- 更新日 : 2026年1月26日
合資会社とは?特徴・他の会社形態との違い・メリットと注意点を解説
合資会社は、無限責任社員と有限責任社員で構成される持分会社です。
- 無限・有限責任が混在
- 設立費用は約6万円
- 経営と所有が一致
家族経営や事業承継など、出資者間に強い信頼関係がある場合に選択されることがあります。
会社設立を検討している方の中には、「合資会社」という法人形態を耳にしたことはあっても、具体的な仕組みやメリット・デメリットがわからず選択に迷う方も多いのではないでしょうか。合資会社は、無限責任社員と有限責任社員から構成される独自の構造を持ち、他の会社形態とは異なる特徴があります。
本記事では、合資会社の基本から他の法人形態との違い、設立の向き不向き、利点や注意点などを解説します。
目次
合資会社とは?
合資会社は、日本の会社形態の中で「持分会社」に分類される法人形態のひとつです。出資者のうち少なくとも1名が無限責任を負い、もう1名以上が有限責任を負うことで構成される点に特徴があります。
無限責任社員と有限責任社員から構成される
合資会社は、最低でも2名以上の出資者(社員)で構成され、そのうちの1名以上が「無限責任社員」、もう1名以上が「有限責任社員」として参加します。無限責任社員は、会社が万が一倒産した場合、その債務について自らの全財産をもって弁済責任を負う必要があります。これに対し、有限責任社員は出資した金額を上限に責任を負い、それを超える個人資産を失うリスクはありません。このように、出資者間でリスク負担の程度が明確に異なる点が、合資会社の大きな特徴です。
持分会社に分類され経営と所有が一致している
日本の会社法では、株式会社のほかに「持分会社」と呼ばれる法人形態があり、これには合資会社、合同会社、合名会社の3種類が含まれます。持分会社の特徴は、出資者がそのまま経営者としての役割を持つことで、経営と所有が一致していることにあります。これは、所有と経営が分離している株式会社とは対照的です。合資会社もそのひとつであり、出資者同士の信頼関係を基盤にした、柔軟かつ閉鎖的な経営が行われるケースが多く見られます。
経営の自由度は高いが無限責任のリスクがある
合資会社は内部の運営ルールを比較的自由に設定できる点で、設立時の柔軟性があります。定款の内容によって議決権の配分や利益分配の方法を自由に定められるため、事業パートナー間で合意があれば、様々な形での経営が可能です。ただし、無限責任社員が存在することから、その人物の責任は非常に重く、リスクが高いという点には留意が必要です。起業時にリスクと自由度の両面から慎重に判断することが求められます。
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株式会社や合同会社など他の会社形態との違いは?
合資会社は、他の会社形態と比較して出資者の責任範囲や設立方法、組織構造に違いがあります。ここでは、株式会社、合同会社、合名会社との主な相違点を解説します。
【株式会社との違い】責任の重さと組織構造が異なる
株式会社は出資者(株主)全員が有限責任を負い、経営は取締役が担う「所有と経営の分離」が基本です。一方、合資会社では経営権を持つ無限責任社員が出資も行い、私財で会社の債務を負う可能性があります。
設立に必要な人数も異なり、株式会社は1名から設立可能なのに対し、合資会社は最低2名(無限責任社員と有限責任社員各1名以上)が必要です。設立費用も株式会社は約20万円、合資会社は約6万円と大きな差があります。
また、株式会社は株式発行によって資金調達や上場が可能ですが、合資会社にはその制度がないため、外部からの資金調達には限界があります。こうした特徴から、合資会社は小規模で閉鎖的な運営に向いているといえます。
【合同会社との違い】責任の範囲と設立の柔軟性が異なる
合同会社は持分会社の一種でありながら、社員全員が有限責任を負う点で合資会社と大きく異なります。無限責任を避けたい場合、合同会社の方が安全性が高いといえます。
設立手続きも合同会社は1人から可能で、資本金も1円から設定できます。合資会社と同様に運営ルールを柔軟に定められるため、合同会社は近年人気の法人形態となっています。
無限責任を負わずに済む点は、起業初心者や小規模ビジネスの運営者にとって大きな魅力です。
【合名会社との違い】社員全員が無限責任を負うかどうか
合名会社も持分会社で、定款認証不要・資本金ゼロでも設立可能という点は合資会社と同様です。しかし最大の違いは、合名会社の社員は全員が無限責任を負う点にあります。
一方で合資会社では、有限責任社員を含めることで、リスクを分散させた経営が可能です。このため、現代では合名会社の新設はさらに稀であり、合資会社の方が現実的な選択肢とされています。
合資会社が選ばれるのはどのようなケース?
近年、合資会社は新規設立数が少なく、起業形態としてはあまり選ばれていません。ただし、全く使われていないわけではなく、特定の事情下では今も合資会社が選ばれることがあります。以下では、どのようなケースで合資会社が適しているのかを解説します。
新設数は少なく、原則として選ばれにくい
2006年の会社法施行で合同会社が創設されて以降、リスクの小さい合同会社が主に選ばれるようになりました。合同会社は、社員全員が有限責任で済むうえに、設立コストも低く手続きも簡単なため、合資会社の優位性はほとんどなくなっています。営利目的の起業において、合資会社が選ばれることは現在ではほぼありません。
信頼関係が前提となる家族経営や事業承継で選ばれる
それでも合資会社が選ばれるケースとしては、無限責任を負う社員に対して絶対的な信頼がある場合が挙げられます。たとえば家族経営の中で、親が無限責任社員となり、子どもが有限責任社員として参加するような形態です。
また、歴史的に合資会社として存続してきた企業が、組織形態を維持したまま事業承継を行うケースもあります。このように、特別な事情や信頼関係が前提となる環境において、合資会社が選択肢として残ることはあります。
合資会社のメリットは?
合資会社には、設立費用の安さや手続きの簡素さ、柔軟な運営体制など、中小規模の事業者にとって魅力的な利点があります。以下では、合資会社のメリットを解説します。
設立費用が安く、手続きも簡単
合資会社は株式会社に比べ、設立にかかる費用が大幅に安く抑えられます。具体的には、登録免許税が株式会社では最低15万円ほど必要ですが、合資会社では6万円です。また、株式会社では定款の公証人認証が必須で約5万円の追加費用が発生しますが、合資会社ではこの認証が不要です。そのため、設立全体の費用が約6万円にとどまり、準備期間も短縮できます。
資本金ゼロでも設立可能(労務出資が認められる)
合資会社では現金による出資がなくても設立が可能であり、無限責任社員に限っては労務出資(労働力の提供)や信用出資も認められます。これにより、例えば資金を持たないが労働力を提供できる無限責任社員と、出資のみを行う有限責任社員が協力すれば、初期資金をほとんど用意せずに会社を始めることも可能です。
定款内容の自由度が高く、経営が柔軟にできる
合資会社は定款の内容を比較的自由に設計できるため、利益配分や議決権の設定などを柔軟に定められます。出資比率に関係なく利益を分配したり、議決権を特定の社員に集約したりと、現場に即した制度設計が可能です。さらに、役員の任期がないため、定期的な選任や登記変更といった手間も発生しません。
決算公告義務がなく、情報を非公開にできる
合資会社には株式会社のような決算公告義務がありません。したがって、財務内容を外部に公表せずに済み、経営情報を非公開で保てます。これは中小企業にとって、取引先や競合への情報流出リスクを抑えるという面で大きな利点となります。
合資会社のデメリット・注意点は?
合資会社には設立費用や柔軟な運営といった利点がある一方で、デメリットや注意点が存在します。無限責任という重大な負担、人的要件、信用力の面などは事前に十分な理解が求められます。以下で具体的に見ていきましょう。
無限責任社員にはリスクが伴う
最大のリスクは、無限責任社員が会社の債務全額に責任を負う点です。会社が多額の負債を抱えて倒産した場合、無限責任社員は個人資産を使ってでも返済義務を果たさなければならず、最悪の場合、自己破産に至る可能性もあります。この重い責任は、合資会社が敬遠される主要な要因となっています。
一人では設立できず人員の継続確保が必要
合資会社は最低でも2名(無限責任社員と有限責任社員)が必要であり、1人では設立できません。また、会社運営中も常に複数社員の存在が前提となるため、共同経営者が離脱した場合には新たな社員を確保しないと、合同会社や合名会社に変更した扱いになります。人的構成の維持は、他の会社形態にはない制約です。
会社形態の知名度・信用度が低い
合資会社は、合同会社や株式会社と比べて社会的な認知度が低く、対外的信用が弱い傾向があります。取引先や金融機関に合資会社の仕組みを説明しなければならない場面もあり、スムーズな事業展開に影響を与える可能性があります。新規取引や採用活動においては不利となるケースもあります。
株式による資金調達ができない
合資会社では株式を発行できないため、外部からのエクイティ出資や株式市場での資金調達はできません。結果として、大規模な事業拡大や成長戦略に対応する資金を迅速に集めることが難しく、銀行からの融資や既存社員による増資に頼らざるを得ません。スケールアップを重視する事業には向いていない会社形態といえます。
合資会社の特徴を踏まえて適切な会社形態を選ぼう
合資会社は無限責任社員と有限責任社員からなる特殊な会社形態で、メリット・デメリットがはっきりしています。設立コストや内部運営の自由度といったメリットがある一方、無限責任のリスクや人員要件などのデメリットも抱えています。現在では合同会社や株式会社が選ばれるケースが多いものの、合資会社も法律上は設立可能です。自身の事業の規模やパートナーとの関係性を踏まえ、合資会社という形態が適しているかどうか慎重に判断するとよいでしょう。
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