由で相談する必要があります。
方法2:一旦10割負担で支払い、後で返金してもらう
資格証明書が間に合わない場合は、病院の窓口で「保険証切り替え中です」と伝え、医療費の全額(10割)を一旦支払います。後日、新しい保険データが反映されたマイナ保険証(または資格確認書)と領収書を病院に持参すれば、差額分(7割)が返金されるのが一般的です。
※病院での返金対応期間を過ぎた場合は、ご自身で加入した健康保険組合(または協会けんぽ等)へ「療養費支給申請書」を提出して返金を受けることになります。
配偶者の社会保険上の扶養から外れるメリット・デメリット
「手取りが減るから損」と思われがちですが、配偶者の扶養から外れて自分で社会保険に加入することには、目先の金額だけでは計れない大きなメリットもあります。
デメリット:保険料の負担により手取り額が減る
大きなデメリットは、健康保険料と厚生年金保険料が給与から天引きされるため、手取り額が減ることです。年収や自治体(協会けんぽの場合)にもよりますが、年間で約15万円以上の負担増となるケースが多く、収入が増えた分以上に保険料が引かれて手取りが減ってしまう、いわゆる「働き損」が発生する可能性があります。
メリット:将来の年金や万が一の保障が手厚くなる
一方で、自分で社会保険に加入することで、配偶者の扶養に入っている際には得られない手厚い保障を受けることができます。
まず、厚生年金に加入することで、将来受け取れる年金額がいわゆる「2階建て」となることで増えるため、老後の資金作りにおいて有利になります。
また、病気やケガで働けなくなった際に給与の約3分の2が支給される「傷病手当金」や、産休中の「出産手当金」が受給できるようになる点も大きなメリットです。
これらは配偶者の扶養に入っている状態では受け取れない給付金であり、長い目で見れば収入が減るリスクへの備えとして心強い存在となります。
社会保険で配偶者の扶養を外れる条件を知っておこう!
共働きの配偶者が扶養から外れて社会保険の加入義務が生じる条件について解説しました。
重要なポイントは、「社会保険上の扶養」と「税制上の扶養」は別物であるという点です。ご自身の勤務先で社会保険に加入すると、配偶者の「社会保険上の扶養」からは外れますが、年収約201万円以下であれば「税制上の扶養(配偶者特別控除)」はそのまま維持できるケースがほとんどです。
また、年収の壁(106万円・130万円)を超えて働くかどうかは、目先の手取り額だけで判断するのではなく、将来の年金額アップや傷病手当金といった「保障の厚さ」も含めて検討することが大切です。
就業調整を希望する人は少なくありませんが、制度の仕組みとメリット・デメリットをよく理解した上で判断することが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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