• 作成日 : 2025年12月24日

一般社団法人で儲かることは可能か?収益を上げるポイントや注意点を解説

一般社団法人はビジネスの器として非常に優秀であり、その特性を正しく理解すれば収益性の高いモデルを構築することが可能です。

「一般社団法人はボランティア団体だから儲からない」「利益を出してはいけない」。もしそのように考えているなら、それはビジネスの機会を大きく損失しているかもしれません。

本記事では、なぜ一般社団法人が「儲かる」と言われるのか、その法的な理由から具体的な収益モデル、そして独自のメリットを活かした収益の上げ方までを徹底的に解説します。

一般社団法人で儲かる(収益を上げる)ことは可能?

一般社団法人であっても利益を上げることは十分に可能で、収益化すること自体に法的な問題はありません。

世間一般には「一般社団法人=非営利=利益を出してはいけない」というイメージを持たれがちですが、これは法律用語としての「非営利」の意味が、少し誤解されていることに起因します。 ビジネスの観点から見たとき、一般社団法人は株式会社や合同会社と同じように、収益活動を行うことが認められている法人格なのです。

なぜそのように言えるのか、まずは法的な「非営利」の仕組みから解説します。

法律における非営利の意味

法律における非営利とは、「利益を出してはいけない」という意味ではありません。「出した利益を構成員(社員や設立者)に分配してはいけない」という意味です。ここが最大のポイントであり、多くの人が誤解している部分です。

株式会社と一般社団法人の決定的な違い

株式会社(営利法人)の場合、事業で得た利益を株主に配当という形で分配することができます。これに対し、一般社団法人(非営利法人)は、事業で得た利益を社員や理事に配当として分配することが法律で明確に禁止されています。

つまり、一般社団法人がどれだけ巨額の利益(儲け)を出しても、そのお金を「配当金」として個人に還流させることはできません。利益は法人の資産として内部留保されるか、次の事業投資に回さなければなりません。

一般社団法人については以下の記事でも概要を詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

一般社団法人が儲かるといわれる理由

なぜ配当が禁止されているのに一般社団法人は儲かると言われるのかは、「利益の分配(配当)」は禁止されていても、「労働の対価(役員報酬)」を受け取ることは法的に認められているからです。

「配当ができない=創業者にお金が入らない」というわけではありません。実際、多くの起業家が一般社団法人をビジネスの器として選び、この仕組みを活用してしっかりと収益を上げています。 そこには「役員報酬」という明確なルートと、「活動継続」という正当な理由が存在します。

配当は不可でも役員報酬は自由に設定できるから

法律で禁止されているのは、あくまで「余った利益を配当すること」であり、「労働の対価として給料(役員報酬)を払うこと」には制限がありません。

株式会社のオーナー社長と同様に、一般社団法人の理事も、自らの経営手腕や労働に対して正当な報酬を受け取ることができます。お金の流れを整理すると以下のようになります。

  1. 法人がビジネスを行い、利益を上げる。
  2. その利益から、理事長(自身)へ役員報酬を支払う。
  3. 経費と報酬を差し引いた残りが、法人の内部留保となる。

つまり、手元に残るお金の名目が「配当金」から「役員報酬」に変わるだけで、「法人が稼いだ利益を個人が受け取る」という経済的な実態は、一般的な中小企業と何ら変わりません。これが「一般社団法人は儲かる」と言われる所以です。

活動を続けるために利益は必要不可欠だから

次に「そもそも非営利法人が利益を追求していいのか?」という倫理的な疑問についてです。これに対する答えは、「はい、利益をあげることは推奨されます」となります。

一般社団法人はボランティア団体ではありません。株式会社と同じように収益事業を行うことが法律で認められています。むしろ、どんなに崇高な理念や社会貢献の目的があっても、資金が尽きれば活動は停止し、法人そのものが消滅してしまいます。

  • スタッフを雇うための人件費
  • より良いサービスを提供するための設備投資
  • 不測の事態に備えるための内部留保

これらを確保するためには、健全な黒字経営が必要です。「社会貢献を長く続けるためにこそ、しっかりと稼いで法人としての体力をつける」。この考え方は、一般社団法人において極めて健全な姿勢と言えます。

一般社団法人の具体的な収入源とビジネスモデル

一般社団法人のビジネスモデルの基本は、会費や資格認定といった「ストック型(継続課金)」の収入源を作ることです。 実際に安定して運営されている法人の多くは、単発の売り上げだけに頼るのではなく、以下の4つの柱を巧みに組み合わせて収益化を実現しています。

会費収入(ストック型ビジネス)

一般社団法人の最大の特徴であり、大きな強みとなるのが会費ビジネスです。「協会」や「学会」「業界団体」という立ち位置を作ることで、会員から継続的な「会費」を集めるモデルが構築しやすくなります。

  • 入会金:会員になるためのイニシャルコスト
  • 年会費・月会費:会員資格を維持するためのランニングコスト

例えば、会員数が1,000人で年会費が1万円であれば、それだけで年間1,000万円の安定収入(ベースライン)が確保できます。株式会社が顧客から「年会費」を取るのは心理的なハードルが高い傾向にありますが、一般社団法人という「公的な響き」を持つ組織であれば、ユーザーは「会費を払って所属する」ことに価値を感じやすくなります。毎月決まったキャッシュフローが見込める点は、経営の安定化において非常に有利です。

資格認定・検定ビジネス

「一般社団法人○○協会認定」という資格を作る、いわゆる「家元制度」に近いモデルです。これも非常に収益性が高いビジネスとして知られています。

  1. 受講料:資格を取るための講座費用
  2. 検定料:試験を受けるための費用
  3. 認定料:合格後の認定証発行費用
  4. 更新料:資格維持のための年間費用
  5. 上級講座:インストラクターになるための高額講座

一度カリキュラムとテキスト(知的財産)を作ってしまえば、原価率は低く抑えられ、高利益率を維持できる可能性があります。また、資格取得者が増えれば増えるほど、その資格の権威性が増し、さらなる受講者を呼ぶ「正のスパイラル」に入ります。資格取得者がインストラクターとして活動すれば、協会はその売上の一部をロイヤリティとして受け取るモデルも構築可能です。

セミナー・教育事業

専門的な知識やノウハウを提供するセミナーや研修です。講師としてのブランド力だけでなく、「社団法人主催」とすることで、企業研修や行政からの依頼を受けやすくなるメリットがあります。株式会社主催のセミナーは「売り込み」と警戒されがちですが、社団法人主催のセミナーは「学習・啓蒙」と受け取られやすく、集客コストを抑える効果が期待できます。

公的支援・補助金

国や自治体からの補助金・助成金は、株式会社よりも一般社団法人(特に非営利型)の方が要件を満たしやすいケースがあります。特に福祉、教育、地域活性化、子育て支援などの分野では、行政からの委託事業を受けることで安定した収益基盤を作ることが可能です。行政の予算がついている事業を受託できれば、対外的な信用力も向上します。

一般社団法人の特性を活かした儲かるためのポイント

一般社団法人で収益を最大化する鍵は、「社会的信用」を活かした売上拡大(攻め)と、「税制優遇」による手残り金の確保(守り)を組み合わせることです。

単に法人を設立するだけでは不十分です。株式会社とは異なるこの特性を戦略的に活用するために、押さえておくべき5つのポイントを紹介します。

ポイント1:権威付けによるブランディング効果

ビジネスにおいて「信用」は資産です。株式会社で「〇〇コンサルティング」と名乗るのと、一般社団法人で「〇〇普及協会」と名乗るのでは、相手に与える印象が異なります。 「公的な団体」というイメージを活用することで、メディア取材の獲得や、行政・大企業との提携ハードルを下げることが可能です。

ポイント2:基金制度による柔軟な資金調達

一般社団法人には「資本金」がありませんが、代わりに「基金」という独自の制度があります。 これは外部から資金を集める手段ですが、株式と違って「経営権(議決権)」を渡す必要がありません。経営の自由度を保ったまま活動資金を集め、利益が出た段階で返還するという、株式会社にはできない柔軟な資金調達が可能です。

ポイント3:企業スポンサーの獲得(B2B収益)

一般社団法人は「公共性」が高いため、株式会社に比べて企業からの協賛金(スポンサー料)や寄付金を集めやすいという特性があります。 企業側も、特定の営利企業にお金を出すことには抵抗がありますが、「業界の発展や社会貢献に寄与する協会への協賛」であれば、CSR予算や広告宣伝費として資金を出しやすくなります。会員からの会費だけでなく、法人間取引で太い収益の柱を作れるのが強みです。

ポイント4:税制の理解によるキャッシュの最大化

一般社団法人で収益を上げるために最も重要なのが、税金の知識です。一般社団法人は設立時の設計(定款の定め方)によって、税金のルールが大きく変わります。ここを理解して使い分けることが、手元に資金を残すカギとなります。

A. 自由度の高い「普通法人型(全所得課税)」

実態が株式会社と変わらないと見なされるタイプです。 すべての所得に対して法人税が課税されます。多くの「ひとり社団」や資産管理会社はこちらに該当します。税制メリットは少ないですが、設立や運営の要件が緩く、自由に経営できる点が強みです。

B. メリットを最大化する「非営利型(収益事業課税)」

一般社団法人ならではの税制優遇を受けられるタイプです。「理事が親族ばかりではない」「分配禁止規定がある」などの要件を満たす必要があります。 最大の特徴は、「収益事業から生じた利益」にしか税金がかからないという点です。

  • 収益事業(34業種):物品販売や不動産貸付など、法律で定めた34の業種には税金がかかる。
  • 非収益事業:対価性のない会費、寄付金、助成金などは「非課税」となる。

この「非課税枠」をうまく活用できるビジネスモデルであれば、株式会社よりも効率的に内部留保を積み上げることが可能です。

ポイント5:コミュニティ化によるLTVの向上

一般社団法人は「人」が集まることを前提とした組織です。顧客を「購入者」ではなく「会員(仲間)」として組織化することで、帰属意識を高めることができます。 共通の目的を持つコミュニティを作ることで退会率が下がり、一人の顧客が長期にわたって関わり続けるLTV(顧客生涯価値)の高い経営が実現します。

一般社団法人で儲かる前に知っておくべき注意点

一般社団法人は確かに収益性が高いビジネスモデルを構築できますが、株式会社とは異なる特有の制約が存在します。後悔しないために、設立前に必ず理解しておくべき3つのリスクを解説します。

上場(IPO)はできない

株式会社のように株式上場して、キャピタルゲイン(株式売却益)を得ることはできません。あくまで「事業収益」と「役員報酬」で稼ぐモデルであり、バイアウト(事業売却)を目指すスタートアップには不向きと言えます。

融資の審査が厳しくなる傾向にある

民間の金融機関によっては「非営利法人は返済能力があるのか?」と慎重に見られることがあります。事業計画書でしっかりと収益性を証明する必要があり、代表者保証を求められるケースも一般的です。

経営の自由度が制限される

非営利型を目指す場合、理事の親族割合制限(3分の1以下)があるため、家族だけで経営を固めることが難しくなります。完全に自分一人でコントロールしたい場合は、税制優遇を諦めて「普通法人型」を選択するか、株式会社を選ぶ方が賢明な場合があります。

一般社団法人で社会貢献しながら儲かる仕組みを作ろう

本記事で解説した通り、一般社団法人は決して「儲からない」だけの存在ではありません。むしろ、社会的な信用を味方につけ、堅実に収益を上げることができる強力なビジネスツールです。

「配当禁止」というルールこそありますが、適正な役員報酬を通じて対価を得ることは正当な権利です。「協会」という権威性によるブランディング、安定した会費収入、そして税制メリット。これらを戦略的に組み合わせることで、株式会社にも劣らない高収益な事業モデルを作ることが十分に可能です。

もし自身に「世の中を良くしたい」「業界を変えたい」という熱い想いがあるなら、その理想を持続させるためにも経済的な成功は不可欠です。ぜひ一般社団法人という器を賢く使いこなし、社会貢献と「儲かる」ビジネスの両立を実現しましょう。


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