• 作成日 : 2025年8月29日

福祉施設の開業ガイド|介護・障害者施設の立ち上げ手順、資格、助成金などを解説

超高齢化社会を迎えた日本において、福祉施設の役割はますます重要になっています。特に、2025年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、日本の総人口の約18%を占めると予測されています。

このような状況下で、福祉サービスの需要は確実に拡大しており、福祉施設の開業は社会貢献と事業性を両立できる、極めて将来性の高い選択肢といえるでしょう。

この記事では、福祉施設の種類別の開業方法から、具体的な立ち上げステップ、最新の助成金情報、そして成功の秘訣まで分かりやすく解説します。

福祉施設の開業に関する基本知識

まずは、福祉施設の種類と、その将来性について理解を深めましょう。

そもそも福祉施設とは

福祉施設とは、高齢者や障害を持つ方など、日常生活で支援を必要とする人々に対して、介護や生活サポート、リハビリテーションなどを提供する施設の総称です。代表的な施設には以下のようなものがあります。

高齢者向け施設
  • 訪問介護事業所
  • 通所介護(デイサービス)
  • 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 有料老人ホーム
障害者向け施設
  • 障害者支援施設
  • 共同生活援助(グループホーム)
  • 就労継続支援(A型・B型)事業所

福祉施設の将来性

介護施設不足や介護人材不足が懸念され、居場所を持てない高齢者が増える可能性があります。加えて、高齢化の進展に伴い認知症を抱える方の割合も増えていくでしょう。2020年時点で認知症患者は約602万人で、65歳以上の高齢者の約6人に1人(有病率16.7%)と推計されています。また2025年には約675万〜700万人となり、高齢者の約5〜6人に1人(有病率18.5〜20%)になる見通しです。

このような社会情勢により、福祉サービスの需要は確実に拡大しており、福祉施設の開業は極めて将来性の高い事業といえます。

福祉施設の開業は一人ではできない

「一人で福祉事業を始めたい」と考える方もいるかもしれません。しかし、訪問介護やデイサービスなどの介護保険サービスを提供する施設を開業する場合、国が定めた人員配置基準(管理者、サービス提供責任者、介護職員などの配置)を満たす必要があります。そのため、残念ながら一人ですべてを担って施設を開業・運営することはできません。

福祉施設の開業に必要な資格と人員要件

福祉施設の開業において最も重要な要素の一つが、適切な資格を持つ人材の確保です。施設の種類や規模により要求される資格や人員配置が異なるため、開業前に詳細な要件を把握しておくことが不可欠です。

管理者の資格要件

福祉施設の開業において、管理者に求められる資格は施設種別により異なります。

主要な管理者資格
  • 介護保険施設:介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護福祉士など
  • 障害者施設:社会福祉士、精神保健福祉士など
  • 訪問介護:実務者研修修了者または介護福祉士

サービス提供責任者の要件

実務者研修以上の資格者であれば、介護報酬の減算対象にならないため、安定した事業展開が見込めます。なお、以前は介護職員初任者研修修了者での3年以上の実務経験がサービス提供責任者の要件に含まれていましたが、現在は除外されています。

人員配置基準

訪問介護事業所の場合、管理者以外に「常勤換算で2.5人以上の介護職員」を配置しなければならないため、人件費としては最低でも月60万円程必要となります。常勤の訪問介護員の月給相場は18万円~25万円程度です。

福祉施設を開業するための具体的なステップ

福祉施設の開業は複雑なプロセスを経る必要があります。適切な順序で準備を進めることで、スムーズな開業と安定した運営を実現できます。ここでは開業までの主要なステップを順序立てて説明します。

1. 事業計画の策定

事業内容とは、開業する施設が提供するサービス内容・企業としての取り組み・収益見込みなどを示すもの。その内容をまとめた書類を事業計画書と呼び、資金調達や行政からの認定(介護保険事業者など)を受ける際に欠かせないものとなります。

2. 法人設立

介護・福祉施設を開業・運営するには、法人を設立する必要があります。国の基準をクリアできるのは、株式会社、合同会社、あるいは社会福祉法人や医療法人といった非営利法人です。個人事業主・フリーランスでの参入は認められていません。

  • 株式会社:約20万円
  • 合同会社:約10万円

3. 施設・設備の確保

土地選びを誤ると、行政からの指定が受けられないケースもあるため注意が必要です。施設基準を満たした物件の確保または改修工事が必要です。

4. 人材確保と採用

開業前に必要な有資格者を確保することが重要です。介護保険による介護報酬は、翌月に請求し、翌々月に支払われるので、開業時にはあらかじめ2〜3ヶ月分の人件費を確保しておく必要があります。

5. 指定申請の実施

都道府県または市区町村への指定申請を行い、事業者指定を受けます。申請から指定まで約2〜3ヶ月を要するため、開業予定日から逆算して準備する必要があります。

福祉施設の開業資金と資金調達方法

福祉施設の開業には相当な資金が必要となります。適切な資金計画を立て、多様な調達方法を検討することが成功への第一歩となります。ここでは開業資金の内訳と効果的な資金調達方法について詳しく説明します。

開業資金の内訳

  1. 法人設立費用
  2. 施設取得・改修費用
  3. 設備・備品購入費
  4. 人件費(開業後3ヶ月分)
  5. 運転資金

融資による資金調達方法

日本政策金融公庫(日本公庫)は、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫を基盤として設立された政策系の金融機関です。創業支援に積極的で、介護事業の開業にも対応した融資制度があります。

融資制度の特徴
  • 年利1~3%程度の低金利
  • 創業間もない事業者にも対応
  • 返済期間は設備資金20年以内、運転資金7年以内

福祉施設の開業に活用できる助成金・補助金

福祉施設の開業や運営において、国や地方自治体の助成金・補助金制度の活用は経営を大きく左右する重要な要素です。2025年現在利用可能な制度について、最新の情報をもとに詳しく解説します。

    • キャリアアップ助成金
      有期雇用労働者等に対して新たに正規雇用労働者と共通の賃金規定等を作成し、適用した事業主に対して、助成金を支給します。
  • 介護労働安定センターの助成金
    介護労働者の負担軽減や賃金の改善、職場環境の改善を目的としています。導入される福祉機器や雇用管理制度の改善に対して、助成金が提供されます。
  • 東京都の創業支援
    東京都内で新規開業する際に利用できる助成金制度です。対象となるのは、東京都内での創業を具体的に計画している個人、または創業から5年未満の中小企業者です。賃料や人件費など、施設開業に必要な経費の一部について助成を受けることができます。助成金額は最大400万円で、東京都と東京都中小企業振興公社が実施しています。
  • 小規模事業者持続化補助金
    小規模事業者の事業継続を支援するための補助金制度です。働き方改革や賃上げ、インボイス制度への対応など、制度改正に関連した販路開拓などの取り組みに活用することができます。補助金額は最大で200万円となり、資本金の要件や過去の採択実績など、所定の条件を満たすことが求められます。
  • 処遇改善加算
    職員の賃金改善やキャリアアップの仕組みを整えることで、介護報酬に上乗せして受け取れる加算です。職員の定着と経営の安定に直結する重要な制度なので、必ず活用を検討しましょう。

福祉施設の経営に成功するためのポイント

福祉施設の開業は始まりに過ぎません。持続可能で質の高いサービスを提供し続けるためには、戦略的な経営視点が必要です。ここでは長期的な成功を実現するための重要なポイントを解説します。

地域ニーズの把握

福祉施設にはさまざまな種類があり、その種類によって地域のニーズ・適切な立地条件は変わってきます。したがって、開業予定エリアについて事前に十分な情報収集と分析を行い、円滑な運営が期待できる場所に施設を設けることが重要です。

無理のない資金計画

福祉施設を新たに開業する際は、初期費用となるイニシャルコストだけでなく、開業後に継続的に必要となるランニングコストも見据えたうえで、資金計画や事業計画を立てることが大切です。福祉・介護事業における報酬が国から支払われるまでには約2ヶ月という期間が必要となるため、ランニングコストについては特に考慮しておくことが大切です。

人材確保と定着

介護人材不足が深刻化する中、質の高いスタッフの確保と定着が経営成功の鍵となります。処遇改善加算の活用や働きやすい環境づくりが重要です。

ICT化の推進

介護職員にとって働きやすい環境作りのため、介護施設で導入される介護ソフトや情報端末、通信環境機器、あるいはICT関係の運用経費を対象としたICT導入補助金の活用も考えられます。事業規模により100〜260万円が上限で、実際にかかった費用と比較して支給されます。

福祉施設を開業する上での注意点

福祉施設の起業には多くの機会がある一方で、様々なリスクも存在します。事前にリスクを把握し、適切な対策を講じることで安定した事業運営が可能になります。ここでは主要な注意点と対策について説明します。

法的要件の遵守

福祉施設の運営には多くの法的要件があります。人員基準、設備基準、運営基準を満たすことはもちろん、定期的な監査への対応も必要です。

経営リスクへの対策

介護報酬制度の改正や地域の競合状況の変化など、経営環境の変化に対応できる柔軟な経営体制の構築が重要です。

継続的な質の向上

利用者満足度の向上と地域からの信頼獲得のため、継続的なサービス品質の向上に取り組む必要があります。

福祉施設の開業を成功に導きましょう

福祉施設の開業は、社会的意義が高く将来性のある事業ですが、適切な準備と資金計画が成功の鍵となります。2025年の法改正により処遇改善加算が引き上げられ、経営環境は改善傾向にあります。しかし、人員基準や設備基準などの法的要件は厳格であり、十分な事前準備が必要です。

開業を成功させるためには、地域ニーズの詳細な調査、適切な法人形態の選択、必要な資格を持つ人材の確保、そして継続的な運転資金の準備が不可欠です。また、国や地方自治体の助成金・補助金制度を積極的に活用することで、初期投資を抑えながら質の高いサービス提供が可能になります。本記事が、あなたの挑戦の第一歩となれば幸いです。


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