- 作成日 : 2025年12月23日
有限会社と合同会社の違いとは?設立可否・ビジネスモデル・組織変更について解説
起業や法人成りを考えるとき、「有限会社」や「合同会社」という言葉を耳にすることがありますが、それぞれの違いをご存じでしょうか。有限会社はかつて中小企業向けに設けられていた制度で、現在は新設できず「特例有限会社」として存続しています。一方、合同会社は2006年の会社法改正により新たに認められた法人形態で、低コストで柔軟な経営が可能です。
本記事では、それぞれの制度の特徴や違い、どのような事業に適しているのかを解説します。
目次
有限会社とはどんな会社形態?
有限会社は、かつて中小企業のために設けられた法人形態です。2006年の会社法改正により新設ができなくなり、現在は既存の会社のみが「特例有限会社」として存続しています。
有限会社は中小企業向けの小規模法人
有限会社とは、出資者全員が有限責任社員で構成される中小企業向けの法人形態です。会社の債務に対しては出資額の範囲内でしか責任を負わず、個人資産が事業債務に巻き込まれにくい仕組みです。主に家族経営や小規模事業者が個人事業から法人化する際に選ばれ、手軽に法人格を取得できる方法として広く利用されていました。
旧有限会社法では、設立時に最低資本金300万円、取締役1名以上が必要でした。当時の株式会社が資本金1,000万円以上や取締役3名以上を求めていたのに対し、有限会社は設立要件が軽く、手続きの負担も少なかったため、小規模企業にとって実用的な選択肢でした。
会社法改正で廃止された
有限会社制度は、2006年に施行された新会社法によって廃止されました。新制度では株式会社の設立条件が緩和され、資本金1円から設立可能、取締役1名で足りるなどの規定が導入されました。これにより、従来有限会社が果たしていた「小規模でも設立しやすい会社」という役割を株式会社が担えるようになったため、有限会社制度は不要となりました。
その結果、現在では新たに有限会社を作ることはできず、2006年以前に設立された会社のみが有限会社として存続しています。
現在の有限会社は「特例有限会社」として扱われる
現在も存在する有限会社は「特例有限会社」と呼ばれ、法的には株式会社の一種とされています。社名に「有限会社」を残せますが、役員の任期がなく、定期的な改選登記が不要、決算公告義務がないなど、旧制度の簡便さを維持しています。これにより、経営上の事務負担が軽く、長期的に安定した運営がしやすい点が特徴です。
現在では、有限会社という名称が残る企業の多くは老舗中小企業であり、地域に根差した事業を続けています。
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合同会社とはどんな会社形態?
合同会社は、2006年の会社法改正によって新たに認められた法人形態です。設立の自由度が高く、コストも抑えられることから、個人事業主や小規模事業者に多く選ばれています。
出資者が経営に直接関与する柔軟な仕組み
合同会社の最大の特徴は、出資者がそのまま経営にも携わる点にあります。株式会社のように株主と経営者を分ける必要がなく、社員(出資者)が議決権を持ち、業務執行や代表者を自ら選任できます。少人数での経営に適しており、意思決定のスピードも速くなります。
設立費用が安く手続きも簡単である
合同会社は、資本金1円から設立可能で、登録免許税は6万円と比較的低コストです。また、定款の公証人認証が不要なため、全体の設立費用は10~11万円ほどに抑えられます。役員任期がなく決算公告も不要なため、設立後の事務負担も少なく済みます。
利益配分や組織設計が自由にできる
合同会社では、定款の定めにより利益配分を出資比率と無関係に設定できます。また、意思決定ルールも定款で柔軟に定めることができ、実質的に経営形態を自由に構築できます。これにより、事業内容や経営者同士の関係性に応じた柔軟な会社運営が可能です。
有限会社と合同会社の違いは?
有限会社と合同会社は、どちらも中小規模の事業者に適した法人形態ですが、制度的な背景や設立要件、経営体制、信用の捉えられ方など多くの点で異なります。ここでは、両者の違いを解説します。
有限会社は現在新設できず、合同会社は今も設立できる
有限会社は2006年の会社法改正によって制度が廃止され、新たに設立することができません。一方、合同会社はその改正で新たに創設された法人形態であり、現在でも誰でも設立可能です。現時点で「有限会社」の名称を持つ企業は、すべて法改正以前に設立された「特例有限会社」に該当します。新たに有限会社を作ることはできないため、これから法人化を検討する場合は、合同会社か株式会社のいずれかを選ぶことになります。
設立費用と手続きは合同会社の方が簡便で安価
有限会社の設立には当時、最低資本金300万円や定款の公証人認証など、相応のコストと手間が必要でした。対して、合同会社は資本金1円からでも設立でき、公証人認証も不要です。登録免許税は6万円からと安価で、合計の設立費用は10万円前後で済むケースが一般的です。このように初期費用の点でも、合同会社は現在の小規模起業に適した合理的な選択肢といえます。
組織構成や経営体制は合同会社の方が柔軟
有限会社では、社員数が50名までに制限され、原則として少人数での経営が前提でした。役員として取締役を1名以上設置する必要がありましたが、株主総会や取締役会の設置義務はありませんでした。
一方、合同会社には社員数の上限がなく、全員が出資者兼経営者として経営に直接参加する仕組みです。定款によって意思決定ルールや役割分担を柔軟に定められるため、より機動的な運営が可能です。また、両者とも役員の任期がなく、更新登記の必要がないという共通点もあります。
信用力や対外的イメージでは有限会社に優位性がある
社会的な信用や対外的な印象の面では、「有限会社」の看板が長年の実績を示すものとしてプラスに働くことがあります。有限会社という制度がすでに廃止されているため、その社名を名乗っている企業は少なくとも十数年以上の歴史を持つと見なされるからです。
一方、合同会社は比較的新しい法人形態であるため、株式会社に比べて認知度が低く、取引先によってはやや信用力で劣ると見なされる場合もあります。ただし、近年では法人格よりも事業内容や業績が重視される傾向が強まっており、合同会社でも堅実な経営を行えば十分に信頼を獲得できます。
その他の違い
| 比較項目 | 有限会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 利益配分のルール | 出資額に応じて利益配当を行うのが原則。定款による柔軟な配分は原則不可。 | 出資比率にかかわらず、定款により自由な利益配分が可能。貢献度等に応じて柔軟に設計できる。 |
| 資金調達手段 | 株式の発行は不可だが、法的には株式会社の一種のため種類株式の発行や株主の追加は可能。ただし上場不可。 | 株式発行不可。原則として上場できないため、大規模な資金調達やVCからの出資には不向き。 |
| 内部統制・意思決定 | 株式会社としての仕組み(取締役の決定権、多数決など)を利用でき、運営は比較的安定。 | 社員=出資者で全員の同意が原則。 (定款に定めのない場合) 対立が起きると経営が停滞するリスクがある。必要に応じ、定款で柔軟に調整可。 |
有限会社から合同会社や株式会社へ組織変更できる?
有限会社は現在、新設できませんが、既存の「特例有限会社」は法律上、株式会社とみなされる形で存続しています。そのため、事業拡大や経営方針の変更に合わせて、合同会社または株式会社へ組織変更することが可能です。
有限会社は合同会社・株式会社へ組織変更できる
特例有限会社は会社法上「株式会社の一種」として扱われているため、組織変更によって株式会社または合同会社に転換することができます。ただし、合同会社に変更する場合は「株式会社から持分会社への組織変更」という扱いになり、社員(出資者)全員の同意が必要です。
逆に株式会社への変更は、より一般的な「特例有限会社から普通の株式会社への変更」であり、株主総会の特別決議で実施可能です。どちらの形態に移行するかは、事業規模や将来の資金調達方針に応じて判断されます。
組織変更の手続きの流れ
組織変更には、会社法上の定めに基づく手続きと登記申請が必要です。まず、定款の変更案を作成し、株主(または社員)の全会一致または特別決議によって承認を得ます。その後、変更登記を行い、新しい会社形態に応じた定款や機関設計を整えます。株式会社への変更では新株の発行や役員の任期設定、公告義務が追加される場合があり、合同会社への変更では逆に簡素化されるケースが多いです。
登記は法務局で行い、登録免許税が発生します。税額は資本金額により異なりますが、一般的には株式会社への変更で3万円以上、合同会社への変更で6万円程度が目安です。手続きは専門家(司法書士など)に依頼することも多く、数週間〜1か月程度を要します。
組織変更を行う際の注意点
有限会社から組織変更する場合、商号の「有限会社」は継続使用できません。新たに「株式会社」または「合同会社」という名称を用いる必要があります。また、組織変更後は会計処理や税務申告の形式も変わるため、税理士への相談が推奨されます。
さらに、金融機関や取引先への通知、契約書・印鑑の変更など、実務面での調整も欠かせません。組織変更は会社の法的地位や手続体系を変える重要な行為であるため、事前に十分に準備しましょう。
各形態に適したビジネスモデルは?
会社形態の選択は、設立コストや制度面だけでなく、事業内容や将来展望にも大きく関わります。ここでは、有限会社・合同会社・株式会社それぞれに適したビジネスモデルをもとに、どのような企業に向いているかを明らかにします。
有限会社は地域密着型や老舗企業に適している
有限会社(特例有限会社)は現在新設できませんが、制度廃止前に設立された企業が多く残っており、長年地元で信頼を築いてきた商店や中小製造業、建設業などが代表的な事例です。たとえば、地方で30年以上続く建築会社や製造工場、印刷会社などでは、法人登記の変更をせず、有限会社のまま事業を継続しています。このような企業では、地元に根ざした取引先との関係や、変化よりも安定を重視する経営姿勢が多く見られます。
少人数で経営し、毎年の役員改選や公告義務のない有限会社制度の特徴は、こうした企業にフィットします。
合同会社は個人起業・スモールビジネスに最適
合同会社は、設立費用の低さと運営の柔軟さから、個人事業主の法人化やフリーランス、スタートアップに適しています。ITエンジニアがアプリ開発を行う小規模チームや、デザイナー・ライターなどのクリエイターが活動拠点を法人化するケースに最適です。YouTube配信者、インフルエンサー、オンライン講師なども、活動の収益を法人で受けるために合同会社を設立する例が増えています。また、家族経営の店舗型ビジネス(カフェ、美容室など)でも、出資と経営を一体で行う合同会社の構造が活かされています。
株式会社は資金調達や成長を目指すビジネスに向いている
株式会社は、出資と経営が分離しており、外部資本を導入しやすいため、拡大志向の強いビジネスに向いています。ベンチャーキャピタルからの出資を受けて成長を目指すテクノロジー企業や、将来的に株式上場(IPO)を検討しているスタートアップなどが該当します。また、公共性の高いビジネス(教育、医療、社会インフラ)や、複数人の役員構成が必要な大規模事業体にとっても、組織的に安定しており、社会的信用が高い株式会社の形態が適しています。
有限会社と合同会社の違いを理解して正しい選択を
有限会社と合同会社はどちらも小規模事業に向いた形態ですが、制度の成り立ちや設立費用、経営体制、信用面には違いがあります。有限会社はすでに新設できず、特例有限会社としてのみ存続している一方、合同会社は低コストで柔軟に設立でき、現在の小規模起業に広く選ばれている形態です。さらに、事業成長を見据える場合は株式会社への変更という選択肢も加わります。
事業内容や将来の方向性に応じて、自社に最適な形態を選択し、安定した運営と長期的な発展につなげましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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