- 更新日 : 2025年12月19日
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(育児)の記入例とポイント解説
従業員が育児休業を取得する際、初回申請書(育児休業給付受給資格確認票)とあわせて提出が必要になるのが「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」です。
この書類の作成は担当者の方にとって、育休手続きの中でも特に気を使う場面ではないでしょうか。「どの時点の給与から、何か月分を計算すればいいのか」「産休中の扱いはどうなるのか」など、判断に迷う点も多いでしょう。
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書は、育児休業給付金の支給額を計算するための「最初の基準」となる、大切な書類です。ここに記載された休業開始前6か月間の賃金額をもとに、従業員が受け取る給付金の単価(休業開始時賃金日額)が決定されます。
この記事では、前回の「育児休業給付受給資格確認票」に続き、この「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」について、育児休業の場合の書き方を記入例をもとに解説します。
目次
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書とは?
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(育児休業)とは、育児休業給付金の1日あたりの支給額(休業開始時賃金日額)を算定するために、休業開始直前6か月間の賃金支払状況をハローワークに証明・提出するための書類です。
育児休業時の給付金の額は、この書類に記載された賃金額をもとに決定されます。
介護休業でも同じ様式を使う
この書類の正式名称は「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」(様式第10号の2の2) といい、育児休業だけでなく、介護休業の給付金申請時にも同じ様式を使用します。
提出のタイミングは、育児休業の場合、「育児休業給付受給資格確認票」(初回申請書)と同時にハローワークへ提出します。
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書は、いつ、誰が書く?
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書は、育児休業が開始された後(または産休から入る場合は産休開始後)に、事業主(会社の人事・総務担当者)が作成します。
休業開始日(または産休開始日)を基準に、その直前の賃金締切日までの給与額を確定させる必要があるため、休業開始前に作成することはできません。
事業主が賃金台帳や出勤簿をもとに、休業開始直前の賃金支払状況を正確に記入し、内容が事実に相違ないことを証明(事業主の署名または記名押印)します。
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(育休)の記入例
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参考:雇用保険事務手続きの手引き 【第3編】 育児休業等給付・介護休業給付・ 高年齢雇用継続給付編 【令和7年8月版】|厚生労働省
育児休業における「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」の書き方について、厚生労働省の記入例をもとに、特に重要な箇所を解説していきます。
基準日と賃金計算期間の定め方
④欄の「休業等を開始した日」は、育児休業を開始した日を記入します。この日を基準として、⑨欄の賃金支払対象期間は、この休業開始日(産休から入る場合は産休開始日)の直前の賃金締切日からさかのぼって、完全な賃金計算期間を6か月分記入します。
④ 休業等を開始した日の年月日
従業員が育児休業を開始した日を記入します。もし女性の被保険者が産前産後休業(産休)を取得し、産休に引き続いて育児休業に入る場合、ここで記入する日付は「育休を開始した日」となります。ただし、育児休業給付金の賃金日額は、産休開始前の賃金で算定します。
記入例では、「令和X年9月9日に出産」し、産休を経て「令和X年11月5日に育児休業を開始」 したケースです。この場合、産休開始日(RX.7.30)を基準に賃金支払対象期間(⑨欄)を設定します。
⑨ 賃金支払対象期間
休業を開始した日(産休から入る場合は産休開始日)の直前の賃金締切日の翌日から、休業開始日の前日までの期間を記入します。完全月で⑩欄の基礎日数が11日以上の月が6か月以上記入されていれば問題ありません。6か月ない場合は、賃金支払いの基礎となる時間数が80時間以上となる月についても記入します。
記入例では、産休開始日(7/30)の直前の締切日(7/20)の翌日「7月21日」から、休業開始日(7/30)の前日「7月29日」までの期間を記入すべきですが、この例では産休期間中の「7月21日~8月20日」の支払い実績 を上から2段目に記載しています。
2段目以降は、直前の賃金締切日からさかのぼり、完全な賃金計算期間(例:6月21日~7月20日)を記入していきます。
基礎日数と賃金額の書き方
⑩欄の「基礎日数」は賃金支払いの基礎となった日数、⑪欄の「賃金額」は税金や社会保険料を控除する前の総支給額を記入します。
これら6か月分の基礎日数と賃金額をもとに、1日あたりの「賃金日額」が算出されます。
⑩ 基礎日数
賃金支払いの基礎となった日数を記入します。月給制の場合はその月の暦日数(例:30日、31日)、日給・時給制の場合は実際に出勤した日数となります。有給休暇を取得した日や、休業手当の対象となった日も基礎日数に含めます。記入例では、産休に入る前の「6月21日~7月20日」の期間は、基礎日数が「30日」となっています。
⑪ 賃金額
税金や社会保険料を控除する前の総支給額を、月給や日給などの区分(A欄・B欄)に分けて記入します。A欄(月給・週給者)には基本給、役職手当、家族手当、通勤手当など、毎月固定的に支払われるものを含めた月給の総額を記入します。
ただし、賞与など3か月を超える期間ごとに支払われる賃金や、結婚祝い金など臨時の賃金は含めません。これら対象外の賃金は「⑬ 賃金に関する特記事項」の欄に記載することになります。記入例では、産休前の「6月21日~7月20日」の賃金額(A欄)は「300,000円」となっています。
賃金支払い基礎日数が11日未満の月がある場合はどうなる?
給付額の計算には、原則として「賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月」が6か月分必要とされます。もし、基礎日数が11日未満の月がある場合は、その月は給付額計算の基礎(6か月)から除外されます。
記入例では、「7月21日~8月20日」の期間は、産休に入ったため基礎日数が「9日」と11日未満になっています。この「9日」の月は算定基礎から除外されています。 そのため、算定の対象となる「11日以上の完全月」を6か月分確保するために、その前の期間(「6月21日~7月20日」から「1月21日~2月20日」まで)の6か月分が記載されています。
なお、時間数の特例についても知っておく必要があります。基礎日数が10日以下でも、その期間の賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上あれば、その月は「11日以上ある月」と同様に扱われます。
産休で賃金が支払われなかった期間の扱いは?
産前産後休業により賃金の支払いがなかった(または著しく低くなった)場合、その旨を「⑫ 備考」欄に記載します。賃金未払いがある場合や休業手当が支払われたことにより賃金が低くなった場合が該当します。⑧欄の賃金支払の基礎日数が11日以上の月が12か月以上ない場合、⑩欄の賃金支払の基礎日数が11日以上の完全月が6か月ない場合などでは、⑧欄と⑩欄の賃金支払の基礎日数が10日以下の期間の賃金支払の基礎となった時間数を記入します。
これは、なぜその期間の賃金額が0円(または低い)のか、理由をハローワークに説明するためです。
記入例では、「7月21日~8月20日」の賃金額が「90,000円」と低くなっています。これは「令和3年9月9日出産」 のため、7月30日から産休に入ったことが理由と考えられます。 このように、出産や傷病などで引き続き30日以上賃金の支払いがない(または少なくなる)場合は、「⑫ 備考」欄にその理由(例:「令和X年7月30日より産休のため」など)を記載します。
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書は育児休業の給付額を決める書類
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書は、育児休業給付金の支給額を算定する基礎となる書類です。
育児休業(または産休)開始直前の6か月分の賃金支払状況を、賃金台帳にもとづき事業主が正確に証明する必要があります。
特に「休業を開始した日」 、「賃金支払対象期間」 、控除前の「賃金額」の記入がポイントです。基礎日数が11日未満の月は算定から除外される ため、記入例 のように、要件を満たす月が6か月分そろうまでさかのぼって記入しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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