• 作成日 : 2025年12月11日

合同会社のインボイス対応はどうする?適格請求書発行事業者のメリットや注意点を解説

インボイス制度(適格請求書等保存方式)の開始により、合同会社の経営者も対応を迫られています。特に設立間もない合同会社や、免税事業者である場合、インボイスへどう対応するかは今後の経営に直結する重要な判断です。

この記事では、合同会社がインボイス制度にどう向き合うべきか、適格請求書発行事業者になるメリット・デメリット、具体的な登録方法や申請手順、そして免税事業者の場合の選択肢について解説します。

目次

そもそもインボイス制度(適格請求書等保存方式)とは?

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、消費税の仕入税額控除に関する新しいルールであり、2023年10月1日から開始されました。合同会社も、他の法人形態や個人事業主と同様に、インボイス制度の影響を受けます。

インボイス制度の基本的な仕組みは?

インボイス制度は、「適格請求書発行事業者」のみが「適格請求書(インボイス)」を発行でき、買い手はそのインボイスに基づいて仕入税額控除を行う仕組みです。

仕入税額控除は、売上にかかる消費税額から、仕入れや経費にかかった消費税額を差し引いて納税額を計算する仕組みです。インボイス制度導入後は、仕入れ先への支払いが「適格請求書」に基づいたものでなければ、原則としてこの控除ができなくなりました(経過措置あり)。

つまり、合同会社が仕入れを行う側であれば、相手からインボイスをもらう必要があり、合同会社が販売する側であれば、取引先(買い手)からインボイスの発行を求められる可能性が高いということです。

合同会社もインボイス対応が必要な理由は?

合同会社がインボイス対応(適格請求書発行事業者への登録)を検討すべき主な理由は、取引先が仕入税額控除を受けられるようにするためです。

合同会社がインボイスを発行できなければ、取引先(買い手)は消費税の負担が増加し、結果としてその合同会社との取引を避ける可能性があります。 もしあなたの合同会社が免税事業者であり、インボイス登録をしない場合、取引先(特に課税事業者)は、あなたの会社への支払いにかかる消費税分を仕入税額控除できません。そのため、BtoB(法人向け)取引がメインの合同会社は、取引継続や新規開拓のためにインボイス登録を迫られるケースが多くなります。

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合同会社がインボイス制度に登録するメリットは?

合同会社がインボイス登録する最大のメリットは、課税事業者である取引先との関係を維持・強化し、新規取引の機会を失わないことです。インボイスを発行できることで、取引先は安心して仕入税額控除を行えるため、取引相手として選ばれやすくなります。

メリット1. 取引先との関係維持・新規開拓

適格請求書発行事業者になることで、既存の課税事業者との取引が継続しやすくなり、新たな課税事業者との取引もスムーズに開始できます。インボイスを発行できることは、BtoB取引において取引の前提条件となりつつあります。取引先は仕入税額控除を確実に行いたいため、インボイスを発行できる事業者を優先的に選びます。

メリット2. 取引の透明性の向上

登録番号が記載された適格請求書を発行することで、取引の透明性が高まり、企業の信頼性向上につながります。インボイス登録番号は国税庁のサイトで公表されるため、取引先は合同会社が正式な登録事業者であることを確認できます。登録番号により、請求書の発行元が明確になり、適正な経理処理を行っている企業であるとの印象を与えられます。

参考:インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト|国税庁

メリット3. 法人成り直後の信用度向上

個人事業主から合同会社へ法人成りした直後の場合、インボイス登録が社会的信用の補完になる側面があります。合同会社として法人格を持つことに加え、インボイス登録事業者であることは、消費税の納税義務を果たす企業としての信頼性を示します。法人成り直後は取引実績が少ないため、公的な登録制度に対応している姿勢が、対外的な信用力向上にプラスに働くことがあります。

合同会社がインボイス制度に登録するデメリットは?

合同会社がインボイス登録する最大のデメリットは、これまで消費税免除の対象であった免税事業者の場合、新たに消費税の納税義務が発生し、キャッシュフローに影響が出ることです。インボイス登録事業者は消費税の課税事業者となるため、売上にかかる消費税を計算し、納付する必要が生じます。

デメリット1. 消費税の納税義務が発生

インボイス登録をためらう最大の理由は、消費税の納税義務が発生することです。基準期間における課税売上高が1,000万円以下で消費税が免除されていた合同会社も、インボイス登録をすると強制的に課税事業者となり、消費税の申告・納税が必要になります。インボイス(適格請求書)を発行できるのは、課税事業者に限られるためです。

※基準期間とは、前々事業年度の課税期間を指します。

参考:No.6501 納税義務の免除|国税庁

デメリット2:経理処理・請求書発行の事務負担が増加

インボイス制度に対応した経理処理は、従来よりも複雑になり、事務作業が増加します。適格請求書の要件を満たした請求書の発行、受け取ったインボイスの確認・保存、消費税の区分経理などが必要になるためです。

  • 発行側:自社の請求書フォーマットをインボイス要件に対応させる必要があります。
  • 受取側:受け取った請求書がインボイスの要件を満たしているか、登録番号が正しいかを確認し、インボイスとそれ以外を区別して経理処理・保存する必要があります。

消費税の申告書作成も必要となり、税理士への依頼コストが増加する可能性もあります。

デメリット3. システム対応のコストが発生

インボイス対応のために、会計ソフトや請求書発行システムの改修・導入コストが発生する場合があります。既存のシステムがインボイス制度に対応していない場合、ソフトウェアのアップデート費用や、新しいシステムへの乗り換えコストが発生する可能性があります。

免税事業者の合同会社はインボイス登録すべき?

免税事業者の合同会社がインボイス登録すべきかは、主要な取引先の状況と自社の事業形態によって決まります。

判断基準1. 主要な取引先が課税事業者か

最も重要な判断基準は、主要な取引先が課税事業者かどうかです。主要な取引先の多くが課税事業者である場合、インボイス登録をしないと取引を打ち切られたり、消費税相当額の値引きを要求されたりするリスクが高いため、登録するメリットが大きいです。 逆に、取引先が免税事業者や簡易課税制度を選択している事業者、あるいは一般消費者(BtoC)のみであれば、インボイスの発行を求められることはほとんどないため、免税事業者のままでいるメリットが大きいと言えます。

判断基準2. 取引先がBtoBかBtoCか

事業モデルがBtoB(法人向け)かBtoC(一般消費者向け)かも大きく影響します。BtoCの事業(例:小売店、飲食店など)がメインの合同会社は、インボイス登録の必要性は低いです。一般消費者は消費税の申告を行わないため、仕入税額控除の必要がなく、インボイスを要求することがないためです。

合同会社がインボイス制度に登録する方法は?

合同会社がインボイス登録する方法は、所轄の税務署長に対して「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出することです。この申請書が受理され、審査を経て登録が完了すると、適格請求書発行事業者として登録番号が通知されます。合同会社の場合、個人事業主とは異なり「法人番号」を使用する点がポイントです。

1. 登録申請書の準備(法人番号の確認)

まず、国税庁のウェブサイトなどから「適格請求書発行事業者の登録申請書」を入手し、合同会社の法人番号(13桁)を確認します。申請書には、合同会社の名称、本店所在地、法人番号、代表者氏名などを記載します。合同会社の法人番号は、国税庁の「法人番号公表サイト」で確認できます。

参考:D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)|国税庁法人番号公表サイト|国税庁

2. e-Taxまたは郵送による申請

作成した申請書は、e-Tax(電子申請)または郵送のいずれかの方法で税務署に提出します。迅速な処理が可能な「e-Tax」が推奨されます。e-Taxで申請する場合、代表者のマイナンバーカードまたはGビズIDなどを利用して電子申請を行います。

参考:e-Tax

3. 登録番号の通知と公表

申請書が受理され、審査に問題がなければ、合同会社の登録番号が通知されます。登録通知書が送付(またはe-Taxで通知)され、同時に国税庁の公表サイトで情報が公開されます。この登録番号を請求書や領収書に記載することで、適格請求書として認められます。

参考:国税庁 法人番号公表サイト

合同会社のインボイス対応で活用できる特例措置は?

インボイス制度への対応による事業者の負担を軽減するため、いくつかの特例措置が設けられており、合同会社もこれらの対象となります。特に、免税事業者からインボイス登録をした合同会社は、以下の特例を積極的に活用すべきです。

免税事業者から課税事業者になった場合の「2割特例」

インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった場合、売上にかかる消費税額の2割を納税額とすることができる「2割特例」が適用できます。この特例は、業種に関わらず、売上税額の8割を仕入税額控除としてみなすことができるもので、簡易課税よりも有利になるケースが多くなります。適用期間は2026年9月30日の属する課税期間までです。

参考:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁

1万円未満の取引に関する「少額特例」

税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる「少額特例」があります。この特例は、基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者などが対象で 、適用期間は2029年9月30日までです。電車代や少額の備品購入などで事務負担が大幅に軽減されます。

参考:少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)の概要|国税庁

消費税計算の「簡易課税制度」

簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できる制度で、売上税額に業種ごとの「みなし仕入率」を乗じて納税額を計算する方法です。実際の仕入れにかかる消費税額を計算する必要がないため、事務負担が軽減されます。2割特例の適用期間が終了した後、原則課税と簡易課税のどちらが有利かシミュレーションし、選択することが重要です。
簡易課税を選択する場合の注意点として、簡易課税を選択した場合、売上にかかる消費税額が仕入れにかかる消費税額よりも小さくても、消費税の還付を受けることはできない点には注意が必要です。

参考:No.6505 簡易課税制度|国税庁

合同会社の請求書はインボイス制度でどう変わる?

合同会社がインボイス登録をした場合、発行する請求書や領収書を「適格請求書」の要件を満たす様式に変更する必要があります。要件を満たさない請求書はインボイスとして認められず、取引先が仕入税額控除を受けられないためです。

適格請求書(インボイス)に必要な記載事項

適格請求書には、従来の記載事項に加え、「適格請求書発行事業者の登録番号」「適用税率」「税率ごとに区分した消費税額等」の3点の記載が必須となります。 必要な記載事項は以下の通りです。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称
  2. 適格請求書発行事業者の登録番号(T + 法人番号)
  3. 取引年月日
  4. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  5. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)
  6. 適用税率
  7. 税率ごとに区分した消費税額等
  8. 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称※

※不特定多数に発行する小売業などは、8を省略した「適格簡易請求書」が認められます。

適格簡易請求書(簡易インボイス)とは?

合同会社の事業内容が小売業、飲食店業、タクシー業など不特定多数の者に販売等を行うものである場合、記載事項を簡略化した「適格簡易請求書(簡易インボイス)」の発行が認められます。簡易インボイスとは、「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」の記載を省略できるものです。

適格請求書発行・保存の注意点は?

インボイス制度では、発行側はインボイスの写しを、受取側は受け取ったインボイスを、原則7年間保存する義務があります。請求書をPDFなどの電子データでやり取りする場合(電子インボイス)、電子帳簿保存法の要件に従って保存する必要があります。

合同会社のインボイス対応に関してよくある質問

合同会社のインボイス対応に関して、よくある質問とその回答をまとめます。

インボイス登録しないと罰則はある?

インボイス登録(適格請求書発行事業者になること)は任意であり、登録しなかったこと自体に対する罰則はありません。ただし、登録しないことによるビジネス上の不利益(取引減少や値引き要求)が発生する可能性はあります。

インボイスの登録番号はいつ通知される?

申請書の提出後、e-Taxであれば最短で約2週間〜1ヶ月程度、郵送であればそれ以上の期間(例:1〜2ヶ月)がかかる場合があります。申請時期や税務署の処理状況によります。

途中でインボイス登録を取りやめることはできる?

はい、可能です。「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出することで、登録を取りやめ、免税事業者に戻ることができます。ただし、届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間の初日から登録を取りやめることができるのは、翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出が必要です。

参考:D1-70 適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める手続|国税庁

合同会社のインボイス対応は慎重に検討しよう

合同会社のインボイス対応は、経営戦略そのものに関わる重要な判断です。免税事業者のままでいるか、課税事業者となってインボイス登録を行うかは、主要な取引先、事業内容、そして将来の事業計画に基づいて決定する必要があります。

登録する場合は、2割特例などの激変緩和措置を最大限活用し、納税負担と事務負担を軽減することが求められます。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談することも強く推奨します。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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